映画『アンダーニンジャ』ネタバレ解説&感想 ラストの意味は? 続編はある? 原作との違いを考察 | VG+ (バゴプラ)

映画『アンダーニンジャ』ネタバレ解説&感想 ラストの意味は? 続編はある? 原作との違いを考察

©花沢健吾/講談社 ©2025「アンダーニンジャ」製作委員会

映画『アンダーニンジャ』公開

花沢健吾原作の漫画を実写映画化した『アンダーニンジャ』が2025年1月24日(金) より全国の劇場で公開された。実写版「銀魂」シリーズなどを手がけてきた福田雄一監督が指揮する本作は、主演に山﨑賢人、出演者に浜辺美波間宮祥太朗ら豪華キャストを迎えて人気漫画の実写化に挑戦している。

今回は、映画『アンダーニンジャ』のラストと原作漫画との違いについてネタバレありで解説&考察し、感想も記していこう。以下の内容は映画『アンダーニンジャ』の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。なお、映画ラスト以降の原作漫画の展開については重大なネタバレは行わない。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『アンダーニンジャ』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『アンダーニンジャ』ネタバレ解説

NIN vs UN

映画『アンダーニンジャ』では、第二次世界大戦後に解体されたはずの忍者組織のNIN(ニン)がその後も存在していたという設定で物語が進んでいく。主人公の雲隠九郎に与えられた任務は謎の組織「アンダーニンジャ」、通称「UN」を探ることだ。

上司の中忍・加藤から講談高校への潜入を言い渡された九郎は、浜辺美波演じる野口、坂口涼太郎演じる瑛太らと接触。高校に潜むUNの正体を探っていく。

高校の生徒では佐藤役の野内まるの演技が光っていた。野口役の浜辺美波との掛け合いは自然でいて可笑しく、実写版『アンダーニンジャ』の影のMVPと言ってもいいだろう。

同じく名演を見せた平田満が演じる主事は、あらゆる音を聞き分ける「順風耳(じゅんぷうじ)」の使い手で、九郎からは順風耳と呼ばれる。順風耳は千里眼の耳バージョンと考えてよい。

かつて講談高校の地下はUNの偽札工場で、日本の不況を招いた一方でUNは莫大な富を手にしていた。それを発見したNINとUNの間で戦いが起こり、地下では多くの死者が出たという。順風耳はその生き残り、墓守としてどこにも付かない曖昧な立場で生かされていた。つまり、UNは順風耳以外に存在しているということだ。

誰がUN?

映画『アンダーニンジャ』でUNとして登場するのは、岡山天音演じる猿田と、山本千尋演じる山田美月だ。猿田はNINの下忍だったが、戦う機会がない現状に不満を持っており、UNの忍者として任務を受けることになった。

そもそもNINの忍者たちは忍術学校で厳しい訓練を受けて忍者になっている。それでも冒頭の九郎のように仕事にあぶれて暇を持て余す下忍も多く、猿田はそうした状況に不満を抱いて抜け忍になったと思われる。

猿田はUNから最新の装備を受け取り、講談高校を襲撃。九郎がNINから受け取ったパーカー=摩利支天が上半身のみ透明化するのに対し、UNの装備は全身を透明化することができる。この違いは、NINが公な勢力として警察に配慮して装備の性能をスペックダウンしているのに対し、UNはそうした取り決めがないため自由に装備を使えるという背景がある。

猿田が混乱を引き起こし、加藤、九郎、鈴木、蜂谷紫音らNINの忍者たちを講談高校におびき寄せる中、山田はある目的を果たそうとしていた。映画『アンダーニンジャ』のクライマックスでは、その狙いが明かされる。

原作との違いは?

映画『アンダーニンジャ』では、原作漫画の8巻途中まで、アニメ1期全12話の内容を2時間にまとめている。また、鑑賞に年齢制限がない映倫区分Gで公開されているため、原作のグロテスクな描写はカットされている。

それもあり、実写版には登場していない原作のキャラクターが複数存在する。最も目立つのは原作で重要なポジションを担っていたNINの凄腕忍者・佐々魔の不在だ。公式パンフレットでは、原作者の花沢健吾が福田雄一に続編があれば佐々魔を出してほしいと要望している。

一方で、猿田をスカウトしたUNの忍者は津田健次郎が声を演じていたが、正体が明かされることはなかったため、あれが佐々魔だったという可能性もあるだろう。

原作では猿田の忍術学校時代の同級生だった猫平も実写版では登場しなかった。その他にも、講談高校の決戦で印象的な活躍を見せる鬼首(おにこうべ)と日々奇跡(ミラクル)、奇跡の妹・乱乱、その上司の、雲隠家四男の虹郎厚生労働省援護工作二課は登場しなかった。

その中でも、冒頭でアレクセイ(九郎に倒された外国人)が登場したのは良かった。ストーリーは大幅に削られているものの、演じたNihiの再現度も高く、今後も登場する可能性を残した退場の仕方で再登場を期待させてくれた。

映画『アンダーニンジャ』ラスト 解説&考察

決戦の改変

映画『アンダーニンジャ』のラストでは、雲隠九郎は裏山の洞窟内で山田と対峙する。原作では講談高校の破壊が山田の目的だと気付いた九郎が、同級生達を助けるために楊紀伊(ヤンキー)高校に殴り込みに行くと言って瑛太と山田らを連れて同校へ向かい、楊紀伊高校の屋上が決戦の場になった。

講談高校の地下に逃れたのは野口、佐藤、鈴木、楊紀伊高校にいるのは九郎、山田、瑛太という設定だったが、映画版では野口と瑛太のポジションが入れ替わっている。猿田と戦うのは鬼首というくノ一だったが、映画版では間宮祥太朗演じる加藤と宮世琉弥演じる蜂谷紫音が猿田と対峙する。

加えて、加藤は原作でCUBEという段ボールのようなロボット兵器を操っていたが、実写版では加藤は生身の身体で講談高校に突入。間宮祥太朗の忍者アクションがたっぷり楽しめる。蜂谷紫音を演じた宮世琉弥、猿田役の岡山天音の演技も見事だった。

蜂谷紫音はNINの最高幹部である七人衆の一人、多羅(たら)の孫。猿田に追い詰められるも、加藤の援護によって猿田は破れ去った。

UNの目的とは

一方、九郎が山田と対峙したことで、講談高校を襲撃したUNの目的を明らかになる。NINが保有する人工衛星・遁(とん)から20万人の忍者の個人データを抜き取ること②講談高校の地下を破壊することだ。

加藤はUNの防護服を着ている猿田と戦ったことで、その防護服が宇宙服として使える素材であることを確認した。九郎はそれより前に加藤にUNの忍者が宇宙の遁を目指している可能性を伝えていた。

九郎は順風耳に遁を使用した時に山田が近くにいたことを確認しており、UNが遁の座標を探っていると予想を立てた。その後にテレビのニュースで衛星を積み忘れたままロケットを打ち上げたと報じられていたが、このロケットにUNの忍者が乗り込んでいたのである。

九郎の報告を受け、UNの防護服の素材を確認して確信を得た加藤は、UNの狙いは遁であると上層部に報告。NIN本部が決断を渋っている間にUNの忍者が遁内に侵入して20万人の忍者の個人データを手に入れると共に、最大出力で講談高校に向けてレーザーを射出したのだった。

『アンダーニンジャ』の原作漫画では、遁を使用した講談高校の地下空間の破壊は元々NINの七人衆の計画であり、最大出力でのレーザー放射も七人衆が指示している。実写映画版では、講談高校の地下空間の破壊はUNの狙いであり、最大出力でのレーザー放射は遁に侵入したUN忍者の仕業という展開に変更されている。

山田はその目的を、くだらない歴史を消して、新しい戦いを始めると語っている。UNは、偽札作りをして富を得ると共に日本を長年の不況に陥れたという過去を消したかったということだ。不都合な歴史を消し、UNはNINに新たな戦いを仕掛けるという宣言である。

ちなみに遁に侵入したUNの忍者は、原作では桐生という人物で、桐生もまた講談高校に潜入していた。

九郎は〇〇〇?

雲隠九郎と山田美月の決闘では、原作と同じくドローン刀とジェット刀が登場。二人の見事な殺陣が描かれる。山田を演じた山本千尋は本作随一のハマり役。原作の山田を彷彿とさせる化け物じみた不気味さを見事に再現している。

勝負は、互いに腹部を刺しあって相討ちという結果に。山田は倒れ、重傷を負った九郎は遁の攻撃の余波で崩れゆく洞窟の中で自分のパーカー=摩利支天を野口に着せて意識を失う。

摩利支天のエアバッグ機能が発動し、野口は無事だった。瓦礫の中で立ち尽くす野口は九郎の名前を呼ぶが、アパートでは川戸と大野が亡き九郎に献杯をあげて、彼の死を偲ぶのだった。

九郎は本当に死んだのだろうか。原作では、より明確に九郎の死が描かれる。原作では、九郎は山田の鼻を切り落とすことに成功したが、山田に九郎の顔面の上半分を切り取られて死亡した。敵が勝利し、主人公が死亡するという衝撃の展開だった。

原作ではそもそも野口は鈴木&佐藤と共に講談高校地下から逃げているため九郎の死に目に会っていない。映画版では、山田と九郎の勝負の結果を相討ちとしつつ、九郎と野口の最後をロマンティックな形でまとめている。野口には映画版で初めて「彩花」というファーストネームも付けられており、野口は実写化にあたって最も深掘りされたキャラクターだったと言える。

山田と九郎の決闘の改変からも分かるように、映画『アンダーニンジャ』ではグロテスクな表現が極力排されていた。鈴木も原作では講談高校の戦いで左足を切断されるが、映画版ではアキレス腱を切られたという描写にとどめられている。

ラストの意味は?

鈴木と佐藤、瑛太は地下通路を使って生き延び、加藤と蜂谷紫音もすんでのところで屋上から飛び降りて脱出に成功していた。帰宅した野口が部屋に戻ると、そこには九郎と同じ顔の人物が潜んでいた。

しかし、その人物は「雲隠十郎」を名乗って映画『アンダーニンジャ』は幕を閉じる。十郎の身体には、原作と同じくバーベルに使うような円形のおもりが見える。九郎の“弟”である十郎の登場、主人公の引き継ぎを示唆する展開だ。

ちなみに原作では十郎と共に十二郎十一(といち)が登場して新章への移行が示唆される。野口の部屋に現れるのは雲隠家で唯一女性の十一である。

雲隠家は十一を除いてみな同じ顔をしている。実写化にあたっては、不自然にならない程度に十郎だけ登場させたということだろうか。十郎は九郎と同じく山﨑賢人が演じている。

エンディングで流れる曲はCreepy Nutsの「doppelgänger」。Creepy Nutsの起用は、原作者の花沢健吾による指名だという。

映画『アンダーニンジャ』ネタバレ感想&考察

実写化と忍者モノの面白み

映画『アンダーニンジャ』は福田雄一監督らしいしつこめのギャグシーンと、田渕景也アクション監督の忍者アクションが組み合わさった作品だった。九郎を絡めたギャグシーンは長すぎると思うところもあったが、九郎の人間的な一面を描くことで、その死に喪失感を与える効果もあったと言える。

アニメ版は時系列の入れ替えによって初見の視聴者には物語が分かりづらいという難点もあった。実写版では、2時間の映画にするにあたって、ストーリー的には程よいボリューム感で楽しむことができた。

『アンダーニンジャ』の魅力の一つは、忍者が現代史に関わっていた、複雑な組織として運営されているというリアリティーだ。そこにキャラクター同士のシュールなやり取りが加わり、絶妙なバランスが生まれる。

原作では、雲隠九郎の人を食ったような適当な会話は、雲隠一族特有の相手を惑わす忍者としての技術とされている。そのほかにも、実写化されるにあたって不自然になりうるギャグは、「忍者だから」という理由づけでうまくカバーされていたように思う(ギャグが笑えるかどうかは個別の差はあったが)。

原作者のアップデート

余談だが、映画『アンダーニンジャ』では、ラストで瑛太が川戸と大野と共に九郎の死を偲んだ後、川戸に胸を触らせてほしいと頼むシーンは描かれなかった。アニメではこのシーンは描かれていたが、原作漫画で川戸が真顔で瑛太を叱るくだりはカットされていた。

漫画『アンダーニンジャ』では、お色気シーンが描かれる際に、実際にやってはいけないことには「普通にダメだろ」「嫌がる人もいるよ」等、キャラクターのセリフで留意がつけられる。性犯罪に手を染めたキャラクターには必ず制裁が下るなど、原作者の花沢健吾がそうした描写に対して一線を引いていることが窺える。

花沢健吾は2007年頃に「今の社会は女尊男卑」という主張を行なっていたが、後に様々な本を読んで男性に有利な社会構造があると考えを改めたと、マンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』で麒麟の川島の質問に回答する形で明かしている。

『アンダーニンジャ』と同時に連載を開始した『たかが黄昏れ』(2018-) はジェンダーSFで、男性が存在しない社会を描き始めた。しかし、このテーマが「今の自分」には難易度が高かったとして第1巻の刊行以降は休載が続いている。

知識が足りないと判断した時点で筆を止めるというのは勇気ある判断だ。作者自身がアップデートを続けていることが分かるからこそ、漫画『アンダーニンジャ』は下ネタも多いが嫌な気持ちにはならずに読み進めていける安心感がある。

アニメ版ではそうした原作の機微が消えてしまうところもあった。実写版においては原作に感じる妙な安心感を消さずに続編を作ってほしいと、一読者としては思うところだ。

続編はある?

では、実写映画版『アンダーニンジャ』は制作されるのだろうか。映画版はアニメ版と同じく第8巻の途中まで描かれたが、現在、『アンダーニンジャ』は週刊ヤングマガジンで連載を継続しており、第14巻が2024年12月に発売された。

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主人公が十郎に交代してからは高校生設定がなくなり、NINとUNの抗争と裏切り、寝返り、権力争いが加熱する。原作ではかなり面白くなっていくので、ぜひ実写化続編も制作してもらいたいところだ。

『アンダーニンジャ』の続編製作に障壁があるとすれば、もちろん興行成績の問題もあるが、アニメの第2期がまだ放送されていないことも気になるところ。アニメ第2期も映画続編も1作目と同じく8巻分を映像化するなら、第16巻の刊行または連載を経てからということになりそうだ。

また、アニメ『アンダーニンジャ』はTBSで放送されたが、実写版『アンダーニンジャ』は製作にフジテレビが入っていることにも留意したい。製作委員会がフジテレビジョン、ワーナー・ブラザース映画、講談社で構成されているのは、実写版「東京リベンジャーズ」と同じ手法だ(『アンダーニンジャ』は主演の山﨑賢人が所属するスター・ダスト・プロモーションも製作委員会に加わっている)。

フジテレビは中居正広のトラブルを巡って対応に追われており、スポンサー75社が撤退するという事態に発展している。経営面で窮地に立たされる危険も指摘されており、先行きは不透明だ。フジテレビムービーは「踊る大捜査線」「ミステリと言う勿れ」「翔んで埼玉」など、人気シリーズを抱えているが、今回の問題の影響が映画製作にも及ぶ可能性はある。

フジテレビと関係する映画の未来について考えるためには、まずはフジテレビが今回の問題と真摯に向き合い、組織が性加害を生む体質となっていなかったかどうかを洗い出すことが先決だ。続編のことを考えるのはそれからでも遅くはないだろう。

それまでは、未読の方は原作の『アンダーニンジャ』で先のストーリーを追ってみてはいかがだろうか。

映画『アンダーニンジャ』は2025年1月24日(金) より全国の劇場で公開。

映画『アンダーニンジャ』公式

花沢健吾の原作漫画『アンダーニンジャ』は14巻まで発売中。

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映画のその後のストーリーは8巻途中から描かれる。

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映画『アンダーニンジャ』のサントラは発売中。

九郎は死んだのか? 原作漫画の9巻以降のネタバレありでの考察はこちらの記事で。

 

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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