ネタバレ解説&感想 映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』前編ラストの意味は? 原作との違いを考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想 映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』前編ラストの意味は? 原作との違いを考察

(C)和久井健/講談社 (C)2023映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」製作委員会

2023年公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』

2017年から2023年にかけて連載されていた和久井健の原作漫画『東京卍リベンジャーズ』を原作とした実写映画「東京リベンジャーズ」シリーズは、英勉監督、髙橋泉脚本、北村匠海主演で大人気シリーズへと成長した。第1作目は国内興収45億円、前後編として製作された第2作目と第3作目は合計50.5億円の大ヒットを記録している。

今回は、2023年に劇場で公開された「東京リベンジャーズ2」より、前編にあたる『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。原作との違い、そして後編へどのように繋がっていくのか。以下の内容は前編のネタバレを含むので、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』を視聴した上で読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-&-決戦-』ネタバレ解説

これまでの『東京リベンジャーズ』

映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』につながる映画第1弾『東京リベンジャーズ』(2021) では、北村匠海演じる主人公の花垣武道が10年前にタイムリープできる能力を得て、10年後に死ぬ元恋人の橘日向を救おうとした。日向は東京卍會の抗争に巻き込まれて命を落とすため、花垣武道は東京卍會のトップであるマイキーこと佐野万次郎が闇堕ちしないように、高校時代で奮闘する。

映画『東京リベンジャーズ』では、マイキーの腹心で東京卍會副総長のドラケンこと龍宮寺堅が8・3抗争で刺殺されるイベントを回避。花垣武道がドラケンを助けたことでマイキーの闇堕ちは避けられ、10年後に起きる橘日向の死も起きないことになった……かに思われていた。

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』では、ドラケンを死から救っただけではマイキーの闇堕ち防げなかったことが明らかになる。10年後の世界で花垣武道は日向と再会するも、自分が日向を振ったことを知り、その直後に日向は車に突っ込まれて再び命を落としてしまう。

この時、花垣武道は事件の現場で半間修二に遭遇している。かつて芭流覇羅(バルハラ)のNo.2だった半間は花垣武道と日向の命を狙っていたのである。そして、日向の車に突っ込んだのは千堂敦だった。

千堂敦は「アッくん」と呼ばれていた武道の学生時代の友人で、前作で武道を電車のホームから突き落としていた。その後の千堂敦は稀咲の言いなりになっている状況に絶望してビルから身を投げたが、武道はタイムリープで千堂敦の逮捕を防ぎ、改変後の未来で千堂敦は美容師になっていた。

だが、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』では、千堂敦は再び刺客として送り込まれることになった。この事実を知った武道は、根本から正さなければならないとして、東卍のトップになることを志すようになる。

さらに、武道が死を阻止したドラケンは死刑囚になっており、それが稀咲鉄太の策略だったこと、稀咲がマイキーを闇に堕としたこと、現代では武道を狙っていることを示唆する。27歳になった稀咲は28歳になったマイキーを操り、警察内部と通じてドラケンを陥れていた。

日向だけでなく、アッくん、ドラケンの人生も稀咲によって破壊されるという状況を前に、「かつての恋人を救う物語」は少しずつ壮大さを増していく。稀咲の狙いを阻止し、マイキーの闇堕ちを阻止することが武道の目標になっていくのだ。

新たな参番隊隊長

再び過去に戻った武道は、参番隊隊長の任命式で愛美愛主(メビウス)から移籍した稀咲鉄太が参番隊隊長に任命される場面に出くわす。武道にとってはこれが初対面だったが、武道に殴られた稀咲は「お前かよ」と言い、過去に面識があるかのような発言をしている。

これまで、東京卍會の参番隊隊長だったのはパーちんこと林田春樹だ。原作では、パーちんは愛美愛主(メビウス)の総長・長内信高を刺して少年院に入ったたため参番隊隊長が空席となっていた。映画版では『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の冒頭で、特服を燃やされたパーチンが芭流覇羅(バルハラ)のメンバーを鉄パイプで刺して逮捕されたことになっている。

参番隊隊長が創設メンバーの一人であるパーちんから元愛美愛主の稀咲に挿げ替えられることになったが、同じく創設メンバーで壱番隊隊長である場地圭介が登場。東京卍會を辞めて芭流覇羅に移籍することを宣言し、場地を巡る「血のハロウィン」編が動き出す。

原作では、この参番隊隊長任命式のシーンで武道が正式に東京卍會のメンバーとなり、三ツ谷隆が率いる弐番隊に入ることになる。映画版ではその展開はなく、正式メンバー入りは少し後のことになる。

場地と一虎の過去

武道は、マイキーに場地を連れ戻すと約束。この場面で武道はマイキーから正式なメンバー入りを言い渡される。その後、突如学校に現れた羽宮一虎によって芭流覇羅の拠点に連れて行かれた武道は、芭流覇羅のNo.3になった羽宮一虎もかつて東京卍會の立ち上げメンバーだったことを知る。

マイキーを慕っていた場地と一虎は、かつてマイキーの誕生日にバブ(ホンダのCB250T HAWK)をプレゼントしようと盗みに入っていた。そのバイク屋の店主がマイキーの兄・真一郎だとは知らずに一虎は真一郎を殺してしまい、一虎は少年院に入ったのだった。

東京卍會創設メンバーの一虎が第1作目に登場しなかった理由は、マイキーの兄を殺して少年院に入っていたからだった。強盗殺人という重い罪でも短い期間で出所できた背景には、裁判でマイキーが一虎に有利な証言をしたという背景があったようだ。

しかし、一虎は自分を正当化するために「マイキーは敵だ」と主張するようになっており、10月31日のハロウィンの日に決戦を行うと宣戦布告する。武道がマイキーにこの話を報告する墓のシーンに三ツ谷とドラケンも同席している。

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』ラスト ネタバレ解説

稀咲鉄太の正体

三ツ谷とドラケンがハロウィンでの決戦に乗り気になれない中、武道は松野千冬と出会う。千冬は壱番隊の副隊長で場地を慕っており、芭流覇羅に行った場地には考えがあると信じていた。日向を守りたい武道と場地を助けたい千冬は協力してトップが正体不明という芭流覇羅を探ることにする。

原作では二人は愛美愛主の総長だった長内信高に話を聞きに行くのだが、映画版では前作でドラケンを刺した清水将貴の元へ向かう。芭流覇羅には元愛美愛主のメンバーが多くおり、その中でも渋谷工業高校(渋工)をシメていた将貴が情報通だと見込んでの判断だ。

ぼったくりバーの店員になっていた将貴は、前作で愛美愛主の指示でドラケンを刺したが、その指示を出したのが稀咲だったことを明かす。将貴を愛美愛主に誘ったのも稀咲であり、稀咲が幹部入りをチラつかせて将貴がドラケンを刺すように仕向けたのだ。

その時、稀咲と一緒にいたのが現・芭流覇羅No.2の半間だった。半間と稀咲は共に愛美愛主にいたが、ドラケン殺害に失敗して愛美愛主が解散に追い込まれた「8・3抗争」後に、半間がNo.2として芭流覇羅を率い、稀咲は東京卍會へ移籍したのだ。

不在とされていた芭流覇羅の本当のトップは稀咲であり、稀咲は東京卍會を乗っ取るために東京卍會に潜り込んでいたのだった。この事実を知った武道は、マイキーが誰かを殴って返り血を浴びているビジョンを見る。歴史が変わった後の何らかの記憶が武道に蘇ったのだ。

ラストの意味は?

稀咲と半間は東京卍會副総長のドラケンが抗争に乗り気でなかったことから、その気にさせるために東京卍會弐番隊隊長の三ツ谷隆を襲撃。バイク事故を起こさせるが、これは映画版の完全オリジナルの展開だ。

現在に帰った武道は稀咲の狙いを知るために、再び死刑囚となったドラケンの面会へ向かう。芭流覇羅のトップは稀咲鉄太なのかと問われたドラケンは、芭流覇羅のトップはマイキーだと答える。

血のハロウィンでマイキーは一虎を殺し、東卍は敗れたという。バーで武道が見たビジョンは、ハロウィンの決戦でマイキーが一虎を殴打する記憶だった。「血のハロウィン」と呼ばれた理由は、この決戦が死者が出る流血事件となったからだったのだ。

かつて自分の兄を殺した一虎をマイキーが自ら殺す——衝撃の事実が明らかになったところで、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の本編は幕を閉じる。エンディング曲はSUPER BEAVER 「グラデーション」だ。

エンドロール後のポストクレジットシーンでは、ハロウィンの決戦の地に指定された廃車場で、現在の武道がマイキーの姿を目撃する。これも映画オリジナルの展開だ。武道は、「絶対にマイキーに人を殺させない」、日向もアッくんもマイキーも助けると誓い、直人と握手を交わして10年前へと戻るのだった。

映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』ネタバレ感想&考察

実写版ならではの魅力

映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』は、原作の「血のハロウィン」を二分割した前半に当たる作品で、稀咲鉄太をめぐるミステリーが中心に展開された。その中でも、東京卍會の結成当初を描く過去編もエモく、実写化されたことで生まれた良さもあった。

花垣武道役の北村匠海、佐野万次郎役の吉沢亮、龍宮寺堅役の山田裕貴、場地圭介役の永山絢斗、三ツ谷隆役の眞栄田郷敦、羽宮一虎役の村上虹郎、松野千冬役の高杉真宙らの演技も光っていた。2023年に場地役の永山絢斗が大麻で逮捕、2024年末にマイキー役の吉沢亮が住居侵入のトラブルを起こすなど、出演俳優のトラブルは続いているが、今後もこのメンバーでのシリーズが観たいと思わされるクオリティではあった。

『東京リベンジャーズ』自体の魅力は、ヤンキーものとタイムリープものを組み合わせたことで、「勝利」「天下」といったヤンキーの定番の目標が「守る」「止める」「させない」に変わるという点だ。前作『東京リベンジャーズ』では、日向を守ることに全力が傾けられていたが、『東京リベンジャーズ2』では、最後のセリフが示しているように、武道はアッくん、マイキー、ドラケンの未来も守ることを誓う。

『東京リベンジャーズ2』では、「元カノを救おうとする男」の物語から「皆を助けようとするヒーロー」の物語へと移り変わっていく。それに伴い、男性同士のケアの側面も強くなっていくのだが、その背景には、実写版ではマイキーの妹のエマが登場していないということもあるだろう。

武道は「男の抗争」を止めるために、マイキー達と向き合っていくことになる。その先に待っている未来とは……。次週は後編の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』も解説&感想記事を公開するので、お楽しみに。

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後編の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』は配信中。

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原作漫画の「血のハロウィン」編は第5巻から第8巻の間で描かれる。

漫画『東京卍リベンジャーズ』最終巻の第31巻は発売中。

【ネタバレ注意】後編の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の解説&感想はこちらから。

 

【ネタバレ注意】映画『グランメゾン・パリ』のネタバレ解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】映画『ハウルの動く城』のネタバレ解説&感想はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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