2023年公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』
和久井健の原作漫画『東京卍リベンジャーズ』(2017-2023) を実写映画化した「東京リベンジャーズ」シリーズは、英勉監督、髙橋泉脚本、北村匠海主演で大ヒットを記録。2023年には『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』が「運命」「決戦」の二編に分けて公開された。
約2ヶ月の間に立て続けに公開された『東京リベンジャーズ2』のうち、今回は後編に当たる「決戦」をネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末までのネタバレを含むため、必ず『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』を視聴した上で読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の結末に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』ネタバレ解説
「運命」で描かれた展開
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』は、前作「運命」の続きからストーリーが幕をあける。前作では北村匠海演じる主人公の花垣武道が再び10年前にタイムリープ。過去の世界でドラケンを助けただけでは、元恋人の橘日向を死を救うことができなかったのだ。
東京卍會の総長・マイキーこと佐野万次郎は闇堕ち、副総長のドラケンは生きていたが死刑囚になり、同級生の千堂敦は橘日向を殺してしまう。日向だけでなく全員の未来を守るために、武道は背後で糸をひく稀咲鉄太の計画を阻止するために動き出した。
「運命」では、東京卍會の創設メンバーで壱番隊隊長である場地圭介が、同じく創設メンバーで少年院に入っていた羽宮一虎と共に敵対組織の芭流覇羅(バルハラ)に移籍。場地と一虎はかつてマイキーの兄・真一郎のバイク屋に窃盗目的で侵入し、一虎が真一郎を殺してしまったことも明かされた。
場地が芭流覇羅に移籍したことには狙いがあると信じる壱番隊副隊長の松野千冬は、武道と共に清水将貴に話を聞きに行った。そこで稀咲が不在とされていた芭流覇羅のトップであったことが明らかになった。
一方、ラストでは武道が現代に戻ってドラケンに話を聞きに行ったが、ドラケンは芭流覇羅のトップはマイキーだと答え、ハロウィンの決闘でマイキーが一虎を殺してしまったと明かす。ドラケンが芭流覇羅のトップはマイキーだと答えた理由は、東京卍會は芭流覇羅とのハロウィン決戦に勝利して芭流覇羅を吸収したためだ。
稀咲が身代わりを用意してマイキーは逮捕を逃れたが、マイキーは闇堕ちし、稀咲が東京卍會を操るようになったということだ。ポストクレジットシーンでは映画オリジナルの展開として、ハロウィンの決戦の地に指定された廃車場で、現在の武道がマイキーの姿を目撃するシーンも挿入されていた。『東京リベンジャーズ2』後編の「決戦」は、この後から幕をあける。
決戦へと仕向けるオリジナル展開
ハロウィン決戦に乗り気でないドラケンを動かすため、前作ラストでは弐番隊隊長の三ツ谷が芭流覇羅にバイク事故を仕掛けられた。『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の冒頭では、芭流覇羅が参番隊を襲撃するが、三ツ谷のバイク事故と合わせて、これも映画オリジナルの展開だ。
実写版では、ハロウィン決戦に否定的だったマイキーとドラケンが挑戦を受けざるを得なくなるようにアレンジが加えられている。この辺りは、登場人物の年齢設定が原作の中学生から高校生に変更され、ある程度分別のつく判断ができる年齢になっていることも影響しているのかもしれない。
武道は場地とタイマンを張るも、決闘を止めることができず、絶対に死なないように伝える。場地を連れ戻すと約束していた武道から報告を聞いたマイキーは、ケンカを買うことを決断。それでもマイキーは芭流覇羅との決戦の目的を「場地を連れ戻すこと」に設定し、東京卍會は「血のハロウィン」に挑むことになる。
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』ラスト ネタバレ解説
実写化されたハロウィン決戦
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』は、中盤から終盤にかけて、そのほとんどがハロウィンの決戦シーンに費やされる。決闘の仕切りを担当する実写版・阪泉も登場。原沢侑高が同役を演じている。ちなみに原沢侑高は、『東京リベンジャーズ』と同じくフジテレビが製作に入っている映画『室井慎次 生き続ける者』(2024) にも秋田県の若者の茂留役で出演した。
映画オリジナルの展開としては、バイク事故で入院していた三ツ谷が途中から参戦するというものがある。原作ではバイク事故の展開がない代わりに、武道が三ツ谷の弐番隊所属になっているため、主人公の直属の上司として三ツ谷も目立つ存在になっている。
100人以上の勢力となった芭流覇羅に対し、東京卍會は苦戦を強いられる。下っ端メンバーの心が折れる中、ドラケンは「お前らは俺が守る」と鼓舞しようとするが効果がない。だが、喧嘩の弱い武道が奮闘したことで、他のメンバーも武道には負けられないと覚醒。これは原作漫画と同じ展開である。
ドラケンは芭流覇羅No.2の半間と対決。ドラケンが異様な力のワンパンで半間を吹き飛ばすシーンは原作の完全再現となっている。
稀咲の狙いと一虎の過去
無敵のマイキーはチョンボとチョメ、一虎を倒すも、一虎に武器で殴られて弱っているところを稀咲の部下に襲撃される。これは、稀咲からの指示で芭流覇羅メンバーを装った部下がマイキーを襲い、稀咲がそれを助けることでチーム内の信頼を勝ち取る作戦である。
芭流覇羅の半間が「そっちかぁ」とこぼしているのは、本来は芭流覇羅のトップである稀咲がマイキーを助けるという芭流覇羅が不利になる動きをしたからだ。稀咲は芭流覇羅の勝利で東京卍會を潰すのではなく、東京卍會を勝利させて芭流覇羅を吸収し、東京卍會を乗っ取るつもりだった。半間はここで稀咲の狙いを確信したのだろう。
だが、その稀咲に勝負を挑んだのは場地だった。東京卍會の稀咲 vs 芭流覇羅の場地という形になっているが、ここは場地に勝ってほしいところ。それでも千冬が場地を止めるのは、稀咲が信頼を勝ち取った状態にあるからだ。場地の勝利が良い方に転ぶとも限らないのである。
映画オリジナルの展開として、稀咲がマイキーに倒されて伸されていた一虎を起こして場地が裏切ったと告げるシーンがある。これを受けて一虎は場地を刺すのだが、一虎が人間不信になる背景が映画と原作では少し違っている。
原作では一虎は親の虐待が人間不信の原因であったと思わせる描写がある。映画版では、マイキーの兄を殺してしまって逮捕される時に、その場に駆けつけたマイキーに一虎が声をかけ続けるが呆然としたマイキーが反応できないというオリジナルの描写が挿入されている。マイキーへの逆恨みという要素が強調されているのだ。
また、原作では刺された後に場地を止めようとする武道と千春に「お前らも稀咲を?」と勘づくシーンがある。重傷を負っていた場地はもう長くないと考え、一人で稀咲と戦うことにして「マイキーを頼む」と武道に告げている。ちなみに原作では稀咲が場地を「この俺を出し抜いた唯一の男だ」と評価するシーンもある。
場地の選択の理由
原作で刺された後の場地が無双するシーンは、流石に実写だとリアリティがなくなると判断されたのか、場地が活躍するのは刺される前だけとなっている。そして、場地が刺されて怒ったマイキーは一虎を殺そうと殴り続ける。
そこに重傷を負った場地が歩み寄ると、一虎に刺された傷では死なないと言い、切腹。自らの手で死ぬことによって、「一虎が場地を殺す」という出来事は起きないことになったのだった。
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』におけるマイキーの闇堕ちイベントは「場地を殺した一虎をマイキーが殺す」だった。だが、①武道が場地とタイマンを張った時に「仲間のために命を張る」という東京卍會の信念を場地に思い出させたこと、②武道と千冬がマイキーを守ろうと奮闘していたことが歴史を変えたと考察できる。
①については、この後に描かれる通り東京卍會の結成を提案したのは場地であり、結成時にマイキーに「どんなチームにしたい?」と聞かれた場地が、「一人一人がみんなの為に命を張れる。そんなチームにしたい」と答えたことがベースになっている。場地はその言葉通り、命を張って一虎を助けたのである。
加えて、場地が自ら命を絶っても大丈夫だと思えた背景には、②の武道と千冬が自分と同じく稀咲が危険な存在だと理解していたことが挙げられる。場地はここで生き延びなくても武道と千冬がマイキーを稀咲から守ってくれると考え、切腹する決断ができたのだろう。
東京卍會の結成秘話
場地は死ぬ前に、稀咲が一虎を芭流覇羅に引き込んだこと、その現場を場地が見ていたことを明かす。千冬が主張していた通り、場地は最初から東卍を守るために芭流覇羅に潜入していたのだった。
場地はマイキーと東京卍會を武道に託し、千冬に感謝を伝えると息を引き取る。それでもマイキーは一虎に向かってゆくが、武道は場地が二人のために命を張った、それが東卍じゃないのかとマイキーに訴えかける。創設メンバーが後輩から教えられるという良いシーンだ。
その時、武道が前作の参番隊隊長任命式で拾ったお守りが落ちる。そしてマイキーは東京卍會の創設について回想する。東京卍會を結成した時にお金を出し合って手に入れ、言い出しっぺの場地に託されたのがあのお守りであったことが明らかになる。
そして、場地が「一人一人がみんなの為に命を張れる。そんなチームにしたい」と語り、東京卍會の歴史が幕を開けたのだ。場地だけが最初の約束を守ろうとしていたことに思い至り、マイキーは泣きながら場地に謝罪して「血のハロウィン」は幕を閉じる。
ラストの意味、原作との違いは?
「血のハロウィン」の後、壱番隊副隊長の千冬は場地の墓に思い出のペヤングお供えし、次の壱番隊隊長に推薦する人物を決めたことを示唆する。逮捕された一虎は、面会室でマイキーからの「お前を許す」という伝言をドラケンから受ける。
墓参りにマイキーが、面会室に武道がいないなど、原作との細かい違いはあるが、最大の変更点は、武道が日向に別れを告げるシーンである。原作でも武道が日向を振るが、もう少し後のことになる。このタイミングで別れを告げるのは映画オリジナルの展開だ。
映画版で武道が日向を振った理由は、これ以上日向を危険に晒さないためだった。日向が死なない未来を確定させるためには、自分との関係を断ち切ることが近道だと判断したのだろう。大事な人を守るために離れるというのは、相手のことを想った優しい決断だ。
そして、武道はマイキーから場地がいなくなり空位となっていた壱番隊隊長に任命される。この時来ている特攻服(特服)は、前作で三ツ谷が仕立てようとしていた生地を使ったものだろう。ちなみに原作では三ツ谷が直々にミシンで特服を仕立ててくれるシーンが挿入される。
原作ではこの集会でマイキーが千冬と芭流覇羅の半間を連れて登場する。半間は、トップがいなかった芭流覇羅は今回の件を機に東京卍會の傘下に入ると宣言。その立役者として稀咲が紹介され、乗っ取りの危機が再び訪れる一方で、千冬が壱番隊隊長に武道を指名することになる。
この後、武道は一度未来に戻るのだが、映画版では、武道はこの集会で、ずっとここにいること、東京卍會のトップになること、そして、皆を守り続けることを宣言。最も大きなポイントは、武道が未来に帰らないことを選んだということだ。
原作では、未来に戻った武道は東京卍會の幹部になっており、反射組織の中枢に食い込んでいる。そこからまた新たなタイムリープチャレンジが始まり「聖夜決戦編」に突入するのだが、映画版は過去に残るという宣言で幕を閉じることになる。
エンドロールで流れる曲はSUPER BEAVER「儚くない」。
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』ネタバレ感想&考察
『東京リベンジャーズ3』はある?
映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』は、原作からの改変もありながら、舞台を中学から高校に変更し、よりリアリティーのある展開が描かれた。そのラストは、武道は日向を危険に晒さないように別れを告げ、マイキーやドラケン、アッくんらを守るために過去に残るというものだった。
前作の感想でも書いたが、女性を救済として扱わず、男性達が起こす問題から遠ざけると共に男性同士でケアを行おうとすることや、ヤンキーものにありがちな「勝利」や「天下」が目的ではなく、「守る」「止める」がテーマになった本作は、現代においても共感しやすい作品に仕上がっていた。
気になるのは、『東京リベンジャーズ2』に続編があるのかどうかというところだが、本作の出演者達は、20代後半の現代編と、10代後半の過去編を演じなければならないため、役者は演じられる期間が長くないという問題を抱えている。
『東京リベンジャーズ2』が公開されたのが2023年で、原作は完結しているため、すでに製作が動き出していれば続編製作に問題はないだろう。出演陣では2024年末にマイキー役の吉沢亮が住居侵入のトラブルを起こしたが、吉沢亮を広告に起用しているアイリスオーヤマは今後も吉沢亮を応援することを表明している。
とはいえ、「東京リベンジャーズ」シリーズの製作委員会に入っているフジテレビを取り巻く問題は尾を引きそうだ。「東京リベンジャーズ」のみならず、フジテレビの資本が入っている映画作品の動きについては、まず現実の問題が解決されてからということになるだろう。
その点も踏まえて、実写版「東京リベンジャーズ」は『血のハロウィン編』で終了ということになるかもしれない。今後も製作されるとすれば、キャストが一新された新バージョンも可能性はある。今後の展開を注視しよう。
『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-&-決戦-』がセットになったBlu-rayはスペシャルリミテッド・エディションが発売中。
後編の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』は配信中。
原作漫画の「血のハロウィン」編は第5巻から第8巻の間で描かれる。
映画の続きは第9巻から。
漫画『東京卍リベンジャーズ』最終巻の第31巻は発売中。
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