ネタバレ解説&感想『映画グランメゾン・パリ』ラストの意味は? 続編&シーズン2はある? 今後を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『映画グランメゾン・パリ』ラストの意味は? 続編&シーズン2はある? 今後を考察

©2024 映画『グランメゾン・パリ』製作委員会

映画『グランメゾン・パリ』公開

2019年にTBS系「日曜劇場」枠で放送されたドラマ『グランメゾン★東京』が映画になって帰ってきた。『映画 グランメゾン・パリ』が2024年12月30日(月) より全国の劇場で公開された。「グランメゾン」プロジェクトは木村拓哉と鈴木京香を主演に据えたシリーズで、2024年12月29日(日) にはスペシャルドラマ『グランメゾン★東京』が放送され、ついにパリを舞台にした映画版が公開を迎えた。

人の心を動かす力を持つ料理が作れる尾花夏樹と、食べただけで使われている食材と調理法が分かる能力を持つ早見倫子は、仲間達と共にフランスのパリで開業したレストランでミシュランの三つ星を目指す。映画『グランメゾン・パリ』ではどんな展開が待っていたのか、今回は結末の解説と感想をネタバレありで記していこう。なお、以下の内容は結末の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『グランメゾン・パリ』の結末に関するネタバレを含みます。

映画『グランメゾン・パリ』ネタバレ解説

尾花夏樹と二人の料理人

映画『グランメゾン・パリ』は、ドラマシリーズとスペシャルドラマの正統な続編でありつつも、ドラマを観ていなくても楽しめる作品になっていた。主なストーリーの軸は、①リック・ユアンというパティシエの物語②早見倫子が「絶対味覚」を失ってからの物語③尾花夏樹という料理人がフランス料理の魅力を思い出すまでの物語、の三つだ。

リック・ユアンを演じたオク・テギョンの演技は見事だった。ユアンは個性豊かなグランメゾン・パリのチームの中にいても、どこで何をしているのかが逐一気になってしまうような存在感を見せていた。

演じたオク・テギョンはアイドルグループ2PMのメンバーとして知られるが、韓国のバラエティ番組『三食ごはん』(2014-2021) では料理をする姿も見せている。同じくバラエティ番組で料理の腕前を披露してきた主演の木村拓哉と近いものも感じる。

リック・ユアンは料理の研究のために借金を背負い、暴漢が暴れたことで店に迷惑をかけてしまうが、それがきっかけで起きた火事の結果、グランメゾン・パリが大量のチーズを買い取ることになる。そして、チーズ屋を助けたことで、仕入れに困っていたグランメゾン・パリは地域の人々から受け入れられ、最高の食材を揃えることができるようになった。

ユアンの存在が全体のストーリーをアシストする形になったが、同時にユアンと尾花夏樹の“因縁も”描かれている。韓国と日本にルーツを持つ両者だが、「東洋人」という括りでは同じ立場だ。二人は共にフランス料理の世界で東洋人が受け入れられることに高いハードルを感じていた。

ユアンはかつて東洋人で初めて二つ星をとったレストランのデザートを食べて、その美味しさに「腹が立った」と語った。一方の尾花夏樹も、かつてユアンのデザートを食べて「腹が立った」と話し、パリで三つ星を目指すなら絶対にそのパティシエを雇うと決めていた。映画『グランメゾン・パリ』では、尾花夏樹がひと回り若いパティシエのユアンとぶつかりながら、同じ東洋人として切磋琢磨しながら絆を育んでいく姿が見どころの一つだった。

一方、尾花夏樹の相棒として、二人が出会ったパリに舞い戻った早見倫子だったが、パリに移った後に新型コロナに感染して味覚障がいを発症していた。尾花夏樹はそんな倫子をクビにするが、倫子はその後もパリの肉の卸業者で働き、グランメゾン・パリに良い肉を卸してもらえるように奮闘していた。

尾花夏樹は倫子に絶対味覚が戻ったと判断してキッチンに戻すが、それでも倫子は料理人に必要とされる繊細な味覚はもう戻らないと諦めている。老いや病気によるライフチェンジは必ずやってくる。

倫子はスペシャルドラマでグランメゾン東京のシェフの座を平古祥平に譲り、一度はシェフを引退している。それでも尾花夏樹が最後に味見をせずに倫子の舌を信じたのは、最初にパリで知り合った時に自分の料理のことを全て理解した倫子の舌を最後まで信じたかったからかもしれない。

フランス料理とは何か

グランメゾン・パリで二つ星から上に進めない状況が続いていた尾花夏樹は、パリでの挑戦にあたってテナントを貸してくれた料理人ルイ・ブランカンと、その息子のパスカル・ブランカンから立ち退きを迫られることになる。ブランカン親子は尾花夏樹がフランス料理にとって大事なものを見失っていると考えていたのだ。

日本人のフレンチシェフとしてなかなか卸業者に認めてもらえなかった尾花夏樹は、料理からも日本的な要素を取り除き、“フランス料理”で勝負しようとしていた。だが、フランス料理の良さというのは、伝統を守りながらも独創的に様々な文化と食材を取り入れて進化していくことであり、尾花夏樹はいつしかそれを忘れてしまっていた。

尾花夏樹がその感覚を取り戻したのは、スタッフのみんなと食事してみてからだ。多国籍のスタッフに意見をもらって料理を作っていくことの可能性を信じ、グランメゾン・パリは世界中の食材を使って新しいメニューを作り出していく。

尾花夏樹はこれまで、パリで日本人初のフレンチ三つ星シェフになるという自分の夢を追いかけてきた。だが、パスカル・ブランカンが問うたのは、フランス料理の頂点に立ち、フランス料理そのものを背負う覚悟だった。フランス料理を世界一の料理であらせるためには、使える全てのものを使って全力で戦うという姿勢が必要だったのだろう。

映画『グランメゾン・パリ』ラスト ネタバレ解説

圧巻のフルコース

映画『グランメゾン・パリ』のラストは圧巻。リンダ、ルイ・ブランカン、パスカル・ブランカンがグランメゾン・パリのフルコースを堪能するシーンは、冨永愛演じるリンダの解説と共に独創的な全ての料理が紹介される贅沢なシーケンスになっている。

中でも印象的だったのは、仕入れに苦労した大粒のキャビアを使ったラングスティーヌ、及川光博演じる相沢瓶人が野菜やハーブを約40種類使って作ったサラダ、尾花夏樹と早見倫子が共同開発したメインのピティヴィエ、そしてユアンが倫子にヒントをもらって完成させたデザートのヴァシュランだ。

ピティヴィエはフランスのパイのことで、尾花夏樹はその中に鳩、フォアグラ、豚などの複数の肉を階層状に詰め込んだ。焼き上げてすぐにホールへ運び、客の目の前でカットして肉の断面を見せることで、見た目や音、香りも楽しめる一品になっている。

それはキッチンとホールが一体となって完成するエンターテインメントであり、尾花夏樹がスタッフに心を開かなければ実現しなかった独創的なアイデアだ。尾花夏樹はフランスの伝統的な名物料理をチョイスした上で、新しい挑戦を取り入れた。そこにフランス料理でトップを獲ることへの覚悟が感じられる。

相澤は、新しいサラダを作り出すときに、革新的なアイデアで自分のサラダを100年続く伝統的な料理にしたいと語った。革新的であればこそ100年続く伝統になる100年続く伝統とは革新的であったもの、という逆説的な発想に辿り着いたことが、グランメゾン・パリの勝因だったのだろう。

ルイ・ブランカンの計画

コース料理を堪能したパスカル・ブランカンは、グランメゾン・パリへの退去通告が尾花夏樹を追い込んで三つ星を獲らせるための父の作戦だったことを示唆する。この作戦は、スペシャルドラマ『グランメゾン東京』で尾花夏樹が早見倫子に仕掛けた計画と似ている。

そもそもルイは尾花夏樹が「パリにこだわる必要はない」と倫子に助言していた。それはフランスから出て行けという厳しい言葉のようで、世界中の食文化を取り入れればいいというヒントを与えていたのかもしれない。ルイ自身も日本食から感銘を受けており、刺身や藁焼きを愛していたという背景もある。

料理の感想を問われたルイ・ブランカンは、指を四つ立てて、グランメゾン・パリの料理が「四つ星」に値すると表明。三つ星を超える料理だと認めるのだった。そうしてグランメゾン・パリはミシュランガイドからも三つ星を獲得。壇上の尾花夏樹が料理に国境はないと教えてくれたフランス料理への感謝を述べて『グランメゾン・パリ』は幕を閉じる。

映画『グランメゾン・パリ』のエンドロールでは、グランメゾン・パリのスタッフが家族も呼んで楽しく食事をしているシーンが映し出されている。多国籍のスタッフが皆受け入れられ、最高の体験を生み出すというのがグランメゾン・パリの特徴だ。様々な文化と共に一つのチームを作り出すことの美しさを示す演出だ。

映画『グランメゾン・パリ』ネタバレ感想&考察

じっくり楽しめる大人の映画

映画『グランメゾン・パリ』は、“よそ者”としてフランス料理の世界に入っていくことの厳しさと、フランス料理の自由さと寛容さ、そして奥深さを同時に描いた作品だった。チームに“同じ東洋人”という枠でオク・テギョン演じる韓国人パティシエのリック・ユアンを入れることで、“日本人の戦い”を描くナショナリズムに寄らせない工夫もなされていたように思う。

映画全体は117分という尺にもかかわらず、尾花夏樹がただキッチンに向かうシーンなども贅沢に取り入れていた。最近の映画に多い分かりやすい泣きどころも最小限に抑えられており、テンポの速い映画作品に慣れていると、やや退屈に感じるところもあった。だが、フランス料理をテーマにしている作品だからこそ、コース料理のようにじっくり楽しめる大人のための映画作品になっていたとも言える。

その中でもユアンと尾花夏樹がぶつかり、和解するストーリーには熱いものがあり、オク・テギョンの演技も光っていた。一方でユアンは早見倫子とは相性が良さそうなところが、尾花夏樹とユアンの師弟でありライバルでもある関係性をより際立たせていた。欲を言えば、倫子と京野の関係についても発展があるか、整理されるかを期待していたが、本作のような構成であれば、料理以外の要素が入ってしまうと蛇足になっていた可能性もあるだろう。

なお、日本語と韓国語、フランス語、英語が入り混じる作品となった『グランメゾン・パリ』だが、目が見えない人のための音声ガイドや、耳が聞こえない人のための全セリフの字幕が付いた上映も行われている。この辺りのサポートが行き渡っている点も高く評価したい。

続編はある? シーズン2は?

気になるのは、ドラマ『グランメゾン東京』と映画『グランメゾン・パリ』に続編があるのかどうかという点だ。映画『グランメゾン・パリ』のラストでは、尾花夏樹がパリでの三つ星を達成しており、これからこの伝統を背負っていかなければならず、ここから新しい展開を生むのは難しいようにも思われる。

『グランメゾン・パリ』の監督を務めた塚原あゆ子は、『アンナチュラル』(2018)、『MIU404』(2020)、『海に眠るダイヤモンド』(2024) といったTBSの人気ドラマを手がける売れっ子で、2024年は映画『ラストマイル』と映画『グランメゾン・パリ』で監督を務めた。2025年2月7日からは、TOHOスタジオとAOI Pro.の制作で塚原あゆ子監督のSF映画『ファーストキス 1ST KISS』が公開される予定となっている。

映画『グランメゾン・パリ』の終わり方と、多忙を極めているであろう塚原あゆ子監督の状況を考えると、木村拓哉と鈴木京香を中心に置くシリーズはこれで終わりということになるのかもしれない。だが、『グランメゾン東京』というタイトルならば、続編が作られる可能性はある。

『グランメゾン・パリ』ではグランメゾン・パリの姉妹店であるグランメゾン東京も登場した。スペシャルドラマで玉森裕太演じる平古祥平がシェフに就任した『グランメゾン東京』は、松井萌絵、久住栞奈、芹田公一、そして新たに店に加わった湯浅利久が中心となって運営されており、良い雰囲気で運営されているようだった。

グランメゾン・パリが大量に仕入れざるを得なくなったチーズを買い取ったり、日本から日本酒や味噌を送ったり、パリとも良好な関係を築いている様子が描かれた。若いキャストを中心としたドラマ『グランメゾン東京』ならシーズン2の制作もあり得るかもしれない。

スペシャルドラマではNEXマネジメントの明石社長から尾花夏樹への復讐を示唆する発言もあったが、映画版には登場しなかった。レストラン同士の戦いではなく、対企業に舵を切った新シリーズも「日曜劇場」らしくて良いかもしれない。

また、スピンオフドラマ『グラグラメゾン♥東京 〜平古祥平の揺れる思い〜』のラストでは、平古祥平と松井萌絵が独立した姿も描かれたが、その後に現実でコロナ禍が起きたこともあってか、スペシャルドラマではその展開はなかったことになっていた。同作では祥平は独立後に蛯名美優とよりを戻したが、スペシャルドラマでは祥平は独立していないが美優と結婚していた。

『グラグラメゾン♥東京』のラストはパラレルワールド的な扱いになってしまったが、また違う形でそのプロットが生かされる時が来るかもしれない。映画でもドラマでも、独創的で革新的な新しい『グランメゾン★東京』が観れる日が来ることに期待しよう。

映画『グランメゾン・パリ』は2024年12月30日(月) より全国の劇場で公開。

映画『グランメゾン・パリ』公式

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映画『グランメゾン・パリ』コラボの「〆まで美味しい トリュフ香る蛤のマリニエール風スープ チーズ仕立て」は発売中。

『グランメゾン・パリ』と『グランメゾン東京 スペシャル』の繋がり、祥平&湯浅についての考察はこちらから。

『グランメゾン東京 スペシャル』ラストのネタバレ解説&感想はこちらから。

 

【ネタバレ注意】『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』ラストのネタバレ解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】『TOKYO MER 隅田川ミッション』の解説&感想はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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