ネタバレ解説&感想『グランメゾン東京 スペシャル』ラストの意味は? 映画に繋がる? 尾花夏樹の行動を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『グランメゾン東京 スペシャル』ラストの意味は? 映画に繋がる? 尾花夏樹の行動を考察

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『グランメゾン東京 スペシャル』公開

2019年にTBS系「日曜劇場」枠で放送されたドラマ『グランメゾン★東京』は、かつてパリの一流レストランでシェフをやっていた尾花夏樹(演・木村拓哉)と、料理を食べるだけで食材と調理法が分かる能力を持つ早見倫子(演・鈴木京香)がミシュランの三ツ星を目指してフレンチレストランを開業する物語。2024年12月29日(日) にその後を描くドラマスペシャルが放送され、翌30日(月) には『映画 グランメゾン★パリ』が全国の劇場で公開される。

今回は、テレビで放送されたドラマ『グランメゾン★東京 スペシャル』について、ネタバレありで解説しつつ、感想を記していこう。以下の内容は、ドラマ『グランメゾン★東京』と『グランメゾン★東京 スペシャル』のネタバレを含むので、本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、スペシャルドラマ『グランメゾン★東京』の内容に関するネタバレを含みます。

『グランメゾン東京 スペシャル』ネタバレ解説

これまでの『グランメゾン東京』

ドラマ『グランメゾン東京』の最終回では、尾花夏樹と早見倫子が開業したレストラン・グランメゾン東京がミシュランで三ツ星を獲得。尾花夏樹がパリで早見倫子と交わした「三つ星をとらせる」という約束が果たされることになった。

一方で、グランメゾン東京のメンバーはそれぞれの道を歩み出していた。尾花夏樹は師匠・潮卓のレストランを手伝い、玉森裕太演じる平古祥平は独立。吉谷彩子演じる松井萌絵もケーキ屋として独立、及川光博演じる相沢瓶人は妻と娘が待つフランスへと渡った。

グランメゾン東京に残っているメインメンバーは、オーナーシェフの早見倫子、沢村一樹演じるギャルソンの京野陸太郎、中村アン演じるソムリエの久住栞奈、寛一郎演じる立ち上げメンバーの芹田公一という布陣になったはずだった。

スピンオフドラマ『グラグラメゾン♥東京 〜平古祥平の揺れる思い〜』では、数年後、独立した平古祥平は自分のレストランを元恋人の蛯名美優と共同で経営することになった。平古祥平は松井萌絵のケーキ屋でアドバイザーも務めており、グランメゾン東京のメンバーは自分の道を歩みながら良好な関係を築いていることが明かされていた。

一方、ドラマ『グランメゾン東京』のラストでは、尾花夏樹は早見倫子に「世界中の星をかっさらう」ことを提案し、海外にグランメゾン東京の姉妹店を出す計画が示唆された。『グランメゾン東京 スペシャル』では、コロナ禍に見舞われたその後の一同の姿が描かれる。

『グラグラメゾン♥東京』との矛盾も

『グランメゾン東京 スペシャル』では、平古祥平は蛯名美優と結婚し、美優は妊娠していた。この内容は『グラグラメゾン♥東京 〜平古祥平の揺れる思い〜』のラストとやや矛盾する。祥平は独立した後に美優とよりを戻しており、その出来事は「数年後」とされていたからだ。それに、ケーキ屋を開業したはずの松井萌絵もグランメゾン東京で働いている。

『グランメゾン東京』のラスト→コロナ禍→数年後→『グラグラメゾン♥東京』のラスト→祥平と萌絵はそれぞれ自分の店を廃業→グランメゾン東京に出戻り、という展開だったこともあり得なくはないが、やはりコロナ禍後に開業したにしては廃業が早すぎて無理がある。

特に祥平の店は美優が共に経営していくことになっており、簡単に店を諦めるというのも考えにくい。もちろん制作当時はその後にコロナ禍が来るとは予想できるはずもなく、『グラグラメゾン♥東京』のラストについては“なかったこと”になったのかもしれない。

グランメゾン東京の新たな危機

『グランメゾン東京 スペシャル』では、パリに行ったはずの尾花夏樹が帰国して新しく開業したフレンチレストランのメイユール京都に移籍。過去にパリのエスコフィユで一緒に働いていた窪田正孝演じる湯浅利久を相棒に、世間注目のレストランを作り出していた。

グランメゾン東京の方は、北村一輝演じる明石壮介が率いるフードコンサルティング企業NEXマネジメントと提携し、コロナ禍において通販やレシピサイトに活路を見出していた。だが、早見倫子が生き残りを優先して料理を蔑ろにしたことで、グランメゾン東京はミシュランのすべての星を失ってしまっていた。

メイユール京都に尾花夏樹がいることを確信した早見倫子は尾花の影を追うが、「金髪おじさん」と化した尾花夏樹は、アジアナンバーワンのフレンチをやりたいと言う湯浅の下でスーシェフを務めており、立ち上げを手伝っていた。尾花夏樹はパリでの開業のために海外で食材や食文化の研究に取り組んでいたが、失墜していくグランメゾン東京の姿を見て、グランメゾン東京を終わらせるために日本に戻ってきたというのだ。

メイユール京都はグランメゾン東京と同じく素材を活かすというコンセプトで、尾花夏樹はメイユール京都にミシュランの星を取らせてグランメゾン東京を終わらせると宣言。早見倫子は、尾花夏樹と一緒に作った店を潰さないように戦ってきたと主張するが、尾花夏樹はコロナの中でもブランドを守り抜いた店もあると指摘する。

早見倫子からすれば、世界中の星をとるという約束を蔑ろにされ、若いオーナーシェフの下で働く尾花夏樹の姿を見るのは辛かっただろう。コロナ禍を乗り越えた先で、グランメゾン東京は新たな危機に立たされたのだ。

トップが退くリーダーシップ

星をとるための料理を開発しようにも、グランメゾン東京は出資を受けているNEXの口出しで料理が自由に作れない。NEXの明石社長を演じる北村一輝のいやらしい演技は見事。資本主義に利用されるグランメゾン東京だったが、NEXに出稿した久住栞奈の進言でNEXはグランメゾン東京への出資を打ち切りメイユール京都と提携を結ぶことになる。

グランメゾン東京では、湯浅と平古祥平の料理バトルが行われるが、祥平の料理は素材を殺してしまっていた。そもそもメンバーが熱を失っており、活気もない。そんな中で祥平はレストランgakuの丹後シェフから新しい店への誘いを受けるが、祥平は芹田、萌絵と共にこれを断り、むしろグランメゾン東京のために丹後から金を借りようとしていた。

早見倫子と京野は、若い人たちを中年の夢に付き合わせたけじめを取ろうとしていたが、祥平達は倫子の夢に付き合っていたわけではなかった。もはやグランメゾン東京は倫子だけの店ではなくなっていたのだ。

倫子は京野と話し合い、シェフの座をNEXとの契約に縛られていた倫子から祥平に譲ることに。倫子はシェフを引退して京野と共にギャルソンとなる。それにしても『グランメゾン東京 スペシャル』の倫子と京野はずいぶん距離が近いというか、ボディタッチも多く、もはや夫婦のような距離感になっている。

若いメンバーを中心にした新グランメゾン東京は熱を取り戻し、新メニューの開発に取り組むことに。早見倫子はトップが退くことでチームに熱を取り戻させるという見事なマネジメントを見せた。自分が舵をとることだけがリーダーシップではないのだ。

『グランメゾン東京 スペシャル』ラストをネタバレ解説

尾花夏樹の行動の意味

『グランメゾン東京 スペシャル』のラストでは、新生グランメゾン東京は、第2話で開業資金を出資してくれた城西信用金庫から融資を獲得。尾花夏樹、湯浅、リンダ、久住栞奈がグランメゾンを訪れて食事をするが、平古祥平、芹田公一、松井萌絵を中心としたメンバーで迎え、見事に一同を満足させることに成功する。

尾花夏樹は、祥平に「ごちそうさまでした」と言い深々と頭を下げて去っていく。尾花夏樹は絶対に「おいしい」とは言わないため、評価はその態度で推し量るしかない。尾花夏樹はリンダをタクシーまで送った時に空を見上げているが、これは美味しいと思った時に上を向く癖が出たということだ。さっきの料理の味を思い出してしまったのだろう。

そして、グランメゾン東京はミシュランの星を一つ取り戻した。そこに相澤、湯浅、久住栞奈が現れて、全ては尾花夏樹が描いたシナリオであったことを明かす。尾花夏樹はグランメゾン東京のブランドを毀損しているNEXの契約を剥がすつもりで京都に店を作ったのだ。

お金は京野が絶対なんとかすると信頼しており、祥平がシェフになることも想定済み。芹田も萌絵も成長しており、店が倫子の手を離れても大丈夫だと判断していた。これは考察に過ぎないが、尾花夏樹は若い湯浅を支える自分の姿を見せることでも倫子にメッセージを送っていたつもりだったのかもしれない。

尾花夏樹は冒頭で「グランメゾン東京は早見倫子の店」と言って店に戻ることをしなかったが、これは本音だったのだろう。若いメンバーに任せても大丈夫ということを倫子が理解する必要があると考えていたはずだ。まぁ、最初からそう言ってくれれば良いと思うんだけど……。少なくともNEXを騙す必要があったのだろう。

相澤は、尾花夏樹がパリで店を始める前に日本でやることがあると言っていたと語っていた。尾花夏樹はグランメゾン東京を見捨てたわけではなく、パリで店を始める前にグランメゾン東京を助けたかったのだ。

メイユール京都は「期間限定の実験的な店」というコンセプト通りに閉店し、湯浅はグランメゾン東京に移籍することに。メイユール京都とNEXの契約も終了し、NEXはグランメゾンとメイユール双方の契約を失うことになり、久住栞奈も退社、海外進出の道が絶たれることになる。

尾花夏樹はコストとタイパに夢中の明石社長に対し、一滴に莫大な手間とコストをかける、それが面白いからやってると宣言し、自分達の世界に足を踏み入れないよう忠告するのだった。それでも脅しをかけてくる明石社長に対し、尾花夏樹は明石社長が求めていた高タンパク低カロリーの料理を置いていき、これを口にした明石社長は驚きの表情を見せている。料理で戦い、人の心を動かすのが尾花夏樹のやり方だ。

映画『グランメゾン・パリ』へと続くラスト

『グランメゾン東京 スペシャル』のラストシーンでは、早見倫子がパリに帰る尾花夏樹についていく。尾花夏樹は相澤と共に三つ星がとれるレストランを作るつもりだったが、京野もそこに加わることに。東京の店は祥平と湯浅たちに任せ、経営は久住栞奈が担うという。

「おじさんとおばさんの夢」がまだ続いていくことが宣言され、早見倫子は尾花夏樹に「今度は私があんたに三つ星をとらせてやる」と約束する。グランメゾン・パリでは尾花夏樹がシェフとして金縁のコックコートを纏っている。今度は早見倫子がスーシェフとして尾花の夢を支えるようだ。

そして、この物語は『映画 グランメゾン・パリ』へと続いていく。早見倫子と尾花夏樹、そして仲間達はパリでも三つ星を獲れるのか、その行方は劇場で見届けよう。

『グランメゾン東京 スペシャル』ネタバレ感想&考察

スペシャルドラマ『グランメゾン東京』では、コロナ禍で変容してしまったグランメゾン東京の建て直しと、それに伴う世代交代が描かれた。ドラマ『グランメゾン東京』で成功した三つ星店を捨てて映画版のためにパリを目指すというのは、確かにそれなりの経緯がなければ突飛な話になってしまう。

『グランメゾン東京 スペシャル』では、東京と京都で対立項を作りながら、市場のメカニズムに支配されたレストランを救い出しつつ、チームに熱を取り戻すという二つのスケールの物語が描かれた。ドラマシリーズと映画を繋ぐには見事な展開で、尾花夏樹の行動は冷静に見れば奇怪ではあるのだが、不器用で独善的だが筋は通す尾花夏樹というキャラクターだから許される展開でもある。

気になるのは倫子と京野の距離感だ。尾花夏樹不在で共に困難を乗り越え、次世代にバトンを渡した二人は、このまま結ばれることになるのだろうか。二人は良い感じだったけれども、倫子は結局最後には尾花夏樹を追ってパリへ向かったことも事実。京野もパリにやってくる映画版では、三人の関係に進展があるのかどうかにも注目したい。

映画『グランメゾン・パリ』は2024年12月30日(月) より全国の劇場で公開。

映画『グランメゾン・パリ』公式

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【ネタバレ注意】『映画グランメゾン・パリ』ラストの解説&感想はこちらから。

 

【ネタバレ注意】『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』ラストのネタバレ解説&感想はこちらから。

【ネタバレ注意】『TOKYO MER 隅田川ミッション』の解説&感想はこちらの記事で。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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