実写映画『アンダーニンジャ』公開
花沢健吾原作の漫画『アンダーニンジャ』(2018-) を実写映画化した『アンダーニンジャ』が2025年1月24日(金) より全国の劇場で公開された。福田雄一が監督・脚本、山﨑賢人が主演を務める話題作だ。
映画『アンダーニンジャ』では、アッと驚くラストが待っていた。今回は、原作のネタバレ込みで主人公の九郎に何があったのかを解説し、考察していこう。なお、映画版とアニメ版は原作第8巻途中までを扱っているが、本記事ではそれ以降の原作の展開を第14巻のラストまでネタバレありで扱うので注意していただきたい。
以下の内容は、映画『アンダーニンジャ』の結末および漫画『アンダーニンジャ』第14巻の内容に関するネタバレを含みます。
映画『アンダーニンジャ』九郎は死んだ？
山田との戦いの結末
映画『アンダーニンジャ』のラストでは、主人公・雲隠九郎はアンダーニンジャの一員だった山田美月と対決。屈強かつ圧倒的な戦闘スキルを持つ山田を前に、九郎は刺し違えて相討ちに持ち込んだ。
洞窟が崩れ落ちそうになる中で、NINから支給された新型装備のパーカー（摩利支天）を野口彩花に譲り、九郎は息絶えたかに思われた。野口が自宅に帰ると部屋には九郎と同じ顔をした人物がおり、九郎は生きていたかと思いきや、その人物は「雲隠十郎」を名乗って映画『アンダーニンジャ』は幕を閉じた。
気になるのは、九郎が死んだのかどうかという点だ。原作漫画では、九郎は山田に完全に敗北。顔面の上半分を斬り落とされ、瑛太は斬り落とされた九郎の顔面を目の前に差し出されている。
原作では明確に九郎が死んだ一方で、山田は生き延びている。アンダーニンジャ＝UNによるNINの人工衛星・遁からのニンジャの個人データ奪取も成功し、NINの敗北は明白だった。そして、九郎の弟にあたる十郎と十二郎、妹の十一が登場し、新章の幕が開けるのだ。
二つの改変：①山田の鼻
九郎と山田の戦いが相討ちで終わるというのは映画オリジナルの展開だが、この改変に伴い、原作漫画のその後の展開に影響を及ぼす二つのポイントが生じている。一つ目は、NINが山田のDNAを手に入れていないこと、二つ目は、九郎の遺体を持ち帰る人物がいないことだ。
原作では、九郎は山田に敗れたが、戦いの中で山田の鼻を切り落としていた。九郎は死してもなお、その手の中に切断した山田の鼻を握りしめていた。映画でも山田は鼻をほじる描写があるが、“山田の鼻”がクローズアップされるのは伏線だったのだ。
山田には幼少の頃から幽閉され、殺し合いをさせられ、生き残った戦士というバックグラウンドがある。だが、それ以上に鼻を斬り落とされても平然としているなど、化け物じみた強さには何らかの秘密があると思われる。
九郎がその死と引き換えに手に入れた山田の鼻は、NINの研究機関である忍研に送られ、NINは山田の量産型を製造しているとされている。実際のところは不明だが、遁を失ったNINの反撃に向けた切り札の一つと考えられている。
二つの改変：②奇跡の不在
もう一つのポイントは、山田の鼻を右手に握りしめた九郎の遺体を持ち帰る人物についてだ。映画『アンダーニンジャ』では、NINの日比奇跡（ミラクル）と日比乱乱（ランラン）の兄妹が登場しなかった。
原作漫画では、奇跡は九郎と行動を共にして山田と戦い敗れるが、山田はなぜか奇跡を殺してはいけない相手と判断した。ちなみに奇跡と乱乱の祖父は忍研の名誉所長であり忍者大学校の名誉学長。脳移植も行える凄腕の人物だ。
奇跡は生き残った結果、九郎の手に握られていた鼻を忍研に持ち帰り、九郎の遺体も忍研に持ち帰られた。乱乱は忍研に所属しており、第14巻収録の第125話では乱乱を通して九郎の遺体のその後が明らかになる。
原作漫画で明かされた九郎のその後
九郎は生きている？
乱乱が訪れた施設には、ポットの中で液体につけられた人型の個体が何体も置かれていた。乱乱はそれを順に「壱拾四號（じゅうよんごう）」「壱拾三號（じゅうさんごう）」と呼んでいく。この数字は、十二郎まで登場した雲隠一族のナンバリングと合致する。
そして、乱乱は通常ならば「壱拾五號（じゅうごごう）」も同時に成育が始まるはずだったが、壱拾五號の成育を止めて別の個体の維持を優先していることを示唆する。その場面で映し出された個体は、顔の上半分がない男性の人体だった。
このポット内に保管されている個体は、忍研に持ち帰られた九郎の遺体だと予想できる。十五郎の成育を止めてまでその身体を維持していると見られ、山田との戦いで死んだ九郎が復活する伏線が張られたのである。
これらの判断は「あの方」と呼ばれる人物が行なっており、乱乱はその指示に従っているだけのようだ。雲隠一族は顔がそっくりなことから、クローンではないかという指摘もある。『アンダーニンジャ』は忍者モノの漫画だが、同時にかなりSF色の強い作品だ。「九郎」という名前も「クローン」と似ており、培養された九郎が復活するという超展開が起きても不思議ではない。
映画続編はどうなる？
一方、映画『アンダーニンジャ』では、奇跡と乱乱が登場しなかった。死んだ九郎の遺体を持ち帰る役割を果たす存在がいないのだ。また、NINが山田の鼻から彼女のDNAを手に入れられないということも今後の展開の障壁になり得る。
実写映画『アンダーニンジャ』に続編が作られるとすれば、NINが瓦礫を捜索して九郎の遺体を発見、それを忍研に持ち帰るという展開はありそう。一方で、山田の遺体は見つからなかった→山田は生きていた、という展開もありそうだが、それだとNINは山田のDNAを入手できない。
①UN最強の忍者である山田は生きており、②NINはその山田の量産型を作るチャンスを得た、という二つの展開のうち、どちらかは捨てられることになるのかもしれない。とはいえ、映画『アンダーニンジャ』の出来には原作者の花沢健吾も満足しているようなので、今後の展開が難しくなるほどクリティカルな改変ではないのだろう。
漫画『アンダーニンジャ』は第15巻以降どんな展開を見せるのか、そして、原作の展開を受けて映画『アンダーニンジャ』の続編はどうなるのか。楽しみに今後の動きを注視しよう。
映画『アンダーニンジャ』は2025年1月24日(金) より全国の劇場で公開中。原作漫画の第15巻は2025年4月頃刊行予定。
花沢健吾の原作漫画『アンダーニンジャ』は14巻まで発売中。
映画のその後のストーリーは8巻途中から描かれる。
映画『アンダーニンジャ』のサントラは発売中。
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