劉慈欣「全帯域電波妨害」、劉震雲『一句頂一万句』が映画化
劉慈欣の小説「全帯域電波妨害」と、劉震雲の代表作である『一句頂一万句』の映画化が進んでいることが明らかになった。米Varietyが独占情報として報じた。監督を務めるのは2024年に映画『ブラックドッグ』を発表した管虎(クワン・フー)で、現在両作の映画版は開発段階にあるという。
小説『三体』で知られる劉慈欣の「全帯域電波妨害」は中国で2000年に書き終えられた作品で、日本では『時間移民 劉慈欣短篇集II』(2024) に収録されている。本作では、復活した共産党ロシアとNATO軍が衝突し、苦戦するロシア軍が全帯域への電波妨害という強硬策に出る。大森望の「訳者あとがき」によると、当初ネットで公開されたバージョンは中国が日本・ロシア・NATOの連合軍と戦う設定だったという。今回の映画化でどのようなアレンジが加えられるかにも注目だ。
劉震雲の『一句頂一万句』は2009年に発表された長編小説で、日本では彩流社より水野衛子による邦訳版が刊行されている。本作では、20世紀初頭に孤独な男・呉摩西が唯一話ができる相手だった養女を捜す旅に出る。その100年後、養女の息子の牛愛国もまた孤独から逃れるために旅に出る。“中国版『百年の孤独』”とも呼ばれる作品で、タイトルは「一万句に値する一句」という意味のタイトルの通り、「孤独」と「言葉」をテーマにした作品だ。
全く毛色が異なるように思える両作だが、管虎(クワン・フー)監督は2020年に大作戦争映画『エイト・ハンドレッド-戦場の英雄たち-』を発表した一方で、2024年公開の『ブラックドッグ』は孤独な青年と犬の絆を描いた静かな作品だ。『ブラックドッグ』は東京国際映画祭でも上映され、第77回カンヌ国際映画祭では「ある視点」賞を受賞し、世界で高い評価を受けている。
劉慈欣は代表作の『三体』が中国で2022年にアニメ化、2023年にドラマ化され、2024年にはNetflixドラマとして配信された。2024年6月には張芸謀(チャン・イーモウ)監督による映画化も発表された。また、短編「流浪地球」を原作とした映画『流転の地球』(2019) は世界興収約7億ドルの大ヒットを記録し、続編『流転の地球 -太陽系脱出計画-』(2023) に続き第3作目も2027年の中国公開を予定している。劉震雲もこれまで多くの作品が映像化されており、2016年には『一句頂一万句』をベースとした映画『話があるんだ。』も公開された。管虎(クワン・フー)が両作をどんな形で映画化するのか、続報を待とう。
劉慈欣「全帯域電波妨害」収録の『時間移民 劉慈欣短篇集II』(訳: 大森 望、光吉 さくら、ワン チャイ)は発売中。
劉震雲『一句頂一万句』(訳:水野衛子)は発売中。
Source
Variety
Netflixドラマ『三体』の解説はこちらから。
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