ネタバレ解説&感想『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ラストの意味は? 架空の2015年を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ラストの意味は? 架空の2015年を考察

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1985年から1955年、そして舞台は2015年へ

1985年から過去の1955年にタイムスリップし、そして未来に戻ろうとするマーティ・マクフライと科学者ドクを描いたタイムスリップ映画の傑作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。その続編である『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989)では舞台が2015年に移る。

映画公開から時は流れ、2025年。80年代の人々が夢見ていた2015年は10年も過去のことになってしまった。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で監督と脚本を務めたロバート・ゼメキスも、紀元前から未来に至るまで同じ場所を描き続ける『HERE 時を越えて』(2025)という新しい映画のメガホンを取った。マーティとドクが冒険した2015年は過去になってしまったのだ。

本記事ではそんな『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で描かれる架空の2015年と実際の2015年を比較し、80年代の人々が夢見ていた未来がどのように現実になったのかを解説と考察を交えつつ、感想を記していこう。なお、以下の内容は『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の重大なネタバレを含むため注意していただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の内容および結末に関するネタバレを含みます。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ネタバレ解説

タイムマシンの影響? ジェニファーのキャスト変更

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の冒頭のシーンは、前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストシーンをそのまま流用しているように思える演出となっている。しかし、実際はすべて撮り直しされている。その原因にはジェニファーのキャスト変更があげられる。

マーティの恋人であるジェニファーを『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で演じたのはクラウディア・ウェルズだ。しかし、クラウディア・ウェルズは実の母親に癌が見つかったことで看病のために俳優業を休業したのだ。

そのため、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でジェニファーはキャスト変更がなされ、エリザベス・シューが代役として演じることになった。クラウディア・ウェルズがジェニファーを演じたのは前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のみとなっている。

キャストが変更されたのはジェニファーだけではない。マーティの父親のジョージ・マクフライもキャスト変更されている。これはジョージを演じたクリスピン・グローヴァーから他の役にも挑戦したいという申し出があったためであり、その結果としてジョージはビフによって改変された1985年では死亡した設定になり、大幅に登場シーンが減った。

マーティとジェニファーが未来に行った意味

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』は時間軸の改変された1985年と2015年の2つが舞台となっているが、何故マーティとジェニファーは2015年へとタイムスリップしたのだろうか。それはマーティの息子が危機に陥ったためである。

マーティの息子のマーティJr.はビフの孫であるグリフの言いなりになっており、その様子はさながら1955年のジョージとビフのような関係であった。マーティJr.はグリフの言いなりになった結果、窃盗罪で懲役20年の刑となり、それがマクフライ家の家庭崩壊につながったのだ。

マーティとドクはそんな未来を変えるために奔走することになるのだが、そこでマーティの悪癖が出てしまう。それは腰抜け(Chicken / Yellow / Coward)と呼ばれるとすぐに挑発に乗ってしまう性格だ。2015年のマーティはその悪癖のせいで車と接触事故を起こしてしまい、その後遺症で得意のギターを弾けなくなってしまっている。

さらには2015年のマーティはその悪癖が原因でハイリスクな投資にも挑戦しており、大損害を被っている。マーティとドクはマーティJr.を救うことに成功するも、マーティの浅はかな性格のせいで2015年のマクフライ家は暗澹たるものになっており、ジェニファーには失望されてしまった。

現在のマーティは2015年で1950年から2000年までのスポーツ年鑑を買い、スポーツ賭博によって小遣い稼ぎをしようとしていた。その若さゆえの浅はかさはドクに咎められ、失敗に終わるのだが、そのスポーツ年鑑はビフの手に渡り、1985年は改変されてしまうことになってしまう。

ドナルド・トランプ大統領とビフ・タネン

ドクによってゴミ箱に捨てられたスポーツ年鑑は年老いたビフによって拾われ、1955年のビフの手に渡る。スポーツ賭博によってビフは億万長者になり、賄賂で行政を掌握、巨大カジノ・パレスの主となっていた。マーティの父親ジョージはビフによって殺害され、母親ロレインはビフと再婚させられている。

この大富豪ビフのモデルになったのは、現実では後にアメリカの第45代と第47代大統領であるドナルド・トランプである。ビフの経営するカジノ・パレスには札束に火をつけてタバコを吸う悪趣味なビフの看板が立っており、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ではドナルド・トランプを誇張したキャラクターとして描かれていた。

第47代アメリカ大統領となったドナルド・トランプはホワイトハウスのホームページに大々的に自分の写真を載せ、「America is Back」という文言を掲載している。皮肉にも誇張して描いたドナルド・トランプ像だったはずのビフ・タネンに、現実のドナルド・トランプが追い付いてしまったのだ。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ラストの意味は?

デロリアンで何度も挑戦していた?

改変された1985年のビフは、改変される前の未来のビフからマーティとドクがスポーツ年鑑について問い詰めてきたら殺害するように指示されていたと語る。マーティはビフにカジノ・パレスの屋上へ追い詰められ、落とされてしまう。しかし、実は下にはデロリアンが待機しており、マーティはそのまま1955年へと舞い戻るのだった。

このデロリアンの上にマーティが飛び乗るシーンについては、ファンの間で面白い考察がなされている。それはデロリアンを操縦するドクが、マーティが着地できるように何度もタイムスリップしているというものだ。

マーティはカジノ・パレスの屋上から落ちた際にちょうど良い場所、ちょうど良いタイミングで待機していたデロリアンに救われている。このあまりにも完璧なタイミングに対し、ファンの間ではドクが何度もタイムスリップして挑戦と調整を試みたという考察がなされているのだ。

公開されてから40年近く経つ映画でありながら、ファンの間で考察が絶えない『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』。そのファンの様子こそ、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズが人々の心を掴んで離さないことを表していると言えるだろう。

1955年にカムバック

マーティとドクは1955年にまた戻り、未来のビフによる未来の改変を阻止しようとする。そこで描かれるのは前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で行なわれたタイムスリップへの挑戦の舞台裏だ。

ジョージがビフを殴り気絶させた後、魅惑の深海パーティに参加しなかったビフたちは何をしていたのか。改変された1985年からやってきたマーティを追っていたのだ。マーティはジョージとロレインをデートさせようと奔走する過去の自分と会わないようにしつつ、ビフたちの妨害を防ぎ、彼らから逃げることになる。

ここでもマーティの腰抜けと言われるとすぐ挑発に乗る悪癖が出て、マーティはビフに追われ、ひき殺されそうになってしまう。そのとき、マーティは2015年で手に入れたホバーボードなどを駆使し、ビフを再び馬糞まみれにさせて、すべてが順調に解決した。いや、そうなるはずだった。

一通の手紙

スポーツ年鑑を燃やし、改変された未来を修正することに成功したマーティとドクは1985年に帰ろうとする。そこに前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイムスリップに利用した「1.21ジゴワット」の雷を発生させた嵐が訪れ、マーティを残したまま、ドクを乗せたデロリアンは別の時間に飛び立ってしまった。

途方に暮れるマーティのもとに電報会社ウエスタンユニオンの社員が現われる。その社員が言うには会社が設立された70年前から1955年11月12日、この場所に手紙を届けるようにという仕事が残っていたのだ。

その手紙は1885年にタイムスリップしてしまったドクから届いたもので、マーティはドクがどの時間にいるのかを知る。そして、1955年のドクに助けを求めるマーティだったが、1955年のドクはついさっき未来に送り返したはずのマーティを見て気絶してしまうのだった。

前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、続編を匂わす程度だったが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では明確に続編の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』に繋がる終わり方になっている。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ネタバレ感想&考察

愛され続けて40年

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』では、3Dの広告や空飛ぶ車、超高度な美容整形技術など、1980年代の人々が夢見ていた未来が描かれた。現実の2015年では実現しなかったものもあるが、とある理由で実現したものも数多くある。その理由とは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズへの愛だ。

マーティが乗っていたホバーボードは様々なメーカーや技術者たちが再現を試み、その中の一つがマーティの愛車を製造していたトヨタのCMに登場している。『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の製作総指揮を務めたスティーブン・スピルバーグ監督の作品を皮肉った『ジョーズ19』は2015年10月に予告編のみが公開された。

他にもマーティが履いていた自動靴ひも調整システム付きのナイキのシューズは実際に製作された後、オークションに出品された。その収益はマーティ役のマイケル・J・フォックスが設立した「マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団」に寄付された。

これらが実現したのはすべてSFファン、映画ファン、そしてすべての観客が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを愛していることの表れと言えるだろう。40年以上の時を経ても愛され続ける「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ。ロバート・ゼメキス監督がメガホンを取った「時間」をテーマにした新作映画『HERE 時を越えて』の公開に合わせて往年の名作を見返すのも良いのではないだろうか。

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前作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のネタバレ解説&考察はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で流れた音楽の解説はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』ジェニファー役エリザベス・シューが『ザ・ボーイズ』でヴォート副社長を演じるまでの経緯はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で登場したマイケル・ジャクソンに関する解説はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でのマーティのファッションについての解説はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で流れた音楽の解説はこちらから。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のキャスト紹介はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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