ドラマ『ラスアス』シーズン2最終回はどうなった?
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2がフィナーレを迎えた。ゲーム『The Last of Us II』(2020) を原作としたシーズン2では、ベラ・ラムジー演じるエリーを中心とした物語が展開されているが、ドラマ版はすでにシーズン3への更新が決定している。
ドラマ『ラスアス』シーズン2はシーズン3に向けてどんな最終回を迎えることになったのだろうか。今回は、シーズン2最終回の第7話をネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はシーズン2の結末までのネタバレを含むため、必ずU-NEXTで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2最終話第7話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
ドラマ『ラスアス』シーズン2最終回第7話ネタバレ解説
「知ってる」の嘘
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2最終話となる第7話「集結」のエピソード監督を務めたのはニーナ・ロペス=コラード。ドラマ『ペリー・メイスン』(2020)、『S.W.A.T.』(2017-)、『エージェント・オブ・シールド』(2013-2020) などでエピソード監督を務めてきた。ちなみに『ラスアス』と同じHBOドラマの『ペリー・メイスン』でもシリーズフィナーレのシーズン2最終話を手がけている。
『ラスアス』シーズン2第7話の脚本家は、前話と同じく、原作ゲームを手がけたニール・ドラックマンとハレー・グロス、そしてドラマシリーズのクリエイターであるクレイグ・メイジンが担当している。
前話はエリーとジョエルの回想回だったため、シーズン2最終回は第5話のラストから繋がる。セラファイトの弓矢で足を撃たれたディーナが、ジェシーから気付け薬にと勧められた酒を断るのは妊娠しているからだ。
ディーナとジェシーはエリーとディーナが拠点にしていた劇場まで戻っており、そこにエリーも合流。エリーはディーナをジェシーに任せ、ジョエルの仇であるアビーの居場所を掴むために、ジョエルが殺された晩に現場にいたノラを捜しに出かけていた。
エリーは、アビーの居場所としてノラから「クジラ」と「観覧車」というキーワードを手に入れたらしい。ディーナは、ノラは「殺されて当然のことをした」と話すが、エリーは「当然じゃないかも」と踏みとどまる。
そしてエリーは、ジョエルが自分を生かすためにファイヤフライを皆殺しにしたこと、そこには医者だったアビーの父親も含まれていたことをディーナに明かす。エリーは、自分が知っていたのはジョエルの行動だけと言っている。つまり、シーズン2第5話でエリーはノラに対して「知ってる」と言ったが、アビーがジョエルに父を殺されたということは知らなかったのである。
この話を聞いたディーナはジャクソンに帰ろうとエリーに告げる。お腹の子どものこともあり、エリーとディーナはこの時点で復讐を果たすことよりも日常に戻ることに傾倒していることが分かる。
シアトルのコストコ
そして、原作ゲームで前半の最終パートになるシアトル3日目を迎える。原作ゲームでもあったエリー&ディーナのパートだが、ドラマ版での二人はかなり気まずい。ジェシーはディーナが妊娠していることに気付き、父としての自覚を持ってしまっている。一方のエリーはディーナと子どもと暮らす未来を約束しているが、ディーナを危険に晒し、ジェシーに助けてもらった現状では強く出ることができないのだ。
二人はセラファイトの子どもを襲うWLFの集団を目撃するが、助けようとするエリーに対し、ジェシーは「奴らは殺し合ってる。そんな奴らのために死んでたまるか」と反対する。この言葉はそのままアビー達とエリー達に向けることもできる。一方で、エリーは「俺らの戦争じゃない」と切り離すジェシーの姿勢にも違和感を抱いているように思える。
『ラスアス』シーズン2第7話では、WLFが拠点にしているコストコ(Costco)が登場。実はコストコの第1号店は1983年にワシントン州シアトルで開業した。コストコはゲーム版では登場していないが、ドラマ版ではシアトルにゆかりのある企業へのオマージュを取り入れたようだ。
そして、久しぶりにアイザックが登場。嵐が近づく中、アビー、オーウェン、メルがいないという状況がパク軍曹から告げられる。ダニー・ラミレス演じるマニーはWLFの本隊と一緒にいるようだ。
アビーを重要視するアイザックにパク軍曹は疑問を投げかけるが、アイザックは、アビーはWLFを導くリーダーになる人材だと説明する。確かにアビーはすでにオーウェンやノラを巻き込んでジョエルへの復讐を果たしており、一個分隊を率いるだけのリーダーシップは持っている。奔放かつ、不本意ながらもジョエルに守られてきたエリーにはない要素だ。
それぞれの独善性
エリーとジェシーは、雨が降る中トミーとの合流地点である書店に到着。悪天候でまたこの二人という展開は、シーズン2第2話で吹雪の中セブンイレブンに入った時と同じ状況だ。その日、ジョエルはディーナと巡回に出かけており、ジョエルは殺されることになった。
不穏な記憶が蘇る中、トミーを待つエリーとジェシーは、ディーナの件について話し合うことに。以前トミーはカナダのアルバータから来た旅の一団の一人と恋に落ちたが、自分を育ててくれたジャクソンに残り、マリアの跡を継ぐべきだと考えて諦めたという。ディーナを想うトミーの気持ちは仲間としてのものだとも話しており、原作ゲームではなかったジェシーの内面が深掘りされる展開が挿入されている。
そんな中、WLFの無線からスナイパーに襲われているとの情報をキャッチ。シーズン2第1話では、トミーがエリーに雪山で狙撃の練習をさせてやるシーンが挿入されていた。スナイパーといえばトミーなのだ。
トミーのものと思われる銃声を辿る中で、エリーはシアトル水族館を発見。そこには観覧車とクジラの絵が確認できる。エリーが拷問した時にノラが残したキーワードと一致する。だが、トミーがいると思われる銃声がする方向とは異なる場所だ。
「復讐」を求めるエリーと、「帰還」を求めるジェシー。原作ゲームではトミーが先にアビーへの復讐のためにジャクソンを出ているため、トミーと復讐は結びついていたが、ドラマ版ではこの二つの要素が対立するようになっている。
ジェシーは、エリーの行動が全て自分本位だとして、復讐はコミュニティーのためにならないと批判する。一方のエリーは、コミュニティーの一員じゃないからとセラファイトの子どもを見殺しにしたジェシーを非難する。
エリーにはジョエルの独善性が芽生えているようにも見えるが、むしろエリーが批判しているのはジェシーの独善性だ。コミュニティーのための善い選択を、と訴えるジェシーの理論は本当に潔白なのか、周り回って子どもを見捨てる理論になっているのではないか、というのがエリーの疑問だ。
孤児としてFEDRAに育てられたエリーは、ジャクソンという平和なコミュニティーで育ったジェシーとは違う。エリーは自分の立場を経験すればジェシーも同じことをすると言い、ジェシーもそれには反論できず、二人は別々の道を行くことになる。ちなみにジェシーが言う「せいぜい死ぬな」はゲーム版ではエリーがジェシーに言う言葉だ。
メルの改変
アイザックをはじめとするWLFの一団も水族館へ向かう中、エリーもボートで水族館へ向かうが、難破したエリーはセラファイトに見つかってしまう。処刑されそうになった所でセラファイトの村がWLFに襲われて難を逃れることに。
これはドラマオリジナルのシーンで、ゲームにあったのはボートが転覆するところまでだ。ゲーム版ではエリーはそのまま泳いで水族館に辿り着くのだが、実写版ではリアリティーがないと判断されたのだろうか。
水族館にたどり着いたエリーは、治療の痕と思われる血痕を目にしつつも、館内を進んでいく。先ほどのセラファイトも含めて、今後の伏線なのだろう。なお、ゲームでは犬を排除しなければならない辛いシーンがあるが、ドラマでは流石にカットされている。
そしてエリーは、アビーを巡って口論となっているオーウェンとメルを発見。アビーの居場所を聞き出すためにそれぞれに地図上の場所を指差すよう命じ、一致しているか確認するというのは、ゲーム版でトミーがやっていたとされていた手法だ。
オーウェンがその指示に従うフリをして銃に手をかけると、エリーが発砲。オーウェンは倒れ、その銃弾はメルの首をかすめたのだった。そして、メルが妊娠していたことが分かり、メルは死ぬ寸前でエリーに子どもを取り出すよう求める。
ゲームではエリーはメルの首をナイフで刺して即死だったが、ドラマではエリーはナイフでの切開手術を求められる展開に。だが、エリーにはそれができなかった。ディーナとの子どもを育てる約束をしていたエリーだったが、大粒の涙を流して死にゆく母子を見送ることしかできなかった。
ドラマではエリーがなんとかしようとしたという事実が追加されたものの、一方で何もできなかったという事実も残ることになる。そして、そこにやってきたのはトミーとジェシーだった。三人は劇場に戻り、ジャクソンに戻る段取りをすることになる。
責任を背負うエリー
兄ジョエルを殺されているトミーは、エリーがメル達を殺したことについて、「自分の選択の報いを受けたんだ」とエリーを擁護している。だが、アビーが生きていることについては、ゲームと同じくエリーに「それでもいいか?」と確認する柔軟性もある。
ジェシーはトミーと共にエリーを助けに来てくれたが、それはジェシー自身の決断だった。ジェシーの善性によるものではあるが、同時にジェシーは自分が同じ状況になればエリーも助けに来ただろうと指摘する。それは二人に共通する善性だった。
しかし、ここでトミーが向かった方向から物音が聞こえ、そちらへ向かうとジェシーは頭部を撃たれてしまう。そこにいたのはアビーだった。オーウェンとメルが殺され、アビーはエリー達を追ってきていたのだ。復讐の連鎖が繰り返される。
アビーによってトミーが殺されそうになる中、エリーは必死に全ては自分のせいだとアビーを説得。エリーは、トミーは関係ないと主張するのだが、ドラマ版では実際にトミーはアビーへの復讐を果たそうと思っていないため、実際にエリーが全てを背負うべき状況になっている。また、ゲーム版では「ジョエルのせいじゃない、私のせい」と言っているが、そのセリフはトミーを擁護する言葉に変更されている。
アビーがエリーに銃口を向け、「生かしてやったのに」と言い、銃声がしたところでブラックアウト。まさかの展開でドラマ『ラスアス』シーズン2最終話第7話の本編は幕を閉じる。
ラストの意味は?
しかしその後、シーズン2第5話のラストのようにアビーがソファの上で目を覚ますエピローグが待っていた。アイザックが呼んでいるとして起こしに来たのはマニーだ。
部屋の外に出たアビーの目の前に広がるのは、シアトルに実在するルーメン・フィールドの中に作られたWLFのアジトだ。野菜を育てており、煙も上がっていることから工業や食品加工も行われているらしい。ちなみにルーメン・フィールドはNFLシアトル・シーホークスとMLSシアトル・サウンダーズの拠点で、2026年にはサッカーW杯の試合会場としても使用される予定だ。
アビーがゲームでも登場したWLFの基地を眺めると、左下に「シアトル 1日目」という文字が現れる。舞台はエリーとディーナがシアトルに到着した二日前に戻ったのだ。こうしてシーズン3がアビー視点で描かれることを示唆して、ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2は幕を閉じる。
エンディングで流れる曲はSoundgarden「Burden In My Hand」(1996)。抽象的な歌詞が並ぶ曲だが、「今日、私は愛する人を撃った。私のために泣いてくれる?」と歌われている。取り返しのつかないことをしてしまった人物が「手の中の罪」に苦悩する内容と読み取ることができ、アビーとエリー双方の状況を示していると言える。
ドラマ『ラスアス』シーズン2最終回第7話ネタバレ感想&考察
シーズン3はどうなる?
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2はゲーム原作の『The Last of Us II』の前半部分を実写化し、後半部分はシーズン3へと持ち越される形となった。ゲームでは前半がジョエルとの思い出を交えたエリーパート、後半がアビーパートという形になっており、ドラマでもこの形を踏襲することになる。
米Varietyによると、ゲイル役を演じたキャサリン・オハラは次のシーズンには出演しないとして、シーズン3について「恐らくアビーの物語になるので」と話している。シーズン1はジョエルとエリーの物語、シーズン2はエリーの物語、シーズン3はアビーの物語というのは分かりやすい構成だ。
シーズン2最終回では、アイザックはアビーを将来のリーダーと期待していたが、アビーがWLFの基地にいないという状況も明かされた。シーズン3では、シーズン2でエリーとディーナが過ごしてきた3日間のアビーの行動が描かれるのだろう。
また、シリーズを率いるクレイグ・メイジンは、米Colliderに「シーズン3がシーズン2よりも長くなる可能性は十分にあります」とした上で、「この物語をシーズン3で完結させることはできません。願わくば、十分な稼ぎを得てシーズン4で完結させたいです」と話している。製作陣は既にシーズン4まで見据えているようだ。
シーズン2の原作との違い
ドラマ『ラスアス』シーズン2では、原作ゲームから改変された箇所もいくつかあった。まず、エリーがアビーへの復讐を誓い、それを知ったトミーが1日早くアビーを追ってジャクソンを離れるという展開が、エリーが町を出てからトミーが追ってくるという展開に変更された。
これにより、エリーの復讐心が際立つことになり、復讐の矛の先端に、互いに父を殺されたエリーとアビーが立つことになった。互いに引き返せないところまで来た二人が再会を果たしたのがシーズン2のラストであり、この復讐の連鎖がどんな帰結を迎えるのかという点がシーズン3以降の見どころになりそうだ。
また、ディーナの妊娠をきっかけにエリーとディーナとの未来を早い段階で想像し始めるというのもドラマオリジナルの展開だ。これにより、エリーは過去の復讐と未来の希望の狭間に立つことになり、トミーという“共犯者”の不在もあってエリーの“選択”が問われることになっている。
もう一つの大きな改変点は、ジョエルのオリジンが描かれたことだ。エリーに対する過保護な態度の背景には、死んだ娘のサラの存在だけでなく、幼少期の父との関係があったことが明らかになった。病院の件だけでなくユージーンについても嘘を重ねていたという設定も追加されている。
清廉潔白な人間などおらず、だからジョエルは、もしエリーが親になる時が来たならば、自分よりは上手くやってくれと告げた。エリーが親になる未来を見据えた言葉だったが、シーズン2のラストではエリーはメルの子どもを救うことができず、アビーがエリーに銃を向ける展開が待っていた。
また、シーズン2最後のジェシーが撃たれてトミーが捕まる一連のシーンでディーナが登場していないことも心配な点だ。加えてアビーがアイザックから求められているリーダーシップもポイントになるだろう。これらの要素はドラマ『ラスアス』シーズン3でどのように回収されるのだろうか。
原作からの改変もあった『ラスアス』シーズン2だが、一方で大筋では原作を忠実になぞっていた。脚本に原作の制作陣が入ったエピソードであるシーズン2第6話で、ジョエルに「やり直せたとしても同じことをする」と言わせたのは、制作陣の想いでもあったのかもしれない。
シーズン3への更新が正式に発表されたのは2025年4月9日のことなので、シーズン3の到着は2026年から2027年頃と予想できる。一体どんな展開が待っているのか、シーズン3の到着も楽しみに待とう。
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2は全7話がU-NEXTで独占配信中。
原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。
『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。
ゲーム版のアート集はG-NOVELSから発売中。
シーズン2第6話の解説&感想はこちらから。
シーズン2第5話の解説&感想はこちらから。
シーズン2第4話の解説&感想はこちらから。
シーズン2第3話の解説&感想はこちらから。
シーズン2第2話の解説&感想はこちらから。
シーズン2第1話の解説&考察はこちらから。
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1最終回のネタバレ解説&感想はこちらから。
ペドロ・パスカルが主演を務める映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日(金) 公開。本予告の解説はこちらから。
