シーズン2第3話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』復讐か、正義か。「救えない人」の意味【ラスアス】 | VG+ (バゴプラ)

シーズン2第3話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』復讐か、正義か。「救えない人」の意味【ラスアス】

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ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話はどうなった?

ドラマ『THE LAST OF US』は同名のゲームを原作としたドラマ作品で、2025年4月よりシーズン2の配信を開始した。ペドロ・パスカルとベラ・ラムジーが主演を務め、ゲーム版を忠実に実写化しつつ、世界観を広げる改変が高い評価を受けている。

今回は、ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話について、ネタバレありで解説し、合わせて感想と考察を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずU-NEXTで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第3話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話ネタバレ解説

サラによろしく

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第3話「道」のエピソード監督を務めたのはピーター・ホアー。マーベルドラマの『デアデビル』(2015-2018) や『アイアン・フィスト』(2017-2018)、『ザ・ディフェンダーズ』(2017)、Netflixドラマ『アンブレラ・アカデミー』(2019-2024) などのエピソード監督を務めている。

ピーター・ホアーはドラマ『ラスアス』シーズン1でも第3話の監督を務め、同エピソードは“神回”として高い評価を受けた。ピーター・ホアーはドラマ『IT’S A SIN 哀しみの天使たち』(2020) でクィアの若者達を描いたことで知られ、自身もゲイである。『ラスアス』シーズン2でも第3話のバトンを託されている。

感染者の大群によるジャクソンの町の襲撃、そしてアビーの一味によるジョエル殺害。シーズン2第3話では、町のリーダーでありジョエルの弟であるトミーが、ジョエルと町人達の遺体と向き合っている。

ジョエルの腕についている時計は、パンデミック前に娘のサラから誕生日プレゼントとしてもらったもの。サラは軍人に撃たれて殺されたが、この場面ではトミーがジョエルに「サラによろしくな」と言ってやっている。

シーズン1では、壊れた腕時計はジョエルがサラの死から前に進めていないことを示していた。シーズン2第3話では再びこの腕時計が映ってサラに言及された。ジョエルは死んだが、これで死んだサラと一緒に過ごせるかもしれない。ジョエルの死の衝撃を少しだけ和らげてくれる描写だ。

トミーがジョエルの死と向き合い、病院で目を覚ましたエリーがあらためてジョエルの死を痛感するシーンはドラマオリジナルのものだ。ジョエルの喪失を視聴者と共にプロセスして、ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話は幕を開ける。

舞台は3ヶ月後へ

そして舞台は、ジャクソンの再建が進む3ヶ月後へ。エリーはゲイルのカウンセリングを受けている。ゲイルはシーズン2第1話でジョエルがセラピーを受けていた人物で、夫のユージーンはおそらく感染してジョエルに殺されている。

エリーは、パーティーでジョエルに激怒した後、最後に会話はしなかったと明かす。エリーはジョエルと歩んできた道のりについて言及するが、ゲイルは人は最後の瞬間に囚われると忠告する。いつその最後がやって来るかは分からない。ジョエルもまた、サラを死なせてしまった瞬間に長年囚われていた。

ゲイルは、最後にジョエルと話した時にジョエルはエリーに悪いことをしたと言っていたと明かす。「救った」というジョエルの言葉にエリーは「何度も救われた」と語っている。エリーにジョエルへの悪感情はなさそうだが、「(勝手に)救われること」が必ずしも良いことばかりでもないということも事実だ。

ジョエルの家には花やメッセージが手向けられていた。これもドラマオリジナルの描写で、視聴者の心情とリンクする表現になっている。尚且つ、ジョエルが町の人々から愛されていたことも示されている。

エリーがジョエルの家を歩き回るのはゲームと同じ展開。ゲーム内でも、ジョエルは木彫りの彫刻に取り組んでいたことが分かる。エリーは箱の中から銃だけ取り出しているが、ゲームでは腕時計も持っていっている。

ジョエルがいつも着ていたジャケットに触れ、涙を流した後、エリーはディーナからある真実を告げられる。ジョエルと一緒にアビー達に捕えられたディーナは、グループの名前と行き先を知っていたのである。壊滅状態にあった町と傷ついたエリーの状態を考慮してエリーには伝えず、既に3ヶ月が経っていた。

アビー達が所属していたのはシアトルを拠点に軍に対抗する集団の一つ、WLF(ワシントン解放戦線)。ディーナは、この情報を知っているのは「私たちだけ(Just us)」と話す。ディーナに想いを寄せるエリーには、この表現が響いた様子。今やエリーとディーナが「The last of us(残された私たち)」なのだ。

指笛の集団

そしてエリーは、もう一人の残された人物であるトミーにアビーを追う話を持ちかける。ジョエルならそうしたと主張するエリーに対し、トミーは兄貴は復讐には行かない、自分を責めて壊れていくだけだと反論する。確かにジョエルはサラの死を受けて軍に復讐するでもなく、人と向き合うことをやめてしまっていた。

そのジョエルを変えたのがエリーであり、エリーもそのことはよく分かっているはず。ジョエルが復讐に生きることがなかったからこそ、エリーとジョエルは豊かな時間を過ごすことができたのだ。

それでもトミーはエリーを止めるつもりはないと言い、ただしマリアに申告して公聴会を開き、決をとるという手順を踏むよう告げる。ゲームではわりとすぐに旅立ってしまうが、ドラマではコミュニティとしての合意形成を大事にするトミーの姿が新たに描かれている。

一方、指笛でコミュニケーションをとる集団が登場。「ピュージェット方面」という看板が映し出されるが、ピュージェットはシアトルに隣り合う湾岸のことで、WLFの拠点に近い場所であることが分かる。

ゲームの中盤以降に登場するこの集団は、10年前に死んだ「あのお方」の教義を信奉する宗教的なグループであることが示唆されている。所属メンバーが口の横から耳にかけて切り傷の痕をつけているのがその特徴だ。

ジャクソンの町とWLFに続く、第三の集団。ゲームでの登場時には不気味な印象を与えていたが、ドラマ版では紛争を避けるためにウルフから遠ざかろうとしており、ここでも父と娘の対話が描かれる。アビーの集団と同じく、最初から親近感と共感を抱きやすいように改変がなされている。

公聴会での4つの意見

ジャクソンの町では、シアトルへの部隊派遣について公聴会が開かれる。これもドラマオリジナルのシーンだ。“関係ないこと演説おじさん”もいるものの、①多くの人と資源が失われている今は派遣を行うべきではない、という“時期派”と、②そもそも復讐はすべきではない、という“慈悲派”が優勢に。現実的なリソースと倫理の観点からエリーの希望は退けられそうになる。

そんな中で、シーズン2第1話でエリーに差別発言をして反省していたセスは、“感情”に訴える復讐派のスピーチを披露。続いて、遺族であるエリーは感情を抑えて“正義”に立脚した原稿を読み上げる。復讐のためではなく、正義は果たされなければならないと。

世界は自分たちに不幸が起きても誰も何もしてくれなくなった。でも自分たちは互いを信頼し、絆で繋がれている。この町が倒れないのは、ダンスパーティーや食事会のおかげではなく、仲間に何かあれば立ち上がるという正義が約束されているからだ、というのがエリーの主張だ。非常に説得力のあるスピーチである。

この演説は、現実の社会で性的少数者を含むマイノリティが置かれている状況とも重なる。コミュニティーが社会正義を貫くことの重要性を説いたスピーチでもあった。

一方で、エリーの中には復讐心があることも事実だろう。ボードメンバーによる投票は8対3で否決され、トミーに対してゲイルはエリーは嘘つきだと指摘する。トミーも、エリーがジョエルと同じ道を辿っているという不安を抱えていた。

怒りに任せた暴力の正当化——それがジョエルの傾向であり、エリーはそこから学んだのではないかというのがトミーの懸念だ。だが、ゲイルは意外にもそれがエリーの生まれもっての性質だと語る。ジョエルとエリーは似たもの同士だから一緒に歩んできたということだ。ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話には、“その人の変わらない性質”というテーマがあることが分かる。

「世の中には救えない人もいる」というゲイルの考えは冷たいようにも思える。だが、エリーがジョエルから“望まない救済”を与えられたことを踏まえると、助けを必要としない人もいるという意味とも受け取ることができる。

なお、このシーンでゲイルは、野球チームのデトロイト・タイガースのファンであることを明かしているが、「このチームは2003年の時に似てる」と話している。2003年のデトロイト・タイガースといえば、ア・リーグ歴代ワースト記録となるシーズン119敗(43勝)を喫している。つまり、ゲイルはこの町のチームは「ドン底」だと言っているのだと思われる。余談だが、日本の阪神タイガースは2003年にリーグ優勝を果たしている。

誰のせいでもない

町としての派遣が却下されたエリーは、バッチリ準備をリードしてくれるディーナと共に単独でシアトルへ向かうことに。ワイオミング州のジャクソンからワシントン州シアトルまでは車で830〜870マイルほど。ざっくりとだが東京から鹿児島までくらいの距離だ。

ディーナは旅に必要なものを挙げていく中で、エリーにスニーカーではなくブーツにするべきだと助言している。実はゲームではエリーは長大な道のりをスニーカー一足だけで旅しており、ドラマ版では現実に即した形に変更させたのだろう。

エリーとディーナが旅に持っていく荷物の準備を手伝ってくれたのは、二人に差別発言をしながらも、公聴会でアビーらへの“復讐”に賛同したセスだった。原作ゲームでは公聴会がなく、トミーが先にシアトルへ向けてジャクソンを離れ、妻のマリアの協力を得てエリーとディーナはトミーの後を追っている。トミーのストーリーラインが変更になる中で、マリアの代わりにエリーらを送り出す役割をセスが担ったというのは、セスに挽回の機会を与える良い改変であったように思える。

あのパーティーの晩に揉めた二人の武器、ジョエルの銃とセスのライフルを装備し、エリーとディーナは旅に出る。エリーがジョエルの墓に備えたのは、ジョエルが生前愛していたコーヒーの豆だ。思えばジョエルはポストアポカリプスの世界でいつもコーヒーを探していた。

エリーとディーナがしているゲームは、AからZまで各アルファベットがイニシャルに当てはまるバンドの名前を言っていくというもの。ジョエルとの思い出を語ったりしながら道中を行き、二人はテントで夜を過ごすことに。ここでディーナがパーティー会場でのキスの件について質問する。

自分のキスを評価してほしいディーナは、エリーに「(他にも)女の子とキスしたことあるでしょ?」と聞いているが、英語ではこの後に「あなたはゲイだけど私は違う」と付け加えている。悪意はないしエリーも悪く受け取ってはいないが、エリーからすれば、やはりディーナとの関係は発展しないだろうと思わさせる一言だっただろう。

しかもディーナはすでにジェシーとヨリを戻したといい、ジェシーは「どこか悲しそう」と口にする。ディーナは、それは彼本来の性質だと思いたい、そうでなければ自分のせいということになってしまうと吐露する。

エリーがアビーに復讐しようとするのは、エリーに影響を与えたジョエルのせいではなく、エリー自身の自然な性質から生まれた選択だということが、シーズン2第3話では強調されている。「誰のせいでもない」ということが強調されることで、ジョエルに罪を着せず、エリーの自主性も奪わない巧い演出だ。

最後にディーナは「(キスをした時)そこまでハイじゃなかったよ」と話し、シラフだったと示唆する。エリーに希望を持たせる罪なディーナ。これもまたディーナの生まれ持った性質だろうか。

二人がシアトルの近くまで辿りついた時、そこで目にしたのはウルフに襲われた宗教的な団体の人々の死体だった。あの父娘も殺されている。エリーとディーナはウルフの残忍さを目の当たりにして廃墟と化したシアトルに到着。ゲームのステージが完全に再現されたビル群が立ち並んでいる。

二人はウルフを少人数だと想定するが、マニーを含むウルフは“軍隊”と呼べる勢力だった。二人を待つ試練を予感させ、ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話は幕を閉じている。

『THE LAST OF US』シーズン2第3話ネタバレ感想&考察

「救えない人」の意味

ドラマ『ラスアス』シーズン2第3話は、ついにペドロ・パスカル演じるジョエルが登場しない回になった。一方でエリーとディーナの旅が始まり、二人で過ごす時間が描かれる。自身もゲイであるピーター・ホアー監督は、シーズン1第3話で二人のゲイカップルの半生を描いたが、シーズン2第3話ではエリーとディーナの微妙な関係を描いた。

「その人の変えられない性質」というコンセプトは、セクシュアルマイノリティの権利擁護の曲として広く知られるマックルモアの「Same Love feat.メアリー・ランバート」(2012) でも歌われている通り、「変えようとしても変えられないもの」という性的指向に対する考え方に通じるものがある。

また、ゲイルの「救えない人」という表現は、セクシュアルマイノリティを「治して」「救う」というカトリック的な考えに対するアンチテーゼのようにも聞こえる。様々な比喩と隠喩を用いながらも、その中でジョエルの責任とエリーの選択を切り離すというストーリー上の重要なポイントも押さえており、シーズン1第3話よりは目立たないながらも、シーズン2第3話は非常に練られたエピソードだったように思える。

復讐か、正義か

また、シーズン2第3話では「復讐か、正義か」というコンセプトも登場した。コミュニティーとしてきちんとプロセスを経るならば、「復讐は良くない」という考えは当たり前のものであり、あまり議論の余地はないように思える。そこに「他の人にとっても正義が果たされるかどうかの潮目」という論点を用い、エリーやトミーらの考えに説得力を持たせる展開は巧かった。

一方で、それがただの建前だということも皆分かっている。大事なのは、遺族(=当事者)の望みとコミュニティー(=社会)の建前が一致するかどうかということだ。感染者の襲撃によって「リソース的にも厳しい」という建前も加わったところで、エリーの要望は否決されるが、エリー自身の行動はコミュニティーの感じ方から大きく逸れているわけではないという状態が完成している。

気になるのはトミーはどうなったのかという点だ。原作ゲームではエリーとディーナはトミーを追うようにしてジャクソンを出るため、二人の旅はアビーを捜す旅でもあり、トミーを捜す旅でもあった。トミーはエリーを出し抜いていち早く兄ジョエルの復讐に向かったのだ。

ドラマ版では感染者の大群による町の襲撃というオリジナル要素が加わり、トミーは町のリーダーの一人として責任感のある行動をとっているように見える。ドラマではエリー&ディーナとの関係が逆転し、トミーが二人を追ってジャクソンの町を離れるということになるのだろうか。

ドラマ『ラスアス』シーズン2は、シーズン1より2話少ない全7話で構成される。次回の第4話は折り返し地点となる。ちなみにシーズン2第4話の監督はMCUドラマ『ロキ』(2021-) シーズン1全体の監督を務めたケイト・ヘロンだ。どんな展開が待っているのか、配信を楽しみ待とう。

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2はU-NEXTで独占配信中。

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シーズン2第3話の解説&感想はこちらから。

シーズン2第2話の解説&感想はこちらから。

シーズン2第1話の解説&考察はこちらから。

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1最終回のネタバレ解説&感想はこちらから。

ペドロ・パスカルが主演を務める映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日(金) 公開。本予告の解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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