シーズン2第4話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』ロッカールームとディーナの真実【ラスアス】 | VG+ (バゴプラ)

シーズン2第4話ネタバレ解説&感想 ドラマ『THE LAST OF US』ロッカールームとディーナの真実【ラスアス】

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ドラマ『ラスアス』シーズン2第4話はどうなった?

ドラマ『THE LAST OF US』は同名の人気ゲームをドラマ化した作品で、2025年4月より日本ではU-NEXTで独占配信されている。寄生菌のパンデミックが起き、文明が崩壊して20年以上が経過した世界を、ベラ・ラムジー演じるエリーが生きていく。

全7話で構成される『ラスアス』シーズン2は、第4話で折り返し地点を迎える。今回はドラマ『ラスアス』シーズン2第4話をネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずU-NEXTで本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第4話の内容に関するネタバレを含みます。

ドラマ『ラスアス』シーズン2第4話ネタバレ解説

爆破される“ロッカールーム”

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第4話は、MCUドラマ『ロキ』(2021-) シーズン1全体の監督を務めたケイト・ヘロンがエピソード監督を務める。『ロキ』シーズン1では一生を追われる身として過ごしてきたシルヴィと、自分の過去や生き方と向き合うロキの姿が中心に描かれた。『ラスアス』シーズン2第4話はどうだったのだろうか。

ドラマ『ラスアス』シーズン2第4話の冒頭は、ホモソーシャルな軽口を叩くFEDRA隊員達の姿が描かれる。FEDRA(連邦災害対応管理庁)はパンデミック後に活動していた政府組織で、シーズン1では市民を支配する横暴な組織として登場していた。

そのFEDRAで軍曹を務めているのはアイザック・ディクソン。演じるジェフリー・ライトは『ウエストワールド』(2016-2022) のバーナード役、『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(2022) のジェームズ・ゴードン刑事などで知られるが、ゲーム『THE LAST OF US II』(2020) でもアイザックの声を担当している。声の仕事ではMCUアニメ『ホワット・イフ…?』(2021-2024) のウォッチャー役でも知られる。

FEDRAのトラックの前に市民が立ちはだかり、アイザックはFEDRAの隊員を手榴弾で爆破。市民と手を結ぶが、一人だけトラックから降ろしていたFEDRA隊員に選択を迫るのだった。

この青年は、FEDRAの隊員達が下ネタばかりのロッカールームトーク(そこに男性異性愛者以外いないという前提で繰り広げられるホモソーシャルな会話、部活動のロッカールームが由来)を展開している間、周囲に合わせるようにして笑顔を作っていた。また、市民を皮肉で「有権者」と呼んでいることに疑問を持って質問する場面も。その質問に答えられたのはアイザックだけだった。

アイザックはその浅薄な“ロッカールーム”ごと爆破するという爽快な行動に出たのだが、一方で危うさも感じる。こうしてFEDRAを抜けて市民の側に下野したアイザックのオリジンが語られた。ゲームではアイザックの過去は書類でしか描写されないため、オリジナルのストーリーが描かれたのはありがたい。

レインボーと宇宙

『ラスアス』シーズン2第4話の本編は、その11年後から始まる。つまり、先ほどの出来事は11年前、シーズン1のさらに6年前の出来事ということになる。シーズン1の本編はパンデミックの20年後が舞台なので、アイザックが謀反を起こしたのはパンデミックから14年後ということだ。

WLFを追ってシアトルを探索するエリーとディーナ。「シアトル 1日目」という表記は、原作ゲームのチャプター表記をそのまま採用したものだ。エリーとディーナは、セクシュアルマイノリティの尊厳と連帯を表すレインボーフラッグの意味を知らず、街中に掲げられている旗を不思議に思っているようだ。

二人は西海岸に来たのも初めてなのかもしれない。シアトルは街をあげてセクシュアルマイノリティのコミュニティーへのサポートが行われており、毎年6月に行われるシアトル・プライド・パレードも有名だ。

また、『ラスアス』のゲーム原作にもレインボーフラッグやトランスライトのフラッグは登場する。シーズン2第4話からアイザックを演じるジェフリー・ライトもセクシュアルマイノリティの権利保護について発信しており、ドナルド・トランプ大統領によるトランスジェンダーの人々を米軍から排除する動きを非難したこともある。

エリーは軍用車両の中に残された三つの遺体を見て、アポロ1号のようだと話す。アポロ1号は乗員がつけていたミッションの名前で、予行演習の火災事故で3人の宇宙飛行士を失った。エリーはシーズン1第6話でもジョエルに宇宙への憧れについて語っている。

シーズン1第6話では、エリーは月へ行ったニール・アームストロングとバズ・オルドリンの名前をあげ、レズビアンで米国人女性初の宇宙飛行士とされたサリー・ライドを一番の憧れだと語っていた。この時エリーは、アームストロングに月での一歩目を譲ったがために忘れられがちなオルドリンの名前をあげており、今回もアポロ11号の月面着陸成功の影で犠牲となったアポロ1号のクルーに触れている。こうした細かな点にエリーの優しさが垣間見える。

エリーが歌う曲

エリーはウルフが拠点とする放送局チャンネル13を発見。ゲームではチャンネル13に到達するまでにもっと時間がかかるため、かなり足早に感じられる。楽器屋で夜が来るのを待つことにしたエリーとディーナ。じっくりレコードを見るエリーは、シーズン1第7話で描かれたライリーとの夜を思い出しているのだろうか。

そしてエリーは2階でギターを発見。エリーはジョエルからギターを貰い受けたが、いつの間にかギターは放置されていて、最後の夜にジョエルはギターの弦を張り直そうとしていた。原作ゲームでは冒頭でジョエルにギターを教えてもらうシーンが挿入されるのだが、ドラマ版ではジョエルが去りエリーは一人でギターを弾く。

エリーが弾いている曲はA-ha「テイク・オン・ミー」(1985)。「私を受け入れて」「すぐにいなくなっちゃうから」と歌われている。

ディーナは涙を浮かべながらエリーの歌を聴き、エリーはジョエルと練習したと明かす。「私を受け入れて」「すぐにいなくなっちゃうから」という歌詞は、ジョエルの言葉として聴くと一層辛いものがあるし、残されている者が互いを大事にしなければという気持ちにもさせられる。

11年後のアイザック

厨房にいるアイザックは一人で喋っているのかと思いきや、捕虜にしたスカーの一人に話しかけていた。スカーというのは前回登場した宗教的な団体に対して、WLFが用いる呼称だ。頬に傷痕(Scar)があることからそう呼ばれている。

この捕虜は「次の攻撃目標は? スカー」と呼ばれて「セラファイト」と答えるが、これはこの宗教集団の正式名称だ。つまり、アイザックに攻撃目標を聞かれて「セラファイト」と答えたのではなく、その後の「スカー」という呼称を訂正したということだ。

非道な拷問にも手を出すアイザックだが、捕虜とはどちらが先に手を出したかで押し問答になる。復讐の連鎖とは概してこういうもので、どっちが先かという話は現在のエリーとアビーが立たされている状況にも通じる。

アイザックはWLFには機関銃も病院もあると主張するが、捕虜はWLFの兵は日々目を覚ましてセラファイトに移籍していると話す。その逆はない、とも。つまり近代的な軍事力を背景に持つWLFと、古典的な信仰心を背景に持つセラファイトの間で均衡が生まれているのだ。

決して次の攻撃目標を答えないセラファイトの捕虜を、アイザックは銃で撃ち抜く。ドラの向こうでそんなアイザックを盲信し、行動の全てを肯定していたのは、11年前に唯一命拾いした元FEDRAの兵士だった。目の座り具合が抜群に良い。

多すぎる敵

WLFが拠点とするチャンネル13には何者かが侵入した痕跡があった。原作ゲームではトミーがエリー達より先に出発しているため、エリー達が行く道にある痕跡は当初はトミーのものだろうと予想されていた。だが、ドラマ『ラスアス』シーズン2第4話ではトミーの要素がないため、明確にセラファイトの仕業であることが示されている。

ジャクソンから来たエリー&ディーナ、WLF、セラファイトの三つ巴の状況。WLFに見つかったエリーとディーナは逃走する中で地下で大量の感染者達に遭遇する。WLFが感染者に襲撃される中ゲームでも描かれた電車を通っての逃走劇が描かれる。色んな意味で敵が多すぎる。

逃げる中でエリーはディーナを守るために右手を差し出し、感染者に噛まれてしまう。ゲームの方ではエリーのガスマスクが壊れてしまい、エリーが自分には免疫があると明かす展開だった。また、回転扉はゲームの進行上プレイヤーが引き返せないようにするための機能もあるが、ドラマでも大量の感染者が入ってこれないようにする役割を果たしている。

ディーナの真実

逃げ延びた二人は劇場へ。ディーナが銃を持って立ち尽くしているのは、噛まれて感染したエリーを自分が殺さなければならないと考えているからだ。ライリーの時とは立場が逆だ。ゲームではもっと穏やかに免疫のくだりは解決していたが、ドラマではディーナが強く警戒して銃を向けており、リアリティが増している。

そしてディーナは、エリーが感染していないことを確認すると、自分が妊娠していることを明かす。冒頭でディーナは薬局に寄っていたが、そこで妊娠検査薬を探していたのである。

ディーナの妊娠をめぐり、ゲームでは二人は口論になるのだが、ドラマでは二人は現実を掻き消すように身体を重ねる。ここから気まずくなっていく原作の展開とは裏腹に、二人はここで結ばれることになる。ディーナはエリーが感染したかもしれないとなった時に見せた強い反応について、「あなたを失えば、私が求めていた未来も失う」と語る。ディーナは二人が子どもと一緒にいる未来を思い描いていたという。

ディーナは幼い頃からバイセクシュアルだったが、親に抑圧され、男性のジェシーと付き合ったがうまくいかなったという。「ありのままの自分を受け入れられなかった」というディーナは、けれどエリーとの出会いを経て、ようやく幸せを掴んだように思える。

エリーは感染者に噛まれる度に上から傷をつけ、タトゥーを彫り、自分に免疫があることを隠してきた。だが、結局のところ大事な人に対して隠し続けることはできなかった。自らの性的嗜好についても素直で、ずっとディーナのことを追っていた。

エリーとディーナの一時の幸せな時間。ジェシーの子どもでもあるから、「私たちみんなの子だ」と喜ぶエリーは逞しい。一方で「私パパになる」と、自分で役割を選ぶことも忘れていない。父のような存在だったジョエルを失ったエリーだが、今度は自分が父になるというのだ。泣ける。

だが、そんな幸せな時間を切り裂くように、セラファイトからWLFへの大規模な攻撃が始まる。無線からはノラの名前が聞こえ、二人はノラからアビーの居場所を聞き出すために立ち上がる。ノラはジョエル殺害の現場にいたアビーの仲間だ。

エリーは負傷者が運ばれているレイクヒル病院に向かうにあたって、妊娠したディーナを置いていこうとするが、ディーナは手を差し伸べて「一緒に」と告げる。ゲームでは妊娠したディーナを置いてエリーの単独行動が始まるのだが、ドラマではエリーとディーナは共に進むことになるのだろうか。

『THE LAST OF US』シーズン2第4話ネタバレ感想&考察

アイザックとパパになるエリー

ドラマ『ラスアス』シーズン2第4話はクィアフレンドリーな回で、ロッカールームトークの爆破から始まり、ディーナのバックグラウンドや、セクシュアルマイノリティ同士の家族の形にも触れられた。

ドラマ『ロキ』ではロキがジェンダーフルイドであることが明かされたが、『ラスアス』におけるケイト・ヘロン監督の舵取りも見事だった。クィアネス描写は『ラスアス』において平常運転というくらいのものになってきており、そうした作品がHBOから出ているという点にも希望が持てる。

シーズン2第4話では、WRFのリーダーであるアイザックが登場。WRFはシアトルを統治していたFEDRAに反旗を翻した民兵組織で、アビーのような元ファイアフライのメンバーも合流している。シーズン2第1話でオーウェンが言っていた「エドの兄弟のアイザックがシアトルで組織を率いてる」という話はWRFのことを指している。

アイザックはアビーにとっては上司であり、エリーにとっては敵のボスということになる。今回アイザックはWLFの背景にある軍事力を誇っており、エリーとディーナにとっては強大な敵が現れることになった。

シーズン2第4話は、ゲームではあまり掘り下げられなかったアイザックの過去が描かれた点は良かった。あわよくば1話丸々使ってアイザックの話も見てみたかったが、次回以降でアイザック短編が描かれることはあるだろうか。

一方、前回は被害者として描かれたセラファイトによるWLFへの猟奇的な報復も描かれた。こうなれば免疫のあるエリーにとっては感染者が一番無害な相手ということにもなってくるが、そこにきてディーナの妊娠が発覚するという展開に。守るものはすなわちその人の弱点にもなる。

また、ゲームとは違ってエリーが早い段階で自分がパパになるという自覚を得る展開も良かった。そうすることで、否応なしにエリーの父として生きたジェシーの思い出が蘇ることになるだろう。シーズン2の残り3話では、ジェシーとの思い出にもフォーカスされることに期待しよう。

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2はU-NEXTで独占配信中。

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原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。

『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。

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シーズン2第5話の解説&感想はこちらから。

シーズン2第3話の解説&感想はこちらから。

シーズン2第2話の解説&感想はこちらから。

シーズン2第1話の解説&考察はこちらから。

ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1最終回のネタバレ解説&感想はこちらから。

ペドロ・パスカルが主演を務める映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日(金) 公開。本予告の解説はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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