ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話はどうなった?
2025年4月よりシーズン2の配信を開始したドラマ『THE LAST OF US』(2023-)。シーズン2ではベラ・ラムジー演じるエリーを中心とした物語が描かれ、全7話の後半に入る第5話が配信された。
ドラマ『ラスアス』はすでにシーズン3の製作が決定しており、原作ゲームの『The Last of Us II』(2020) の内容はシーズン2とシーズン3に分けて描くとされている。シーズン2第5話では一体どんな内容が描かれたのか、ネタバレありで解説&考察し、感想を記していこう。なお、以下の内容はネタバレを含むため、必ずU-NEXTで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第5話の内容に関するネタバレを含みます。
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ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話ネタバレ解説
空気感染という新要素
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2第5話「愛を感じよ」のエピソード監督を務めたのはスティーヴン・ウィリアムズ。ドラマ『LOST』(2004-2010) でエピソードのレギュラー監督を務め、『ウエストワールド』(2016-2022) や『ウォッチメン』(2019) といったSFドラマでもエピソード監督を務めている。2026年配信予定のDCドラマ『ランタンズ(原題)』でも監督を務める予定となっている。
『ラスアス』シーズン2第5話は全体で44分とやや短め。冒頭から登場するハンラハンはドラマオリジナルのキャラクターで、前回冒頭の回想シーンでアイザックと手を結んだ市民のリーダー格として描かれた人物だ。演じるアラナ・ユーバックは、映画『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(2024) ではムーン家の母ノヴァを演じた。
11年が経ち、ハンラハンはWLFのリーダーの一人になったようだ。ハンラハンは軍曹のパクに、病院でWLFの最も優秀な兵士を失った際の話を聞いている。なお、その中でスカーとの休戦協定が破られたとも話している。
死んだ兵士のレオンはパク軍曹の息子だったそうだが、レオンを見捨てざるを得なかった理由として、レオンが潜入した部屋では菌が空中にいたということが明かされる。気づいた時には菌はレオンに空気感染していたのだ。
実はドラマ『ラスアス』ではゲームにあった胞子による空気感染という要素を描かずにここまできていた。シーズン2第5話ではついに“空気感染する菌”という新要素がもたらされる。
原作との違いに注目
エリーとディーナはシアトル2日目。二人が向かうのはアビーの仲間のノラがいると思われるレイクヒル病院だ。空気感染という新たな脅威が待っているとはつゆ知らず、二人はとても幸せそう。不穏すぎる。
エリーは劇場の舞台へ。ギターを弾き「君を失ったら」と歌い始めたところで重い空気がのしかかり、エリーはギターを置いてしまう。原作ゲームではエリーはディーナの妊娠を知った後にここに来て、ギターを弾いてジョエルとの回想シーンが入るのだが、ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話ではその描写はない。
ドラマ版でジョエルの回想に入らない要因は、原作と違いディーナとエリーが既に結ばれているということもあるのだろうか。ジョエルについての辛い記憶に蓋をするようにして、エリーはディーナと病院へ向かう計画を進める。
ディーナはスカー(セラファイト)について、「まるでアーミッシュ」のようだと語り、WLFが無線を垂れ流しにしている理由を、セラファイトが電気を使わないからだと予想する。ドイツ系移民にルーツを持つ宗教集団アーミッシュの人々は自給自足の生活を送っており、移民当時の生活を保持するために原則として電気を使わない。
原作ゲームでは妊娠したディーナを劇場に置いてエリーは単独行動に入るが、ドラマ版『ラスアス』シーズン2第5話では二人は共に病院を目指す。エリーはディーナにやっぱり戻るよう説得するが、そこでディーナはエリーに家族を殺された過去を打ち明けることになる。
ディーナには母と姉がおり、小さい頃に略奪者に殺され、ディーナはその犯人を銃殺したという。この設定は原作を若干改変したもので、原作ではディーナは母を殺した犯人を刺殺し、その後は姉のタリアに育てられたことになっている(ただし、その後タリアも殺されたようである)。
ディーナは、ジョセフへの仕打ちは間違っていた、親族を目の前で殺すなんて、復讐だったとして許されるのか、と問い、自分でも家族を殺した相手を地の果てまでも追うと話す。その上で何かあれば自分の責任だとして、ディーナはエリーと共に進むのだった。
進化する菌類
エリーとディーナはWLFを避けて病院に辿り着くために、巡回がいない建物に到着。突入前にエリーはディーナに「私を愛してる?」と聞くが、ディーナは言葉にするのは苦手なタイプらしく、エリーが「私も——」と言いかけたところで「分かってる」と返して、その答えとするのだった。
エリーどディーナは“賢い感染者”に遭遇。シーズン2第1話でエリーが遭遇したのと同じ種類の感染者で、ゲームでは“ストーカー”と呼ばれる感染者だ。ストーカーはジャクソン近郊に現れていたが、シアトルにも登場したということは、突然変異ではなく菌が進化していると考えられる。
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン1第1話では、温度が34度以上ある環境で生きられない菌類が、地球の気温上昇に適応するために人間の身体を乗っ取ったというパンデミックの経緯が明かされた。パンデミックから四半世紀が経ち、人類の抵抗に直面した菌類は、ある程度人間の知性を残して生存率を上げるストーカーと、感染力を強化するための胞子を通した空気感染という進化の道を歩んだのだろう。新型コロナウイルスによるパンデミックを経験した私たちにとってはリアルな展開だ。
ストーカーの集団 vs エリー&ディーナのシーンは圧巻。本気のゾンビスリラーをたまに見せてくれるのがドラマ『ラスアス』の良いところだ。二人はピンチに陥るも、それを救ったのはジェシーだった。原作ゲームでも単独行動中のエリーを助けてくれるのは、ジャクソンから遥々エリーとディーナを追ってきてくれたジェシーだ。
銃声でWLFにも見つかり、一同は公園へ逃げ込む。ゲームでも描かれる公園でのセラファイト戦だ。WLFは公園に近づこうとしないが、感染者・WLF・セラファイトとジャクソン組による四つ巴の状況がスリリングに描かれている。
ジェシーはエリーとディーナを心配してトミーと共に二人を追ってきたという。エリーは助けてくれたジェシーに少々反発しているが、ディーナと子どもとの未来を邪魔されるかもしれないという無意識の警戒心もあるのかもしれない。さらにジェシーは、手分けして二人を捜しているトミーと合流してジャクソンに帰ろうとエリーを説得するのだった。
ゲームを再現したあのシーン
しかし、まずはこの公園を出なければどうにもならない。セラファイトのナワバリであるこの公園では、セラファイトは独特の口笛を使ったコミュニケーションをとる。WLFの兵士が首を吊られるのも原作ゲームと同じイベントだ。
ゲームのこの段階ではエリーは単独行動で、セラファイトに弓矢で撃たれるというイベントが起きるが、ドラマでは代わりにディーナの足に矢が刺さる。また、このステージでは音を抑えられる弓矢が有効な武器になるのだが、ドラマ版の三人は逃げることしかできない。
そんな中、アビーへの復讐を誓うエリーは、二人を連れ帰りたいジェシーと妊娠していて怪我もしたディーナを置いて、一人レイクヒル病院へ向かうのだった。もちろん、今ならディーナをジェシーに任せられるという見立てもあっただろう。
エリーはアビーの仲間でジョエル殺害の現場にいたノラに接触。「撃ったらみんな皆が集まってくる」「あんたは殺せる」という一連のやり取りはゲームをしっかり再現したものになっている。ノラによる病院内の逃走劇もゲームを再現したものだ。
そしてエリーは、胞子を放出し続ける感染者と遭遇する。ゲームでコロニーと呼ばれる形態を実写化したものだろうか。壁と一体化した感染者には服に「L・パク」の名前が入った者もおり、冒頭で登場したパク軍曹の息子のレオン(Leon)であることが分かる。
赤いライトが照らす中、胞子が飛ぶフロアでノラを追い詰めるシーンも原作ゲームを再現している。『ラスアス』シーズン2第5話では、ノラがエリーに免疫があると気づくこのシーンを再現するために胞子による空気感染をドラマにも導入したのかもしれない。
だが、ノラがジョエルのしたことについて語り出すのはドラマオリジナルの展開だ。ここでエリーは、ジョエルが病院にいた人々を殺し、治療薬を作れたはずのアビーの父親をも殺したと告げられる。しかし、エリーはこれに「知ってる」と答えるのだった。
アビーの居場所を聞き出そうとするエリーは、拒むノラを鉄パイプで殴打。ゲームだとプレイヤー自身でボタンを押して殴打することを求められるシーンだ。鬼の形相でアビーの居場所を聞くエリーの姿を映し出してシーズン2第5話は幕を閉じる……かと思いきや、最後に嬉しい(?)サプライズが待っていた。
ラストの意味は?
エリーがベッドの上で目を覚ますと、ペドロ・パスカル演じるジョエル・ミラーが登場。夕食前に昼寝をしていたエリーを起こしに来たのだろうか「Hi, kiddo」という優しい呼びかけと、それに答えるエリーの幸せそうな表情が泣ける。おそらく回想シーンだと思われるが、先ほどとは地獄と天国くらいの差がある。
エンディングで流れる曲はシアトル出身のバンド、パール・ジャムの「Present Tense」(1996)。「現在形で生きる方が理にかなってる」「この人生がどうやって終わるか想像できる?」「一人で過去の後悔をして過ごすこともできるし、和解することもできる」と歌われている。
ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話では、エリーが劇場で歌を唄おうとしてやめてしまった。この時エリーが歌おうとしていたのは「Future Days」(2013) というゲーム内でジョエルとエリーが歌う曲で、こちらも原曲はパール・ジャムの曲だ。
「Future Days」では「私たちが二人で過ごす未来を信じてる」と歌われるが、ドラマで流れたのは「Future Days」ではなく「現在形で生きる方が理にかなってる」と歌われる「Present Tense」だった。エリーはジョエルとの未来を失い、今、復讐に生きている。
ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話ネタバレ感想&考察
ジョエルとの回想に期待
ドラマ『ラスアス』シーズン2第5話は、エリーがセラファイトの公園を抜けて、ノラのもとまで辿り着いた。ゲームで描かれたジョエルとの回想シーンはお預けとなっている。だが、本エピソードの終わり方を見るに、シーズン2第6話では丸々1話を使ってジョエルの回想回になる可能性は高いと言える。
ゲームとの違いは、エリーは今ディーナとその子どもとの未来を思い描くことができているという点だ。ジョエルとの未来はなくなったが、ジョエルとの過去を通して新しい未来に向けて歩み出すきっかけを掴むことはできるのだろうか。
アビーの動向が描かれない状況が続き、シーズン2第5話はアイザックも登場しなかった。一方でハンラハンとパク軍曹というWLF側の新キャラクターが紹介され、更に群像劇っぽさが増している。
WLF・セラファイト・ジャクソンと、それぞれのコミュニティーで大事なものを失い、復讐に生きる人々の姿が描かれていくが、着地点はどこになるのやら……。人類を横目に進化を続ける菌類との差が辛い。
復讐を生きる人々と進化する菌が交差するドラマ『ラスアス』シーズン2。せめて第6話はエリーとジョエルの平和な日々が描かれることに期待したい。シーズン2も残すところあと2話。どんな形でシーズン3へと繋がるのか、引き続き目が離せない。
ドラマ『THE LAST OF US』シーズン2はU-NEXTで独占配信中。
原作ゲームの『The Last of Us』はPS5リメイク版が発売中。
『The Last of Us』と続編『The Last of Us II』はPS4でも発売中。
ゲーム版のアート集はG-NOVELSから発売中。
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ペドロ・パスカルが主演を務める映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』は2025年7月25日(金) 公開。本予告の解説はこちらから。