『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話&第3話はどうなった?
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2の配信が2026年3月よりスタート。2025年に配信されたシーズン1に続き、デアデビルことマット・マードックによるニューヨークの街を守ための戦いが描かれる。かつてNetflixで配信されていたドラマ『デアデビル』(2015-2018) を引き継ぎつつ、同作を中心とする〈ディフェンダーズ・サーガ〉をMCUに合流させた本作は、シーズン2でさらなる展開を見せる。
今回は、2026年4月1日(水) に同時配信された『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話と第3話を合わせて解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話および第3話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話ネタバレ解説
シスター・マギーとは
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話は、前回と同じくアーロン・ムーアヘッド&ジャスティン・ベンソンが監督、ダリオ・スカーダペインが脚本を手がける。前回、キングピンが取り仕切る軍用武器の密輸船を沈めたデアデビル。ラストでは、自警団制圧チームのAVTFに覆面を引き剥がされるまさかの展開が待っていたが、ブルズアイと思われる人物の助けによってことなきを得ている。
一方で、デアデビルを手伝って調査を行なっていたチェリーは重症負ってしまっている。前回ラストで投げ込まれたナイフには「礼はいい(YOU’RE WELCOME)」と、送り主がブルズアイであることを示唆する“的”の絵が描かれていたが、デアデビルはこれを指でなぞって確認している。あの文字列はナイフに彫り込まれていたようで、ブルズアイことポインデクスターも目が見えないマットが読めるように工夫していたことが読み取れる。
そのポインデクスターは教会を訪れて「シスター・マギー」はいるかと尋ね、神父からシスター・マギーはローマにいると返答されている。シスター・マギーはドラマ『デアデビル』に登場した人物で、マット・マードックの父の死後、マットの世話をしていた。実際にはシスター・マギーはマットの実の母で、負傷したマットを匿った後、マットもその事実を知ることになった。
そして、シーズン1に続きポインデクスターには青いライトが当てられている。シーズン1では青いライトはポインデクスターの混乱を表現する演出として用いられており、今回はマットの母であるシスター・マギーを狙っているのではないかと疑わせる演出として機能している。
その直後にボクシングに取り組むキングピンことウィルソン・フィスク市長のシーンが挿入されるのは、マットの父がプロボクサーであった過去を想起させる。マットの父と母が出会ったのも地下ボクシングの会場だった。
フィスクはチェリー襲撃へのポインデクスターによる介入を察知。『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話のオープニングは、今後やってくる赤いデアデビル、青いブルズアイ、白いキングピンによる三つ巴の展開を予感させる内容となっている。
ヒーローか、ヴィジランテか
ブルズアイの意図を掴みかねるマットとカレンだったが、とにかくFBIを動かしてフィスクの逮捕を目指すことに。ドラマ『デアデビル』でも、警察を取り込んだフィスクに対してFBIが強力な対抗軸になった過去がある。ポインデクスターも元はと言えばフィスクを担当していたFBI捜査官だ。
二人はアストリアにあるギリシャ料理店エーゲ・ガーデンズのオーナー、アリアナを頼ることにするのだが、そのアリアナは逮捕されてしまっていた。そんな中、バック・キャッシュマンはフィスクにデアデビルがマットだと公表することを提案。しかし、フィスクはこれを拒否する。
フィスクはやはりお互いの秘密を守る「約束」はすでに放棄していて、「市長の命を助けた盲目の弁護士」という、マットに対する世間の評価を気にしている様子。そこでフィスクは、今回のブルズアイによる襲撃をマットを狙ったものとして公表することに。つまり、フィスクとマットは共にブルズアイから命を狙われているという体裁を作り出したのだ。
フィスクが会見で「マット・マードックは……ヒーローです(Matt Murdock is … a hero.)」と言う場面は、トニー・スタークによる「私がアイアンマンだ(I am … Ironman.)」を想起させる。一瞬だけ正体暴露に見せかける巧い演出だ。
フィスクはマットを「悪人」ではなく「行方不明になった善人」として手配し、市民に探させるという手段に打って出る。「Let’s bring hero home.」というキャッチーなスローガンをまたもや思いついたようである。
この戦略が巧みなのは、フィスクが悪とする「ヴィジランテ」と、世間の人々が心を寄せる「ヒーロー」を使い分けている点だ。ヒーローを国連の管理下に置くソコヴィア協定の時にもスティーブ・ロジャースが懸念していた、“誰が正義を決めるのか”という問いにも通じる展開である。
翻弄する者、される者
相変わらず「ニューヨークは今が最高」というインタビューを発信するBBレポートの後、前回紹介された謎のフィスク市長批判動画について、ダニエルとシーラが議論を交わしている。「出どころ不明」であり「騒がない方がいい」と言うダニエルは、内部から情報がリークしたとフィスクに責められることを恐れているのである。
一方のシーラはフィスクに共有するよう助言している。悪い情報から共有するというのは組織運営の鉄則だ。ダニエルの未熟さが表れているシーンでもあるが、同時にダニエルはBBから自分が情報を盗られていることに勘付いてもいるのだろう。
AVTFからはデアデビルとして、市民からはマット・マードックとして追われる身になったデアデビル/マット・マードック。ややこしいのは、フィスク側の人間でもパウエルはデアデビル=マット・マードックと知らないということだ。
だからパウエルはマットをオフィスに連れてきてデアデビルは殺すと、不可能な目標を立てている。これはつまり、マットがマットとして保護されれば、デアデビルとしての死は避けられるということを意味しているのかもしれない。
中盤のヘザーとバネッサの会話でも、ヘザーがマットは「デアデビルに殺されたのかも」と言うと、バネッサは「それはない」とキッパリ否定する。フィスクたちはヴィジランテの危険性を訴えているのに、デアデビルはマットに危害を加えていないと断言するのは矛盾している。この矛盾はいつかどこかでフィスク陣営の命取りになるかもしれない。
そして、『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話では、シーズン1に登場したコール・ノースがAVTFに復帰する。コールはホワイトタイガーことヘクター・アラヤを殺した人物で、シーズン1の最終話ではデアデビルとパニッシャーと対峙し、手榴弾で自爆したかに思われていた。コールは生きていたのである。
一方、AVTFに殺されかけたチェリーの病室には再びAVTFの面々が訪れるが、チェリーを囲むようにして病室にいたのはチェリーの元相棒アンジー・キムやベテラン刑事の面々だった。警察の中にもAVTFと戦う善意の人々はいる。希望が垣間見えるシーンだ。
しかし、退散したAVTFの隊員は直後にブルズアイによって殺害されてしまう。チェリーもすぐに病室から消え、まるでブルズアイがチェリーを守っているかのようだ。思えば前回ブルズアイがデアデビルを助けたのもチェリーが襲撃された現場だった。
キングピンはブルズアイがレジスタンス側、つまりデアデビルらヴィジランテと市民の連合の側にいるのではと疑っていた。フィスクは、情報のリークについてブレイクを責めつつ、ガロ市警本部長の自動車事故現場に「CITYWITHOUTFEAR(恐れなき街)」と書かれたカードがあったとブレイクに告げている。
ガロ本部長はシーズン1の最終回でキングピンの横暴について知事や最高裁に掛け合おうとしたが、シーラがそれをキングピンに密告したことでキングピンに殺害されていた。キングピンはガロの死を自動車事故に偽装し、さらにレジスタンスの仕業に見せかけているのだ。
それぞれの“後継者”
権力を掌握したキングピンことウィルソン・フィスクだが、『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話では「この街だけに留まる気はない」と意外な発言も飛び出す。まさかこのまま大統領の座まで狙い始めるのか?
このシーンではフィスクに「後継者がいない」ということにも触れられる。ドラマ『エコー』(2024) では娘のように育ててきた(とフィスクは思っている)マヤ・ロペスを後継者にしようとしたが失敗している。原作コミックではリチャード・フィスクとバイロン・“ブッチ”・ファリスという二人の息子の存在が知られているが、MCUでも紹介されることになるのだろうか。
バネッサの「あといくつ世界を征服したいの?」という問いに対し、フィスクが「あといくつある?」と聞き返すシーンも。MCUのマルチバース展開を想起させるファンサービスだろうか。ちなみに『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018) ではキングピンの計画によってマルチバースのゲートが開かれている。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話では、ホワイトタイガーことヘクター・アラヤの姪アンジェラも登場。コンビニで万引きする少年に銃を向けた店主は、これを「自警行為」とされてAVTFによって逮捕。それを止めようとしたヘクターの妻でアンジェラのおばにあたるソレダードも逮捕されてしまう。何でもかんでも理由をつけてしょっぴくAVTFは、現実のICEを見ているかのようだ。
アンジェラはキルスティンの事務所に現れると、おばさんがAVTFに連れて行かれたと打ち明ける。キルスティンの事務所はマットがいた頃におじのヘクターを無罪に導いている。そして、ヘクターの遺品であるホワイトタイガーのお守り「タイガー・アミュレット」が映し出されるのだった。アンジェラがいよいよホワイトタイガーを引き継ぐことを示唆する展開だ。
ブレイクの方は、やはりBBが自分から得た情報をもとにフィスクを批判する動画を流していると気づいており、BBに忠告する。一方のBBは、フィスクがガロ本部長やBBのおじの死に関わっていることを示唆するが、ブレイクはスタンスを変えようとしない。
そう、ブレイクはフィスクを恐れるあまり見て見ぬふりをしているのだ。恐れているだけではない。今の暮らしを手放したくないという保身に走ってもいる。フィスクによる飴と鞭の使い分けがこれ以上ないくらいに効いている。
だが、BBも折れない。その原動力は正義の心か、復讐心か。フィスクを揶揄する新たな動画が撮影されると、マスクを被って動画を撮っていた人物がやはりBBであったことが明らかになる。BBもまた“マスク”を被って戦っていたのである。
バネッサの悪夢とブルズアイの過去
アンジーはジョージーにチェリーの無事とAVTFの襲撃を伝える。警察内部に味方がいるのはありがたい。アンジーが去り際に言う「抵抗しよう、反乱だ」は、英語では「Resist. Rebel.」と言っている。「Resist. Rebel. Rebuild.」は『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2のスローガンとなっているが、今はまだ「Rebuild(再建)」までは考えられないという状況が示されている。
恐怖の中で暮らしているのは市民だけではない。眠るバネッサの枕元には青いバラが置かれており、バネッサが目を覚ますと窓の外が青いライトで照らされる。そしてバネッサは一瞬にして外の世界へ。『アガサ・オール・アロング』(2024) のような雰囲気がある。
そこに転がってきたのは野球ボール。ドラマ『デアデビル』シーズン3第5話では、ブルズアイことポインデクスターのオリジンが描かれ、少年時代に野球チームのコーチにボールを投げて殺害していたことが明かされた。
事件は事故として処理され、ポインデクスターは彼が故意にコーチを殺したという秘密をカウンセラーと共有し、特定の女性に対して異様な執着を見せるようになっている。「秘密を共有している」という意味では、フォギー暗殺の指示を出したバネッサとも近い関係になっていると言える。
バネッサはこのシーンでペンを渡しているが、これはバネッサが収監中のポインデクスターとフォギー暗殺の依頼を受ける代わりに保釈を取り付ける契約を交わした場面が反映されたものだろう。バネッサは「私を殺したいのね」と問いかけるが、もちろん、これらのシーンは夢で、枕元のバラも青色ではなく赤色だった。
バネッサはブルズアイを恐れているようだが、シーズン1ではブルズアイはバネッサではなくフィスクを撃っている。シーズン2第2話でも、バネッサとヘザーが話しているシーンで、ブルズアイは窓の外からバネッサを見ていたが殺さず立ち去っている。ポインデクスターはバネッサを「北極星(指針となる人間)」と看做し、ストーキングしているのだろうか。
思い出の「パンナ2」
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話のラストでは、バネッサ&フィスクとカレン&マットのいちゃつきが交互に描かれる。共に問題を抱えたカップルだが、互いを愛し、平穏を望んでいることに変わりはない。
唯一の違いは、マットはニューヨークから出るということに関心はなく、フィスクとバネッサは、二人ならニューヨーク以外の場所でもやっていけると考えているところだろうか。カップルとしては後者の方が健全ではあるが……。
カレンが部屋でかける音楽はバーバラ・アクリン「Love Makes a Woman」(1968)。「恋に落ちたことあるけれど、こんなのは初めて」「愛が女性を女性にする」と歌われている曲だ。
だが、カレンとマットが踊り出したのも束の間。AVTFがジョージーズを包囲。デアデビルに変身したマットは、逮捕されそうになっているジョージーを逃すと、AVTFと戦いを繰り広げる。デアデビルはフロアをスライドするクールなアクションを披露している。カレンとマットの部屋にもAVTFが突入。二人にはもはや安寧の場所などないのかと思わされる。
部隊に対処した後、二人が落ち合うパンナ2(Panna II)はニューヨークに実在するインド料理店だが、ドラマ『デアデビル』シーズン2第5話でマットとカレンは二人で食事に訪れている。パンナ2はカレンが初めてインド料理を食べた店でもあり、二人にとっては思い出の場所である。店の下のシャッターには、Fワードとフィスクの名前をかけた「FISK YOU(くたばれフィスク)」という落書きも確認できる。
カレンはマットと合流すると、AVTFの隊員を捕らえたことを明かして『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話は幕を閉じる。カレンの訓練の成果が出たようだ。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第3話ネタバレ解説
消えたヴィジランテたち
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第3話は第2話と同時配信。シーズン2第3話と第4話は、ドラマ『POWER/パワー』(2020) などに参加していたソルヴァン・スリック・ナイームが監督を、『ウォーキング・デッド』(2010-2022) などに参加し、『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1最終回にも共同脚本として参加したヘザー・ベルソンが脚本を手がける。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第3話の冒頭では、前回カレンが捉えたAVTF隊員がフィスクとパウエルに反感を抱いていることが明らかになる。デアデビルは心拍音を頼りに相手が嘘をついているかどうかを見極めることができるが、この隊員は嘘をついていないようだ。二人は、アラン・サンダースと名乗るこの青年をスパイとして活用し、レッド・フック潜入を目指すことになる。
ヘザーは保管していたミューズのマスクと向き合う一方、キルスティンからは第一話で自身が偽装したデュケインの精神鑑定結果について問い詰められていた。元はこの二人は友人で、キルスティンがヘザーとマットを引き合わせたという過去がある。
しかし、ヘザーは「彼は本気で街の安全を守ろうとしている」としてフィスクを支持。極端な政治家の出現によって政治的な立場の違いが個人間の分断に及ぶ、現在の世相が反映された演出だ。キルスティンによると元上司のホックバーグ検事が裁判を前倒しにしたといい、キルスティンは急ぎジャック・デュケインの面会に向かうことになる。
キルスティンが向かった先はレッド・フックの港だった。法律が適用されないこの場所にデュケインたちは捕えられていたのである。キルスティンはジャックの裁判が最初の判例になるとして力を入れている。フィスクは出資を断られたことへの個人的な復讐として、ジャックを自警団として裁こうとしており、ジャックに有罪判決が出ればその行為にお墨付きを与えることになるからだ。
ジャックがこの状況を「ナシオン広場のギロチン」と表現するが、これはフランス革命期に貴族が公開処刑として広場で首を刎ねられたことを指している。現状のニューヨークにおいてはジャックはレジスタンス側だが、あくまで“貴族側”としてのスタンスを守っているようだ。
一方のマットは、AVTFの隊員を捕虜にして利用したカレンのことを「フランクみたい」と言っていた。パニッシャーことフランク・キャッスルはシーズン1のラストでAVTFに捕まり、脱獄したりき姿を現していない。
これまでは自分たちを助けてくれたとして、「この状況でどこかに潜んでる?」と訝しがるカレンに、マットは「いつも通りね」と答えている。カレンのこの“苦情”がメタ的で笑えるのは、ほとんど全てのニューヨークのヒーローに当てはまるからだ。『サンダーボルツ*』(2025) の危機にもスパイダーマンやデアデビルは現れなかったし(陰で戦っていたかもしれないが)、基本的に他者の戦いに無関心なのか、あるいは個別の事情を抱えていることが多いのがMCUのヒーローたちだ。
マットはあくまで、「殺しは必要ない」として、フランクの助けなしで今回の券を片付けようとしている。「フォギーが望むか?」「この社会にまだ正義は存在する」、その言葉は自らの“デビル”に言い聞かせているようでもある。
マキャフリー州知事の警告
だが口だけではない。カレンは、フォギーが裁判で公開しようとしていた1855年発行のレッド・フック宣言の資料をニューヨーク州知事に送っていた。初上場となるマキャフリー州知事は、現実の現職ニューヨーク州知事キャシー・ホウクルをモデルにした人物と思われる。キャシー・ホウクルは女性初のニューヨーク州知事で、民主党所属の政治家だ。
そしてこのマキャフリー州知事の強キャラ感。ウィルソン・フィスク市長と面会した知事は、CIAを使って州司法長官を黙らせ、財政支援を拒否したことを詰めていく。レッド・フックの自由港としての特権は知事であれば取り消すこともできるという。
米国は、独立した州の連合体(ユナイテッド・ステイツ)として生まれた経緯から、州の長である州知事には強い自治権が認められている。ドラマ『ミズ・マーベル』(2022) では、連邦(国)の組織であるダメージ・コントロール局に、州の配下にあるニュージャージー市の警察が対抗する場面も描かれた。
連邦組織であるCIAからの加護を受けようが、州知事は連邦と戦う権利と義務があるし、市長よりも強い権限を持つ。なお、シーズン2第1話で登場し、CIAからの圧力に屈した州司法長官は、州知事と同じく選挙によって選ばれる人物で、知事とは並列の権力を持っている。ともあれば大統領とも渡り合うことになる州知事の登場によってゲームは大きく動き出す。
マキャフリー州知事は、治安回復計画や自警団の裁判は有権者たちにとって有益だからフィスクの行いには目を瞑ってきたというが、不審な荷物を乗せた船の件については見逃せないと話す。マットの状況も大変だが、フィスクもフィスクで次から次へと敵が現れる厳しい状況だ。
バック・キャッシュマンの過去
1時間後に知事との会食を控え、バックとダニエルは仲良さげに話をしていたが、ダニエルはバックが過去にヘレフォードシャーで尋問スキルを磨いたのかと問いかける。ヘレフォードはイギリス陸軍の特殊部隊SASの基地があるイングランドの地名だ(「シャー(shire)」は「群」にあたる)。
ダニエルはバック・キャッシュマンはSAS出身の人物であることをリサーチで突き止めたのだ。バック・キャッシュマンは原作コミックで米政府の秘密工作員だったという設定があるが、MCUでは演じるアーティ・フラウスハンがイギリス系ということでこの設定になったのだろうか。ちなみに、「バットマン」では作品によって、執事アルフレッド・ペニーワースがSAS出身で、そのスキルによってのちにバットマンとして活動するブルース・ウェインを鍛えたという設定もある。
バックは、そんなことより「恐れなき街」の動画のリーク犯を見つけろ、自分に先を越されたいかとブレイクに忠告。ブレイクからすれば、バックが調査に乗り出せば自分の失態を見つけ出すだろうという緊張感のある状況だ。それでもBBによる動画投稿は終わらず、フィスクの本音を語っているかのようにその狙いを暴露する動画が流れ続けるのだった。
そして、『デアデビル:ボーン・アゲイン』序盤の最大の山場になるジャック・デュケインの裁判が開かれる。裁判長は明らかに検察に有利なように裁判を取り仕切っている。キルスティンは裁判も前倒しされるなど、正当な弁護を与えられていないと主張。裁判を一旦止めた上で、中継のマイクが拾うように「一つの証拠もない」と発信する賢い動きも見せる。
それでも、ジャック・デュケインは自警団取締法に違反した共謀罪と自警活動について有罪を宣告される。法によって正義が歪められる、クラシックな「デアデビル」の展開である。だからニューヨークの街はデアデビルを必要とするのだ。
州知事の食事会では、知事は「政界のマザー・テレサ」と呼ばれている。ダニエルはなんとか州知事の秘密を手に入れようとしているが、フィスクの狙いはもちろん、お得意の脅迫に持ち込むためだろう。
一方のバネッサは、ヘザーとバックをくっつけようとしていた。珍しく饒舌なバックは状況を分析してヘザーに語る。「ダニエルは道化師?」と聞くヘザーに対し、バックは「思わぬ素質があった」「評価は上がった」と認める。バックは自身の過去を嗅ぎつけたダニエルをむしろ評価しているようだ。ちなみにバックは自身を騎士(ナイト)と評価していて、ここでもイギリスの香りを漂わせている。
この場面でフィスクは乾杯の挨拶をしようと試みるが、知事が奪取。「あなたは優れたビジネスマンです」という言葉は、「政治家向きではない」というメッセージの裏返しだろう。
レッド・フックの戦い
裁判に負けたキルスティンが飲んだくれているバーでは、テレビでBBレポートの映像を流用するニュースが流れている。BBレポートは権力側の独占情報を出せるようになったのだ。報じられているニュースは、フィスクがチャリティーでボクシングの試合をするという内容になっている。
カレンはキルスティンに接触すると、キルスティンをオフィスで待っていたのはデアデビルだった。デアデビルはデュケインと面会していたキルスティンからレッド・フックの間取りを聞き出す。キルスティンは目隠しした状態で面会に連れてこられていたが、風の音や光の情報を頼りにデアデビルは状況を脳内で再現したのだ。
聴覚をはじめとする感覚が異様に発達したこのデアデビルのスーパーパワーが、『デアデビル:ボーン・アゲイン』を単なるポリティカル・スリラーに押し留めず、スーパーヒーロードラマとしても魅力ある作品にしている。
デアデビルは、カレンが捕まえたアラン・サンダースにもらったカードでロックを解除。カレンと話していた「潜入して武器を燃やす」→「騒ぎを起こして拡散」→「知事に託す」というプランを実行する。司法が機能しないのであれば実力行使しかない。
デアデビルは最初に船に侵入した時に武器の中に仕込んだ時計の音を聞き取るが、その方向とは反対のドアに人の声を察知。ジャックを含む、そこに閉じ込められていた人々を解放するのだった。壁を見るにシーズン1の最後にジャックやフランクが捕まっていた場所とは別のようだが、マットが人を助けている姿を見ると、そういえばフランクは他の人はほったらかして逃げたのよね、と思ってしまう……。
デアデビルはジャックにも武器を与え、警備とバトル。『デアデビル:ボーン・アゲイン』ではお馴染みになった長回しに見えるアクションシーンとスリリングなカメラワークが展開される。デアデビルは、殺してはいないのかもだが、鉄の棒を相手に突き刺すなどバイオレントな戦いを見せている。
なお、ドラマ『ホークアイ』(2021) ではジャックは終盤、ケイト・ビショップと共闘している。ソーズマンは割と誰とでも相性よく戦えるサイドキック特性を持つ便利キャラなのかもしれない。
さらにさらに、レッド・フックにはホワイトタイガーのアミュレットを引き継いだアンジェラも登場。キルスティンからヘクターの遺品を受け取り、おばを助けに来たのである。カレンはあくまでアンジェラを子どもとして扱うが、アンジェラはしっかりはっきり「助けに来た」と伝える。確かに今、助けが必要なのはカレンとマットの方だ。
デアデビルが捕まっていた人を逃がそうとする中、AVTFの隊員は一斉射撃を浴びせるが、そこにカレンとアンジェラが装甲車で合流。発砲するカレンはなんだかフランクに似てきた。そしてジャックが装甲車を運転して捕まっていた人々を逃すことに。ジャックは大活躍の回だった。
AVTFもそれを追おうとするが、車両のタイヤには爪痕のような切り傷があり断念。アンジェラの仕業だろう。アンジェラのナイフに彫られた「H.A.」は、ヘクター・アヤラのイニシャルを示している。
捕まっていた人々を助けることに成功したデアデビルだが、本来の目的は密輸入された武器の存在を世間に暴露にすることだ。マットは人命救出を優先して武器の件を一旦諦めたのだ。その報告を受けたフィスクは、これを好機と捉えてノーザンスター号を爆破。武器を運び出した証人である作業員を殺したのだった。この爆破事件はデアデビルの仕業として報道されることを示唆して、ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第3話は幕を閉じている。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話&第3話ネタバレ感想&考察
アッセンブルが続くか
同時配信された『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第2話と第3話は、カレンとマットを中心とするレジスタンスによる最初の大きな戦いを描き出した。デアデビルと鍛えたカレン、そしてソーズマンことジャック・デュケインとホワイトタイガーになりつつあるアンジェラ・デル・トロがヴィジランテとして手を組んだのだ。
全9話で構成される『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2では、この調子で3話ずつを目処に小さなアッセンブルを繰り返していくのではないだろうか。次回はMCUドラマではサプライズ回になることが多い第4話。そろそろジェシカ・ジョーンズの登場もあるだろうか。ちなみに『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1の第4話は、パニッシャーことフランク・キャッスルが6年ぶりに復活したエピソードになっている。
一方、シーズン2第2話ではブルズアイの存在が強調されたが、シーズン2第3話のヴィジランテの共闘には加わらなかった。キングピンの命は狙うがマットやチェリーを助け、バネッサの動向を監視しているブルズアイの行動原理はよく分からない。
仮説として考えられるのは、ブルズアイことポインデクスターはバネッサを振り向かせたいと思っており、夫であるフィスクを殺そうとした、だがそれに失敗したため、フィスク市長の失脚のためにはデアデビルらレジスタンスを支援した方がいいと判断している、という線だろうか。
願わくば、シーズン2の最終回では2代目ホワイトタイガーにソーズマン、ブルズアイ、パニッシャー、ジェシカ・ジョーンズ、ルーク・ケイジ、アイアン・フィスト、2代目ホークアイにスパイダーマンまでアッセンブルしてくれればとは思うが、このうち何人が登場することになるだろうか。
なお、シーズン2第3話ではギリシャ料理店エーゲ・ガーデンズのオーナー、アリアナも逮捕された後にデアデビルに助けられ、ジャックと共に逃亡したものと考えられる。シーズン2第1話の終盤ではノーザンスター号の一等航海士クリストフィがエーゲ・ガーデンズのアリアナのもとに逃げ込んでいた。武器の密輸を証言できるクリストフィの行方にも注目だ。
州知事の動きは?
気になるのは、シーズン2第3話で初登場となった知事の動きだ。知事には反逆罪と弾劾以外を恩赦する権限もあるため、最終的に罪を着せられたヴィジランテたちに恩赦を与えることもできる。2015年、トニー・スタークを演じたロバート・ダウニー・Jr.の薬物・銃器関連の犯罪歴に恩赦を与えたのも当時のカリフォルニア州知事である。
また、市長には市警察の指揮権しかないため、フィスクはAVTFのようなチームを作っているが、知事には州警察と州軍の指揮権がある。権力の差に圧倒的な違いがあるのだ。
だが、最大の壁はウィルソン・フィスクが正当な選挙で選ばれた市長だということだ。ニューヨーク市の人口はニューヨーク州の人口の40%ほどを占めており、知事が強権的に市長の動きを封じ込めれば、次回の知事選挙に影響を及ぼしかねない。それだけでなく、知事が所属する政党に非難が集まり、国政選挙や大統領選にも影響が出るだろう。
なので知事は実力行使には慎重にならざるを得ず、ゆえに今回マットが試みたようにフィスクによる不正の証拠を手に入れる必要があるのだ。加えて、知事が動き出した時にCIA長官のヴァルが黙っているのかどうか、知事が国と戦う意思を見せるかどうかという点も見どころになりそうだ。
これはめちゃくちゃ余談だが、民主党の牙城であるニューヨークのブルックリン選出で下院議員になったバッキー・バーンズは、マキャフリー州知事の支援を受けていたのかもしれない。仮にマキャフリーがバッキーを応援していたと考えると、また少し見え方が変わってくるのがMCUの面白いところだ。
果たして、そのマキャフリー州知事に“裏”はあるのか、キングピンはどう立ち向かい、デアデビルはどう闘いを展開していくのか。引き続き目が離せない。
ドラマ『デアデビル:ボーン・アゲイン』はディズニープラスで独占配信中。
MCUスパイダーマン誕生の裏側に迫る『スパイダーマン:ホームカミング アート・オブ・ザ・ムービー』はKADOKAWAより3月27日(金)発売。
MCUの多数のコンセプトアートを収録した『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』はKADOKAWAより発売中。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2第1話の解説&考察はこちらから。
『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン1最終回の解説&考察はこちらから。
バッキーの政治家としてのキャリアについての解説&考察はこちらから。
『ワンダーマン』シーズン2の情報はこちらから。
【ネタバレ注意】『ワンダーマン』全話の解説&考察はこちらから。
『ワンダーマン』に見た〈ミュータント・サーガ〉の前触れとなる設定の考察はこちらの記事で。
ドラマ『ヴィジョンクエスト(原題)』についてはこちらの記事で。
『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』予告編の注目ポイントはこちらから。
『パニッシャー』単独スペシャルドラマの情報はこちらから。
