『悪魔と夜ふかし』で描かれる悪魔降霊番組
2023年、とある番組の封印されたマスターテープが発見された。番組のタイトルは『ナイト・オウルズ』。『ナイト・オウルズ』はシカゴの元ラジオ・アナで人気司会者のジャック・デルロイと、サブMCのガス・マコーネルの軽快なトークと音楽、コントで人気を博していた番組だ。
しかし、それは過去の話。全盛期の1970年代前半に比べ、1977年頃にはジャック・デルロイの最愛の妻であるマデリン・ハーパーの死去もあり、番組の人気は低迷しつつあった。ジャック・デルロイと『ナイト・オウルズ』のプロデューサーであるレオ・フィスクは大規模なてこ入れを敢行する。
ジャックたちが起死回生の一手として選んだのは、ハロウィーンに“悪魔憑き”の少女を呼び、生放送で悪魔を出演させるというものだった。その企画のため、悪魔崇拝のカルト教団から救い出された“悪魔憑き”と呼ばれるリリーとその保護者である心理学者のジューン・ロスミッチェルが『ナイト・オウルズ』に生出演することになる。
自称“霊能力者”のクリストゥや超常現象否定派の元奇術師のカーマイケル・ヘイグの出演もあり、『ナイト・オウルズ』の生放送は大成功になると思われた。だが、少しずつ歯車が狂っていくように、リリーは身体に不調をきたし、“悪魔憑き”は本物の様相を呈し始める。
果たして、『ナイト・オウルズ』の運命はどうなるのだろうか。そして、何故ハロウィーンの生放送のマスターテープは封印されていたのだろうか。すべての答えは『ナイト・オウルズ』のハロウィーン生放送のマスターテープの中にある。
オーストラリア発のフェイクドキュメンタリー
ここまで長々と書いてきたが、『悪魔と夜ふかし』はフェイクドキュメンタリー、つまりフィクションだ。『パラノーマル・アクティビティ』(2007)などと同じく、フィクションを実際に起きた事件かのように撮影する作品をフェイクドキュメンタリーと呼ぶ。
コリン・ケアンズとキャメロン・ケアンズたちケアンズ兄弟が監督を務めた『悪魔と夜ふかし』は、オーストラリアのホラー映画だ。主人公のジャック・デルロイを務めるのはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の「アントマン」シリーズでヴェブを演じ、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)ではポルカドットマンを演じたデヴィッド・ダストマルチャンだ。
『悪魔と夜ふかし』のナレーションを務めるのは『トップガン』(1986)の教官役などを演じた名脇役のマイケル・アイアンサイド。他にもジューン博士役にはローラ・ゴードンなど、オーストラリアで活躍している俳優たちが揃っている。名俳優たちによって70年代に社会現象となった悪魔崇拝への恐怖を映像化したのが『悪魔と夜ふかし』だ。
「ホラーの帝王」という異名を持つ小説家のスティーヴン・キングは、『悪魔と夜ふかし』を「実に見事だ。目が離せなかった」と高く評価している。『エクソシスト』(1973)や『キング・オブ・コメディ』(1983)といった70年代から80年代にかけての名作映画へのオマージュを盛り込んだ『悪魔と夜ふかし』は2024年の注目映画の一本だと言えるだろう。2024年のハロウィーンは『悪魔と夜ふかし』で決まりだ。
『悪魔と夜ふかし』は2024年10月4日(金)より全国の劇場で公開。
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