『シビル・ウォー アメリカ最後の日』10月4日公開 これはフィクションか、ノンフィクションか | VG+ (バゴプラ)

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』10月4日公開 これはフィクションか、ノンフィクションか

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スタジオA24期待の新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

「もしアメリカ合衆国大統領が憲法を変え、独裁者と化し、3期目に突入したら?」。荒唐無稽なようで、どこか現実感のある設定をもとにアレックス・ガーランド監督が撮った『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が2024年10月4日(金)に全国の劇場で公開される。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、共和党の支持基盤である“赤い州”ことテキサス州と、民主党の支持基盤である“青い州”ことカルフォルニア州が西部勢力として手を組む。そして、ファシストと化した大統領率いる政府軍と内戦を繰り広げることになる。

右派で保守層の多いテキサス州と、左派でリベラル層が多いカルフォルニア州が手を組んで大統領を倒そうとするなど、それこそ荒唐無稽に思われるだろう。しかし、アレックス・ガーランド監督は言う。右派と左派が手を組むことは、ファシストを倒すことより難しいのかと。

アレックス・ガーランド監督曰く、これは単なる警鐘ではない。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、今まさに起きようとしている現実なのだ。アレックス・ガーランド監督は日本での試写会上映後のインタビューで、「トランプ前大統領を選出するな」と強い言葉を残した。

これは『シビル・ウォー アメリカ最後の日』でアメリカ分断を引き起こしたファシストの大統領のモデルがドナルド・トランプだったからではないだろうか。そして、そのようなファシストと戦うためには右派や左派、保守やリベラルも関係無く手を取り合って戦うべきとアレックス・ガーランド監督は伝えたいのではないのだろうか。

ヒーローとして描かれるジャーナリスト

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の主人公は西部勢力ではなく、政府軍でもない。主人公は西部勢力に密着し、14か月取材を受けていない大統領への単独インタビューに挑むジャーナリストたちだ。

アレックス・ガーランド監督は政治風刺漫画家の息子として生まれ、ジャーナリストに囲まれて育った。その影響は主人公たちにも出ており、キルステン・ダンスト演じるリー・スミスはリー・ミラー、ケイリー・スピーニー演じるジェシー・カランはドン・マッカランという2人の戦場カメラマンから名前が取られている。

なぜアレックス・ガーランド監督はジャーナリストを主人公に選んだのだろうか。それには、現在のジャーナリストたちが置かれている立場を危惧しているからだという。現在、ジャーナリストはデモの取材で、デモ参加者から唾を吐きかけられるなど暴力を受けることが多いとアレックス・ガーランド監督は日本での試写会上映後のインタビューで話した。このようにジャーナリズムが信用されない世の中には、問題があるとアレックス・ガーランド監督は語る。

その一方で、アレックス・ガーランド監督はジャーナリストたちに対しても危機感を抱いているとも語った。現在のジャーナリストはかつての淡々と真実を告げるようなジャーナリズムが無くなりつつあり、政府のプロパガンダや企業からの利益を取る商業主義が濃くなってきていると感じるとのことだ。

ジャーナリズムへの危惧、現実に起きている社会の分断、ファシズムの台頭。世界中が一つにまとまることなく、散り散りになっている現代に極限までリアリティを追求した『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は何を訴えかけるのだろうか。

映画館で見るべき映画

アレックス・ガーランド監督の演出、俳優たちの演技と共に『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のリアリティを生んでいるのは戦闘描写だ。今回、シビル・ウォー、つまりアメリカの内戦である南北戦争を題名に冠しているだけあって、軍人たちの描写がお粗末ではすべてが台無しになる。

緊迫感を出すためにアレックス・ガーランド監督は兵士役に退役軍人を多く起用したとのことだ。つまり、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の西部勢力と政府軍の戦いは、実際の軍人たちの動きをそのまま反映させているのだ。

それに加え、俳優たちが驚くほどの量の火薬を使った空砲など、退役軍人たちがより現実的に動けるように工夫がなされている。空砲の爆音は撮影中に警察を呼ばれてしまうほどだった。

『シビル・ウォー 最後の日』は戦場のリアリティを感じる意味も含め、劇場で観るべき映画だと言える。西部勢力と政府軍の内戦の行方はどうなるのか。リーたちの運命は。その結末は劇場で見届けてほしい。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は2024年10月4日(金)より全国の劇場で公開。

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』公式サイト

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鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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