Netflixドラマ『ガス人間』配信開始
1960年に公開された本田猪四郎監督の映画『ガス人間㐧1号(ガス人間第一号)』を原作にしたドラマ『ガス人間』が、2026年7月2日(木) よりNetflixで独占配信を開始した。ヨン・サンホとリュ・ヨンジェが脚本、片山慎三が監督を務め、韓国のWOW POINTと日本のTOHOスタジオによる共同制作という布陣で、ガス人間が蘇った。
今回は、Netflixドラマ『ガス人間』をネタバレありで解説し、感想を記していこう。なお、以下の内容は最終回の結末までの内容を含むため、必ずNetflixで本編を視聴してから読んでいただきたい。なお、本作は自殺に関する描写があり、本記事でもその内容を扱っているのでご注意を。
以下の内容は、ドラマ『ガス人間』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
Netflixドラマ『ガス人間』ネタバレ解説
原作の共通点とオマージュは?
2026年にリブートされたNetflixドラマ『ガス人間』では、主人公の刑事・岡本賢治を小栗旬が演じる。小栗旬は『匿名の恋人たち』(2025) に続くNetflixドラマでの主演となる。記者の甲野京子を演じるのは蒼井優。岡本賢治と甲野京子は原作『ガス人間第一号』でも中心となったキャラクターだ。
2025年に配信されたNetflix映画『新幹線大爆破』は、1975年の『新幹線大爆破』の実質的な続編となっていたが、『ガス人間』の場合は原作と同名のキャラクターが主人公という点が特徴だ。つまり、過去の作品とは繋がりのない完全リブート作品となっているのだ。
ドラマ『ガス人間』では、テレビ局JNTの生放送で環境エネルギー工学の教授である佐野久伍が爆発する事件から幕を開ける。原作の『ガス人間第一号』では、佐野久伍は水野という人物を実験の失敗によってガス人間にしてしまった張本人で、実験直後に水野に殺されている。
ドラマ『ガス人間』で佐野教授を演じたのは、2026年2月に逝去したモーリー・ロバートソンだ。佐野教授がバイオマスについて話す「不要なものをエネルギーにする」というコンセプトは、今回の『ガス人間』のテーマにもなっていく。
小栗旬演じる岡本賢治が刑事で、蒼井優演じる甲野京子が記者という設定も原作通り(ただし原作は新聞記者でドラマ版はテレビ局の記者という違いはある)。二人が幼馴染という設定は変更され、二人は5年前に取材で出会い、最近まで交際していたという設定になっている。
以上の設定を除いて、ドラマ『ガス人間』の内容は映画『ガス人間第一号』の内容とは大きく異なるオリジナル作品となっている。一方で、原作からのオマージュもいくつか散見された。
例えば、賢治が車中で京子に教えた、気持ちを落ち着かせるためにジャケットの中に手を入れて左胸に当てる仕草。京子は第1話冒頭のインタビュー前にもこの仕草を見せているが、映画『ガス人間第一号』では、ガス人間になった水野が、自由にガス状にも普通の人間にもなれる精神統一の方法としてこの仕草に辿り着いている。
また、ガス人間の次のターゲットになったのは暴力団の藤代会の組長・大友三郎だったが、藤代会は「春日組直系」と紹介されている。春日といえば、原作映画『ガス人間第一号』でガス人間が想いを寄せた藤千代の苗字だ。藤千代は日本舞踊春日流の家元だった。Netflixドラマ『ガス人間』では深掘りされなかったが、「春日組」が原作へのオマージュであることは確かだろう。
豪華キャストが演じた魅力の新キャラ
ドラマ『ガス人間』の魅力は新キャラクターにもある。賢治の後輩刑事である阿部美智子は、サイドキックとして活躍し、圧倒的な存在感を見せる。演じたのは『仮面ライダーBLACK SUN』(2022) の新城ゆかり役、『極悪女王』(2024) のマキ上田役などで知られる芋生悠だ。
原作では水野という人物だったガス人間を、堤田蓮(つつみだ・れん)として演じたのは、本作が俳優デビュー作となるUTA。モデルとして活躍してきたUTAだが、28歳の俳優デビュー作とは思えない重厚な演技を見せている。
第4話では、藤川富士太と華歩の配信者兄妹が主人公になる。富士太を林遣都、華歩を広瀬すずが演じる贅沢な布陣だ。また、「恐怖地帯」というチャンネルで配信を行う二人の存在は、テレビニュース記者である京子とは違う形のメディアとして機能していくことになる。
このほかにも、夏川結衣演じる桐島かずみ都知事候補や、『ゴジラvsメカゴジラ』(1993) では主演を務めた髙嶋政宏が演じるゴロ監督、『今際の国のアリス』シーズン3 (2025) に続くNetflixドラマへの出演となった賀来賢人が演じたホストのケンタら個性的なキャラが次々登場する。小畑の過去の姿を演じた中島歩は『イクサガミ』の永瀬心平役、『地獄に堕ちるわよ』の須藤豊役に続くNetflixドラマへの出演になる。
ヤクザ・警察・政治家の関係
こうした魅力的なキャストとキャラクターと共に、ドラマ『ガス人間』では、中盤までガス人間vsヤクザvs警察vsメディアvs政治家という構図で物語が進行する。ガス人間は、過去に存在したホワイトセンターという施設の関係者が社会を牛耳っており、その人間たちを一人ずつ殺していくと宣言。賢治ら警察と京子らメディアはそれぞれにガス人間を追うことになる。
そして明らかになっていくのは、福祉施設と思われていたホワイトセンターが、身寄りのない子どもやホームレス状態にある人々を入所させて違法な労働に従事させていたという事実だ。ドラマ『ガス人間』の明確なテーマの一つは“搾取”で、韓国ドラマ『イカゲーム』(2021-2025) のような社会性の高い作品になっている。
1999年に山梨で開催された世界こども平和博という国際イベントを成功させるため、強力な毒性を持つ隕石の浄化作業をホワイトセンターの入居者が担い、その事実は隠蔽された。当時、佐野教授は隕石に毒性はないと発表して浄化作戦を指揮しており、原作映画と同じくらい悪いやつであった。
ホワイトセンターを仕切っていたのは“無風”という裏組織で、そのメンバーは藤代会の大友、警視総監の坂本、そして東京都知事の三浦だった。つまり、ヤクザ・警察・政治家である。これは、現実社会においても存在した構図だ。
1960年の安保闘争において、抗議運動が拡大していく中、自民党の岸信介内閣は学生らのデモ隊に対処するため、警察とともにヤクザにデモの警備を行わせた。ヤクザはデモ隊を襲撃して多くの負傷者を出し、衝突は激化、東大生の樺美智子さんが国会前で圧死する事態に発展した。
自民党と警察及びヤクザの癒着はもちろんのことだが、以降、ヤクザと警察もまた強く結びついていくことになる。岸信介は安保法案の承認後に辞職することになるが、その後、統一教会との連携を強めて改憲とスパイ防止法の制定に尽力、その地盤は孫の安倍晋三に受け継がれることになる。
話を戻すと、ドラマ『ガス人間』で使われるのが「人間燃料」という言葉で、弱者が社会の燃料、権力者の燃料として使い捨てられる搾取構造の存在が指摘されている。だが、ガス人間という圧倒的で物理的な“力”の登場によって、社会の権力が揺らぎ始めるのだ。
ガス人間と京子の過去
ドラマ『ガス人間』の中盤では、ガス人間が意志を持たない“兵器”であったことが明らかになる。普段は廃墟で石化しており、サザンオールスターズの「いとしのエリー」のレコードを流すと人間の姿に戻り、「リスナーさん願いを一つ言ってください」と言い、相手の願いを叶えるのである。本作では、ガス人間を“ランプの魔人”として再解釈したのだ。
一方で、全8話の後半に入っていく第5話以降、ガス人間の過去も明らかになっていく。1999年、ホワイトセンターから逃げ出した少女はブンコラーメンで客だった蓮からラーメンを食べさせてもらう。過去の蓮は、なんだか仮面ライダーの主人公っぽい快活さがある青年だった。
その時、ラジオから流れてきたのが、クリス・ペプラー番組の「リスナーさん 願いをひとつ言って下さい」のコーナーだった。かつて、蓮も同じようにお腹が空いて死にかけていた時、ラーメン屋の大将がラーメンを食べさせてくれた。ラーメン屋の大将を演じたのは松崎悠希だ。
その時、大将はラジオで「いとしのエリー」のリクエストが採用され、嬉しくてラーメンをご馳走したという。蓮はそのエピソードとともに「いとしのエリー」をリクエストし、以降この曲は少女と蓮の思い出の曲になる。
そして、その少女の名前は京子だった。ガス人間はメールの音声読み上げ機能とファックスを利用して指示を受けていたが、その指示を出していたのは京子だった。京子が蓮を使って、一連の殺しをさせていたのである。この京子のダークな側面は、原作映画からの大きな改変である。
京子は母にホワイトセンターに預けられていたが、その母がある日、藤代会のヤクザ・森靖利を連れて、京子を連れ戻すために蓮のもとを訪れた。蓮は京子と暮らす代わりに隕石の墜落現場で爆薬を仕掛ける仕事を受け、紫の光を放つ隕石の下まで到達すると、爆発に巻き込まれてガス人間と化していた。
京子が取材で赴いた廃墟で石化した蓮を見つけたのが6年前で、賢治と交際するようになった1年前、賢治が取り調べを行った、竹野内豊演じる森靖利と再会。上場企業の社長となり法による裁きを逃れている森。そんな時、蓮の前で「いとしのエリー」を流すと蓮が復活、「リスナーさん、願いを一つ」と京子に尋ね、京子は森殺しを依頼したのだった。
森の死は自殺として処理、森から聞き出した情報をもとに京子は佐野教授、藤代会の頭である大友を蓮に殺させた。京子がガス人間に追われる大友を追って、いち早くホワイトセンターの業務日誌の動画データを手に入れたのは、京子自身が蓮に大友殺害の指示を出していたからだった。旧ブンコラーメン跡地での独占インタビューも京子が自分で仕掛けたものである。
ここまでは、蓮をガス人間にしたホワイトセンター関係者への京子による復讐だった。そしてガス人間へのインタビューでホワイトセンター関係者を殺していくと宣言させることで、警察とメディアがホワイトセンター関係者を炙り出すという動きを作り出して見せたのだ。
無風の動きは
その一方で、三浦都知事が率い、ヤクザと警察を配下に置く無風も黙っていない。動画配信者・恐怖地帯の介入によってヤクザと三浦はガス人間の廃墟にたどり着く。
バズを求めた富士太の願いで、ガス人間がピエール瀧演じる坂本警視総監に自分の罪とホワイトセンターに関するすべての人物を公表するよう要求する動画を収録。坂本は記者会見を開こうとするが、警察内で無風とつながっている吉田によって殺害されてしまう。吉田を演じたこばやし元樹はボウリング場のシーンも含む怪演が光った。
京子は坂本の妻から無風はバンドの名前であり、坂本、大友とバンドを組んでいたリーダーのカイが東京都知事の三浦威(たけし)であることを聞き出す。京子はファックスで蓮に三浦殺害の指示を出すのだが、誰かが一線を越える時に「いとしのエリー」が流れる演出がだんだんとクセになってくる。このシーンでは、「人に言えず思い出だけが募れば、言葉に詰まるようじゃ恋は終わりね」という切ない歌詞が京子のやるせ無い気持ちとリンクしている。
だが、その指示は、ガス人間のもとに三浦によって阻止されてしまう。「ミゲルの農園」のエピソードを語るなど、独特の魅力を持つヴィランとしての三浦を、岡部たかしが見事に演じている。
三浦はガス人間に富士太と華歩を殺すよう指示。逃げる途中で富士太は華歩を川に落として逃すと、自身はガソリンを被った上で誕生日プレゼントで妹から貰ったジッポを使って、ガス人間もろとも爆発。ライターでガス人間とともに爆発する展開は、映画『ガス人間第一号』の終盤の展開へのオマージュだろう。
結果、ガス人間は生き延びていたが、無風はホワイトセンターの業務日誌を持っていた小畑、ホワイトセンターの真実を世間に公表しようとした坂本、ガス人間に辿り着いた富士太の殺害に成功している。森、佐野、大友を殺害した京子と接戦を繰り広げているのである。
一方の賢治は、青木崇高演じる父・信也がホワイトセンターについて調べていた中で謎の事故死を遂げたこと、取り調べで父の死を侮辱した森靖利に父が辿り着いていたこと、森が肺に化学やけどを負うという佐野教授と同じ死に方をしていたこと、そしてブンコラーメンで京子とガス人間が出会っていたことにたどり着く。そんな中、京子がガス人間に犯行をそそのかしたとして殺人教唆の容疑で指名手配され、華歩も最愛の兄を亡くしたという状況でドラマ『ガス人間』は終盤へ突入していく。
Netflixドラマ『ガス人間』ラストをネタバレ解説&考察
選民思想の政治家
三浦都知事は、富士太の死を利用して無差別テロの可能性があるとし、不要不急の外出を控えるよう呼びかける。都知事選で苦戦する中、社会不安を煽ることで現職の支持率を伸ばし、桐島かずみ候補を追い上げるのだった。
賢治は京子との逃避行を選び、京子は自分の過去を賢治に明かす。廃墟のピタゴラスイッチは蓮と一緒に作ったもので、「いとしのエリー」は蓮おじさんとの幸せな時間を象徴する曲だった。第1話で賢治が「いとしのエリー」について「父が好きだったんです」と言った後、京子が「私もそんな感じです」と言ったのは、蓮を父のように思っていたからだったのだ。
そんな中、ガス人間によって三浦の選挙事務所が爆破されるが、ガス人間の足元に富士太が仕掛けていたカメラの映像を賢治・京子・華歩が確認すると、それは三浦が指示していた自作自演であったことが明らかになる。支持率を伸ばすために自陣営の選挙スタッフを殺したのだ。
そして京子は、対立候補の桐島かずみがテレビ局に抗議していた、ガス人間のことばかり取り上げるから有権者が安心を求め、現職の続投を求める声が増えている、という言説は正しかったのだと思い至る。マスメディアが権力の監視よりも様々な社会不安を煽ることに時間を費やすことで、現状の権力が有利になるという状況は、現実でも起きていることだ。
三浦はホームレス状態にある人々の殺害もガス人間に指示しており、路上生活者の減少を自身の成果として掲げている。他者を人間燃料としか思っていないのである。三浦の根幹にあるのは、「使う者と使われる者がいる」という選民思想だ。これを「お前のための命なんて存在しない」と否定する賢治がカッコいい。
二つのメディアの使い方
京子は、蓮おじさんを止める方法があるとして、ガス人間の標的を自分にするよう誘導し、三浦によるガス人間への依頼動画のデータは華歩に預ける作戦を提案する。残って大友リキらヤクザと対峙した賢治は、その作戦通りに動くが、その上で10人ほどのヤクザを退治。賢治も十分怪人である。
都知事選は、投票前日で三浦の支持率が41.7%となり、桐島の29.5%を逆転していた。そんな中、華歩は桐島の選挙事務所を訪れ、動画を恐怖地帯チャンネルで流し、桐島が拡散する作戦をとる。選挙期間中のマスメディアは取り扱ってくれない可能性があったからだ。この決断ができる桐島かずみはやはり政治家だが、ここぞの決断力は優れていると言える。
京子は綿密な調査が必要な日誌の資料をマスメディアに送り、スピード感と拡散が必要な映像を配信者に託すという動きを見せている。どちらのメディアが優れているということではなく、役割に応じて使い方を決めるのだ。
華歩は、兄が遺した動画配信チャンネルを使う。富士太はバズを求めてガス人間を利用したばかりに無風に見つかり殺されてしまったが、華歩は動画配信を真実の告発のために使った。そして、顔のアザを気にしてできなかった顔出しを初めて行ったのだった。自分のためではなく、人々のために。
映像が流れたことで、三浦の支持者たちは傘を投げつけて抗議。残念なことだが、現実にはこんな事態になっても日本の民衆はあんなに怒らないだろう……。一方の京子は、ガス人間から逃げながら、JNTにホワイトセンターの業務日誌データを提供。三浦の逮捕を賢治に託したのだった。
現職都知事を選挙前日に逮捕しようとする賢治。警察内での対立も起きるが、正義感を持った刑事たちは三浦の逮捕に動く。現実もこうあってほしいものだ。
追い詰められた三浦は何者かに電話すると、どうやら切り捨てられたようで、自分自身も人間燃料に過ぎなかったのだと悟る。坂本も賢治の父に示唆していたが、名前も出せないような大物がさらに上にいるのだろう。
都庁では、賢治を撃とうとした吉田を阿部美智子が阻止。美智子は坂本の死後に吉田の袖に血がついているのを目撃していたので、吉田を監視していたのだろう。美智子のアクションも素晴らしいのだが、“ワイヤー怪人”と化した吉田も「仮面ライダー」の敵っぽくて良い。
だが、吉田はワイヤーを自分の身体に巻き付けていたせいで、放り込まれて上昇するエレベーターからワイヤーの持ち手だけが取り残され、自分が締め殺される結果になった。最後まで良いキャラであった。
都庁の屋上では三浦が飛び降りようとするが、寸前のところで賢治が阻止。三浦は賢治もろとも落ちようとするが、それを助けたのは都知事逮捕に難色を示していた川田だった。賢治が言った通りに三浦の確保に動かなければ三浦は死んでいたのだ。
ラストの意味は?
賢治が約束通り三浦都知事を逮捕した一方、京子はJNTの旧社屋にガス人間を誘き寄せ、地下の金庫室に閉じ込める作戦に出る。蓮おじさんを止める方法があるというのは嘘で、自分が犠牲になろうとしていたのだ。ちなみに、ガス人間が金庫室に入るというのは、ガス人間が金庫室での銀行強盗を繰り返していた原作へのオマージュである。
京子が放つ「どんと来い! ガス人間!」というセリフは、ドラマ『TRICK』(2000-2003) の阿部寛演じる上田次郎の著作『どんと来い、超常現象』を想起させる。金庫室で京子がガス人間と対峙する中、願いごとは「おじさんが私のお父さんになること」と言ったかつての京子と蓮の思い出が回想される。
ガス人間が記憶や感情を取り戻したかにも思われたが、最後には爆発を起こし、ガスと京子は消えたのだった。床には、賢治がプロポーズで渡そうとしていたダイヤの指輪が残されている。
1年後、京子がJNTに送ったホワイトセンターの業務日誌は「ホワイトノート」と呼ばれ、京子と蓮が違法な強制労働を強いられていたことが改めて報じられている。二人の行方は不明だというが、一瞬映るJNTの京子のデスクは綺麗に片付けられたままだ。JNTの人々は京子が戻ってくるかもしれないと思い空席にしているのだろう。
京子の後輩の西山達也は、阿部美智子に密着取材をすることに。かつての京子と賢治のように。なお、二人は第3話で京子と西山が半グレに襲撃された際に駐車場で会っている。
華歩のチャンネルは登録者が1000万人を突破。笑顔の富士太の遺影が飾られている。「昔みたいな配信もまたしてくれたら嬉しいな」というコメントもあり、華歩も色々試して人気配信者になったことが伺える。
賢治は京子の墓石に指輪を置くと、自宅で「いとしのエリー」のレコードをかける。ガス人間がいた廃墟にあったレコードプレイヤーをそのまま持ってきたようだ。「俺にしてみりゃこれで最後のLady」という歌詞の後、賢治がソファで目を瞑ると、開いた窓からガスが入り込む。
ガスは寝室に入っていくと、抱きしめるような人型へと形を変えていく。賢治は目を開くと、気配を感じたのか、後ろを振り向こうとしたところでドラマ『ガス人間』の最終回は幕を閉じている。
乾緑郎がノベライズした小説版『ガス人間』では、最後のこのシーンの賢治は「愛する人の気配を感じた」と書かれている。おそらく京子はあの爆発でガス人間になったのだろう。最後に「いとしのエリー」をかけたことで、京子が呼び出されたのだと考えられる。
最初は二つのガスの流れが窓から入り込んだため、京子と蓮のガスかとも思ったが、寝室の奥の窓からもガスが入ってきているので、単に京子が分散して賢治の家に入ってきたのだろう。1年経って京子が姿を現した理由は、あのレコードプレイヤーで「いとしのエリー」が再生されることが呼び出される条件だったからだろうか。
京子のガスが上を向いて人を抱きしめるような姿だったのは、最期に幼い頃に蓮に抱きしめられる回想をしていたからだと考えらえる。思えば蓮の石像も上を向いていたが、隕石の紫の光を浴びた時の姿に似ていた。能力を得た時の姿が石化時のポーズになるのかもしれない。
その後は描かれなかったが、賢治の前に現れた京子はそのまま石化し、石化した京子を賢治が発見、賢治が「いとしのエリー」を流すと京子が人間の姿で現れるようになるのだろう。ドラマ『ガス人間』のエンディングはやはり、サザンオールスターズ「いとしのエリー」が使用されている。
Netflixドラマ『ガス人間』ネタバレ感想&考察
社会派×特撮の名作
ドラマ『ガス人間』は、『イカゲーム』のような韓国ドラマの社会性を持ちながら、日本の特撮を大人向けに仕上げた作品で、非常に見応えがあった。『浅草キッド』(2021) や『正体』(2024) の大間々昂が手がけた音楽が最高で、SFとサスペンスとホラーを行ったり来たりする演出を力強く支えていた。
政治的な内容に切り込んでいる点は、Amazonプライムビデオで配信された『仮面ライダーBLACK SUN』にも通じるものがある。その上で、スーパーパワーのない主人公たちによる地に足のついたアクションと、ガス人間のVFX映像、そしてカーチェイスも見応え抜群だった。
ガス人間と藤千代の悲恋を中心においた映画『ガス人間第一号』に対し、ドラマ『ガス人間』では、「ガス人間」というコンセプトを弱者が人間燃料として搾取されるというテーマに転じさせた上で、ランプの魔人の要素と親子愛のテーマを組み合わせた点も面白かった。
ガス人間自体が意思を持たず兵器のように扱われる点は、原作への思い入れ次第で賛否もありそうだ。しかし、ガス人間に意思がないという設定は、仮面ライダーが改造人間として改造を完了した展開を彷彿とさせる。ヒーローにならず、自分の意思も持たない怪人として、ガス人間は描き直されたのだ。
ドラマ『ガス人間』では、京子のキャラクターが深掘りされることになったが、小栗旬演じる賢治もまっすぐな正義を持ったキャラクターとして好印象だった。外国人労働者の味方となり、悪を追求する賢治は理想の警察だ。
その一方で、法で捌けない人間たちをメディアの力とガス人間によって裁いていた京子はまさにダークヒーロー。賢治のまっすぐさは警察一家の男性という背景に支えられているもので、施設で違法な労働をさせられていた京子が強硬な手段に及びながらも、最後は蓮を使って殺しをしていたことの責任は取るという終わり方は、なかなか良い落とし所だったのではないだろうか。
また、最初から京子が仕掛けた事件であったことを念頭に見返すと、各シーンの京子の言動の真意が分かる仕組みにもなっている。繰り返し観て楽しめる点も、ドラマ『ガス人間』の特徴だと言える。
シーズン2はある?
気になるのは、ドラマ『ガス人間』にシーズン2はあるのかどうかということだ。『ガス人間』はグローバルなヒットを狙った作品であり、『今際の国のアリス』のような世界的ヒット作となれば、シーズン2の制作もあり得るだろう。
というのも、藤代会は春日組の傘下で最近勢いを尽きてきた勢力として紹介されており、元々ただのバンドだった裏組織・無風の上にもより強大な人物がいることが示唆されていたからだ。坂本は賢治の父に、ホワイトセンターの関係者について「そこら辺にいる人間じゃない」「名前を知っただけで命に関わるんだぞ」と警告していた。三浦都知事が最後に電話をかけていたのがその相手なのだろう。
ドラマ『イカゲーム』でも、ゲームの主宰を倒しただけでは問題は解決せず、より強大な存在や社会構造が立ちはだかるという展開が描かれた。思えば大友は、業務日誌を手に入れた時に、誰かに電話を入れて3億円を強請ろうとしていた。その相手は三浦か坂本だったと思われるが、Netflixの第3話のあらすじでは「ある組織をゆすろうと」したとも書かれている。
シーズン2でより上位の存在が描かれるとしたら、やはり原作映画のメインキャラである春日藤千代を想起させる春日組の登場に期待したいところ。藤千代は没落した日本舞踊の家元だったが、それをヤクザに置き換えて藤千代が登場する展開も見てみたい。また、今回は宗教関連の話は描かれていないので、国政と宗教はまだ展開できる要素だ。
「変身人間シリーズ」としての展開も?
一方で、そもそも1963年に公開された『ガス人間㐧1号(ガス人間第一号)』は、東宝が製作した『美女と液体人間』(1958)、『電送人間』(1960) に続く「変身人間シリーズ」の第3作目にあたる。東宝では怪獣映画が人気となり、「変身人間シリーズ」は番外編的作品である『マタンゴ』(1963) を最後に制作されなくなった。
「変身人間シリーズ」の各作品に繋がりはなく、各作品ごとに完結しているという点も特徴の一つだ。なので、今後TOHOがNetflixシリーズで「変身人間シリーズ」を展開していくならば、『美女と液体人間』や『電送人間』をリブートする可能性もあるだろう。
なお、『ガス人間第一号』については、大ヒットしたアメリカで続編の『フランケンシュタイン対ガス人間』が企画された経緯もある。こちらは実現しなかったものの、ガス人間が愛する人を復活させるためにフランケンシュタイン博士を探すという設定になっていた。
東映では、Netflixでリブートした『新幹線大爆破』のリメイク権を海外向けに売り出しており、東宝も『ガス人間』の海外での再リブートを狙う可能性もある。韓国版『イカゲーム』は完結したがアメリカ版リメイクの制作が決定しており、前例はある。
『ガス人間』と「変身人間シリーズ」はどうなっていくのか、今後にも注目しよう。
ドラマ『ガス人間』は2026年7月2日(木) よりNetflixで世界独占配信中。
乾緑郎によるノベライズ版は講談社より発売中。
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