想像力をテーマにしたウルトラマン
2023年に会社創立60周年を迎えた円谷プロダクションは、2024年のテーマを「空想の力」とし、「ウルトラマン」シリーズを生み出してきた原点である空想の力をテーマに様々なイベントや作品を展開している。その「ウルトラマン」シリーズ最新作である『ウルトラマンアーク』が2024年7月6日(土)に全世界同時配信された。現実的な展開を重視した前作の『ウルトラマンブレーザー』(2023-2024)とは異なり、『ウルトラマンアーク』は想像力をテーマに夢と現実をつなぐ架け橋となっている。
本記事では想像力をテーマにした『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」について、解説と考察、感想を述べていこう。なお、以下の内容には『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」のネタバレを含むため、本編視聴後に読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ウルトラマンアーク』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」ネタバレ解説
K-DAYから16年と3か月
怪獣が出現するようになったK-DAYから16年3か月が経ち、怪獣災害が頻発するようになった世界。そこには街を破壊するクワガタのような宇宙獣ディゲロスと戦う銀色の巨人の姿があった。星元市に銀色の巨人が出現するようになって3か月が経つが、未だ正体は謎のままだ。
わかっていることはただ一つ。謎の銀色の巨人は古代怪獣ゴモラやどくろ怪獣レッドキングなどと戦い、人類を守っているということだけだった。星元市の住人の反応は様々で、人類の守護者と考える人もいれば、得体の知れない存在と考える人もいる。
そのようなニュースを見ながら、怪獣防災科学調査所、通称SKIP(Scientific Kaiju Investigation and Prevention center)の怪獣生物学の専門家の飛世ユウマはSKIP星元市分所に向って自転車を漕いでいた。『ウルトラマンアーク』で主人公の飛世ユウマが所属するSKIPは防衛隊などとは異なり、怪獣の調査と研究を専門とし、怪獣出現の際には避難誘導などを行なう組織である。そのため、軍事力は持ってはいないのが特徴だ。
モノホーン
SKIP星元市分所に到着した飛世ユウマだったが、先輩の機械工学の専門家の夏目リンと所長の地質学の専門家の伴ヒロシの姿はそこにはない。自立AI搭載型のサポートロボのユピーによるとモノホーンの無人モニタリングシステムからの通知で、2人は慌てて出動したとのことだ。飛世ユウマのスマートフォンには2人からの不在着信が山のように届いていた。
ユピーが語ったモノホーンとは、星元市の獅子尾山にそびえたつ巨大な一本角のことだ。この一本角が出現したのはK-DAYのときで、SKIPは怪獣とのつながりを警戒し、無人モニタリングシステムを設置していた。その話を聞くと飛世ユウマは急いで2人のもとへ向かう。「走れ! ユウマ!」は飛世ユウマの座右の銘だ。
モノホーンはK-DAYで出現した7体の宇宙怪獣の唯一の置き土産らしく、防衛隊は何故モノホーンを宇宙怪獣が残したのかなどの調査を進めるため、モノホーンの撤去などをしない方針だということだ。しかし、その管理は怪獣研究の専門チームであるSKIPに任されている。
モノホーンから生体反応を検知したという夏目リンだったが、その反応は極めて弱く、ネズミやリスが巣をつくった可能性もあり得るという。飛世ユウマは調査を進めるが、そのときモノホーンを突き破って宇宙寄生生物ウーズが出現する。寄生生物によって物語がはじまるというのは『ウルトラマンZ』(2020)の寄生生物セレブロや『ウルトラマンG』(1991-1992)の邪悪生命体ゴーデスを想起させる。
宇宙寄生生物ウーズ
逃亡した宇宙寄生生物ウーズは地下へと潜っていき、鎧甲殻獣シャゴンに寄生する。その後を追う飛世ユウマは鎧甲殻獣シャゴンに襲われるが、地球防衛隊宇宙科学局特別調査員の石堂シュウのエレマガンで危機を脱することが出来た。鎧甲殻獣シャゴンは肉食であり人間や家畜を時折捕食していたとのことだ。しかし、今回の鎧甲殻獣シャゴンが鍾乳石を食べていた理由の説明がつかない。
その理由は宇宙寄生生物ウーズによるものだった。アメリカ、ドイツ、チリ、中国の計4件の出現例が報告されている宇宙寄生生物ウーズは炭酸カルシウムを餌としており、寄生された怪獣は鍾乳石やコンクリートを食べるようになる。これらの宇宙怪獣に関する情報はパニックを防ぐためか防衛隊によって一部秘匿にされていた。
宇宙寄生生物ウーズに寄生された鎧甲殻獣シャゴンは炭酸カルシウムを製造している葉山化学工業に向っていた。それを知ったSKIPは市民の避難誘導を行なう。しかし、宇宙寄生生物ウーズに寄生された鎧甲殻獣シャゴンは炭酸カルシウムを食べ続け、50mにまで成長していた。それに加え、その巨体の中で宇宙寄生生物ウーズは増殖まで行なっていたのだ。
懐かしくて新しいウルトラマンアークの戦い方
石堂シュウと飛世ユウマがピンチに陥ったとき、ウルトラマンアークが飛世ユウマに語りかける。これまでの多くの「ウルトラマン」シリーズではウルトラマンと主人公の出会い、いわゆるヒーローのオリジンを描いてきたが、それが『ウルトラマンアーク』ではカットされている。
これはMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の「スパイダーマン」シリーズにも見られる演出で、すでにオリジンが有名になっているからこそできる演出だ。また、鎧甲殻獣シャゴンとウルトラマンアークの戦いを石堂シュウがスマートフォンで撮影することで、ウルトラマンアークの活動制限時間を可視化するという演出は新しい。
ウルトラマンアークの戦い方は、近年のニュージェネレーションヒーローズで見られるCGを活かした演出と、『ウルトラマン』(1966-1967)や『ウルトラセブン』(1967-1968)、『帰ってきたウルトラマン』(1971-1972)の泥臭い戦闘が上手く混ざっている。これには辻本貴則監督が語っていたウルトラマンアークの技の数を敢えて絞ることで、ウルトラマンアークの戦闘が工夫を凝らしたものになるように意識していることが影響していると考察できる。
『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」ネタバレ考察&感想
ウルトラマンとの出会い
『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」ではウルトラマンアークに変身する主人公の飛世ユウマとウルトラマンアークの出会いが敢えて削られている。これはMCUのスパイダーマンやDCEU(DCエクステンデッドユニバース)のバットマンなどにも見られた演出だと考察できる。
放射性の蜘蛛に噛まれて超人的なパワーを得る、両親を失って街のクライムファイターになるといったものは有名なヒーローのオリジンだ。それと同じでウルトラマンと出会い、主人公と融合を果たすというのも日本では有名なヒーローのオリジンだと考察できる。そのため、それを削る、もしくは後に送ることでウルトラマンに対する一般人の自然な反応を描くことができたのではないだろうか。
ウルトラマンアークの戦い方
注目すべきポイントとしてウルトラマンの戦い方が挙げられる。前作である『ウルトラマンブレーザー』では、戦いの前に祈りをささげるような構えをし、咆哮を挙げて飛び跳ねるなど野趣あふれる戦い方をしていた。それに対して『ウルトラマンアーク』の戦い方は正統派とも言えるもので、ウルトラマンやウルトラセブン、ウルトラマンジャックを想起させる。
辻本貴則監督は『ウルトラマンアーク』に無意識の内に幼少期に観ていた『帰ってきたウルトラマン』の影響が出ていたのではないかと語っている。そのため、このどこか懐かしい戦闘スタイルが完成されたのではないかと考察できる。
しかし、ただ『ウルトラマンアーク』は懐古主義に浸っているわけではない。ウルトラセブンのウルトラアイを想起させるアークアイソードの構えや抜刀するような切断攻撃はニュージェネレーションヒーローズの影響を感じさせるものだ。この初期の「ウルトラマン」シリーズと最新の「ウルトラマン」シリーズを組み合わせた戦い方はすべての世代をわくわくさせてくれる。『ウルトラマンアーク』第2話「伝説は森の中に」ではウルトラマンアークは古代怪獣と戦うということだが、ストーリーだけではなく戦い方にも注目だ。
『ウルトラマンアーク』第1話「未来へ駆ける円弧」は2024年7月6日(土)より全世界配信開始。
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『ウルトラマンアーク』第2話「伝説は森の中に」の考察&感想はこちらから。