2019年公開の映画『トイ・ストーリー4』
ピクサーを代表するシリーズの一つである「トイ・ストーリー」は、1995年に第一作が公開され、1999年に第二作、2010年に第三作、そして2019年に第四作となる『トイ・ストーリー4』が公開された。そして、2026年7月3日(金) には、第五作となる『トイ・ストーリー5』が日本公開を迎える。
『トイ・ストーリー3』の開発時には三部作として構想されていた「トイ・ストーリー」シリーズ。その後公開された『トイ・ストーリー4』の内容は、ファンの間で賛否を呼んだ。今回は、その『トイ・ストーリー4』について、特にラストの展開に焦点を当てて、そのメッセージやテーマを解説&考察し、感想を記していこう。以下の内容は結末のネタバレを含むので、本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『トイ・ストーリー4』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『トイ・ストーリー4』ネタバレ解説&考察
映画『トイ・ストーリー4』で描かれた“変化”
『トイ・ストーリー4』は、前作『トイ・ストーリー3』のラストから1年後が舞台になる。『トイ・ストーリー3』では、ウッディたちの持ち主であったアンディが大学に進学するにあたり、おもちゃたちをボニーに譲っている。
『トイ・ストーリー4』の冒頭では、ウッディはボニーの家で暮らしているのだが、アンディと暮らしていた時と違い、ウッディはボニーの“1番のお気に入り”ではない。ボニーはジェシーに保安官のバッジをつけて遊ぶのだが、ウッディは状況の変化を受け入れることができていない。
ウッディは“選ばれないおもちゃ”になってしまった今も、何でもないふりをしている。先住のドーリーに対しては「アンディの時は——」と話し始めて呆れられる始末。ボニーはアンディではないのに。
『トイ・ストーリー4』のテーマの一つは「変化」だ。日本では『トイ・ストーリー5』の公開に合わせて刊行された書籍『ジ・アート・オブ トイ・ストーリー4』では、監督のジョシュ・クーリーが本作について「知らず知らずの間に、私たちは人生における変化と向き合うキャラクターたちでストーリーを満たしていた」と振り返っている。
実は、『トイ・ストーリー4』のメインキャラにあたるおもちゃたちは、すべて何らかの“変化”に直面している。中でもウッディは自身に起きた変化——もう自分はアンディのおもちゃではなく、お気に入りでもなくなったという事実——を受け入れられていないキャラクターとして描かれることになる。
変化を受け入れたボー
ボニーはフォークで作ったフォーキーを大事にして、ウッディもボニーのためにフォーキーの世話を焼く。フォーキーはゴミからおもちゃになったという変化に対応できておらず、図らずもウッディは他者に変化を受け入れるよう説得する立場になるのだ。
フォーキーをボニーの元に留めようとする中で、ウッディはアンティークショップでギャビー・ギャビーと出会い、フォーキーが捕まった後に、ボー・ピープと再会を果たす。『トイ・ストーリー』1作目以降、ほとんど出番がなかったボーだが、『トイ・ストーリー4』では、2作目と3作目の間に他の家に貰われていったことが明かされている。
その後ボーは、「少女が成長して役目が終わって——。子ども部屋にこだわる必要はない」と、外で自由に生きていることを明かす。子どもと離れたことに対し、ウッディは「辛かったな」と声をかけるのだが、ボーは「別に。こんなに広い世界がある」と返している。
ここでも「変化」への応答が描かれている。ウッディは変化をネガティブなものとして捉えているが、ボーは変化をポジティブなこととして受け入れているのだ。「子どもなしで? 無理だよ、俺は古いタイプのおもちゃだから」というウッディの言葉が、それを象徴している。
変化を切望するギャビー・ギャビー
一方、ギャビー・ギャビーは元からボイスボックスが故障していたせいで子どもに愛された経験がない人形だ。だからギャビー・ギャビーはウッディのボイスボックスを奪ってでも自分を修理し、子どもに貰われようとする。ギャビー・ギャビーは『トイ・ストーリー4』で唯一、変化を切望しているキャラなのだ。
ボーと喧嘩別れしてしまったウッディは、ボイスボックスとフォーキーを交換するというギャビー・ギャビーの提案を受け入れる。しかし、ギャビー・ギャビーはアンティークショップの店主の孫ハーモニーに気に入ってもらうことはできなかった。
そこで、ウッディは一緒にボニーのところへ行こうと提案する。これはもはやボニーのためではなく、迷子になった自分のようなおもちゃのための行動だ。そしてギャビー・ギャビーもまた、ボニーのもとへ向かう途中で自分のような迷子の子どもを見つけ、寄り添ったことで、その子どもに貰われていくことになったのだった。
ここでは、おもちゃ同士の共感と、おもちゃから子どもへの共感が並べて描かれている。おもちゃが自分本位で生きるということではなく、他者を大事にすることが、子どもを大事にすることにもつながるという教訓である。
映画『トイ・ストーリー4』ラストをネタバレ解説
ラストのウッディの選択はなぜ?
『トイ・ストーリー4』のラストでは、ウッディは仲直りしたボーと別れて、ボニーのもとへ戻ろうとするが、思いとどまり、ボーとともに移動遊園地に残ることを選ぶ。ウッディが自由を選んだということではなく、もはや自分は子どものお気に入りのおもちゃではないという変化を受け入れたのである。
お気に入りでなくなったとしても、おもちゃにはできることがある。その後のウッディは、ボーとともに遊園地の景品になっているおもちゃたちが貰われていくように尽力する。迷子のおもちゃを導く役目を担ったのは、ギャビー・ギャビーの持ち主を見つけ出せた成功体験も影響しているのだろう。
子どもに愛されることがおもちゃの全てだというそれまでのウッディの考えは、子どもに愛されないおもちゃの存在を否定する考えの裏返しでもあった。「愛されるおもちゃ」ではなく、「おもちゃを愛する」という視点で物語を見れば、ウッディの考えの変化は至極真っ当なものだ。
『トイ・ストーリー3』では、ウッディはアンディの成長(変化)を受け入れた。『トイ・ストーリー4』では、ボーとの再会を経て、ウッディは自分の立場の変化も受け入れることになったのだ。
映画『トイ・ストーリー4』ネタバレ感想&考察
賛否の理由と変化の理由
『トイ・ストーリー4』は、三部作の完結編として制作された『トイ・ストーリー3』の後に制作されたということもあり、これまでとは異なる独特な作品にはなっている。ただ、各キャラクターの「変化」への反応を描くというテーマは一貫しており、その軸は終始ブレていない。
だが、「トイ・ストーリー」シリーズが長く愛される作品になったからこそ、変化を嫌う人もいるだろう。ウッディが変化を受け入れることは、「今までのトイ・ストーリー」の対極にある選択であり、ファンの間で評価の賛否が分かれるのは当然でもある。
書籍「ジ・アート・オブ トイ・ストーリー」シリーズでは、「トイ・ストーリー」の制作チームがシリーズを重ねるごとにさまざまなライフチェンジを経験したことが記されている。子どもが生まれ、育ち、別れを経験し、「トイ・ストーリー」を観て育った人たちがチームに加わり、責任ある立場を任されるようになる——。
「トイ・ストーリー」シリーズは、そうした制作チームの人々の人生における変化を反映してきた。プレイヤーから後進を導く立場になること、第二の人生を歩み始めることは、まさに『トイ・ストーリー4』でウッディが経験したことである。ゆえに観る側がどういった変化を経験してきたか、人生のどの段階にあるかということも評価に関わってくるだろう。
そして、外の世界に飛び出したウッディは、何を見て、どんな経験をしたのだろうか。2026年7月3日(金)から日本公開される『トイ・ストーリー5』では、どんな物語が描かれるのか、『トイ・ストーリー4』のその先を目撃しよう。
本記事の筆者・齋藤隼飛が佐伯真洋と共訳した『ジ・アート・オブ トイ・ストーリー3』と『ジ・アート・オブ トイ・ストーリー4』は2026年6月30日より発売中。
「トイ・ストーリー」4ムービーコレクションは発売中。
映画『トイ・ストーリー4』はMovieNexがyが発売中。
映画『トイ・ストーリー4』はDisney+で配信中。
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