『ジョーカー2』公開中
2019年に公開され、社会現象となった映画『ジョーカー』の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が2024年10月11日(金) より日本の劇場で公開された。『ジョーカー2』にあたる『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』では、引き続きゴッサムを舞台に前作のその後が描かれる。
衝撃の結末が描かれた『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』だが、そのラストにおけるアーサーの心情についてトッド・フィリップス監督が米メディアに語っている。『ジョーカー2』のラストにはどのような意味が込められていたのだろうか。
なお、以下の内容は『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の結末に関する重大なネタバレを含むので、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の結末に関する重大なネタバレを含みます。
『ジョーカー2』ラストのアーサーの心情を監督が語る
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ラストで起きたこと
映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』のラストでは、偶像崇拝されていたアーサー・フレックが、自らがジョーカーではなくアーサー・フレックであることを認め、信者達を落胆させた。アーサーが罪を認めるのを決めたきっかけは、裁判に証言に来た友人のゲイリーからアーサーが恐怖の対象だと言われたこと、アーサーがカメラの前で拘置所の看守を煽り、その夜に看守が若い囚人を殺したことだった。
理不尽に弱者を抑圧する権力を糾弾した英雄になったはずが、アーサーは自分より弱い存在に理不尽な恐怖と暴力を与える存在になっていた。それはアーサーが望んでいたことではなく、この不毛なショーを終わらせることを決めたと読み取れるラストだった。
しかし、アーサーはそれによってジョーカーを愛していたリーからは見放されることになる。さらに、アーサーは刑執行までの間は平穏を得たかに思われたが、最後には別の囚人に腹部をメッタ刺しにされてしまう。アーサーが最後にかけられた言葉は、自身が『ジョーカー』で有名司会者のマーレイ・フランクリンを殺す時にかけたのと同じ「報いを受けろ」だった。
アーサーが人に与えた不条理な死は自分に降りかかることになった。そして、何者でもない青年がスターを殺し、新たな“ジョーカー”が生まれることが示唆されるラストだった。
「何も変わらないことに気づいた」
このラストについて、トッド・フィリップス監督は米Entertainment Weeklyにアーサーの心情を語っている。陪審員に罪を告白することにしたアーサーの決断について、同監督はこう話している。
彼は全てが腐り切っていることに気づいたんです。変化は決して訪れず、唯一の解決策は全てを焼き尽くすことだけだと。看守達があの青年を殺した時、彼はメイクをして着飾っても何も変わらないということに気づきました。
ある意味、彼は常に自分がアーサー・フレックだという事実を受け入れていました。ゴッサムの人々が彼に押し付けた象徴のような存在であったことは一度もないということをね。彼は望まぬ内に象徴にされていました。彼は、自分に課せられたもののせいで偽物として生きるのは嫌だったのです。ありのままの自分でいたかったということです。
アーサーが最後に、ジョーカーはおらずアーサー・フレックしか存在しないと証言することを決めた理由は、自分がジョーカーを演じていても何も変わらないと気づいたからだという。“ジョーカー”というショーを続けても犠牲者が増えるだけで世界は変わらない——その感覚は、もしかするとトッド・フィリップス監督が前作『ジョーカー』の公開を経て感じたことだったのかもしれない。
また、アーサーは心の中でずっと自分がジョーカーではなくアーサー・フレックだという事実を受けれていたということも明かされている。『ジョーカー』でも、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』でも、アーサーは人々が求める“ジョーカー”を演じていただけだったのだ。それで世界が変えられるのならアーサーはジョーカーを演じ続けたかもしれないが、アーサーの本心は自分を偽って生きたくないという人間的なものだった。
「アーサー」と呼ばないリー
アーサーが置かれた状況については、トッド・フィリップス監督は「悲しいことに、彼はアーサーで、誰もアーサーのことなど気にしていませんでした」と指摘。アーサーの境遇やアーサー自身が抱える問題に向き合う人はおらず、人々はただジョーカーを求めていただけだった。
レディー・ガガ演じるリーも同様で、トッド・フィリップス監督はリーが劇中でアーサーのことを「アーサー」と呼ぶことはないと指摘する。リーもまた、アーサーは自分が望む存在にはなれないと気づき、アーサーの元を離れたのだという。
ちなみに、最後の階段でアーサーがリーと会い、そして別れる場面は空想上の出来事ではなく、実際に起きていることだということも認めている。『ジョーカー』では、アーサーはソフィーとの空想上の関係を現実のものだと信じ込んでいたが、『ジョーカー2』のラストではアーサーは現実に直面していたようだ。
『ジョーカー2』では、アーサーは望まぬショーを自ら終わらせることを選択した。だとしても、新たなジョーカーが生まれ、ショーは続いていくのだろう。それがフィクションのさだめというものだ。
けれど、それを観る私たちは、現実においては違う結末を用意できるかもしれない。「メイクをして着飾っても世界は変えられない」というトッド・フィリップス監督とアーサー・フレックが出した結論を受け、私たちはジョーカーのいない現実の世界で何ができるだろうか。
映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は2024年10月11日(金)より全国の劇場で公開。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』特典付きオリジナル・サウンドトラックは発売中。
ハーレイ・クインを演じたレディー・ガガが劇中で歌った楽曲などを収録したアルバム『ハーレクイン』は、特典付きで予約受付中。
前作『ジョーカー』は4K ULTRA HD&ブルーレイセットが発売中。
Source
Entertainment Weekly
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