2016年公開の『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』
2016年に『名探偵コナン』のテレビアニメ放送20周年を記念してスペシャルアニメとして放送された『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』は、アニメ第1話の内容に新要素を加えた作品。サブタイトルの「小さくなった探偵」は原作漫画の第2話のタイトルから取られており、本作は原作者の青山剛昌も全面監修を務めている。
今回は、『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』について特にラストの展開に焦点を合わせてネタバレありで解説&考察し、感想を記していこう。以下の内容は結末までのネタバレを含むため、本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、,アニメ『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』ネタバレ解説&考察
灰原哀/宮野志保の実験
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』では、主に三つのストーリーラインが動いていく。江戸川コナンを名乗るようになる前の高校生探偵・工藤新一の探偵としての活動、新一と毛利蘭の恋、そして灰原哀を名乗るようになる前のシェリーこと宮野志保が所属する黒ずくめの組織(黒の組織)の計画、この三つである。
冒頭では灰原/宮野志保がマウスを使って実験を行っている。これは後に工藤新一が飲まされることになるAPTX4869という薬の開発実験で、一匹のマウスが幼児化して若返りの効果があることを発見している。
一方でそれ以外のマウスは死んでおり、黒ずくめの組織はこの薬を毒薬として利用することになる。宮野志保はこの成果を電話で誰かに共有したようで、その場面では姉の宮野明美とのツーショット写真が映されているが、明美は科学者ではないので、別の人物に連絡したものと考えられる。
一連の宮野志保のシーンは、もちろん『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』でのリメイクに合わせて追加されたシーンだ。灰原哀/宮野志保がアニメで初登場を果たすのは、第129話「黒の組織から来た女 大学教授殺人事件」まで待つことになる。
新一と蘭の恋路
一方、当時16歳の工藤新一と毛利蘭はイチャコラしながらトロピカルランドという新規オープンした遊園地を訪れる。これは蘭が空手の都大会で優勝したら、という約束の流れで、蘭は都大会で優勝を果たしている。なお、蘭は後に関東大会でも優勝している。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』では、新一と蘭がアメリカに行ったことにも触れられているが、これはアニメ第162話「空飛ぶ密室 工藤新一最初の事件」や第286話から288話までの「工藤新一NYの事件」のことを指していると思われる。ニューヨークでは蘭は新一に本気で想いを寄せるようになっている。
その後、『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』の冒頭部分にあたる『名探偵コナン エピソード“ZERO” 工藤新一水族館事件』(2015) の事件などがあり、今回描かれる遊園地での事件を経て二人は離れ離れになる。それでも、灰原哀が開発した一時的に元の姿に戻れる解毒剤で時折コナンは新一の姿に戻って蘭と“再会”している。
『エピソード“ONE”』の後、蘭が17歳の時には、アニメシリーズの「ホームズの黙示録」編で新一が蘭に告白、その秋に行われた「紅の修学旅行」で二人はお互いに付き合っていることを確認した。『エピソード“ONE”』では二人が工藤家のキッチンで時間を過ごすというファンに人気のシーンもあり、二人の行く末を重ね合わせながら楽しめる作品になっている。
二人が遊園地デートをするシーンではZARD「運命のルーレット廻して」が流れる。1998年にアニメ『名探偵コナン』の第4代目のオープニングテーマとして起用された曲だ。『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』で流れた曲についてはこちらの記事に詳しい。
高校生探偵としての工藤新一
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』では、新一は高校生探偵としても活躍し、足の怪我を偽装して車椅子が必要なフリをするトリックを用いた瀬羽尊徳の事件を解決。さらに新一と蘭が訪れたトロピカルランドでも乗っていたジェットコースターで殺人事件が発生し、新一は推理に挑むことになる。この事件はアニメ第1話「ジェットコースター殺人事件」のタイトルにもなっている。
このジェットコースターには黒ずくめの組織のジンとウォッカが乗っており、他の容疑者たちと共に工藤新一の推理ショーに巻き込まれることになる。警察・新一・ジン&ウォッカが最も接近した瞬間だ。
アニメ第一話では相当焦った様子を見せていたジンとウォッカだが、『エピソードONE』では現場を離れたがってはいるものの、強気な態度を見せている。ジンは身元確認をしようとした目暮警部をその場で殺そうとする(新一が機転を効かせて阻止)など、その後の黒ずくめの組織の活躍(?)に見合った、ある種の余裕と危険性が感じられる演出になっていた。
新一はジェットコースターの速度を利用し、ピアノ線で頭部を切断するというトリックを仕込んだ被害者の元恋人・ひとみが犯人であると指摘。見るからに怪しい黒ずくめの組織の人間が容疑者に入っていても、冷静な推理を行う姿を見せている。
ジンとウォッカの取引
その一方でジンとウォッカは難を逃れることになり、夜に「社長」と呼ばれる人物に接触。社長はアタッシュケースに入った札束をジンとウォッカに引き渡している。ジンとウォッカがジェットコースターに乗っていたのは、この社長が取引現場である遊園地に一人で来たことを確認するためだった(一人で乗ってもいいと思うけど)。
序盤の車中のシーンでは、社長がなぜ取引に人目につく場所を選んだのかと、ウォッカが疑問を口にするシーンがある。ジンは、人目につく場所であれば騒ぎになるようなことをされないと考えたのだろうと推測している。なお、ウォッカは黒の組織のメンバーであるバーボンから社長が暴力団と繋がりがあるとの情報が入ったとしているが、バーボンは公安警察から黒の組織に潜入している降谷零/安室透のコードネームである。
そして、ウォッカは拳銃密輸の証拠である写真フィルムを社長に渡している。このフィルムは冒頭のバーのシーンでスパイだった人物からウォッカが受け取っていたものだ。弱みを握って金を強請ったのだろう。また、ウォッカは社長の会社がある場所にダムを作ろうとしていることも明かしている。
ここでジンが話を盗み聞きしていた新一を発見。ジンは新一を鈍器で殴ると、警察がいるため拳銃は使わず、組織が開発した薬を使って新一を殺すことに。この薬こそ冒頭で宮野志保が開発に取り組んでいたAPTX4869である。
APTX4869は「遺体から毒が検出されない」とされており、証拠を残さずに標的を殺すのに最適と考えられていた。宮野志保は毒薬を開発していたつもりはなかったが、失敗で生まれた偶然の産物を組織に利用されたのだ。
だが、この薬が人間に試されるのは新一が初めてだった。偶然にも、新一には冒頭の一匹のマウスのように若返りの効果が発生し、新一は小学一年生=7歳の姿になってしまったのだった。『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』では新一が「骨が溶ける」と心の声で叫びながら、幼児化する過程が生々しく描かれている。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』ラストをネタバレ解説&考察
江戸川コナン誕生
身体が小さくなったことを知った新一は、託児施設に送られそうになり、警察から逃亡。警察とやりとりをする間、自分が小さくなったと気づいていない新一は心の声も新一役の山口勝平のままという演出が印象的だ。自分が小さくなったということに気づいてからは、心の声はコナン役の高山みなみの声に変わっている。
新一が黒の組織の取引を目撃したという証言は、子どもの話として警察に取り合ってもらえず、かつ蘭から電話を受けていたが、声が変わっていることから事情を説明できなかったという経緯も描かれる。それでも、新一は阿笠博士には理詰めで自分が新一であることを信じてもらっている。この辺りは、阿笠博士が事実と仮説を元に考える科学者であることも関係しているのかもしれない。
阿笠博士は、工藤新一が生きていると知られれば黒の組織に狙われるし、周囲にも危害が及ぶとし、新一に正体を隠して生きるよう助言する。そこにやってきた蘭と遭遇した新一は、咄嗟に本棚の「コナン・ドイル」と「江戸川乱歩」の名前を見て、「江戸川コナン」と名乗り、名探偵コナンが誕生したのだった。
コナンは蘭の家でお世話になることに。その帰り道、蘭はコナンから「好きな人」は新一なのではと聞かれ、そうだと返答する。ここでコナン=新一は二人が両思いであることを知ったのだが、前述のように、新一から告白して二人が付き合うようになるまでしばらく時間を要すことになる……。
ダイジェストで描かれたのは?
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』のラストでは、その後描かれる重要なストーリーがダイジェストで紹介される。燃える館からピアノが聞こえてくるシーンは、2021年にリブートされた「ピアノソナタ『月光』殺人事件」で、コナンが犯人を追い詰めて死なせてしまったという、コナンにとって転機となった事件だ。
黒の組織によって殺された女性は広田雅美=宮野明美で、灰原哀の実の姉である。アニメ128話「黒の組織10億円強奪事件」で明美はジンに撃たれ、コナンに自身が黒の組織の人間だったと明かして亡くなった。この時、コナンは黒の組織との戦いについて、決意を新たにしている。
新一の母・有希子とも交友関係がある黒の組織のベルモットが「彼にも会いたいしね」と工藤新一の写真を見て話す場面も。ベルモットを車で追っているのは、FBIのジョディで、ジョディと同じ車に乗っているのは同じくFBIの赤井秀一だ。
なお、組織内で唯一ベルモットはコナンと灰原哀の正体を知っている人物だが、その事実は組織には伝えず、何かとコナンの助けになってくれる。だが、敵なのか味方なのかははっきりしておらず、謎の多い人物だ。
ラストの意味は?
2ヶ月後、宮野志保たち黒の組織は、遺体が発見されなかった工藤新一の家を捜査に訪れる。宮野志保はそこで空になった新一の子ども服用の段ボールを発見。すると、姉の明美がカフェで米花町にコナンという大人っぽい子どもがいると話していたことを思い出す。米花町は工藤家がある地域だ。
APTX4869を飲まされた工藤新一の遺体が発見されたなかったこと、マウスが幼児化した実験結果、工藤家がある米花町の大人っぽい子ども、そして工藤家から新一の子ども服がなくなっていたこと——全ての点が線となり、宮野志保は工藤新一が幼児化して生きていることに気がついたのだった。
そして、組織に対して反感を抱く宮野志保は、APTX4869を飲まされた人間のリストの中で唯一行方が「不明」となっていた工藤新一のステータスを「死亡」に書き換える。なお、このリストには17年前にアメリカで殺されたとされている羽田浩司の名前もあり、他の人々と同じように「死亡」となっている。
後に自分も幼児化し灰原哀を名乗ることになる宮野志保のこのエピソードは、アニメ第129話「黒の組織から来た女 大学教授殺人事件」で灰原の口から語られているが、『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』でしっかり映像化されることになった。
なお、「黒の組織から来た女」での灰原の説明によると、工藤家の捜査は二度行われており、一度目にはあった新一の子ども服が1ヶ月後の二度目の捜査でなくなっていたのだという。灰原は、コナンが興味深い素材であるため組織に消されないように、組織へは報告せず、「不明」を「死亡」に書き換えたとも説明している。
『名探偵コナン エピソード“ONE”』の最後に、データを書き換えた宮野志保がサインする「Sherry(シェリー)」は、黒の組織における宮野志保のコードネームだ。つまり、宮野志保が新一のデータを書き換えたという証拠は残っているということだ。後に姉の死をきっかけに組織を抜ける宮野志保がデータを書き換えたことが発覚すれば、新一が生きていることも組織に知られてしまうというリスクが示唆されている。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』ネタバレ感想
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』は、灰原哀のストーリーを中心に後に明かされた要素が第一話に組み込まれ、厚みが増した点が魅力的な作品だ。それだけでなく、後に発展していく新一と蘭の関係も新鮮な視点で振り返ることができる。
後に園子と交際することになる京極真が空手の都大会の客席に登場したり、京極に憧れる空手部の和田陽奈、少年探偵団や変装した新一の両親も登場するなど、オールスターキャストに近い豪華さもある。最後のダイジェエストでは、怪盗キッドの名付け親が「若手小説家」であることに触れられており、新一の父・優作がキッドの名を命名したという伏線が改めて張られている。
また、「名探偵コナン」シリーズとしては劇場版も含めてストーリーが膨大に膨らんでいっている中で、原点を確認できる作品があるというのは、旧来のファンはもちろん、新規ファンの入り口としてもありがたいことだ。一方で、リメイクからは10年が経過しようとしており、もう少ししたら改めてリメイクを観てみたい気もする。今後の展開と共に、名シーンに再び触れられることに期待しよう。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』はBlu-rayが発売中。
コミック版も発売中。
『名探偵コナン』の最新刊107巻は発売中。
『名探偵コナン 隻眼の残像』のアニメコミックは上下2巻で発売中。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』で流れた曲のまとめはこちらから。
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』の声優キャストまとめはこちらから。
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