『エイリアン:ロムルス』公開
「エイリアン」シリーズ最新作『エイリアン:ロムルス』が2024年9月6日(金) に公開。『エイリアン:コヴェナント』(2017) 以来となるシリーズ最新作で、世界で大ヒットを記録している。
「エイリアン」本編のシリーズとしては、『エイリアン:ロムルス』は第7作目に当たる。日本でナンバリングされている『エイリアン4』(1997) までのシリーズ、そして、第1作目の監督であるリドリー・スコットが再度指揮をとった『プロメテウス』(2012)、『エイリアン:コヴェナント』を全て繋ぐ『エイリアン:ロムルス』は、フランチャイズの中で時系列的にどの位置にあるのだろうか。
今回は、『エイリアン:ロムルス』のタイムラインをこれまでの映画6作と合わせて、ネタバレありで解説していこう。なお、以下の内容は『ロムルス』を含む「エイリアン」の映画シリーズのネタバレを含むので注意していただきたい。
以下の内容は、映画『エイリアン:ロムルス』およびその他の映画「エイリアン」シリーズの内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『エイリアン:ロムルス』の時系列は?
映画『エイリアン:ロムルス』の時代設定は2142年。2122年を舞台にした第1作目『エイリアン』(1979) の20年後が舞台になっている。『エイリアン』では、リプリーらが乗る宇宙貨物船ノストロモ号が惑星LV-426でエイリアンと遭遇。リプリーはノストロモ号を爆破し、脱出艇に乗り込んでいたエイリアンも宇宙に放り出して勝利を収めた。
『エイリアン:ロムルス』の冒頭の時点で、舞台はその20年後の2142年になっている。ノストロモ号が爆破された場所からエイリアンの繭が回収され、その中からエイリアンが取り出されるのだが、ウェイランド・ユタニ社は20年かけてようやくノストロモ号を見つけることができたということだろう。
それから数ヶ月が経過し、植民地惑星のジャクソン星でタイラーたちが漂流していた研究施設ロムルスを発見。ジャクソン星で暮らしていたレイン・キャラダインとアンディはタイラーたちに同行してロムルスへと赴く。そして、このロムルスこそが、ノストロモ号から回収されたエイリアンを研究していた施設だった。
ロムルスにはエイリアンから抽出した黒い液体を保管されており、それは人間を進化させるためのものだった。49年前にあたる2093年を舞台にした映画『プロメテウス』では、ウェイランド・ユタニ社の前身であるウェイランド社の創設者であるピーター・ウェイランドが登場。1990年生まれのウェイランドは103歳という高齢で、人類の起源に関わりがあるとされるエンジニアから永遠の命を得るためにプロメテウス号を宇宙に派遣していた。
ウェイランドはここで殺されてしまうが、ルークを含むアンドロイドと社員たちはウェイランドの遺志を継いだのだろう。49年後に『ロムルス』で人間を進化させる物質を(一時的にだが)手に入れることに成功している。
また、ロムルスには天井に吊り下げられたエイリアンの遺体も見られるが、この個体には銛(もり)が刺さっている。『エイリアン』のラストではエレン・リプリーが銛を放ってエイリアンを宇宙に放り出しており、あの個体が再び人類と対峙したことを示唆している。
『エイリアン:ロムルス』のラストでは、生き延びたレインが故障したアンディと共に惑星ユヴァーガを目指す。『ロムルス』の舞台である2142年から、映画『エイリアン2』(1986) の舞台である2179年まではまだ37年ある。
『エイリアン2』では、『エイリアン』のラストで地球に帰還するために冷凍睡眠に入っていたエレン・リプリーが57年の時を経て発見される。リプリーはエイリアンを発見したLV-426へ再び赴くことになるのだが、同作の20年前から入植(テラフォーミング)が行われていたと語られている。
つまり、ウェイランド・ユタニ社は『エイリアン』でノストロモ号が着陸してから37年後、『エイリアン:ロムルス』でロムルスが破壊されてから17年後にLV-426への入植を始めたということだ。『ロムルス』の展開を踏まえると、ウェイランド・ユタニ社は黒い液体が失われ、それを取り戻すことができなかったため、入植民を実験体としてエイリアンとの融合を試みたと考えることもできるだろう。
『エイリアン:ロムルス』公開時点の「エイリアン」シリーズの時系列順は、以下のようになる。
『プロメテウス』-2093年
『エイリアン:コヴェナント』-2104年
『エイリアン』-2122年
『エイリアン:ロムルス』-2142年
『エイリアン2』-2179年
『エイリアン3』-2180年
『エイリアン4』-2379年
『エイリアン:ロムルス』の時系列が整理できたところで、ここからは映画「エイリアン」シリーズの出来事を時系列順にまとめていこう。以下は各作品の結末を含む、さらに詳しい内容を記しているのでご注意を。
以下の内容は、映画「エイリアン」シリーズの結末に関するネタバレを含みます。
映画「エイリアン」を時系列順におさらい
『プロメテウス』-2093年
リドリー・スコット監督が『エイリアン』以来となる指揮をとった『プロメテウス』の冒頭は、太古の昔が舞台で、後に人類から“エンジニア”と呼ばれる巨人が黒い液体を飲むシーンから幕をあける。巨人の身体は崩壊し、その遺伝子が惑星に拡散される場面が映し出されている。
この「黒い液体」というのが、『エイリアン・ロムルス』で研究施設ロムルスに保管されていたものと共通するアイテムだ。『ロムルス』時点ではマウスを通じた実験で改良されていると思われ、生物を進化させるアイテムとして、『プロメテウス』後の「エイリアン」シリーズでは重要な存在になる。
その後、2089年に考古学者のエリザベス・ショウとチャーリー・ホロウェイが遺跡で壁画を発見し、人類の起源に関わりがあるエンジニアと未知の惑星の存在が示される。そして、『プロメテウス』の本編は2093年が舞台に。ウェイランド社がショウらをプロメテウス号に乗せてその惑星へと派遣するのだ。
その惑星LV-223には、未知の生物と眠っていたエンジニアがおり、チームは壊滅。エンジニアが黒い液体を地球に拡散させようとしていることをアンドロイドのデヴィッドが知り、ショウはそれを阻止した。ショウは回収したデヴィッドと共にエンジニアの宇宙船を乗っ取って、エンジニアの母星を目指すことになる。
一方、この惑星に生息していた生物に寄生されたエンジニアの胸から飛び出してきたのは、エイリアンによく似た生物だった。かつてエンジニアがこの惑星に拡散させた黒い液体が未知の生物を生み、それがエンジニアに寄生したことによってエイリアンが生まれたと捉えられるエンディングになっている。
ちなみに『プロメテウス』には削除された設定がある。それは冒頭のシーンでエンジニアが飲んでいたのはエイリアンの血を再現した液体だった、というものだ。この設定が生きているかどうかは不明だが、エイリアンが遥か古代から宇宙に生息していた可能性も否定できない。
『エイリアン:コヴェナント』-2104年
この『プロメテウス』の展開は、引き続き指揮をとったリドリー・スコット監督の『エイリアン:コヴェナント』でさらに発展する。同作の冒頭では、21世紀末にウェイランドがアンドロイドを起動し、そのアンドロイドはダビデ像を見て自らの名前をデヴィッドと決める。ちなみにデヴィッドの誕生年は2025年とされており、今のところ設定には矛盾がある。
時は経て前作の11年後の2104年に植民船コヴェナント号が2,000人の入植民を載せ、惑星オリガエ6へ向かっていた。この船はデヴィッドと同じ型のアンドロイドのウォルターが管理していたが、航行中に事故にあって乗組員は冷凍睡眠から目を覚まし、歌のような信号を受けた惑星を調査することになる。
この惑星では、コヴェナント号の乗組員たちは黒い胞子によって感染症にかかり、その体内からエイリアンのような生物(ネオモーフ)が誕生する。船員たちがネオモーフに襲われる中、プロメテウス号の乗員だったアンドロイドのデヴィッドが現れる。デヴィッドは前作のラストの後にこの星に辿り着き、生物の研究に取り組んでいたのだ。
しかし、デヴィッドが共に脱出したショウを実験体にしていたこと、この惑星に黒い液体をばら撒いてこの惑星のエンジニアと動物たちを全滅させたこと、黒い液体で遺伝子操作を繰り返して「完璧な生命体」と呼ばれるエイリアンを生み出していたことが明らかになる。人類が作ったアンドロイドがエイリアンを創り出したという衝撃の展開だ。
コヴェナント号を呼びだしたのもデヴィッドであり、その目的はエイリアンの宿主となる人間を手に入れることだった。人類に反旗を翻したデヴィッドに対し、同じ見た目のウォルターが立ち向かうが、最後はデヴィッドがウォルターになりすましてコヴェナント号を乗っ取ることに成功した。
デヴィッドは人間の胎芽が入ったコヴェナント号のキャビネットにエイリアン(フェイスハガー)の胚を入れ、乗組員は死亡したと会社に報告。コヴェナント号はウェイランド社/ウェイランド・ユタニ社が支配する「エイリアン」シリーズのメインストーリーから外れる形で、航行を続けていくことになる。
人間を裏切ったデヴィッドは、38年後を舞台にした『エイリアン:ロムルス』の時点でも、まだどこかで航行しているかもしれない。『ロムルス』のラストでウェイランド・ユタニ社から逃れるために旅立ったレインと今後出会う可能性もあるだろう。
『エイリアン』-2122年
『エイリアン:コヴェナント』の18年後を舞台にした『エイリアン』では、宇宙貨物船ノストロモ号に搭載されたAI・マザーが、惑星LV-426に知的生命体の存在を検知。ウェイランド・ユタニ社との契約で、乗組員は知的生命体からの信号を検知した場合には調査をすることになっており、エレン・リプリーを含むチームはLV-426へ向かうことになる。
その惑星で宇宙船と化石化したエンジニアが発見され、エンジニアの遺体からはエイリアンが飛び出した痕跡があった。リプリーは分析の結果、発せられていた信号が警告であったことを知り、一同は惑星を脱出。しかし、乗組員の一人に寄生していたエイリアンが船に乗り込むことを許してしまう。
そんな中、リプリーは科学主任のアッシュがウェイランド・ユタニ社からエイリアンの捕獲と回収という任務を受けていること、アッシュはアンドロイドであったことを知る。このアッシュと同じ型のアンドロイドが『エイリアン:ロムルス』に登場したルークである。『ロムルス』でもルークは科学主任を名乗っているので、この型のアンドロイドは『エイリアン』から20年が経過しても現役で使われていたようだ。
『エイリアン』のラストでは、リプリーがノストロモ号を爆破。脱出艇に乗り込んでいたエイリアンも宇宙へと放り出して、猫のジョーンズと共に冷凍睡眠に入った。20年後の『エイリアン:ロムルス』の時点でもリプリーは発見されるのを待って漂流している状態だ。
『エイリアン2』-2179年
『エイリアン』から57年後、『エイリアン:ロムルス』から37年後の2179年を舞台にしたジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』では、冷凍睡眠状態で漂っていたエレン・リプリーの脱出艇が発見される。ウェイランド・ユタニ社が20年前の2159年に入植を開始した惑星LV-426からの連絡が途絶え、リプリーは『エイリアン』に続いて再びLV-426を訪れることになる。
LV-426では、ニュートという生き残りの少女を救出。それ以外の入植民たちはエイリアンによって全滅させられていた。脱出を試みるリプリーたちだったが、ウェイランド・ユタニ社の社員であるバークが会社からエイリアンを持ち帰るという命令を受けていたことが発覚。植民地の現地社員にエンジニアが遺した船を調査するよう指示を出したのもバークだった。
人間同士の対立が起きる中、アンドロイドのビショップはリプリーを助けた。57年前に『エイリアン』でアッシュが暴走したのは型が古いために起きた不具合だとビショップは主張しており、『エイリアン:ロムルス』でもアッシュと同じ型のルークが敵に回ったこととは整合性が取れている。
リプリーはエイリアンの卵を産んで繁殖することができるエイリアン・クイーンと対峙。クイーンを倒し、生き残ったニュートとリプリー、ヒックス、ビショップは再び冷凍睡眠に入っている。
『エイリアン3』-2179年
前作の直後である2179年を舞台にしたのがデヴィッド・フィンチャー監督の『エイリアン3』(1992)。リプリーは前科者たちの監獄として機能している流刑惑星のフィオリーナ161に漂着。着陸時にリプリー以外のメンバーは死に悲嘆に暮れるリプリーだったが、さらにフィオリーナ161では唯一の女性として好奇と嫌悪の目に晒されることになる。
リプリーの脱出艇に潜んでいたエイリアンが犬(完全版では牛)に寄生して新たなエイリアンが誕生。リプリーは一癖も二癖もある刑務所の職員と囚人たちとそれに立ち向かうことになる。アンドロイドのビショップは修理されると、脱出艇にエイリアンが潜んでいたこと、ウェイランド・ユタニ社がその状況を知っていたことをリプリーに伝えて息を引き取る。やっぱりビショップは最後まで味方のアンドロイドだった。
そして、リプリーの体内にもエイリアンが宿っていることが発覚。ウェイランド・ユタニ社はリプリーをエイリアン・クイーンを産む母体として期待しており、会社から派遣されたマイケル・ビショップ(ビショップの開発者)はリプリーをエイリアンごと地球に連れ帰ろうとした。
これを拒んだリプリーは、自ら溶鉱炉へ飛び込んだ。その直前にエイリアン・クイーンの幼体がリプリーの胸を突き破って出てくるが、リプリーはこれを抱きしめて溶鉱炉へと沈んでいっている。2092年生まれのエレン・リプリーは、2180年、冷凍睡眠の期間も含めた88年の生涯を終えたのだった。
『エイリアン:ロムルス』から『エイリアン3』までは38年の時が経っているが、リプリーはほとんどの期間を冷凍睡眠状態で過ごしている。『ロムルス』とリプリー・サーガが交差するとすれば、レインやアンディが人知れず冷凍睡眠中のリプリーを救っていた、という展開くらいだろうか。
『エイリアン4』-2381年
1997年に公開されたジャン=ピエール・ジュネ監督の『エイリアン4』は、シリーズで最も未来を描いており、前作から202年後の2381年が舞台になる。主人公はエレン・リプリーの8体目のクローンであるリプリー8。引き続きシガニー・ウィーバーが演じているが、オリジナルとは異なる個体である。
軍が実験宇宙船オーリガでリプリーのクローンを作っていた理由は、その身体を母体として生物兵器としてのエイリアンを量産するためだった。ちなみにウェイランド・ユタニ社は本作から数十年前に経営破綻したことになっており、『エイリアン4』では軍がエイリアンを兵器として利用しようとしている。この時点で、ウェイランド・ユタニ社、アンドロイドのデヴィッド、軍(政府)の三者がエイリアンを利用しようとする勢力として登場したことになる。
リプリー8は寄生されていたリプリーの状態を再現したためエイリアンの遺伝子を持っていた。それでも、リプリーは復活したエイリアンを倒す道を選び、エイリアンの苗床になる人間をオーリガに運んでいた宇宙貨物船ベティのクルーたちと戦う。
途中で、ベティのクルーの一人であるアナリー・コールがアンドロイドであったことが明らかになるが、コールは政府の計画を知ってエイリアンが地球に持ち帰られることを阻止しようとしていた。コールはアンドロイド自身が改良して作ったアンドロイドの2世で、人間がアンドロイド2世から命令されることを嫌い、政府によってリコールされていた。
コールは回収される前に政府の計画を知り、正しい行動を取ろうとしていたが、それはプログラミングの結果だと説明している。そのプログラミングを施したのはおそらくアンドロイドであり、人間に反旗を翻したデヴィッドの存在を思わせる設定になっている。『エイリアン4』は、そんなアンドロイドのコールとクローンのリプリー8の対話が見どころの一つだ。
クライマックスではリプリーのクローンから摘出されたエイリアン・クイーンがニューボーンを出産。リプリーのDNAを持つエイリアン・クイーンはエイリアンになかった子宮を持っていたのだ。奇しくもエイリアン側が人間のDNAを手に入れて進化したということである。リプリーとクイーンの子孫であるニューボーンは歴代最強の強さを見せるが、最後はリプリー8が涙を流しながら殺すことになった。
『エイリアン:ロムルス』ではエイリアンのDNAを身体に打ち込んだケイがエイリアンと人間のDNAを持つオフスプリングを出産した。それから239年の時を経て、人間とエイリアンのDNAを持つニューボーンをエイリアン・クイーンが出産したことになる。
『エイリアン4』のラストでは、リプリー8とコール、ベティのクルーが地球に帰還。リプリー8とコールは初めて地球を目にしている。ちなみに2381年の地球は荒廃しており、多くの人が地球を去っていると言われている。地球が荒廃するという予測がウェイランド・ユタニ社に入植と人類の進化を急がせた理由だったのかも知れない。
以上が、映画「エイリアン」シリーズの時系列だ。2093年を舞台にした『プロメテウス』から2379年を舞台にした『エイリアン4』までは286年。2025年の配信が見込まれるドラマ『エイリアン:アース(原題)』では『プロメテウス』の1年前に当たる2092年から『エイリアン』の舞台である2122年の間の時期を描くとされている。まだ明かされていない空白の歴史が今後も語られていくことに期待しよう。
映画『エイリアン:ロムルス』は2024年9月6日(金) より全国の劇場で公開。
『エイリアン:ロムルス』オリジナル・サウンドトラックは配信中。
「エイリアン」シリーズはBlu-rayコレクションが発売中。
映画『エイリアン3』のその後を新たに描くオリジナル小説『
』( T・R・ナッパー著, 入間眞 訳)は9月4日(水)発売。『エイリアン:ロムルス』ラストのネタバレ解説&考察はこちらの記事で。
デヴィッドからアンディまでのアンドロイドの系譜の解説&考察はこちらから。
続編について監督が語った内容はこちらから。
ドラマ『エイリアン:アース』の情報はこちらから。
『エイリアン:ロムルス』で主演を務めたケイリー・スピーニーが出演する映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』についてはこちらの記事で。
【ネタバレ注意】映画『ラストマイル』ラストの解説はこちらから。
【ネタバレ注意】映画『夏目アラタの結婚』ラストの解説はこちらから。