1992年公開の『ホーム・アローン2』
映画『ホーム・アローン2』は1992年に公開されたクリスマス映画で、1990年公開の『ホーム・アローン』の続編だ。前作に続き、後に「ハリー・ポッター」シリーズも手がけることになるクリス・コロンバス監督が指揮した作品で、マコーレー・カルキン主演の「ホーム・アローン」映画としては最終作となった。
今回は、『ホーム・アローン2』のキャストとラスト、前作との繋がり等について、ネタバレありで解説していこう。以下の内容はネタバレを含むので、本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ホーム・アローン2』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『ホーム・アローン2』ネタバレ解説
『ホーム・アローン』との繋がりと違い
前作『ホーム・アローン』では、主人公のケビン・マカリスターはパリへの家族旅行で一人自宅に取り残され、そこにやってきた二人の泥棒を迎えうつというストーリーが描かれた。『ホーム・アローン2』では舞台はニューヨークに。クリスマスのフロリダへの家族旅行に向けて家を出たまではよかったが、空港で家族と逸れたケビンは間違えてニューヨーク行きの便に乗ってしまったのだった。
『ホーム・アローン2』のケビンは、厳密には“ホーム”を離れているので、さまざまな場所で大人と対峙することになる。最初は父のクレジットカードを勝手に使って宿泊した高級ホテルで、次はダンカンのおもちゃ屋で、最後はロブ叔父さんの家で。
前作では、家族はいらないと言い放ったケビンも、ケビンを気にかけていなかった家族も反省したはずだった。続編への唯一の伏線は、最後に兄のバズが自分の部屋をめちゃくちゃにしたことに気づき、ケビンの名前を呼ぶ場面だ。『ホーム・アローン2』の冒頭ではバズがやっぱりケビンにイタズラを仕掛け、両親が二人を叱ることでストーリーが動き出す。
被害者なのに謝罪を要求された可哀想なケビン。再び家族不信に陥ったケビンに、母のケイトは「去年みたいにお願いしたら叶うかもね」と言い放つ。その上、両親は去年と同じく旅行の朝に寝過ごしてしまう。去年は寝ている間に電線が切れるという事故で目覚ましが鳴らなかったが、今回は父ピーターが充電のために目覚まし時計の電源を抜いて設定をリセットしてしまっており、自業自得と言える。
『ホーム・アローン2』は前作から1年後が舞台になっているが、実際には2年後に公開されており、バズ役のデヴィン・ラトレイはすっかり大きくなっている。なお、デヴィン・ラトレイはその後も俳優としてキャリアを歩み、2021年にはディズニープラスで配信された『ホーム・スイート・ホーム・アローン』にバズ役でカメオ出演している。
こうした経緯があるため、ケビンはニューヨークで一人になっても慌てない。たまたまレコーダーの電池を取るために取り出していた父の財布からクレジットカードを使ってニューヨークでの一人旅を満喫するのだ。
トランプ出演の意外な背景
ケビンがニューヨークで泊まるのは有名なプラザホテルだが、そのフロントで『ホーム・アローン2』の最も有名なシーンの一つが登場する。後に米国大統領となるドナルド・トランプが出演しているのだ。
当時ドナルド・トランプはプラザホテルのオーナーで、2020年の米Business Insiderのインタビューでは、コロンバス監督はその裏側を明かしている。曰く、トランプはホテルを撮影場所として使えるのはトランプが映画に出演する場合のみと条件を出してきたという。以後、『ホーム・アローン2』でトランプがケビンに道を聞かれるシーンは繰り返しメディアで使用されることになった。
ちなみにプラザホテルは映画『華麗なるギャツビー』(2013) などでも撮影に使われているが、トランプがオーナーだったのは1988年から1995年の間だった。ちょうどその期間に『ホーム・アローン2』の撮影がプラザホテルで行われることになったというわけだ。
帰ってきたハリー&マーヴ
『ホーム・アローン2』でヴィランとなったのは前作に続いて泥棒のハリーとマーヴだ。二人は刑務所で起きた暴動に乗じて脱走しており、ニューヨークで大きなヤマをこなして海外に逃亡する計画を企てていた。ケビンと再会したハリーが右手の掌を見せるのは、前作で熱されたドアノブを握って「M」の文字の火傷を負ったからで、「M」はマカリスター(McCallister)家のMである。
ハリーを演じたジョー・ペシは2024年時点で81歳を迎えているが現役を貫いている。映画『アイリッシュマン』(2019) では、アカデミー助演男優賞にノミネートされている。
マーヴ役のダニエル・スターンは2024年時点で67歳。コロナ禍後は出演が減ったが、Appleドラマ『フォー・オール・マンカインド』(2019-) には2023年からNASA長官のイーライ・ホブソン役で出演している。また、自身が監督脚本を手がけるコメディ映画『Everything’s Peachy』の製作も進められている。
ハリー&マーヴは「ダンカンのおもちゃ屋」に侵入。経営者のダンカンは一年で最も稼げるクリスマスイブの売上を病気の子ども達のために全て寄付するつもりだった。それを知っていたケビンは、ハリー&マーヴをおもちゃ屋から誘き出し、クリスマスの夜にロブ叔父さんの家で決闘を挑むことになる。
「鳩おばさん」の過去
ケビンがこうした行動に出たきっかけは、「鳩おばさん」との出会いだった。鳩おばさんはかつて愛していた男が自分の元を去って以降、人を信じることができなくなり鳩と暮らすようになっていた。
そんな鳩おばさんにケビンは、大きくなってスケート靴が履けなくなるのと同じでハートも使わなきゃ持っている意味がないと助言する。鳩おばさんは「愛している人でも見捨ててしまう」という人間の悲しすぎる性を指摘するが、ケビンは「皆忙しすぎて忘れてしまうんだ」と擁護する。この擁護はケビンのことを忘れてしまう家族への擁護でもある。
ケビンには、父のカードを勝手に使い、悪いことをしたという自覚があったが、鳩おばさんは「悪い行いは良い行いで消すことができる」と助言する。ケビンはこの直後に「人の役に立つことを見つけて実行に移す」という鳩おばさんのアドバイスを実行に移すことになる。聖アン小児科病院の窓から子どもが手を振っている姿を見て、「病気の子どものクリスマスを盗むなんて絶対に許せない」と考えたのだ。
前作でケビンは、近所に住むマーリー老人との対話を経て、互いを助け合うことになった。マーリーは周囲から殺人鬼と噂されて避けられており、『ホーム・アローン2』でもケビンはクリスマス・イブの夜に独りで過ごす鳩おばさんとの交流を経て家族への想いを取り戻すことになる。
『ホーム・アローン2』ラストのネタバレ解説
ロブ叔父さんの家って?
映画『ホーム・アローン2』のクライマックスは、前作と同じくケビンが万全の準備をしてハリー&マーヴを迎えうつのだが、前作と異なるのは舞台がロブ叔父さんの家という点だ。
前作では作品を通してケビンが自宅を好き勝手に使うことで、舞台となる家を案内する効果もあったが、本作では視聴者にとって親しみのない間取りでの戦いとなる。その分、有名な「レンガ落とし」をはじめ、ケビンの仕掛けは前作より凶暴になっている印象だ。
ちなみに家主のロブ叔父さんは前作『ホーム・アローン』ではパリのアパートで登場しており、パリに転勤になったことが明かされている。ロブは夫婦だけ先にパリに移り住んでおり、子どもをケビンの家に預けていた。
ケビンの両親であるピーターとケイトはロブの子どもを送り届けがてらパリで休暇を過ごそうとしていた。パリへの旅費はロブが負担しているので、ある意味、前作でのケビン取り残し事件のきっかけを作った人物でもある。
こうした経緯があったため、『ホーム・アローン2』のケビンはホテルに滞在していた時に、父の手帳からロブ叔父さんの家の住所を見つけ、「パリから戻ってるかな」と発言していた。これを足がかりにケビンはロブ叔父さんの家に立ち寄るのだが、家は改装中で留守番もおらず、ケビンはこの家を舞台に泥棒達を迎えうつことになる。
ちなみに、このロブ叔父さんの家はニューヨークの51 West 95th Streetという場所に実在しているのだが、2023年の12月には670万ドルで売りに出されていることを米NYタイムズが報じている。
ハリー&マーヴを懲らしめたケビンは、最後に屋上から降りてくる二人が握っているロープに火をつけて落下させると、二人はさらに上から降ってきたペンキでドロドロに。ケビンは警察に通報し、花火で場所を知らせると告げる。
ところがケビンは凍った路面で足を滑らせてしまい、二人に捕まってしまう。そのピンチを助けたのは鳩おばさんだった。鳩おばさんはハリー&マーヴに鳩の餌をかけて鳩達に二人を襲わせる。ケビンはその間に花火を打ち上げて警察に居場所を知らせ、二人は逮捕されたのだった。
駆けつけた警察が「まるで独立記念日の花火だ」と言っているのは、ニューヨーク州では花火の使用は7月4日の独立記念日の前後と12月26日以降の新年前後に限られているからである。それ以外の時期に花火を打ち上げることは違法となっている。
ダンカンからの贈り物
おもちゃ屋の経営者ダンカンは、泥棒の襲撃現場に残されていた手紙から、泥棒を撃退したのがケビンであることを知る。ケビンが病気の子ども達に20ドルを寄付した際に、ダンカンは「キジバト」の飾りをプレゼントしていたが、手紙でその件に触れられていたため、ダンカンはケビンのことを思い出すことができたのだ。
一方、ケビンの母ケイトもケビンを探しにニューヨークにやってきており、道ゆく人々にケビンを見ていないか聞いてまわっていた。ケビンが大好きなツリーを見に行っている可能性に思い至ったケイトは、同じく子どもを持つ警官にロックフェラーセンターのクリスマスツリーまで連れて行ってもらい、ケビンと再会を果たす。
二人が再会するロックフェラーセンターのクリスマスツリーは観光名所として知られており、ドラマ『ホークアイ』(2021) や映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のクライマックスの舞台にも使われている。
マカリスター家は、ケビンを追い出したことを咎められたプラザホテルのはからいで同ホテルのスイートルームに宿泊。クリスマスの朝には部屋にプレゼントが溢れかえっていたが、そのプレゼントは「ダンカンのおもちゃ屋」の経営者E・F・ダンカンからの贈り物だった。
バズもついにケビンのことを認め、二人が「メリークリスマス」と言い合うハッピーなエンディングに。けれど、これで終わらないのがケビンの良いところだ。ケビンは鳩おばさんの元を訪れると、二羽のキジバトの1羽を渡すと、これを持っている限り自分たちがずっと友達であること、自分は鳩おばさんのことを絶対に忘れないことを伝える。
自分とその家族が幸せになったからよい、というエンディングではなく、そこに辿り着くまでの出会いと、助けてくれた人を大切にする納得のエンディングだ。だが、最後にはケビンが使ったルームサービスの967ドルの請求書を見た父が怒りの声をあげ、驚いたケビンが走り去るところで映画『ホーム・アローン2』は幕を閉じる。
『ホーム・アローン2』ラストの考察&感想
伝統から外れた人の物語
映画『ホーム・アローン2』は、第1作目のヒットを受けて制作された作品で、先の2023年の米Business Insiderでのインタビューでは、クリス・コロンバス監督は本作を「基本的には前作のリメイク」と話している。監督自身は新しいことに挑戦するべきだと考えており、その後のシリーズの制作には関わっていないという。
クリス・コロンバス監督が作る最後の「ホーム・アローン」作品となった『ホーム・アローン2』だが、確かに「ホーム・アローン」はこの二部作で一つの完成した作品とも言える。「ホーム・アローン」の良いところは、前作のマーリー老人、続編の鳩おばさんと、子どものケビンと社会との接点を失った人が互いに助け合い、学び合うことだ。
米国のクリスマスは家族と過ごす日であり、スーパーなども休みになってしまう(なのでケビンは前作でクリスマス・イブに食料を買いだめしていた)。「家族と過ごす」という常識を逆手に取り、そうできなかった人々を主人公にした物語を描く傑作シリーズだったと言える。
特に『ホーム・アローン2』では、ケビンはホームレス状態にある人々への偏見を持っていたが、冷静に、理論的に考えて鳩おばさんが自分を助けてくれたことに思い至り、自ら彼女に歩み寄った。
自分から見れば“外部”であり“未知”である誰かにも知られざる過去があり、人としての心があるということを示したという点で、『ホーム・アローン2』は前作よりも社会的なメッセージを帯びた作品でもあった。
「ホーム・アローン」のその後は?
「ホーム・アローン」シリーズは、その後第5作目まで制作された後、製作会社の旧21世紀フォックスがディズニーに買収された。コロナ禍の2021年には、ディズニープラスオリジナルの配信作品として『ホーム・スイート・ホーム・アローン』が公開されている。
『ホーム・アローン3』と『ホーム・アローン5』は独立した作品だったが、『ホーム・アローン4』は『ホーム・アローン2』の続編であり、10年後が舞台になっている。『ホーム・アローン4』では、ケビンの両親は離婚しており、10年後のケビンをマイク・ワインバーグが演じるなどキャストは一新されている。
第6作目の『ホーム・スイート・ホーム・アローン』はケビンがいる世界線の数十年後が舞台になっており、ケビンの兄バズは警察になっている。ケビンの現在についても触れられているので、「ホーム・アローン」ファンには必見の作品だ。
キャストのその後
演じたキャストの方はというと、広く知られている通り、ケビンを演じたマコーレー・カルキンは若くして巨額の富を得たことで両親の親権争いに巻き込まれ、『ホーム・アローン2』公開の4年後には俳優業を休業することになる。10代と20代のアルコール・薬物依存症で苦しんだ時期を経て、2010年代後半から俳優活動を再開した。
2018年のクリスマスには、Googleアシスタントのコマーシャル映画に出演し、「ホーム・アローン」のケビンを26年ぶりに演じた。38歳になったケビンがGoogleアシスタントに助けられながら泥棒を退ける姿が描かれた。
2023年にはハリウッドのウォーク・オブ・フェイムにも名前が刻まれており、2024年からシーズン1の配信を開始したAmazonドラマ『フォールアウト』では、シーズン2よりマコーレー・カルキンが出演することが発表されている。2024年時点で44歳、『アイアンマン』(2008) で復活したロバート・ダウニー・Jr.のように、ここからがキャリアの全盛期になることを願いたい。
ちなみにマコーレ・カルキンを一躍有名にしたクリス・コロンバス監督は、後に映画「ハリー・ポッター」の第1作目と第2作目を監督することになった。マコーレ・カルキンの親権トラブルを苦く思っていた同監督は、「ハリー・ポッター」のキャスティングにあたっては両親の審査も行ったとされている。
また、『ホーム・アローン2』で鳩おばさんを演じたブレンダ・フリッカーは『マイ・レフトフット』(1989) でアカデミー助演女優賞を受賞したことで知られる俳優で、『ホーム・アローン2』の後も多くの作品に出演していたが、2012年には自己破産したことを発表した。だが、同年『アルバート氏の人生』でアイルランドの映画賞にノミネートされるなど、俳優としての活動は続いている。
そして、順調に俳優として成功を収めたのはマコーレー・カルキンの実の弟で「ホーム・アローン」シリーズでも末っ子のフラーを演じたキーラン・カルキンだ。分厚いメガネをかけてコーラを好み、ケビンに「おねしょするから一緒に寝たくない」と言われていたあのちびっ子である。
『ホーム・アローン』がデビュー作だったキーラン・カルキンは、90年代以降も映画・ドラマ・舞台への出演を続け、2024年にはドラマ『メディア王 〜華麗なる一族〜』(2018-) のローマン・ロイ役で第81回ゴールデングローブ賞テレビドラマ部門主演男優賞を受賞した。日本では2025年公開予定の映画『リアル・ペイン 〜心の旅〜』ではジェシー・アイゼンバーグとダブル主演を務めている。
公開から30年以上も経てば、いろいろなことが起きるものだ。「ずっと友達」と言ってくれたケビン少年を懐かしみつつ、それぞれの人生を歩むキャストの今に想いを馳せながら、クリスマスを過ごすのも悪くないだろう。
「ホーム・アローン」は第1作目と第2作目がセットになったBlu-rayコレクションが発売中。
最新作『ホーム・スイート・ホーム・アローン』はディズニープラスで配信中。
『アナと雪の女王』のネタバレ解説&感想はこちらから。
『アナと雪の女王2』のネタバレ解説&感想はこちらから。