【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第4話 “内地”に残る差別意識 歴史を知り、個人と向き合うこと【あらすじ・レビュー・感想】 | VG+ (バゴプラ)

【ネタバレ解説】『BNA ビー・エヌ・エー』第4話 “内地”に残る差別意識 歴史を知り、個人と向き合うこと【あらすじ・レビュー・感想】

©️2020 TRIGGER

最注目アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』

今回最注目アニメの一つである『BNA ビー・エヌ・エー』。2020年4月にフジテレビ「+Ultra」枠で放送を開始し、人気を集めている。

アニメ『BNA』では、これまでマイノリティの中の女性差別や、組織の隠蔽体質など、主人公・みちるが移り住むことになった“獣人の街”アニマ・シティの闇の部分が描かれてきた。ユートピアに思えた場所が人間界と同じ様に腐敗していたというのが、これまで各話に通底する展開だ。

第3話「Rino Melancholy」のあらすじと解説は以下の記事に詳しい。

今回は、第3話に引き続き、第4話のあらすじをご紹介し、そのテーマを解説していこう。

第4話「Dolphin Daydream」のあらすじは?

アニマシティの“獣民”になったみちる

第3話「Rino Melancholy」のラストで士郎と和解した主人公のみちるだったが、人間の姿に戻るべく自分の意志で変身能力を発動させようとしていた。そんな中、ロゼ市長の取り計らいで市役所から獣民票と保険証を受け取り、みちるは法的にもアニマシティの“獣民”となる。

ロゼ市長は、獣人は獣因子によって姿を変えることのできる存在であること、獣人は自然の中で暮らしてきたが人間の環境開発によって人間と接触せざるを得なくなったこと、様々な衝突の歴史の上にアニマシティが建設されたこと、そしてみちるの驚異的な変身能力はまだ解明できていないことをみちるに告げる。

ギャングのボス・フリップがメディセンでの横領を世間に知られた部下の日下部を始末する一方で、みちるはミンク獣人のマリーからアニマシティの外部にも繋がるスマホを入手する。友人らからSNS“フェイスルック”に届いた誕生日メッセージに複雑な気持ちになるみちるだったが、そのSNSがきっかけになり、インフルエンサーでイルカ獣人であるニナとの出会いを果たす。

ニナの“内地”への憧れ

このニナは実はフリップの娘だったのだが、人間界のSNSであるフェイスルックを知っているということで二人は意気投合。ニナはみちるが人類の世界=“内地”にいたことに感激する。ニナにとっては人類が住むきらびやかな世界は憧れであり、人間のフリをしてSNSに興じていたのだ。

ニナの祖父は人間に食べられたというが、ニナはその話を信じていない様子。人類を嫌う父親に、ニナは愛想を尽かしていた。みちるは、ニナが集めた人間界のアイテムを見て、親友なずなとの思い出が蘇えり、元の世界に戻りたいと強く願う。すると次の瞬間、みちるの姿は人間に戻っていた。

これを機に二人は内地に行くことを決意。ニナのフェイスルックの友人であるリサのホームパーティに出席することを決める。ニナは内地に行きたい理由を「キラキラしてるから」と話し、内地に対する憧れを隠さない。

舞台は人間界、直面する“浅はかさ”

人類からの獣人狩りに怯えるみちるに対し、「心配しすぎ」と楽観的なニナ。パーティ会場についてはニナはテンションが上がり獣化してしまうが、意外にも若者たちからは歓迎を受ける。パーティの主催者であるリサは「差別と闘ってきたニナちゃんのこれまでの痛みや苦しみは私たちには想像できない」と“意識高い系”のスピーチを始める。「いや、私は別に……」と答えるニナの話も聞かず、「強く生きるニナちゃんの美しさと勇気を讃えましょう!」とニナを持ち上げる。

その頃、ロゼ市長とフリップはみちるとニナが内地にいることを察知していた。ロゼ市長から二人を連れ帰るよう頼まれた士郎は、フリップに二人を0時までに連れ帰ることを約束する。約束を果たせなければ、人間嫌いのフリップが人類相手に戦争を始めてしまう。

パーティ会場では、ニナは見世物のようにパフォーマンスを行っていた。人間の若者たちの態度に違和感を感じたみちるは、ニナにアニマシティへ帰ることを提案するが、ニナはみちるが人気者になった自分に嫉妬していると感じ、この提案を拒否する。

根底に差別意識、必要なのは理解

案の定、みちるはパーティ会場のトイレで、若者たちが獣人について差別的な会話を交わしているのを聞いてしまう。人間たちのニナへの賞賛は表面的なもので、根底には差別意識が色濃く残っているのだ。

パーティ会場に戻ったみちるは、ニナが海水に入れられ苦しんでいる姿を目撃する。獣人のことを全く理解していない、理解しようともしない人間の気ままな判断で海水に入れられたのだ。みちるは変身能力を使ってニナを救出、士郎と合流してニナをアニマシティに連れ帰る。

船上でみちるに謝罪するニナに、みちるは「人間の世界に行かなかったら好きなままでいられたよね」と、ニナを止められなかったことを逆に謝罪する。だが、ニナは人間を嫌いにはなっていない、「キラキラしていたのは本当だった」と笑顔を見せる。

アニマシティに絶望し続けてきたみちるだったが、第4話では人間の醜い姿を目撃し、再びアニマシティに戻ることに。「向こうに戻りたかったんじゃないのか」と聞く士郎に、みちるは「今じゃない。私、獣人のみんなのこともっと知りたい。知らなきゃいけないと思う」と答える。

その頃、シルヴァスタグループの会長アランは、みちると士郎の能力に目をつけていた。一方のみちるは母からの誕生日メッセージに「いいね」しそうになるが、踏みとどまったところで第4話「Dolphin Daydream」は幕を閉じる。みちるはしばらく、アニマシティに残るようだ。

第4話「Dolphin Daydream」の解説

人間側の問題が描かれる

以上が第4話「Dolphin Daydream」のあらすじだ。『BNA』で初めて人間界が舞台になり、人間側が抱える問題が描かれた。

だが元々は人間で、獣人と半々のアイデンティティを持つみちるは複雑な立場でもある。獣人になってしまったことを「病気」と言い、人間に戻りたいと考えながら、第3話「Rino Melancholy」では自身が獣人であることを認めて士郎との絆を深めたという経緯もある。

一方で、初登場となったイルカ獣人のニナは、獣人界の実力者であるルドルフ・フリップの娘でありながら、人間界に対して憧れを抱いている。人間に憧れるニナと獣人界に愛想を尽かしたみちるの想いが重なり合い二人は人間界に出向くことになるが、そこで直面したのは人間たちの獣人に対する理解の浅はかさだった。

人間のリサは「差別と闘ってきたニナちゃん」と、個々人の経験の違いを考慮せず、マイノリティを美しい存在に仕立て上げようとする。若い人々はこれを賞賛して受け入れるが、獣人がいないと思われるところ (実際にはみちるがいる) では、獣人への差別意識を丸出しにした会話を口にする。更にリサは獣人を動物と同じように考え、ニナを海水に入れるなど、獣人であるニナの話を全く聞かず、自分たちが想像する獣人像を押し付けて、それを消費していくのだ。

歴史を知り、個人と向き合うこと

第4話ではアニマシティの外=人類の街を指す言葉として初めて“内地”という言葉が使われた。アニマシティが島になっていることから地理的な意味合いもあるだろうが、やはりそこには大和に対する沖縄とアイヌの存在を重ね合わせざるを得ない。日本もまた、“内地”からマイノリティの当人たちの考えや立場を置き去りにしてきた歴史と現状が存在しているからだ。

第4話の冒頭では、ロゼ市長が様々な衝突の歴史の上にアニマシティが建設されたということに触れていたが、ニナは祖父が人間に食べられた話を「そんなことあるわけないじゃん」と一笑に付していた。ニナが内地に行きたかった理由は「キラキラしてるから」だったが、その“キラキラさ”で覆い隠されていた人間たちの浅はかさがニナを傷つけることになる。

第4話に登場した人々に欠けていたのは、歴史や差別の構造、そして一人一人のバックグラウンド、考えや立場を理解しようとする気持ちだ。広く言えば“他者理解”ということになるが、それはその人々が属する社会の歴史と個々人の差異とセットで考えなければならない。

否定されない個人の気持ち

だが、ニナの「キラキラしてるから」という憧れの感覚は決して否定されていない。Dolphin Daydream」は、獣人らしくあれ、貧しくあれと、上から目線で押し付けるような物語ではない。複雑な感情を肯定しつつ、ストーリーは次の展開に進んでいく。

第1話から物語の前提として置かれていた人間による獣人への差別という大きなテーマには、ほかでもないみちる自身が獣人への理解が足りないと気付くことで、一筋の希望の光が見え始める。獣人社会と向き合うことを決めたみちるに、次はどんな出会いが待っているのだろうか。

アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』はフジテレビ「+Ultra」にて放送中。

Netflixでは全12話を先行配信している。

『BNA ビーエヌエー』(Netflix)

『BNA』第5話のあらすじは以下の記事から。

『BNA』全体のあらすじについては以下の記事に詳しい。

『BNA』で使用されている音楽については以下の記事から。

『BNA』に出演している声優陣は以下の記事から。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。編著書に『プラットフォーム新時代 ブロックチェーンか、協同組合か』(社会評論社)。
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