映画『スーパーガール』公開
DCスタジオのジェームズ・ガン共同会長兼CEOが率いるDCユニバースの映画第2弾『スーパーガール』が、2026年6月26日(金) より日米同時公開を迎えた。2025年公開の映画『スーパーマン』にも登場したスーパーガールことカーラ・ゾー=エルをミリー・オールコックが続演、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)、『クルエラ』(2021) のクレイグ・ギレスピーが監督、アナ・ノゲイラが脚本を手がけた。
今回は、映画『スーパーガール』を、特にラストの展開についてネタバレありで解説&考察し、感想を記していこう。以下の内容は結末までのネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『スーパーガール』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『スーパーガール』ネタバレ解説&考察
スーパーガールと太陽
映画『スーパーガール』では、映画『スーパーマン』のラストで犬のクリプトを迎えにきたカーラ・ゾー=エルのその後が描かれる。23歳の誕生日を迎えたカーラはクリプトとともに“赤い太陽”の圏内の惑星で過ごしている。
『スーパーガール』でも改めて説明されることになったが、スーパーマンやスーパーガールらクリプトン星の出身者は、“黄色い太陽”からエネルギーを得ることで超人的な力を得ることができる。そして、クリプトンを照らしていたのは赤い太陽で、地球を照らしているのは黄色い太陽、というのが基本的な前提だ。
だが、黄色い太陽の圏内にいると超人化してしまうため、お酒を飲んでもすぐに分解されて酔うことができない。だから、酔っ払いたいカーラは敢えて赤い太陽の圏内の星で過ごしているのである。パンチされれば痛くて、怪我をすれば血が流れることを喜ぶカーラは、超人でない時間を楽しんでいるのである。
映画『スーパーマン』では、崩壊する自分の街と侵略される遠い国のどちらを取るかという状況を作ることで、超人であるスーパーマンを追い込んだ。映画『スーパーガール』では、宇宙の様々な場所を舞台とすることで、黄色い太陽の有無によってスーパーガールが活躍したり、窮地に立たされたりする展開を描いている。
ルーシーとカーラの過去
そんなカーラを頼ったのが、イエロー・ヒルズのクレムという人物に家族を殺害されたルーシーである。クレムへの復讐を誓うルーシーは、父の形見である剣を手に、カーラを復讐の旅に誘うのだ。
だが、カーラはあまり乗り気ではない。基本的に人助けはしようとするのだが、復讐には乗ってこない。カーラも同様に家族を失った経験を背負っているが、ルーシーのように誰かに殺されたわけではない。
クリプトン星は後にスーパーマンとなる幼いカル=エルを脱出させた後に崩壊。カーラの父ゾー=エルはクリプトン星のアルゴシティをバリアに覆って生き延びるという選択肢をとった。しかし、クリプトン星人にとって致命的となる放射線を発するクリプトナイトによってアルゴシティの人々の身体は蝕まれていった。
そうしてクリプトン星崩壊の8年後に生まれたカーラは、母アルーラを失うことになる。母の葬儀で出会ったのが犬のクリプトだったが、父も身体を蝕まれていく中で、カーラをカル=エルと同じく地球に脱出させることが決定。カーラは「弱い人を守るように」という遺言を受けて、クリプトと共に地球の従兄のもとへ旅立ったのだった。
クラーク・ケントとして赤ん坊の頃から地球で育ったカル=エルと違い、ある程度大きくなってから地球に来たカーラは、言葉を学び始めるのも遅く、地球では孤立していたことが示唆されている。そんな中でずっと一緒にいたのが犬のクリプトだったのである。
なおこの回想では、クリプトン星の人々がカル=エルが辿り着いた先の世界で神になることを期待していたことが確定している。映画『スーパーマン』でレックス・ルーサーが暴露した、スーパーマンの両親が地球で繁殖して支配せよと告げていたという映像は改竄されたものではなかったのだ。
原作コミックとの共通点と違い
映画『スーパーガール』では、ルーシーがカーラを訪ねた際に、犬のクリプトがクレムによって毒の矢を撃たれ、カーラは解毒剤を手に入れるためにクレムを追うことになる。クリプトは、映画『スーパーマン』ではレックス・ルーサーに拐われており、今のところ皆がクリプトのために動くシリーズになってきている。
とはいえ、『スーパーガール』のこの展開はほとんど原作コミック『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー』を踏襲したものになっている。序盤は特にかなり忠実にコミックを再現した展開が描かれており、原作コミックと合わせて楽しめる作りになっていた点が印象的だ。
コミックと大きく違ってくるのが、ロボが登場する点だ。過去のDCEU作品ではアクアマンを演じていたジェイソン・モモアがDCUでは新たにロボを演じているのだが、これがハマり役。どこか繊細なキャラが多い印象のDCUの中で、荒々しいロボの魅力を見事に再現している。
賞金稼ぎのロボは善でも悪でもなく、金のために働くという掟だけがある。ロボが追うのは、クレムが率いるブリガンズの賞金首ドロム・バクストンで、ブリガンズが標的という点においてカーラとルーシー、ロボの利害は一致することになる。
映画『スーパーガール』ラストをネタバレ解説&考察
緑の太陽とロボ
映画『スーパーガール』の終盤では、カーラがクレムを追ってある惑星にたどり着く。その惑星はスーパーガールに力を与える黄色い太陽と、クリプトナイトと同じ力を持つ緑の太陽に照らされていた。緑の太陽の日照時間が来ると、カーラはクリプトナイトを突きつけられたのと同じように身体を蝕まれていく。人間で言うと強い放射線を浴び続けているような状態だ。
そんなカーラを助けたのはルーシーだったが、ルーシーは水を汲みに行っている間にブリガンズに拐われてしまう。それでも檻から逃げ出したルーシーは、捕まっていたロボのことも助けると、クレムへの復讐を果たそうとする。
今度はルーシーが追い込まれると、黄色い太陽の日照時間が来て復活したカーラがルーシーを救出、カーラが追い込まれるとロボがカーラを救出、という形で、この三人の間で互いを助け合うループが発生。それぞれに目的は異なるが、恩を返しながら共通の敵を叩いていくという自由なチームが誕生している。
さらにカーラは“花嫁”として捕えられていた女性たちを解放すると、ルーシーはついにクレムへの復讐の機会を手にする。父の形見の剣をクレムに突き立てるが、カーラはクレムを殺してはいけないとルーシーを説得する。復讐を果たしてもそれを背負って生きる人生が待っているだけだと語りかけるのだ。
地球でも両親を持ち、受け入れられて育ってきたスーパーマンとは違い、スーパーガール/カーラは影を背負う複雑なキャラクターだ。だからこそ過去の復讐に生きることの危うさを理解しているのだろう。
死んでいった家族は、自分に“善く”生きてほしいと願っていたはずで、自分がそう生きることによって、死んだ人々の想いが生き続けることになる、カーラはそんな風に考えたのではないだろうか。家族はルーシーとともにあり、生きることが死んだ家族への報いになる、その言葉をルーシーは受け入れたのだった。この言葉が説得力を持つのは、カーラが従兄のスーパーマンから希望の象徴でありエル家の紋章である「S」のマークが描かれたスーツを着て戦うことを決めたからでもある。
カーラはなぜ?
けれどカーラは、ルーシーが去った後に剣を手にするとクレムを刺殺する。それはルーシーとその家族の分だという。カーラは、クリプトの復讐のためにクレムを殺しはしなかったが、ルーシーという他者のために行動を起こしたのだ。
この展開はMCUドラマ『パニッシャー:ワン・ラスト・キル』(2026) にも似ていて、ダークヒーローが自分のためではなく誰かのために他人がやらない仕事をやるという落とし所となっている。同時に、原作コミック『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー』の決着の付け方にもやや近づけたものと思われる。
そしてこの様子を見守り、スーパーガールの行動を気に入った様子のロボの姿も描かれている。バイクで飛び去ったかに思われたロボだが、案外その後が気になっていたらしい。スーパーマンなら取らない行動をとったカーラに、ロボが手を貸すケースは今後も描かれることになりそうだ。
ラストの意味は?
カーラはクリプトのための解毒剤をクレムから奪って帰ると、解毒剤を打たれたクリプトは復活。旅を終えたルーシーは、おばと住んで父のような剣を作る鍛冶屋を目指すと言う。カーラは地球に帰ることを示唆するが、最後にルーシーと誕生日を祝うことにする。やっとカーラにも友達ができたのだ。
映画『スーパーガール』のラストでは、カーラがスーパーマンことクラークの自宅に帰ってくる。映画『スーパーマン』でロイスとクラークが話し合っていたあの部屋だ。クラークは遠慮気味に「助けてもらえるとありがたい」と言うと、カーラは今回は地球に長く滞在するつもりだと明かす。
おばと暮らして、父の仕事を引き継ぐという決意をしたルーシーからも影響を受けたのだろうか、カーラは、地球に行き弱い人々のために戦ってほしいという親の願いを生きることにしたのだ。となれば、映画『スーパーマン』でクラークが苦戦したクリプトも一緒である。クラークは困惑しつつも、これを受け入れるのだった(恋人もいるのに従妹との同棲を受け入れるあたりがクラークらしい)。
映画『スーパーガール』のラストは、食べ物を漁るクリプトがチョコレートを食べるのではないかとクラークが心配するシーンで幕を閉じる。チョコレートは犬が食べると中毒を起こし、最悪の場合は死にいたる危険がある食べ物だ。
クラークはクリプトを預かるにあたって、犬にとってのクリプトナイトとなるようなものについてもしっかり調べていたのだろう。地球に詳しく、人にも犬にも優しいクラークらしさを見せつつ、スーパーガールとスーパーマン、そしてスーパードッグのトリオが新たなドタバタ劇をもたらしてくれる予感と共に映画『スーパーガール』は幕を閉じている。
映画『スーパーガール』ネタバレ考察&感想
『スーパーマン』を越えて
映画『スーパーガール』は、序盤から宇宙を舞台にした西部劇のような展開に、ジェームズ・ガン監督作品のような既存曲を組み合わせ、テンポよく進行する見やすい作品だった。一方で、家族を失い、地球にも溶け込むことができないカーラの傷と、一番大事なクリプトを失いかけている状況が涙を誘う絶妙なコントラストが成り立っていた。
ストーリー自体は、黄色い太陽の番がやってきてスーパーガールが復活、ロボが加勢、クリプトが救われるという終盤の展開は特に驚きはなかった。上映時間も108分ということで、あまり難しいことはせず、各作品をコンパクトに収めるというのがDCUの方針になっていくのだろうか。
テーマについては、映画『スーパーガール』は映画『スーパーマン』に乗れなかった人に向けて作られたような雰囲気もあった。後者は爽快なホープパンク作品だったが、誰もがスーパーマンのように生きられるわけではない。クラークが持つある種のお気楽さは、白人で男性で能力があって育った家庭に恵まれたという背景があってのものだ。
スーパーパワーを持ってはいるが、心に傷を負い、孤立していて、酒に溺れるカーラの前に、ひょっとしたら自分もそうなり得たかもしれないという存在=ルーシーが現れ、カーラは「善い人」として生きるようこの若者を説得することになる。カーラの言葉は自分にも跳ね返ってきたり、こなかったりするのだが、そこら辺のことも、都度自分が納得できるように選択していけばいいんじゃん? という自由さがスーパーガールの魅力だと言える。
スーパーガールの地球での活動
DCUの他作品との関係で考察すると、スーパーガールことカーラは映画『スーパーガール』が実は三度目の登場ということになる。2025年に配信されたドラマ『ピースメイカー』シーズン2では、シーズン1ラストで出動したジャスティス・リーグをジャスティス・ギャングに改変、このメンバーの中にシルエットのみだがスーパーガールが含まれていた。
出動したメンバーはミスター・テリフィック、グリーン・ランタン(ガイ・ガードナー)、ホークガール、スーパーマン、そしてスーパーガールで、ジェームズ・ガン監督はThreadsであのシルエットがスーパーガールであることを認めている。スーパーガールとスーパーマンはジャスティス・ギャングのメンバーではないが、チームアップすることがよくあるとも話している。
つまり、映画『スーパーマン』より以前の時系列で、スーパーガールはスーパーマンやジャスティス・ギャングとともにヒーロー活動に取り組んでいたことが示されているのだ。それでもスーパーガールの気持ちには何かの引っ掛かりがあったのだろうが、ルーシーとの冒険を経て地球に戻ってきたスーパーガールは、以前と同じくヒーロー活動に“戻る”ということになるのだろう。
カーラが地球に来た後、頑張って英語も覚えて、友達もできない、黄色い太陽で酔っ払うこともできないという中で、それでもスーパーガールとして活動していたことには胸を打たれる。母の死を受けて、一度はより善くあろうと生きてみた先に、『スーパーガール』での荒廃した生活があったのだ。
カーラにはクラークがいたが、クラークもカーラに遠慮気味で、だから正面から喧嘩をすることもなかったものと考えられる。カーラには、ルーシーのように異なる意見と考えをぶつけ合える友達が必要だったのだろう。
DCUの今後は?
気になるのはカーラとクラーク、そしてクリプトを含むDCUキャラクターたちの今後についてだ。DCUとしては、2026年8月17日(月) よりドラマ『ランタンズ』がU-NEXTで独占配信される。グリーン・ランタンの新米のジョン・スチュワートとベテランのハル・ジョーダンの物語が描かれる予定で、『スーパーマン』に登場したガイ・ガードナーも登場する。
2026年10月30日(金) には、映画『クレイフェイス』の日本公開も控えている。バットマンが拠点とするゴッサム・シティ出身の俳優であるマット・ヘーゲンが主人公で、マイク・フラナガンが脚本を手がけるホラー映画として公開される予定だ。DCUではまだ本格的には触れられていないバットマン方面のキャラクターと世界観が描かれることが期待されている。
そして、2027年7月9日には、『スーパーマン』の続編映画『マン・オブ・トゥモロー(原題)』の米公開が予定されている。スーパーマンと1作目のヴィランであるレックス・ルーサーが手を組む展開になるとされているが、スーパーガールが加わってもなお脅威となる模様のヴィラン、ブレイニアックについてはこちらの記事に詳しい。
映画『スーパーガール』では、スーパーマンことクラークのキャラクター造形も良かった。カーラに英語が通じないと分かっているのに一応大きい声で言ってみてセルフツッコミしてみるくだりなんかは、DCUにおける親しみやすいスーパーマン像を改めて提示しており、戦わずとも魅力的なキャラクターたちが積み上がっていっている感触はある。スーパーガールやロボとの絡みも含めて、今後の展開にも期待しよう。
映画『スーパーガール』は2026年6月26日(金) より日米同時公開。
原作の『スーパーガール:ウーマン・オブ・トゥモロー 完全版(上)』はフェーズシックスより発売中。
下巻は8月31日発売で予約受付中。
ロボの単独作について演じたジェイソン・モモアが語った内容はこちらの記事で。
映画『スーパーマン』ラストの解説&考察はこちらから。
『マン・オブ・トゥモロー』と『ピースメイカー』シーズン2の繋がりについてジェームズ・ガン監督が語った内容はこちらから。
ミスター・テリフィックについての考察はこちらから。
