映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』公開
1997年にテレビドラマとして放送された『踊る大捜査線』の劇場版最新作『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が、2026年9月18日(金) より全国公開を迎えた。「踊る」を冠した映画作品としては、2012年公開の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』以来となる14年ぶりの第5作目となり、フランチャイズとしては2024年に公開された二部作『室井慎次 敗れざる者/生き続ける者』に続く作品になる。
今回は、映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』について、特にラストの展開に焦点を合わせて解説&考察し、感想を記していこう。以下の内容は、これまでの「踊る」シリーズと本作の結末に関するネタバレを含むので本作については必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』ネタバレ解説&考察
冒頭30分のサプライズゲストたち
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』の時系列は、2026年12月10日から13日までの4日間。主人公・青島俊作は警視庁刑事部捜査一課の刑事になっている。『室井慎次 敗れざる者』では、青島は警視庁の捜査支援分析センター(SSBC)にいるとされていたが、官房審議官補佐となった真下正義の息子を助けさせようとする策略によって、捜査一課に異動になっている。
長らく“所轄”である湾岸署にいた青島だが、『N.E.W.』では室井慎次が警察を辞める時に青島を警視庁捜査一課に移したことが明かされた。『敗れざる者』では、官房審議官になった沖田仁美は「人事は意のまま」とされていた。室井も真下も沖田経由で青島を動かしたのだろう。青島は愛されている……と言える……?
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』の序盤は、FBIの介入によって捜査員にも知らされずに大規模な誘拐事件の演習が行われているという意表を突く展開に。冒頭30分で描かれる演習で、過去作に登場したキャラクターたちを次々と登場させていく。
ここで全ては紹介できないが、サプライズゲストに焦点を当てると、北山雅康が演じた坂下始、小泉孝太郎が演じた小池茂、神木隆之介が演じた青年が挙げられる。坂下始は映画第1作目『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998) で警視庁の副総監を拉致する事件を起こした人物。青島に逮捕され、『踊る大捜査線 THE FINAL』では更生してEV車の営業の仕事に就いていた。
坂下始はまたしても悪の道に落ちたのかと思われたが、今回は警察の演習に協力していただけだった。『更生人生』という書籍も刊行しており、やっぱりちゃんと更生していたようで安心した。
更生といえば、小池茂である。『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003) で初登場、のちに交渉課の課長となったが、『THE FINAL』では真下正義の息子・勇気の誘拐計画を鳥飼・久瀬と共に実行、逮捕されている。あれから14年が経った『N.E.W.』では釈放されて警備の仕事をしている様子。実行犯・主犯ではなかったこともあり、比較的早く出ることができたのだろう。
そして、神木隆之介が演じる青年は警察の部隊を見て「すっげぇ、レアキャラ」と言いながら五目おにぎりを食べている。『THE MOVIE 2』では、神木隆之介はスリ一家の少年として登場。同作では、恩田すみれからもらった五目おにぎりを食べ、黄色いジャケットを着た集団を見て「すっげぇ、レアキャラ」と口にしていた。
また、後半になるが内田有紀演じる“女青島”こと篠原夏美も嬉しいサプライズ登場。こちらも室井の計らいだろうか、青島や緒方薫と同じく、湾岸署から警視庁に移っており、総務部企画課の庁舎管理係長として真下をMOCに誘導した。
ちなみにサプライズではないが、八重洲警察署に移った木島丈一郎が、被害者役の子どもからお菓子をもらうシーンは、スペシャルドラマ『逃亡者 木島丈一郎』(2005) を想起させた。同作では、木島は同じく人質となった少年の遼と友達になっており、本作でも子どもの隣に座って近い目線で話す木島らしい姿を見せた。
中心になる新キャラ3名
新キャラでは、豪華声優たちが警察幹部を演じた。警察庁の長官は立木文彦、次長を津田健次郎、長官官房長を野島健児、警視庁の副総監を「ドラえもん」のスネ夫役などで知られる関智一が演じている。立木文彦は「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの碇ゲンドウ役、野島健児は「PSYCHO-PASS」シリーズの宜野座伸元役など、「踊る大捜査線」と関係の深い作品に出演してきたキャストとなっている。また、「エヴァンゲリオン」の綾波レイ役などで知られる林原めぐみが劇中作『セブンベア』のナレーションを務めている。
映画『踊る大捜査線 N.E.W.』では、そこから連続殺人事件が発生。警視庁と台東警察署・麻布中央警察署による特別合同捜査本部が設置されることになるのだが、これに伴い3人の重要な次世代新キャラが物語に合流する。
趣里が演じる台東警察署の芝田ひばり、白洲迅が演じる麻布中央警察署の美浦秋は、所轄の若手でどこか青島のようなソウルを持っていながら、独自の魅力的な個性も持ち合わせている。二人の青島との化学反応も『N.E.W.』の見どころの一つだ。
そして、もう一人の重要な新キャラクターが増田貴久演じる真下勇気だ。一応『THE FINAL』で誘拐被害者として登場しているので再登場キャラではあるのだが、映画公開時点で40歳の増田貴久が21歳の勇気を新たに演じている。
真下勇気はハーバード大学を飛び級で卒業し、異例の若さで管理官になったという設定。母の雪乃も元はと言えば名門UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)に通っており、中退後に短期間勉強しただけで警視庁警察官採用試験(上級)に合格している。勇気の優秀さは雪乃譲りなのだろう。
青島と沖田、そして室井慎次との電話
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』の青島俊作はなんだか自由そう。かつてと同じように、和久さん譲りの足での捜査に取り組むが、警視庁捜査一課の所属だし、歳を重ねたこともあって、今の青島には体力の面を除いてほとんど邪魔が入らない。
一方で、ひばりと美浦はSNSの情報を頼りにした捜査を認めてもらえず、若くして「室井さんのような管理官になってほしい」と担ぎ上げられた真下勇気も捜査本部をうまく指揮することができない。58歳の青島は、もがく若手の姿を通して、もう一度警察という職業と向き合うことになる。
SNSでは犯人が特定されているにもかかわらず、「筋」を重視する警察は逮捕状を出すことができない。捜査が行き詰まる中、陰謀論に乗っかった真下正義の失態もあって上層部からプレッシャーをかけられる沖田仁美は、勇気を捜査本部から外すことを決断する。『N.E.W.』で描かれる警察幹部と現場の間で板挟みになる沖田の姿は、かつての室井を見ているかのようだ。
「室井慎次」二部作にも登場した桜章太郎が、何やら沖田と深い関係にあったことを青島に告げた後、沖田と青島は室井慎次について語ることになる。『室井慎次 生き続ける者』では、沖田は桜の要請を受けて、『N.E.W.』にも登場する仁狩管理官に、室井を被疑者と面会させるよう指示を出した。沖田は室井が警察を辞めてからも室井を支えており、桜が室井に興味津々だった理由は、沖田が室井についてよく話をしていたからなのかもしれない。
一方の青島は、「室井さんがいたら」と思うのは間違っていて、「前に進まなきゃ」と話す。そして、青島は最後に室井と連絡をしたのは、電話で石津牧場の夫妻の息子を捜してほしいと頼まれた時だと明かすのだった。
『室井慎次 生き続ける者』では、室井は家を出ていったという石津夫妻の息子を捜すよう電話で誰かに依頼。その息子は、刑事から「室井さんって人から伝言がある」として、親に顔を見せろと伝えられたと話していた。この刑事が青島だったのではないかという考察があったが、その通りで、室井は青島を頼っていたのである。
「室井モデル」が現場を変える
『踊る大捜査線 N.E.W.』で状況が大きく動き出すのは、この『室井慎次 生き続ける者』からの流れが物語に合流した時である。警視庁に現れたのは、室井が里親として引き取ったタカ(貴仁)とリク(凛久)。二人が持っていたのは、青島に渡してほしいと新城から頼まれた「事件捜査における室井モデル」の資料だった。
『生き続ける者』のラストでは、新城が「事件捜査における室井モデル草案」を室井家の椅子に捧げた。現場と本庁の警察官が一体となり、正しいことができるようにするという室井と青島の約束を実現するために、新城が作り上げた資料だった。
『N.E.W.』では、表紙からは「草案」の文字が外れ、副題として「指揮官に求められる『判断の倫理』と『孤独の覚悟』」という文字が追加されている。『生き続ける者』から『N.E.W.』で約2年が経過したと思われるが、新城はこの「室井モデル」をようやく完成させたのである。
青島はタカとリクに「久しぶり」と言うと、タカが警察官を目指していることに言及、「正当なムロイズム継承者」と紹介するなど、どうやらちゃっかり室井の子ども達と関係を築いているようだ。リクも警察になりたいと言い、二人は警察の全員から敬礼を受ける。この敬礼は、室井さんが警察の捜査員たちから愛されていたことの証明でもある。
このシーンの音楽は「室井慎次」二部作のメインテーマである「M36 室井慎次」が使用されており、涙でスクリーンが見えなくなってくる。さらに沖田は室井モデルの資料を軽く抱きしめるような仕草を見せると、これを真下勇気に渡し、改めて捜査本部長に任命する。「人を信じる」というのは、室井さんが何度も実践していたことだ。
沖田は「超法規的措置」で新しいパトカーでリクとタカを観光に連れて行くと約束。35歳だった『THE MOVIE 2』での初登場時からは想像できないほど丸くなった。青島と沖田、佐々木蔵之介演じる北丘雲斗は同い年の58歳。人は変わるものだ(青島は変わらないけど)。
そして青島たちは「室井モデル」の資料を読み込む。青島が本作で唯一デスクで資料に向かい合うシーンだ。青島は、「次の世代が書き足していく」という「継続的な更新の中」にこそ「室井モデルの本質がある」という一文を読み上げている。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』では、かつて青島と室井のように警察を改革するという約束を交わした和久さんと吉田副総監が、その約束を果たせなかったことが明かされ、青島と室井がその仕事を引き継ぐことが示唆された。改革は一つの世代で完結するものではないという原則は、室井モデルにもしっかり落とし込まれたようだ。
一方で、新城が「室井モデルの本質」を文章で語っているのはなんだか可笑しくもある。『室井慎次 敗れざる者』では「退職金で豪邸でも建てたんですか?」と、室井に対する解像度の低さを披露していた新城が、「室井モデルの本質」を定義して語り、みんなに読ませているのだ……。
「室井モデル」の資料を読んだ勇気は、ベテラン刑事たちの言葉を聞くとして、AI和久さんを構築。AI和久さんの「俺はお前を信じた」という言葉を受けて、青島はひばりと美浦を信じてもう一度捜査に取り組むことを決意するのだった。
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』ラストをネタバレ解説&考察
「もしもしすみれ……」
これで捜査は大きく動き出す。ひばりと青島は足を使って殺害現場のホテルを再検証。この前に青島は一本電話をかけるのだが、「もしもしすみれ……」と言ったところで留守番電話になってしまう。「すみれさん」ではなく「すみれ」呼びになったのではと期待させる演出でもあるが、ここでは盗犯係だったすみれにアドバイスをもらおうとしただけなのだろう。
だが、すみれがいなくても、ひばりは湾岸署で盗犯係の係長だった中西から教えてもらったという手法で、被疑者の指紋をあぶり出す。中西が湾岸署に「いた」と青島が言うのは、演じた小林すすむが2012年に亡くなっており、『踊る大捜査線 THE FINAL』が遺作となったという背景を踏まえたものだろう。
恩田すみれや中西がいなくなっても、青島俊作や芝田ひばりにその知恵は引き継がれている。“継承”というテーマがここでも示されているが、同時に青島は「湾岸署のワイルドキャット」と恩田すみれの異名にも言及しており、リスペクトも感じられる。
青島が室井に伝えたこと
ドラマ『踊る大捜査線』に登場していた刑事・五十嵐と明石がいる捜査資料管理センターの資料、ひばりと美浦が採取した被疑者の指紋、SSBCの映像、そして『セブンベアー』を題材とした“7つの大罪”というコンセプトから、青島は17歳の村下希衣子と藤吉夏鈴の逮捕状を請求。だが、AIは物的証拠がないとして、これを拒否するのだった。
キリスト教における“7つの大罪”と言うコンセプトに則って殺人が行われているという推理は、映画『セブン』(1995) のオマージュである。ドラマ第1話では、青島は和久さんのことをモーガン・フリーマンのようだと発言。すみれがこれに対して「『セブン』?」と返す展開があった。『N.E.W.』のこの展開は、『セブン』のオマージュでもあり、「踊る大捜査線」へのセルフオマージュでもあるのだ。
青島は真下勇気を守るため、自身の首を差し出す。辞表を出すのだ。青島が警察を辞めようと手帳を差し出す展開は、ドラマ第4話を想起させる。同エピソードでは、室井から捜査一課に呼ばれた青島は、凶悪犯を捕まえるために襲われている女性は無視しろと上からの指示され、室井に警察手帳と手錠を叩きつけた。
『N.E.W.』の青島は「約束した人がいた」と室井について語り始める。『生き続ける者』での電話で室井と最後に話をした時、「一人じゃ無理です」と言って、仕事を辞めると伝えたと明かすのだ。辞表はその時すでに書いていたといい、それに対して室井は何も答えなかったという。
青島は、室井がいなくなっても平気な顔をして刑事を続けていたわけではなく、SSBCに移ってから2年、「一人じゃ無理」と室井にだけは弱音を吐いていたのである。室井も3人の里子の問題を抱えた状態で、ヘビーな相談を受けていたのである……。
Amazonプライムビデオで配信されている『踊る大捜査線 捜査資料管理室~青島俊作、空白の13年~』(2026) では、所轄で青島と一緒だった栗山孝治は、2021年4月に室井が退官したタイミングで捜査一課へ異動となった青島が翌2022年11月にはSSBCに異動を申し出たのは、室井がいなくなり孤独だったからではないかと推測している。その時の青島は「寂しそうだった」とも。
やはり室井の退職は、青島にとっては大きな出来事だったのだ。それでも、青島は亡くなったり、怪我をして現場から離れた仲間たちの想いを預かり、まだ刑事を続けてしまっているという。一方で、「上に行かなくても正しいことはできる」という青島の言葉は、「正しいことをしたければ偉くなれ」という和久さんの言葉を乗り越える青島の新たな結論だ。
そして、今の青島には仲間がいる。昔からの仲間もいるが、新しい仲間である勇気のために自分の首を差し出す青島は、やはり人の上に立つボスではなく、現場でみんなを引っ張っていくリーダーである。
走馬灯の先に
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』のクライマックスでは、2月で営業を終了した体験型複合施設のイマーシブ・フォート東京が舞台になる。Crow Eyeを使用した真下が、被疑者の通信記録を解析し、次に向かう場所を予測させたのだ。
なお、「カラスの目」を意味するCrow Eyeは小池が開発した監視システム「C.A.R.A.S.」の後継監視システムという設定となっている。結局それを小池の元上司で恨まれていた真下が、事件を解決するために不正に使用するというのは数奇な運命だ。
被疑者と遭遇した青島は、勇気に確保の命令を要請。これは『THE MOVIE』で青島が管理官だった室井に被疑者の確保を要請したラストのセルフオマージュである。室井の「青島、確保だ」をなぞるように、勇気は「青島さん、確保してください」と指示。『THE MOVIE』では青島は被疑者の母親に刺されて重傷を負ったが、今回も大衆の面前で発砲される結果となっており、実はあまりうまくいっていない。
犯人を追う青島は、ある部屋の中で強い光を目にし、過去の記憶が走馬灯のように蘇る。すみれさん、和久さん、室井さんとの思い出……言い方を変えれば、「踊る大捜査線」の名場面集が映し出されるのだ。
だが、その最後に青島は、吹雪の中を進む室井慎次の姿を見る。しかも、室井は「青島」と呼んでいる。おそらく、『生き続ける者』のラストで遭難した室井の姿なのだろう。あの時の室井は、3人の里子についての問題は解決した後だったが、室井の心の中には、電話で警察を辞めると話していた青島のことが心配事として残っており、最後に青島の名を呼んでいたのかもしれない。
スマホの着信とともに被疑者の一人である須永あかねに左腰を刺された青島は、けれど『THE MOVIE』で同じところを刺されていた青島は、防弾防刃のベストを着ていた。もう一人の被疑者である村下希衣子は3Dプリンター製の銃で実弾を撃とうとして暴発。二人は身柄を確保されることになった。
須永あかねは「大人が嫌い」「ずるいから」と動機を口にしている。須永と村下は高校の教師から理不尽に成績を下げられるいじめを受けていたとされている。一方で、須永が凶器として使用したのは、「踊る」シリーズの大ヴィランである日向真奈美が凶器として使っていた医療用メスだった。7つの大罪は犯行と関係がないことも分かり、『セブンベア』も日向真奈美を象徴するテディベアがモチーフになっているという繋がりの方が重要だったのかもしれない。
ラストの意味は?
事件を解決し、ひばりと美浦が「ちょっとやる気出ちゃいました」と言うのに対し、青島が「出すなそんなもん」と返すのは、ドラマ第1話の青島と和久さんのやりとりを踏襲したものだ。青島自身もそれに気がついたような表情を見せている。
一人になった青島は、すみれと思われる相手に電話をかけるが、これも出てくれない。おそらく走馬灯の最後にかかってきた電話はすみれからのものだったのだろう。すれ違い続けている……。
特別捜査本部では、青島を本庁に置いておくのはリスクが高い、現場の司令塔が似合っていると結論づけられる。青島がまた所轄に戻ることを示唆する展開だ。同時に勝手にCrow Eyeを使用した真下も連行されていく。真下は青島をSSBCから捜査一課に戻した張本人でもあり、二人は同時に処分を受けるのだろう。
タクシーでイビキをかいて爆睡する青島の姿は、青島が死んだと室井が思い込んだ『THE MOVIE』のラストを想起させる。そして、『踊る大捜査線 N.E.W.』最後のサプライズゲストに言及される。
ラストのタクシーの運転手はドラマ第1話に登場した近藤芳正演じる田中文夫だ。青島が刑事として初めて取り調べを行った相手で、同じ営業職だったことで意気投合。しかし、のちに雪乃の父である会社役員を殺害した犯人として出頭して逮捕された。
『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』(2010) で釈放を要求された“ヤツら”の9人にも含まれていたが、当時の時点で釈放されていた。一応ドラマ『警視庁捜査資料管理室(仮)』では窃盗の再犯に手を染めていたようだが、『N.E.W.』では美浦がタクシーに乗るシーンでも運転手として登場している。
田中が青島に言う「いいな、頑張って」は、第1話で「刺激ないんでしょ?」と問われた青島が「あるよ、毎日ドキドキしてる」と返したのに対し、田中が「いいな、頑張ってね」と告げたやり取りを踏襲している。青島が「ちょっとやる気出てきちゃったかも」と和久さんに言ったのは、このやり取りの直後である。
そして田中が青島を降ろした場所は、旧湾岸署の跡地だった。ドラマ第1話以来の登場となった田中は、湾岸署が移転したことや、青島が本庁に勤めていることは知らず、当時と同じ場所に青島を降ろしたのだろう。
そして、その跡地には、「第二湾岸警察署建設予定地」という看板が立てられていた。建物はそのまま残されている。真下正義が第二湾岸警察署署長、青島俊作が第二湾岸警察署の刑事として赴任することを示唆する展開だ。
「踊る大捜査線」ではお馴染みの織田裕二「Love Somebody」のエンディング曲の後、ポストクレジットではまた電話がなるが、今度は「ただいま電話に出ることができません」という音声の途中で発信が切られてしまう。かけたのは恩田すみれの方からだろうか。
そして、現れたのは「THE ODORU LEGEND STILL CONTINUES」の文字。『室井慎次 生き続ける者』の時と同じく、「踊る大捜査線」が今後も続いていくことを明確に示して、映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は幕を閉じている。
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』ネタバレ感想&考察
旧世代と新世代の融合
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は、14年ぶりの「踊る」を冠した作品ということで、シリーズのレガシーキャラや名前や事件への言及、そしてセルフオマージュに満ちた作品になっていた。一方で、冒頭の30分で多くのキャラのその後を示したアイデアは良かった。お祭り映画でありつつも、きちんと旧キャラの現在と新キャラのストーリーを描くことに残りの時間を割くことができていたからだ。
真下勇気に室井慎次のモノマネをさせるくだりから、きちんと「室井慎次」二部作の出来事を回収した流れも評価できる。これだけのオールスターキャストでありながら登場しなかった新城賢太郎も、「メインキャラで室井と自分だけが出ない」という事実に新城自身が満足していそうだから良いだろう。
室井の存在によって捜査本部が息を吹き返す様子は、室井がまさに「生き続ける者」であることを示している。沖田は思っていたより警察内部での立場は良くなさそうだが、「室井モデル」の推進とともに状況は良くなっていくだろうか。その時は、沖田との意外な関係が示唆された桜も力になるだろう。
また、世代間のコミュニケーションの象徴として、缶コーヒーが多用されていた点も印象的だった。かつては青島は室井と缶コーヒーを一緒に飲んだものだが、青島がひばりと美浦にコーヒーを買っていっても、すでに飲み物があるからと断られてしまう。
二人よりは年上の桜は、コーヒーの種類を選べるようにしてくれて、同い年の北丘雲斗は青島のコーヒーを受け取ってくれる。最後には美浦の方から青島にコーヒーを渡してくれるが、青島は一緒についてきた食べ物(お菓子?)は断っている。世代ごとにコミュニケーションの方法があり、互いが少しずつそれを掴んでいく様子は、世代間の歩み寄りとして描かれている気がした。
犯人像と現代的なテーマ
『N.E.W.』の事件については、当初はいわゆる“パパ活女子”による犯行で、しばらく思想犯の流れが続いていた「踊る」シリーズから、『THE MOVIE』のように思想のない少年犯罪という犯人像への転換が行われるかに思われた。しかし、最後の最後で犯人が日向真奈美の信者である可能性が示された。
「室井慎次」二部作でも、日向真奈美は獄中からレインボーブリッジ事件の加害者を操っており、日向真奈美が健在であることが示されている。日向真奈美は『THE MOVIE 3』で、旧湾岸署で死ぬことを望んだ。旧湾岸署跡地に第二湾岸署ができるということは、真下と青島が飛ばされた先で日向真奈美が帰ってくるということになるだろうか。
一方で、製作陣の“若い女性の犯人像”が「室井慎次」二部作の杏に続いて偏っており、そろそろ限界を感じた。「筋は関係ない」という若い世代への偏見を若い世代に言わせるのもズルい感じがする。俳優陣も新たな面々がメインキャストとして起用されていく中で、製作陣にも大きなアップデートがあってもいいのではないだろうか(内々には進めているのかもしれないが)。
現代的な素材の扱い方としては、AIやSNSが正しいこともあるという路線は意外だった。だが、思い返せばドラマ第8話では「刑事は今後いらなくなる」と言ったプロファイリングチームの捜査が正しかったという展開もあった。和久さんの音声データを勝手にAIに食わせてもいいのかという倫理的な問題はあったが、最後に突入した青島が撃たれたり刺されたりしたように、昔ながらの人間の判断が間違っているというパターンも提示されている。
なので、客観的で相対的な手つきは過去作に引き続きあることにはあるのだが、やはり女性キャラクターの像が類型化されているというのが「踊る」の一つの限界になっているように思える。その中でも、今回趣里が演じた芝田ひばりは今後もその活躍が見たいと思えるような、個性の光るキャラクターだった。
今後はどうなる?
気になるのは、「踊る大捜査線」シリーズの今後である。多くのファンが期待した恩田すみれのサプライズ登場については、おそらく今後の作品に持ち越されたのだろう。最後の電話の発信音の後に「THE ODORU LEGEND STILL CONTINUES」の文字が現れたのは、次は恩田すみれのカムバックを描くという意思表示だと考えられる。
ちなみに、『室井慎次 生き続ける者』では、室井の口から恩田すみれが撃たれた後遺症に苦しんで警察を辞め、その家族も苦しんでいるという言及があった。この「家族」が青島のことなのでは、という考察もあったが、『N.E.W.』では、青島は野呂佳代演じる小昏双葉に独身であることを指摘されている(青島は肯定も否定もしていないが)。
もう一つ付け加えると、入場者特典の資料によれば、『N.E.W.』で描かれた最後の1日であう2026年12月13日は青島の59歳の誕生日だ。電話をかけたのは青島が先だが、すみれが何度も折り返している理由は、その日が青島の誕生日だということに気づいたからなのかもしれない。
『踊る大捜査線 N.E.W.』では、偽青島のエピソードも挿入された。長らく織田裕二のモノマネをしてきた山本高広がついに「踊る」出演を果たしたが、同時にSNSの時代にあって青島が世間の人々から偶像化(idolize)されていることも示された。
日向真奈美もネットの力によって神格化され信者を増やしていったが、世間に知られることになった青島が日向真奈美と三たび対決することになれば、騒ぎはかなり大きくなりそうだ。『N.E.W.』では室井のもう一人の里子である杏は登場しなかったが、母である日向真奈美が絡んでくるなら、再登場もあり得るだろう。
もし青島が第二湾岸署に移籍するならば、八重洲警察署の和久伸次郎、麻布中央警察署の美浦、台東警察署の芝田ひばりと共に、東京都内の所轄の横のつながりが描かれていく可能性もある。エンドロールでは、八重洲警察署の壁に「事件に大きいも小さいもない」という恩田すみれの名言が貼られていることも確認できた。湾岸署から派生したつながりと仲間意識はまだまだ広がっていくことになるだろう。
ちなみに、以前こちらの記事で考察したが、現実tで公務員の定年延長が始まったことによって、青島と沖田の定年退職は65歳となっている。つまり、定年まではあと6年。まぁ、青島は和久さんみたいに死ぬまで再任用で死ぬまで刑事をやっていそうではあるが。
まだまだ書きたいことはたくさんあるが、今回は一旦ここまでにしておこう。各キャラクターや過去作との関わりについての考察は今後しばらくアップしていくので、ぜひ記事をチェックしていただきたい。
映画『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は2026年9月18日(金) より全国公開。
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』公式サイト
映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は配信中。
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