歴史が文字通り動き出す? 夜の博物館〈ナイト ミュージアム〉
2006年に公開されたベン・スティラー主演作『ナイト ミュージアム』。監督を務めたのはショーン・レヴィで、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016-2026)のエグゼクティブプロデューサーやMCU映画『デッドプール&ウルヴァリン』の監督を手掛けたヒットメーカーだ。
ショーン・レヴィは『Star Wars: Starfighter(原題)』(2027)や『Ghost Rider(原題)』(2028)を務めることが発表されるなど、スターウォーズファンも、マーベルファンも見逃せない作品を監督することが発表されている。そのようなショーン・レヴィ監督が長年タッグを組んできた俳優とともに撮ったのが『ナイト ミュージアム』(2006)だ。
本記事では、これからのスターウォーズやMCUを背負って立つショーン・レヴィ監督の作風を、20年経っても色あせない名作『ナイト ミュージアム』から紐解いていこう。なお、以下の内容には『ナイト ミュージアム』のネタバレが含まれるため、本編視聴後に読んでいただけると幸いである。
以下の内容は、映画『ナイト ミュージアム』の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
映画『ナイト ミュージアム』ネタバレ解説&考察
案内人のセオドア・ルーズベルト大統領
発明品の販売をすると言っては、なかなか仕事が長続きしない主人公のラリー。とうとう、息子のニックからも仕事を探すように諭された彼は、仕事斡旋所で博物館の夜間警備員の仕事を紹介される。しかし、その仕事こそが不思議と魔法に満ちた世界のはじまりだった。
博物館の展示物たちは閉館後の夜になるとアクメンラーの石板の力で動き出し、自分たちを歴史の人物そのものだと思って行動するのだ。一部の展示物は「自分は本物の偉人ではない」とわかっているものもいるが、本能のままに動く動物や恐竜もいる。
最初は動物や兵士に追われるだけのラリーだったが、次第に順応していくと展示物との間に友情を深めていく。第26代アメリカ大統領のセオドア・ルーズベルトが案内人を務めてくれるのは、史実の彼の性格に由来していると考察できる。
セオドア・ルーズベルトは幼少期から自然史に強い関心を持っていた人物で、少年時代には自宅に標本を集めた「ルーズベルト自然史博物館」を作っていた。剥製術を学び、動物の標本を収集・研究していたことからも、博物館の展示物として登場するのは彼の人物像と重なる部分がある。その一方で、ショーショーニー族のサカガウィアに恋をしている設定は、実在したルーズベルトの人物像とは異なる映画独自のユーモアだろう。
ある意味では、展示物のセオドア・ルーズベルト大統領は自分が展示物だとわかっているからこそ、子どもたちの理想的な存在として生命を授かったのではないだろうか。彼を演じるのは天才的なコメディアンであるロビン・ウィリアムズであり、その軽妙なトークが誰もが夢描く理想の大統領像を表現している。
個性豊かな展示物たち
また、「ナイト ミュージアム」シリーズを語る上で外せないのがジェデダイア・スミスとガイウス・オクタウィウスの2人だ。敵対し合っているジオラマの2人だが、実際には時代背景から、出会うことのない歴史上の人物同士だ。
ジェデダイア・スミスは、19世紀前半に活動した毛皮交易業者・探検家として知られる。アメリカ西部を広く探検した人物。サウス・パスなどの情報を広め、後のオレゴン・トレイルの形成にも影響を与えた。
ガイウス・オクタウィウスは政敵を倒し、プトレマイオス朝エジプトを併合して地中海世界を統一した人物だ。つまり、時代も文化もまったく異なるものの、領土拡大、つまりは自らの勢力圏を広げていった人物という共通点がある。
皮肉にも領土拡大を狙う別時代の人物がジオラマとして隣に配置され、お互いに睨み合いながらもラリーの手で、考え方を改めていくのが興味深い演出となっている。ジェデダイア・スミスを演じたのはMCUドラマ『ロキ』でメビウス・M・メビウスを演じたオーウェン・ウィルソン、ガイウス・オクタウィウスはコメディアンのスティーヴ・クーガンが演じている。
他にもローマ帝国を恐怖の底に叩き落としたフン族のアッティラや、ルイスとクラーク遠征隊の通訳を買って出た女性のサカガウィアなど、彼ら展示物は歴史での役割を現実に落とし込んでいる。映画『ナイト ミュージアム』はキャラクターに興味を持ち、調べはじめると勉強になるようにつくられているのが面白いところだ。
映画『ナイト ミュージアム』ラストネタバレ解説&考察
命を与える石板の秘密とは?
息子のニックに良いところを見せようとしたラリーだったが、日が落ちても展示物たちは動き出さない。それもそのはず、命の源であるアクメンラーの石板を、クビにされた警備員トリオが盗み出していたのだ。長年、警備員を務めてきた3人は石板から展示物と同じように生命力を与えられることを悟ったのだ。
追い詰められたラリーは、ある展示物に助けを求める。それは博物館で数少ない蝋人形などではない、“本物の歴史上の人物”であるアクメンラーのミイラだった。真の石板の主の力を借り、ラリーは歴史上の人物をまとめあげ、警備員トリオを止めようとする。
作中では蝋人形ではない歴史上の偉人として、ラリーを助けてくれるアクメンラーだが、実際は映画オリジナルのキャラクターである。演じるのは『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)でフレディ・マーキュリーを演じたラミ・マレックで、彼自身もエジプト系の両親を持つ俳優だ。
すべての歴史学者の夢、そして未来へ
実はラリーには、息子のニック以外にも良いところを見せようとした人物がいた。それは彼に優しく接してくれたレベッカだ。彼女はずっとサカジャウィアについて研究をしていたが、それを諦めようとしていた。そこでラリーは、憧れのサカジャウィアと対面させようとしたのだ。
しかし、一度はアクメンラーの石板が盗まれたことで失敗。レベッカを失望させてしまったラリーだったが、展示物たちの協力を経て、彼女をサカジャウィアと話させることに成功する。歴史を研究する人にとって、実際に歴史上の人物と話せたらどれほど興味深いだろうか。
そして、その夢は終わらない。ラストに起きた大騒動によって、人気が低迷していた博物館に街中の人々が押し寄せる。ラリーは博物館という存在について、ニックの学校の授業で、一言で締めくくる。「博物館は歴史が“息づく場所”です」と。
映画『ナイト ミュージアム』ラストネタバレ感想
博物館は学問の入り口
『ナイト ミュージアム』の最大の魅力は、博物館の意味を再度思い出させてくれるところにある。博物館というと堅苦しいイメージを持つ人も多いだろう。しかし、実際の博物館には魅力が溢れている。その魅力を「もしも深夜、展示物たちが動き回っていたら?」という形で映像化したのが本作の特徴だ。
博物館には様々な展示物があり、それを通して時代を超えた旅ができる。もしかしたら、歴史上の偉人たちと会話できるような気持ちになれるかもしれない。ラリーがラストで語った通り、博物館は歴史が“息づく”場所なのだ。
本作をきっかけに、身近な博物館を訪れてみるのも面白いかもしれない。たとえば、映画『ナイト ミュージアム』の舞台となる博物館は、ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館をモデルにしている。
実際のアメリカ自然史博物館にも、映画に登場するT・レックスやモアイ、カプチンザルなどのモデルとなった展示が存在する。さらに、セオドア・ルーズベルトの父は同館の創設者の一人で、現在も館内にはルーズベルト記念施設がある。
しかし、世界各地にはそれぞれの文化を取り扱った博物館が存在している。アメリカにはアメリカの、日本には日本の文化を中心とした博物館が多数あり、『ナイト ミュージアム』はそのような博物館への興味を湧かせてくれるファミリー映画の決定版と言えるだろう。
映画『ナイト ミュージアム』はDVD&Blu-rayが発売中。
【ネタバレ注意】『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』のネタバレ解説&考察はこちらから。
【ネタバレ注意】『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。
