【イベントレポート】坂崎かおる×佐藤まな×山本薫「パレスチナでのジェノサイドにフィクションはどう立ち向かうのか」オンライン鼎談 | VG+ (バゴプラ)

【イベントレポート】坂崎かおる×佐藤まな×山本薫「パレスチナでのジェノサイドにフィクションはどう立ち向かうのか」オンライン鼎談

オンラインイベント「パレスチナでのジェノサイドにフィクションはどう立ち向かうのか」が開催されました

 2025年3月28日、VGプラスが主催のオンラインイベント「パレスチナでのジェノサイドにフィクションはどう立ち向かうのか」が開催されました。河出書房新社、講談社との共同開催で、登壇者は作家の坂崎かおるさん、翻訳者の佐藤まなさん、アラブ文学研究者の山本薫さん。司会は河出書房新社の石川詩悠さんが務めました。チケットの売上のうち、経費をのぞいた全額が、UNRWA(国際連合パレスチナ難民救済事業機関)に寄付されます。

4月28日(月)23:59まで、アーカイブ配信をしています。詳細&チケットの購入はこちら

作家の坂崎かおるさんは、2020年に「リモート」でかぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞。2024年に短編集『嘘つき姫』(河出書房新社)で単著デビューしました。2024年「ベルを鳴らして」で第77回日本推理作家協会賞短編部門、2025年『箱庭クロニクル』(講談社)で第46回吉川英治文学新人賞を受賞。そのほかさまざまな文学賞を受賞しています。単著は他に、『海岸通り』(文藝春秋、第171回芥川賞候補)があります。

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佐藤まなさんは英語翻訳者です。主な翻訳作品に、映画『鉄道運転士の花束』『リトル・パレスティナ』(日本語字幕)、ジェームズ・ウェルカー編著『BLが開く扉 ―変容するアジアのセクシュアリティとジェンダー』(青土社、共訳)などがあります。『現代詩手帖』2024年5月号「パレスチナ詩アンソロジー 抵抗の声を聴く」には翻訳、解題などで参加しました。また、SFのマガジン『Kaguya Planet No.2 パレスチナ』(Kaguya Books)では、英語からの翻訳作品の監訳を務めています。

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山本薫さんは、慶應義塾大学総合政策学部准教授のアラブ文学研究者です。パレスチナやエジプトを中心に、文学・音楽・映画など、アラブ圏の文化・芸術について研究し紹介しています。訳書にエミール・ハビービー『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』(作品社)、アダニーヤ・シブリー『とるに足りない細部』(河出書房新社)などがあります。‭‭

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「フィクション」という観点からパレスチナに関わることについての鼎談

 イベントは、「フィクション」という言葉をどのように捉えているかの確認、そしてパレスチナにおけるフィクションについての山本さんの解説で幕を開けました。坂崎さんからはまた歴史的事実を題材とした小説を書くときに気をつけていることについての言及がありました。佐藤さんはドキュメンタリーとフィクションの境界や、報道で知ることができる事実がフィクション(詩)として語られる理由についてお話ししていました。山本さんは自身のフィクションに対する興味に加え、パレスチナにおいて詩が盛んに書かれ、読まれているという状況とその背景、またアラブ地域のフィクションには政治的メッセージが当たり前に込められていることを紹介しました

また、安全なところからパレスチナのフィクションをフィクションとして楽しむことの特権性と、それに気づいた時の後ろめたいような気持ちとどのように折り合いをつけたらよいか、パレスチナから届いた作品をどのように受け取るのがより誠実な姿勢なのか、ということについても、山本さん、坂崎さん、佐藤さんのそれぞれから言及がありました。

対談の後半には、個人としてパレスチナに連帯し、虐殺を止めるために何ができるかについて、お三方のそれぞれからお聞きしました。「自分には何ができるのだろう」「何もできていない」と思っている方にとってのヒントになるようなことがたくさん語られていました。

イベントの中では、山本さんの「パレスチナには理不尽なことしか起きていない。その理不尽な現実を風刺として笑い話に昇華する、事実を作者の目線でフィクションに逆転させていくような物語に心惹かれる」という言葉や、坂崎さんの「『フィクションにフィクションで対抗する』という言説は、場合によってはシオニズムと同じ土俵に乗ってしまいかねない」という気づき、佐藤さんの「スペキュレイティヴ・フィクションは荒唐無稽な物語、エンタメとして消費されがちであるが、自由な想像力によってつくられた設定の中に現実の苦しみや痛みが込められている」という発言が印象的でした。

 

イベントのアーカイブチケットは4月28日まで販売中!

オンライントークイベントパレスチナでのジェノサイドにフィクションはどう立ち向かうのか」アーカイブ配信は、4月28日まで購入可能です。坂崎さん、佐藤さん、山本さんのお話の内容が気になった方はぜひ視聴してみてください。

下記フォーム、またこちらより、アーカイブチケットをご購入いただけます。

 

また、イベントを共同開催したKaguya Books、河出書房新社、講談社は、それぞれパレスチナからの声を翻訳・刊行しています。アーカイブ配信を視聴したりレポートを読んだりして、パレスチナからどんなフィクションが生まれているのか気になった方は、ぜひ下記の書籍やマガジン、絵本を手に取ってみてください。

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Kaguya Planet No.2 パレスチナ

コンテンツ
⚫︎小説
ズィヤード・ハッダーシュ「ここの外では」(佐藤祐朔訳)
ソニア・スライマーン「ムニーラと月」(岸谷薄荷訳、佐藤まな監訳)
タスニーム・アブータビーフ「継承の息吹」(岸谷薄荷訳、佐藤まな監訳)
牧野大寧「城南中学校生徒会役員選挙『カレーVSラーメン』」
⚫︎コラム
井上彼方「SFとイスラエルとパレスチナ」
堀川夢「英語で読むパレスチナのSF」
齋藤隼飛「プレイヤーへの期待、その裏にあるキュレーターの責任」
鯨ヶ岬勇士「スーパーヒーローはどこにいるのか。それはあなたかもしれない。」
⚫︎PICK UP
『野球SF傑作選 ベストナイン2024』
『SF作家はこう考える 創作世界の最前線をたずねて』
⚫︎インタビュー
映画『カミノフデ 〜怪獣たちのいる島〜』総監督・村瀬継蔵&特撮監督・佐藤大介 インタビュー
SF作家対談 天沢時生×水町綜「不良とバイクとSFと」
⚫︎イベントレポート
IMAGINARC 想像力の音楽
⚫︎VGプラスの活動報告

サイズ:A5
ページ数:108ページ
一般価格:1650円(税込)
ISBN:978-4-911294-01-7

『Kaguya Planet vol.2 パレスチナ』は、Kaguya Planetのオンラインストアと、書店で販売中です。

堀川夢

1993年北海道出身。編集者、ライター。得意分野は海外文学。「岸谷薄荷」名義で翻訳・創作も行なう。フェミニスト。

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