「100年前から疎外されてる」『サンダーボルツ*』バッキーの心情と「心配」を脚本家が明かす | VG+ (バゴプラ)

「100年前から疎外されてる」『サンダーボルツ*』バッキーの心情と「心配」を脚本家が明かす

©2025 MARVEL

『サンダーボルツ*』公開中

2025年5月より公開されている映画『サンダーボルツ*』は、エレーナ・ベロワやジョン・ウォーカーら、MCUのクセのあるキャラクター達が新たチームを結成する作品だ。中でもウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズが印象的な活躍を見せ、話題となった。

『サンダーボルツ*』公開から1ヶ月が経過するタイミングで、米マーベル公式では共同脚本を務めたジョアンナ・カロのインタビューが公開された。その中で、『サンダーボルツ*』におけるバッキーの状況が改めて明かされた。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『サンダーボルツ*』の内容に関するネタバレを含みます。

『サンダーボルツ*』脚本家が明かすバッキーの心情

映画『サンダーボルツ*』では、バッキー・バーンズは新人下院議員として登場。2月に公開された映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』ではバッキーが下院選出馬の準備を進めていることに触れられており、『サンダーボルツ*』ではブルックリン選出の議員として無事に当選したことが明かされた。

『サンダーボルツ*』のバッキーは、議員になったものの新しい職で不慣れな様子を見せている。記者対応では「心配」を連呼したり、権力の側にあるのにこれまでの癖で防犯カメラを気にしたり、資料を読み込むことに難儀したり……。

『サンダーボルツ*』の共同脚本家ジョアンナ・カロは、米マーベル公式でバッキーの状況についてこう語っている。

(サンダーボルツのメンバーは)皆、世界をより良くしようと人生を費やしてきましたが、同時に過去に自分たちがやってきた悪いことと折り合いをつけようとしています。それは登場人物の全員が乗り越えようとしていることです。

バッキーは今も純粋に世界をより良い場所にする方法を見つけようとしていて、だけどどこにも馴染めないというアイデアはとても気に入っています。100年近く前に恐ろしいことがあって以降、彼は生活に馴染むことができていません。時代からも疎外されてきました。それで、彼は議会に自分の居場所を見出したんです。

ヒドラにウィンター・ソルジャーとして洗脳されたバッキーは、生活や時代といった、普通の人達が馴染んで生きる要素から疎外されてきた。だからこそ、政治家という少々世間離れした職業と議会に居場所を見出したのかもしれない。

それに、バッキーは100年も生きていれば、電話交換手のようになくなった仕事も、YouTuberのように最近生まれた仕事も見てきたことだろう。バッキーは、自分が生まれた頃からあり続ける政治家という仕事が、世界をより良くするためのより確実な手段であると考えたのかもしれない。

バッキーが抱える「心配」

そうして政治家になると決めたバッキーだが、出身地のブルックリンの選挙区から出馬し、思いの外あっさり当選を果たしている。ジョアンナ・カロは、こう続けている。

人々は彼に投票しますよ! 候補者の中にバッキー・バーンズの名前があったら、あなたも彼に投票するでしょう! でも、彼は自分には(政治家としての)スキルがないと感じています。十分ではないと。彼が記者と話をするときに、どう話せばいいか分からないというシーンが大好きなんです。彼はまだ振る舞い方や動き方をマスターしていません。とってもチャーミングだと思いました。

その知名度と人気によってバッキーは初出馬で当選を果たすことができたようだ。一方で、その人気に反してバッキーには政治家としての下積み期間がない。しばらく市議や秘書をやって国政に打って出たわけではなく、いきなりCIA長官の弾劾という大きな仕事を担う下院議員になったのだ。

だからか、バッキーにしては珍しく、自分の力量に不安を抱えていたようだ。記者に囲まれるシーンでは、ああいう場面での振る舞い方の正解を知らず、「心配 (worrying)」を連呼して要領を得ない回答をしてしまう。トニー・スタークやサム・ウィルソンはスピーチもうまかったが、100年生きているバッキーにも知らない“スキル”があったのだ。バッキーが繰り返した「心配」という言葉は、ひょっとするとバッキー自身が抱える不安の現れだったのかもしれない。

それでも、自分には出来ないと思ったり、適性がないのかもと考えたりするのではなく、「スキルが不十分」と考えているあたりがバッキーらしい。脚本家のジョアンナ・カロも、「まだ動きをマスターしていない」という言い回しで、バッキーの政治家としての適性を暗に認めている。

『サンダーボルツ*』では、最終的にバッキーは自分らしいやり方で問題解決に取り組むことになる。新しいことに挑戦し、自分の居場所を探しながら、紆余曲折を経て仲間のもとに辿り着いたバッキー。超人でありながら、私たちと同じようにもがきながら生きるその姿に、多くの人が魅了されるのだろう。

映画『サンダーボルツ*』は公開中。

『サンダーボルツ*』公式

本記事の筆者・齋藤隼飛が翻訳を手がけた『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』は5月2日発売。500点以上のアートと共にMCUの歴史を辿る貴重な一冊なのでぜひチェックしていただきたい。

Source
Marvel.com

『サンダーボルツ*』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

『サンダーボルツ*』のラストを受けた、“三つのアベンジャーズ”についての考察はこちらの記事で。

バッキーはなぜ議員に? そして、最後は議員を辞めた? 演じたセバスチャン・スタンが語った背景の解説はこちらから。

バッキーの過去がサンダーボルツメンバーとニュー・アベンジャーズに与えた影響についての考察はこちらから。

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タスクマスターの死について『サンダーボルツ*』の監督が語った内容はこちらから。

メルはどうなった? 俳優が語ったメルの過去とその後についてはこちらの記事で。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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