ネタバレ全開! 『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が阪本順治監督と対談「一人を犠牲にする世界」について考える | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ全開! 『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が阪本順治監督と対談「一人を犠牲にする世界」について考える

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『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が阪本順治監督と対談

映画『パラサイト 半地下の家族』(2019)で第72回カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞、第92回アカデミー賞®では作品賞を含む最多4部門を受賞したポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』が現在劇場で公開されている。全米及び世界各国での世界興行収入は1億3,000万ドルを突破するヒットを記録している(Box Office Mojo調べ ※4月15日(火)時点)。

アカデミー賞®受賞後初となる最新作にして集大成『ミッキー17』が公開されたポン・ジュノ監督。今回は、『ミッキー17』で来日したポン・ジュノ監督と阪本順治監督が、昨年3月以来一年振りに再会を果たした特別対談映像が公開された。

ポン・ジュノ監督と阪本順治監督、2人の出会いは2000年。第48回サン・セバスチャン国際映画祭コンペ部門に『顔』で参加した阪本監督はポン監督の初長編『吠える犬は噛まない』を観て「これがデビュー作かよ、まいったな。オレは一から出直しだ!」とコメントを寄せた。

それから約25年、映画を作り続ける2人は兄弟のような関係で結ばれている。ポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』を「絵本のような映画」だと語る阪本監督は、ポン監督について「普段は非常に賑やかでユーモラスな人なのですが、実は自分がやりたいことを徹底してやるために自分を追い込んでいくというか、その葛藤の抱え方というか。時には自分を傷つけるくらいに背負ってしまうという一面も知っているので。観終わって楽しかった一方で、どれだけの苦労をしたのかと思うと、親心じゃないけれど……、ちょっと泣けてきちゃった」と家族のような気持ちでエンドロールを見つめていたという。

「こうしてまた再会できて本当に嬉しいです。私は作品が日本で公開されるたびに、お兄さんが私の新作をどんなふうに観てくれるのかと想像しながら緊張もしているんです。キンチョー(緊張)です」とポン・ジュノ監督が笑顔を見せる。「同じことを返します」と応じた阪本順治監督は「僕の映画を観て、時には長文で感想を送ってくれたりして。物語を深く読んでもらえるところ、そして日本の監督と違い別の視点から観てもらえることは嬉しいなと思っています」と日々のやりとりに感謝を述べる。

リラックスした雰囲気で始まった対談は、「ポン監督の視点はいつも社会的地位のない名もなき人を主人公にして、けれどもめげずに生きていく、そういう骨子は何も変わらないと思いました。退廃した世界で何度も死んでは生き返るという運命を背負った主人公を軽妙にかわいらしいタッチで描いた、絵本のような映画だったなと思います」と、阪本監督はポン監督の一貫したテーマを受け止めた。

続けて、ミッキーが乗り込む宇宙船の美術や造形、劇中に登場するクリーパーの姿を意識しながら、「日本人は『ミッキー17』を一番楽しめる国民性を持っていると思っていて、韓国でヒットしているのは聞いていますが、やはり日本人に非常にふさわしい娯楽映画だと思います。なぜかというと僕らは小さいころから漫画などたくさんのフィクションに馴染んできています。手塚治虫、大友克洋、つげ義春、藤子不二雄。アンダーグラウンドからメジャーのおとぎ話に馴染んできた僕らだからこそ、この映画は非常に日本人に向いているのではないかと思っています」と指摘、幼い頃から日本のアニメや漫画で育ったというポン監督が大きくうなずく。

『ミッキー17』に大きな刺激を受けたという阪本監督は、「近未来においてクローンを作ることは倫理的に許されない。でもミッキーは、宇宙の危ない仕事に従事するたった1人だったらいいんじゃないか……という判断のもとに生まれたキャラクターですよね? そう考えるとゾッとするのは、たった1人ならいいんじゃないかと皆が思ってしまったということ。だから『死ぬってどんな気分?』と聞いてくる。誰かが犠牲になるしかないのだから仕方がないというようなものの考え方は、昨今と地続きだと思っています。面白おかしくだけど、そういうことも描いていたのだなと思いました」と、ポン監督が描いたテーマの核心に迫る。

阪本監督の鋭い指摘に「私もそれは重要に考えていた部分です」と頬をさすったポン監督は、「共同体のすべての人たちが危険で汚くて死ななければならない仕事を1人に押し付ける。『君は死んでも仕方がない、契約書にサインをしたのだから』『それが君の仕事なのだから』と、自分たちの責任や自責の念から逃れようとします」と、契約書を楯に理不尽な任務をミッキーに押しつける権力者たちの姿を描いたという。

続けて、「反対にクリーパー(作品に登場するクリーチャー)たちは、彼らの子供1匹が死に面したとき、その1匹を助けるために共同体全体が動き雪原に飛び出してきます」と手振りを交えて熱く語る監督は、「2つの世界を対比させたかった。繰り返し1人の人間を犠牲に死なせて自分たちは安全な場所にいる人間の世界と、1匹を助けようとするクリーパーたちの姿を対比させながら、どちらが他者に対するリスペクトを持つ高貴な存在なのかというのを見せたかったんです」と、愚かな指導者と崇高な精神と知性を持ったクリーパーとの対比に特別な演出意図を込めたことを明かしている。

阪本監督は「ポン監督の映画の特徴は善悪を単純化しないことや、名もなき人を主人公に置くこと」とその魅力を熱弁。さらに、「今回も非常に楽しんで観たけれど終わってから受け取るものは本当の意味でのハッピーエンドではなかったと思いますし考えさせられる読後感は変わらないと感じました」と、ポン監督が描き続けてきたテーマにブレはないと指摘する。

その言葉を受けたポン監督は、「ミッキーはずっと死を繰り返し、死ぬことが職業でした。悲劇といえば主人公が死ぬことだと思いますが、死なせて終わることにあまり意味がないように思えました。それに彼は善良な青年なので、そんな彼が破壊されるところも見たくなかった。本作の結末ではそういう意味を持たせたかったのです」と、『ミッキー17』が訴えかける「生きることの意味」について言及し対談を結んだ。その後2人は固い握手を交わした。

ポン・ジュノ監督が兄と慕う阪本順治監督の映画愛に溢れた問いかけが、『ミッキー17』に込められた様々な想いを紐解いていく。今回解禁された特別対談映像は、既に鑑賞された方はもちろん、これから『ミッキー17』を観ようと思っている方にも必見の内容となっている。

『ミッキー17』イントロダクション
人生失敗だらけのミッキー(ロバート・パティンソン)は、何度でも生まれ変われる夢の仕事を手に入れた、はずが……⁉ それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった 。

ストーリー
ブラック企業のどん底で、ありとあらゆる方法で搾取され、死んでは生き返らせ続けるミッキー。何度も死に続け、遂に17号となったミッキーの前に、ある日手違いで自分のコピーである18号が現れ、事態は一変、2人のミッキーは権力者たちへの逆襲を開始する。ターゲットは自分の得しか考えていない強欲なボス、マーシャルと現場に“死にゲー”任務を強いる、イルファ(トニ・コレット)だ。使い捨てワーカーvs強欲なブラック企業のトップ、逆襲エンターテイメントが開幕!

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』は大ヒット上映中。4D/Dolby Cinema🄬/ScreenX/IMAX🄬 同時公開。

映画『ミッキー17』公式

エドワード・アシュトンの原作小説『ミッキー7』は大谷真弓の翻訳で発売中。

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ポン・ジュノ監督と山崎貴監督の対談はこちらから。

ジャパンプレミアでポン・ジュノ監督が語った本作のテーマはこちらの記事で。

ポン・ジュノ監督が明かした『ミッキー17』へのスタジオジブリからの影響についてはこちらから。

クライマックスシーンを描いたポン・ジュノ監督直筆の絵コンテはこちらから。

 

ポン・ジュノ監督作品『スノーピアサー』のネタバレ解説はこちらから。

ロバート・パティンソンが『ザ・バットマン』まで大役を避けてきた理由はこちらから。

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