映画『ドクターX FINAL』公開
2012年に放送を開始した人気ドラマ『ドクターX』を映画化した『劇場版ドクターX FINAL』が2024年12月6日(金) より全国の劇場で公開されている。本作はスーパードクター・大門未知子にとって最後の物語となり、シリーズは遂に完結を迎える。ドラマシリーズでも示唆されてきた大門未知子の過去にも迫る重要作となっている。
今回は、『劇場版ドクターX FINAL』で明かされた大門未知子の過去について解説&考察していこう。以下の内容は重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『劇場版ドクターX FINAL』の内容に関するネタバレを含みます。
『劇場版ドクターX FINAL』大門未知子の三つの過去
学生時代の大門未知子
映画『ドクターX FINAL』では、大門未知子をめぐる三つの過去が明らかになった。一つは田中圭演じる森本光がリハビリ中に未知子の出身地である広島県呉市を訪れて知った過去、二つ目はその中で伊東四朗演じる毒島隆之介が明かした過去、三つ目は最後のオペシーンに挿入された回想シーンでの神原晶との過去だ。
『劇場版ドクターX FINAL』では、大門未知子の小学生時代の同級生が登場。かつて未知子がカエルの解剖もできない「弱虫」であったことが明かされた。ちなみ小学校の卒業アルバムには元祖「きんちゃん」の姿も確認できる。「きんちゃん」は未知子が小学生の時のケーキ屋の子どもで、原守はその子に似ていたため未知子から「きんちゃん」と呼ばれるようになった。
未知子は学校の授業で解剖されそうになっていたカエルを逃してあげており、弱虫ではあったようだが、命を大切するに心の優しさも持ち合わせていたことが分かる。今の未知子とは違う気弱な姿を見せているものの、命を大切にする姿勢は昔から変わっていないようだ。
そして、綾野剛演じる河野明彦は広島県呉市の開業医だが、かつては明英医科大学で大門未知子と同期だった。河野が明かした回想シーンで医学生時代の大門未知子を演じたのは八木莉可子だ。
未知子は医大生になっても研修で嘔吐してしまうなど、他の学生と比べても「落ちこぼれ」の類に入る学生だった。未知子の意外な過去を知った森本は勇気づけられたようだが、その後、未知子には更なる困難が待っていた。
毒島と大門診療所の過去
ドラマシリーズでは、大門未知子の父・大門寛は大門診療所を経営していたが、毒島隆之介の圧力によって廃業したとされていた。寛はまもなく亡くなり、神原晶が寛が未知子に残した借金を肩代わりすることになったのだ。ただ、毒島は大門診療所を潰したのは自分ではないと主張しており、過去は闇に包まれたままだった。
具体的には、毒島は東帝大学病院の第一外科部長選挙で寛に資金提供を依頼したがこれを断られ、外科部長になった後に他の大学病院や周囲の病院に圧力をかけたとされている。そうすることで大門診療所から仕事を奪っていたと考えられる。小規模な診療所では、患者を設備の整った大病院に紹介しなければならないこともあり、他病院からの協力を得られなくなったことで運営が難しくなったのだろう。
映画『ドクターX FINAL』では、釣り堀で毒島隆之介が再登場。森本光は第1期で新米の外科医として登場し、毒島は第1期で第一外科部長という立場だった。二人は第2期目以降は数回しかドラマに登場していないが、第1期に登場していた二人が大門未知子の過去について語ったことは感慨深い。
毒島は森本に未知子の父は東帝大学病院の権力闘争に巻き込まれて診療所を潰されたこと、未知子もまた所属していた東帝大学の医局を追われてキューバに渡ったことを明かす。やはりその口ぶりは、毒島が意図して大門診療所を潰したわけではないという主張が込められているように思える。毒島も無罪ではないのかもしれないが、東帝大学病院そのものが抱える問題、出世レースでは誰も無傷ではいられないという背景もあったのではないだろうか。
そうして大門未知子は神原晶がいたクバナカン医科大学へと飛んだ。これが25歳の頃。晶のもとで未知子は数々の手術をこなし、血反吐を吐くような努力を重ねてスーパードクターになった。今の大門未知子を作ったのは、神原晶だということが改めて示されている。
晶さんとの過去
『劇場版ドクターX FINAL』ラストの神津比呂人のオペシーンでは、大門未知子は紛争地帯で臨んだ神原晶とのオペを思い出していた。その時、晶は患者がテロリストだと指摘されてもオペを止めず、血が足りないとなれば自分の血をその場で輸血して患者を救った。
このオペで未知子は初めて晶に褒められることになったが、同時に晶の「私、失敗しないので」という言葉は自分に言い聞かせる言葉だということを知った。未知子の師匠であり、「ドクターX」と呼ばれた晶も手術を「怖い」と感じており、自分に「失敗しない」と言い聞かせる必要があったのだ。
落ちこぼれだった未知子は、人一倍努力を重ね、「私は失敗しない」と自分に言い聞かせることでドクターXになった。加えて、誰であれ救う、最後まで患者を見捨てないという、未知子の持ち前の優しさと、晶から引き継いだ信念によって、外科医・大門未知子は完成する。
努力の人だった未知子
大門未知子が努力の人だということは、ドラマシリーズでも示されている。第5期で自身の手術が必要となった時に、西山をはじめとする医者たちは、未知子が残したノートに従ってオペを行い、自分自身を救ってみせた。この時、未知子は全ての患者のオペで起きうるリスクをノートにまとめ、その事前の対策通りにオペを行っていたことが明らかになった。
未知子はその準備をどんな患者に対しても分け隔てなく行っており、そこには晶の「どんな患者でも平等に救う」という信念が感じられる。そして、未知子がフリーランスの外科医として教授の論文などの手伝いをしないという契約は、院内の政治や自身の出世ではなく患者のために時間を費やすためでもあったと考えられる。
このように、大門未知子は突如現れた天才ではなく、努力とロジックの上に成り立つ“根拠のある”スーパードクターだった。『劇場版ドクターX FINAL』のラストは未知子が中東の富豪のオペに臨むシーンで幕を閉じたが、これからも多くの患者を救っていくことになるのだろう。願わくば、八木莉可子演じる若き日の大門未知子と晶の物語も見てみたいが、果たして……。
映画『劇場版 ドクターX FINAL』は2024年12月6日(金) より劇場公開。
『劇場版ドクターX FINAL』オリジナル・サウンドトラックは12月11日発売。
かどたひろしによるコミカライズ版『ドクターX』は幻冬舎から発売中。
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