『劇場版ドクターX FINAL』公開
人気ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(2012-) 初の映画化作品となる『劇場版ドクターX FINAL』が2024年12月6日(金) より全国の劇場で公開。初週末で興収6億400万円を記録する大ヒットスタートを切っている。
シリーズ完結編となる本作は、米倉涼子演じる大門未知子と勝村政信演じる加地秀樹の関係にも注目が集まった。加地秀樹はスピンオフドラマ『ドクターY〜外科医・加地秀樹〜』が第7弾まで製作された人気キャラ。シリーズのフィナーレにはどんな結末が待っていたのだろうか。今回はネタバレありで解説&考察していこう。
以下の内容は、映画『劇場版ドクターX FINAL』の結末に関するネタバレを含みます。
Contents
『劇場版ドクターX FINAL』加地秀樹はどうなった?
加地秀樹の現在地
『ドクターX』シリーズにおける加地秀樹といえば、「腹腔鏡の魔術師」という異名で知られるスーパードクターで、世間からの知名度も高い。一方で、大門未知子の登場によって順調なキャリアに揺らぎが見え始め、一時は未知子と同じフリーランスも経験。未知子を「デーモン」と呼び続けているが、互いに外科医としての腕を認め合う作中でも類まれな間柄だ。
『劇場版ドクターX FINAL』では、加地先生は東帝大学病院の総合外科部長になっている。直近の加地の姿が描かれたのは2024年11月30日に放送された『ドクターY〜外科医・加地秀樹〜』第7弾で、2021年を舞台に東帝大学病院外科副部長という立場の加地の姿が描かれた。
外科副部長はドラマ『ドクターX』第7期の前半と同じポジションだが、第7期では東帝大学病院にメディカルソリューション本部が立ち上げられると、加地は蜂須賀本部長のもと、メディカルソリューション本部外科リーダーに就任した。第6期でもニコラス・丹下副院長のもと次世代超低侵襲外科治療担当部長の座に就いたが最終話で解雇。加地が正式に東帝大学病院の外科部長になったのは『劇場版ドクターX FINAL』が初めてのことだ。
加地が外科部長になったのは、ほかでもない海老名敬が一時的に病院長に就任したからだろう。海老名は『ドクターY』第7弾では外科部長の地位にあった。海老名は『ドクターY』第6弾で病院を辞めて青空病院を開いていたが、海老名が娘を大学へ行かすために作った借金を加地が肩代わりした経緯がある。海老名は直後に蛭間に東帝大学病院に呼び戻され、その後に加地も復帰することになっている。
FINAL 加地先生の見どころ
『ドクターX FINAL』でも海老名と加地が揃った姿が見られたのは良かった。『ドクターX スペシャル』(2016) では、右手を怪我して失踪した大門未知子を探して共に山を捜索した仲でもある。一方で、『ドクターX FINAL』では神津比呂人が新病院長に就任したことで、海老名と加地は共に失職の危機を迎えることになる。
神津比呂人は50歳以上の“高齢”の医者を「ゴミ」呼ばわりし、「集団自決もとい集団辞職」を求める。この「集団自決」発言に真っ先に怒りを見せたのは加地だったことは感慨深い。やっぱり意外と常識がある人だということも分かるのだが、ドラマ第1期で48歳だった加地も『ドクターX FINAL』では58〜59歳を迎えており、今ではベテランドクターの代表格でもあるのだ。
一日15時間働くか退職するかを迫るメールに対しては強気な態度を見せるが、結局残留。それでも、終盤にはリストラリストに入れられてしまう厳しい現実が待っていた。もっとも、神津比呂人は弟を救えるドクターXを見つけるために東帝大学病院の院長になったと見られ、瀕死の重体を負ったことからも『ドクターX FINAL』後に東帝大学病院からは去ったものと思われる。
その他に『ドクターX FINAL』では、バリバリ働く未知子の“ドーピング”を疑ってガムシロップを飲み「あまーい」と叫ぶシーンや、神原名医紹介所でベンケーシーとギャノンの喧嘩を見て咄嗟に原守と喧嘩を始めるなど、細かいところで加地先生の見どころが詰め込まれていた。それでもやっぱり、注目すべきは大門未知子とのやり取りだろう。
加地×未知子はどうなった?
『ドクターX』と『ドクターY』での二人
加地秀樹と大門未知子の関係は『ドクターX』と『ドクターY』の見どころの一つだ。当初はいがみ合っていた二人だが、『ドクターX』第2期第8話では未知子が「加地ちゃん」と呼び、『スペシャル』で怪我をした際には「加地先生は私が最も信頼する外科医です」と言い患者に加地の手術を受けるよう勧めたこともあった。
第7期で蜂須賀と微妙な感じになったことを除いては、全く恋愛っ気のない未知子だが、加地だけはちゃんと名前を覚えていたり、『ドクターY』第2期 (2017) 第2話では深夜に未知子から加地にビデオ電話をかけていたりする。電話をかけたのは、フリーになった加地が神原名医紹介所から山梨での深夜当直のバイトを受けたからで、未知子は山梨で堪能できるはずだった「ワインとほうとうの恨み」をぶつけるという理由だけで加地に電話をかけていたのだ。
一方の加地は、『ドクターY』第3期 (2018) のラストでは、教授選に利用されて傷心の中、未知子と晶を訪ねてキューバへ飛んでいる。第4期 (2019) のラストでは、「お礼を言いに」ヒマラヤ山脈まで行って未知子と晶と麻雀を打った。このエピソードでは加地のことを父だと聞かされていた少女が登場したが、結局加地は本当の父親ではなかった。それを聞いた未知子は「本当はパパだったんじゃないの?」と憎まれ口を叩いている。
『ドクターY』第6期(2021) では、六車航平の肝臓移植に際して術式を考える加地が、これまでの未知子とのやり取りを思い返し、「デーモンならどうすんだろ……」と思いを馳せる場面も。ここで加地は未知子に電話をかけそうになる(しかもビデオ通話のボタンをタップしようとしているように見える)が、すんでのところで思いとどまっている。
こうした『ドクターY』での加地秀樹と大門未知子が見せた仲睦まじい姿は、今見返すと全ては『劇場版ドクターX FINAL』のフィナーレへ向けた伏線のようにも思える。ファンの間で大きな盛り上がりを見せた「かじみち」のカップリングは、どんな終着点を見せたのだろうか。
衝撃のラスト、返事は…?
『劇場版ドクターX FINAL』では、ラストで未知子が晶の心臓を比呂人に移植することに。晶の合意を得ていない時点で医師免許剥奪確実の重大な違反行為である。これを特に強く止めたのは加地だ。加地の止め方は、「二度とオペできなくなるんだぞ」という言い方であり、あくまでオペが生き甲斐だった未知子の側に立った主張だった。それでも、加地は晶とも付き合いが長い。「晶さんならこうする」という未知子の言葉には何も言い返せず、結局オペを見守ることになっている。
そして、それ以上の衝撃の展開は晶不在の神原名医紹介所からの請求シーンで飛び出した。加地は院長室にやって来た大門未知子に「大好きだ、結婚してくれ」と告白したのである。その前には未知子がまた遠くに行ってしまうことを海老名らが惜しんでおり、今しかないと思ったのだろう。
晶が死に瀕したことや、未知子が医師免許剥奪の危機に直面したこと、また、自分自身も定年が近づいてきたことも頭をよぎったのかもしれない。だが、未知子はこれを無視。加地もフラれるのを覚悟していたのか、「致しませんくらい言えよ!」とツッコミを入れるのがやっとだった。
加地の恋は成就しなかったと見ることもできるが、未知子が明確に断りを入れなかったと見ることもできる。いろんなステップをすっ飛ばしての「大好き」と「結婚してくれ」、それも皆が見ている前で職場の院長室での告白となると、流石に未知子も正面から受け取ることはできなかったのではないだろうか。この段取りの悪さが加地らしさではあるのだが、少なくとも未知子は加地の想いを知り、その上でプロポーズを「断らなかった」ことで、むしろ今後二人の関係が発展していく可能性は芽生えたと言える。
今後はどうなる?
『ドクターX』第7期では未知子は蜂須賀と良い感じになり、「タコを食べませんか」とサフィリスタン王国に一緒に行く誘いを受けたが、未知子はいつもの寿司屋に行くと勘違いしていたという例もあった。未知子もまた恋愛下手であり、この二人がさらに距離を縮めていくにはもう少し時間がかかるだろう。
思い出したいのは、直近の『ドクターY』第7期で加地が晶に5,000万円の借金を負ったことだ。加地は「100歳になっても返せねぇ」と嘆いていた。債権者の晶さんが意識不明になっている今、加地は借金を代わりに未知子に返していくことになるかもしれない。
『ドクターX』はこれで完結したかもしれないが、スピンオフの『ドクターY』で借金返済のために未知子によって様々な医療現場に派遣される加地の姿は見てみたい。いつか二人の小競り合いが再び見れる日を願いつつ、今は『ドクターX FINAL』を心ゆくまで楽しもう。
映画『劇場版 ドクターX FINAL』は全国の劇場で公開中。
『劇場版ドクターX FINAL』オリジナル・サウンドトラックは発売中。
かどたひろしによるコミカライズ版『ドクターX』は幻冬舎から発売中。
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