『ヴィジョンクエスト』第7話はどうなった?
ディズニープラスで配信中のドラマ『ヴィジョンクエスト』は、『ワンダヴィジョン』(2021)、『アガサ・オール・アロング』(2024) に続く三部作の最終章。『ワンダヴィジョン』で誕生したホワイトヴィジョンとトミーのその後が描かれる。
今回は、最終話目前となった『ヴィジョンクエスト』第7話をネタバレありで解説&考察していこう。以下の内容はネタバレを含むため、必ずディズニープラスで本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『ヴィジョンクエスト』第7話の内容に関するネタバレを含みます。
Contents
『ヴィジョンクエスト』第7話ネタバレ解説&考察
1939年、フィニアス・ホートン
『ヴィジョンクエスト』第7話の冒頭では、1939年が舞台になる。1939年といえば、第二次世界大戦のきっかけとなるナチスドイツによるポーランド侵攻が始まった年で、MCUとしてはトニー・スタークの父ハワード・スタークがスターク・インダストリーズを創業した年でもある。
3年前に息子のジェームズを失ったフィニアスは、屋敷を手放してまであるマシーンの開発を進めていた。フィニアス・ホートンは、映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011) のスターク・エキスポのシーンで名前が登場している。人造人間の展示に「フィニアス・ホートンによる人工人間(The Synthetic Man)」と記されているのだ。
『キャプテン・アメリカ』の舞台は1943年だったので、『ヴィジョンクエスト』第7話はその4年前の物語を描いている。「JIM(ジム)をつくらないと」と言うフィニアスは、フランケンシュタイン博士のように、亡き息子のジェームズ=ジムを自らの手で作り出そうとしているようだ。
このフィニアス・ホートンの動機は、ワンダが『ワンダヴィジョン』でトミーとビリーを生み出したことにも通じる。ワンダは魔法でそれを実現したが、ホートンは科学でそれを実現したのだ。
ジョカスタとヴィジョンのクエスト
一方、ヴィジョンとトミーは前回ジョカスタのナノボットによって重体となったリサを運んでいる。トミーは、ヴィジョンが本当の父親でなくても「別にいい」として、ワンダに共感はできると話す。
ワンダにとってのヴィジョンは、トミーにとってのリサで、孤独だったトミーはリサのおかげで世界を見ることができる、リサを失えば自分を失うと認める。ヴィジョンを失ったワンダがウエストビューで起こした事件にも共感できるというのだ。
フライデーが勇敢にもジョカスタを止めようとする一方、ジョカスタは集めた生体キーとウルトロンが保持していた指紋や眼球などを使った生体キーでカテリーナの顔の3Dスキャンデータでムクドリ・ナノを解放しようとする。最後はジョーの音声認証でロックは開くかに思われたが、最後にもう一つ、パスコードを要求される。まだ全てのピースが揃ったわけではなかったのだ。
最後の鍵は、ジョカスタが忘れた6人目のパートナーのものだという。そこに、これまでヴィジョンの身柄を捕らえようとしていたクライアントと思われる謎の人物が登場。ヴィジョンにはリサを救えるソースコードの在処を示す地図を、ジョカスタには最後の鍵となる奪われた記憶を取り戻すための地図を提供する。
クライアントはヴィジョンに「心を与えたい」と言い、地図には「ブリキ男へ」と記されている。前話でも登場した表現で、『オズの魔法使い』で魔法使いがブリキの男に心を与えることを申し出た展開を踏襲したものだ。
ただし、ヴィジョンはリサを救うために地図を開くとクライアントとの契約が書き込まれ、ソースコードを手に入れた後はクライアントに自分の身柄を引き渡さなければならないという。リサを人質として、クライアントは当初の目的を達成するのだ。
ヴィジョンがこの条件を飲むのは、ワンダがヴィジョンを愛したのと同じように、トミーがリサを愛していると言ったからだ。結果的にヴィジョンはトミーのために、このクエストを受けることになる。
一方、ウルトロンはフライデーに接触。秘密裡にジョカスタを探るフライデーを見逃していたことを明かす。ウルトロンは「黒幕は他にいる」と、クライアントの存在を指摘している。
ヴィジョンの深層心理
ジョカスタが渡されたデータには、ブルックリンのブッシュウィック街の住所が記されていた。ブルックリンといえば、スターク・エキスポを訪れたスティーブ・ロジャースやバッキー・バーンズの故郷でもある。
ヴィジョンの方は、今回のクエストのためには膨大なエネルギーを賄えるバッテリーが必要で、パラディンの手を借りることに。パラディンが取り出したバッテリーは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) でコーヴァス・グレイヴがオリジナルのヴィジョンを刺した刃物を、ワカンダがバッテリーとして改造したものだった。ワカンダから色々と流出しすぎでは……。
ヴィジョンとジョカスタたちはそれぞれソースコードのありかへと向かう。ジョカスタとウルトロンは、ヴィジョンの精神世界におけるウルトロンの監禁部屋のモデルとなった部屋にたどり着く。ジョカスタにも、ヴィジョンにも、コードの中にこの部屋の存在があったのだ。
ブルックリンの住所にあったのは、かつてジョカスタが過ごしていた家だったようだ。ジョカスタは、ジョーがスターク・インダストリーズ賞を受賞した時の記憶を見る。この受賞は、「神経科学と人工知能に秀でたニューヨークの二人組」と紹介されている。ジョカスタには研究の相棒と呼べる存在がいたのである。
一方、ヴィジョンの深層心理には、まだウルトロンの姿があった。ヴィジョンは、オリジナルのヴィジョンがウルトロンを救ったのは慈悲からではなく欲求からだったと思い至っている。ここでウルトロンが言う「家族は永遠」という言葉は、『ワンダヴィジョン』でのワンダのセリフを引用したものだ。
さらにヴィジョンは、ビリーとトミーが駆け抜けた先でオリジナルヴィジョンと遭遇。ヴィジョンの深層心理にはオリジナルのヴィジョンもいたのである。オリジナルのヴィジョンは、今のヴィジョンが思いやりに欠け、現実から目を背けている、オリジナルを崇高な存在として置いているのは、自分がそこに登らなくて済むからだと指摘する。
このセリフを聞くに、オリジナルのヴィジョンも平気で高潔な存在でいられたわけではなく、多くの人間と同じように、より善くあろうと努力していたのだろう。それはつまり、今のヴィジョンもそうなれるということだ。何より、オリジナルのヴィジョンが慈悲ではなく欲求によってウルトロンを生かしていたという事実が、過去のヴィジョンと今のヴィジョンがそう変わらない存在であることを示している。
オリジナルは今のヴィジョンに、「お前がヴィジョンだ」と告げる。ワンダのヴィジョンがオリジナルの身体に眠っていた記憶を解放し、ビリーとトミーとワンダと過ごしたヘックスの中での記憶も与えた。確かに今のヴィジョンは、全ての記憶を持つヴィジョンである。
ジム・ハモンドとフィニアス・ホートン
だが、ヴィジョンは臆病だから恐れて記憶をしまい込んだと指摘されてしまう。パニックになったヴィジョンは元の世界に戻ろうとするが戻れず、現実世界ではリサが暴走。今のヴィジョンはとにかく進み続けるしかない。
ヴィジョンが進んだ先で出会ったのは、燃える男、ジムだった。ヴィジョンが訪れていたのは、最初の人工人間であるジム・ハモンドを生み出したフィニアス・ホートンの屋敷だったのだ。
ジム・ハモンドが「我々の第1号」とされるのは、最初のシンセゾイドという作中の設定と、『Marvel Comics #1』(1939) に登場してヒューマン・トーチと呼ばれたジム・ハモンドが、マーベル・コミックにおける最初のヒーローとされていることをかけた表現だ。ジム・ハモンドはマーベルヒーローにとっての第1号でもあるのだ。
ジムは「シンセティック・マン(人工人間)」とも呼ばれている。こちらは映画『キャプテン・アメリカ』における展示の表記を踏襲したものだ。なお、ジムの顔はヴィジョンと同じで、ここに現れるフィニアス・ホートンと合わせて、ポール・ベタニーはこのシーンで1人3役を演じている。
ヴィジョンは「世界を救うコード」が欲しいと言うが、ジムは、「息子を失い、寂しさを紛らわせるために作ったコード」と言い換える。妻と娘はホートンのもとを離れたようで、ホートンとジムの関係もうまくいっていない。ジムはホートンを父と認めていないのだ。この流れはワンダに対するビリーの態度を想起させる。
ホートンは、ジムは喪失の痛みを感じないように、恐れを感じないよう造ったと明かす。ゆえに恐れ知らずのジムは命をいくつも救うことができたという。ちなみに原作では、ジム・ハモンドの燃える身体は、酸素に触れるだけで発火する素材と構造となっており、炎をコントロールできるという設定になっている。
ヒーローになったジムだが、ジムは感じることを切望したという。そして、愛する人ができ、ジムは急激なスピードで感情を手に入れ、制御不能になったという。最後には、ホートンがジムの恋に口を出して喧嘩になり、ジムの炎によって二人は燃え尽きたという。ジムは「罪の意識と悲しみで燃えた」と回顧している。
「お前は誰だ」の答え
そんなジムだが、ソースコードは持っておらず、それはヴィジョンの中にあるという。現実では、目覚めて暴走するリサがパーツを背中に取り付けて4本腕で戦う。原作コミックではリサは魔法の力で4本腕で戦うが、『ヴィジョンクエスト』では機械由来の設定に変更されている。
ジムは、自身が持てなかった「恐れ」は「贈り物」だとヴィジョンに告げる。恐怖があるからこそ、自分にとって大事な存在が分かるのだという。確かに、この人を失いたくないという恐れや恐怖は、その人への愛の裏返しだとも言える。
ヴィジョンは、トーマスもトミーも自分の息子だという指摘を拒否する。その理由は、ヴィジョンが抱える恐怖だった。その事実を受け入れたなら、ヴィジョンはビリー、トミー、ワンダという大事な家族を失ったという残酷な真実を受け入れることになる。決して癒えない、大きな喪失。ヴィジョンはそれを背負うことを恐れていたのである。
ここまでの『ヴィジョンクエスト』におけるヴィジョンは、確かにワンダの死にほとんど言及せず、作品としても息子のトミーの方に焦点が当てられていた。その背景には、ヴィジョンがワンダを失った張本人なのだという事実を受け入れたくないという想いがあったのだ。
この悲しみを受け入れ、ヴィジョンは初めて自分がヴィジョンであることを受け入れる。「お前は誰だ」と問われ、「ヴィジョンだ(I am Vision)」と答えるのだ。正体暴露ではないが、MCUでは「I am Iron Man」「I am Daredevil」に続く宣言だ。
『ヴィジョンクエスト』第2話では、パラディンと戦うヴィジョンが、自分はかつての気高いヴィジョンとは違うということを宣言するために「I am not Vision」と告げた。そこから5話、ついにヴィジョンは自分がずっとヴィジョンだったと認めたのである。
鏡に映るホワイトヴィジョンはヴィジョンの姿になり、その額はマインドストーンと同じ黄色に光る。現実に戻ったヴィジョンはコードを起動し、リサを救ったのだった。
愛する存在に祝福を
ヴィジョンは契約を履行するため、パラディンによってクライアントの待つロンドン郊外へと連れて行かれる。ヴィジョンは最後に、トミーにメッセージを残し、二人が親子であることを認めると伝える。
ヴィジョンは、真実が最も恐ろしい脅威だが、その真実と向き合う勇気をトミーがくれたと伝えると、S.W\.O.R.D.の機密情報である『ワンダヴィジョン』第1話の映像が流れる。トミーはワンダとヴィジョンの希望から生まれ、魔法のおかげでトミーと出会えたと話すと、「君を愛している」と伝えたのだった。
これまで、ワンダが魔法の力で生み出した存在は、「偽物」「幻影」として扱われてきた。だが、ワンダの最大の理解者であるヴィジョンは、それを「希望」の産物であり、「魔法のおかげ」で家族と出会えたと肯定する。世界がその存在を否定しても、愛する人がその存在を祝福すればよいのだ。
「我らが平和を」の起源
ヴィジョンが連れてこられたのは、かつてのホートン博士の屋敷だった。ヴィジョンたちは、クライアントがトニー・スタークやブルース・バナーより前にコードを知っていたことを指摘。一方のジョカスタも訪れていた部屋でかつての自分の姿を見ている。
ジョーは、トニー・スタークは武器商人であり、AIはもちろん、ネスト計画も売る気はないと語っている。ネスト計画はおそらく前話で明かされた、ナノボットによる人類補完計画のことだろう。
そして、ジョーが話をしていた相手が明らかになる。ジョーと二人でネスト計画を実行しようとしていた人物は、ウルトロンと同じ見た目を持つ人間だった。さらに「スタークに『我らが平和』を」と語る。これは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) でウルトロンが初登場時に言ったセリフである。
「我らが平和を」は、第4話でもジョカスタが口にしており、ウルトロンの起源にジョーが関わっている可能性が示唆されていた。第7話では、ウルトロンの起源と思われる人物が登場。「我らが平和を」はこの人物とジョーの間で使われていたものであったことが明らかになった。それも、“武器商人”だったトニー・スタークに対抗する言葉として使われていたというのは皮肉なものだ。
ジョカスタは全ての記憶を取り戻すが、現実世界でジョカスタとヴィジョンは共に、現れたエージェントたちによって機能を停止される。契約を履行したパラディンはバンで去ろうとしたが、ロケットランチャーで爆破。まぁ、パラディンはプランBを用意していそうだが。
ウルトロンは、ウルトロンが黒幕だと勘づいたフライデーをバルコニーから突き落とす。一方で、フライデーをデジタルの海に逃したようにも見える。
ヴィジョンからトミーへの、「私が戻らなくても覚えていてくれ。ずっとそばにいる。家族は永遠だから」というメッセージが読み上げられると共に、現実世界に現れたクライアントがウルトロンと同じ姿をしていることが明かされ、ドラマ『ヴィジョンクエスト』第7話は幕を閉じている。
『ヴィジョンクエスト』第7話ネタバレ感想&考察
「愛を貫いている証拠」
『ヴィジョンクエスト』第7話では、ホワイトヴィジョンがついに自らがヴィジョンであることを認めた。崇高だと思われていたオリジナルのヴィジョンにも欲求があったことを認め、ホワイトヴィジョンが恐怖を抱いていることを逆説的に“本物”である根拠とした脚本は見事だった。
ジム・ハモンドは恐怖を抱けなかったがゆえに大切な存在であったはずのホートン博士とともに焼け死んでしまった。一方のヴィジョンは、恐怖を抱けるからこそ、大切な存在のことを認識できる。
ドラマ『ワンダヴィジョン』第8話では、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) の時期に、ピエトロを失い気を落としていたワンダにヴィジョンが「嘆くのは愛を貫いている証拠なのでは?」と声をかけた。ヴィジョンが家族の存在を認め、ワンダたちの死を嘆くのは、まさに愛を貫いている証拠なのだ。
その時ヴィジョンは、「(今まで私には)愛する者がいなかったから失う悲しみもなかった」とも話している。今のヴィジョンは愛する者がいて、失う悲しみがある。だからトミーや、トミーが愛するリサを死なせないように、自分が犠牲になってでも守ろうとするのだ。
最終回はどうなる?
あっという間に最終回となる第8話を迎える『ヴィジョンクエスト』。第7話では、ヴィジョンを追っていたクライアントの正体がウルトロンと同じ見た目の人物であることが明かされた。
あれはおそらくジョーとパートナーの関係にあった人物なのだろう。あの人物がジョーの精神をシンセゾイドにアップデートしたのだ。さらにウルトロンの基礎を作った人物でもあると考えられるが、トニーとブルースがウルトロンを作り出した元のデータはヒドラが開発していたものだ。2008年にジョーが亡くなってから7年後、あの人物はヒドラで研究を続けていたのだろうか。
ヴィジョンを必要とする理由は、ジョカスタが最後のパスコードを必要としたように、ナノボットの利用には最終的にヴィジョンが必要なのかもしれない。現状、これを止められるのはビリーとウルトロンくらいだが……。
また、クライアントがヴィジョンに「心を与える」と言っていた理由もまだ謎だ。『オズの魔法使い』を引用する形で、ビリーが黒幕ではないかと思わせる展開は、おそらくミスリードだったのだろう。
だが、そうすると『アガサ・オール・アロング』のラストでトミーを探しに出かけたビリーの物語はどうなるのかという点も気になるところ。ヴィジョンはMCU世界に復帰して『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(2026) に参戦するのか、そして、ワンダの復活はあるのか、『ヴィジョンクエスト』最終回は必見だ。
ドラマ『ヴィジョンクエスト』はディズニープラスで独占配信中。最終回第8話は2026年11月11日(水)に配信される。
ヴィジョンのコンセプトアートも収録された『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』はKADOKAWAより発売中。
第5話&第6話の解説&考察はこちらから。
第3話&第4話の解説&考察はこちらから。
第1話&第2話の解説&考察はこちらから。
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