第1話&第2話ネタバレ解説&考察『ヴィジョンクエスト』ウルトロンとヴィジョンのその後、黒幕の正体は? | VG+ (バゴプラ)

第1話&第2話ネタバレ解説&考察『ヴィジョンクエスト』ウルトロンとヴィジョンのその後、黒幕の正体は?

©️2026 MARVEL

ドラマ『ヴィジョンクエスト』配信開始

MCUドラマ最新作『ヴィジョンクエスト』が2026年10月14日(水) よりディズニープラスでの配信を開始した。本作は、ドラマ『ワンダヴィジョン』(2021)、『アガサ・オール・アロング』(2024) に続く三部作の最終章に位置付けられている。

2026年のMCUドラマでは最後の作品になると見られている『ヴィジョンクエスト』。大型クロスオーバーイベントである映画『アベンジャーズ/ドゥームズデイ』(12月18日公開) を前にどんな物語が描かれるのだろうか。今回は、同時配信された第1話と第2話をネタバレありで解説し、考察していこう。なお、以下の内容はネタバレを含むため、必ず本編をディズニープラスで視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、ドラマ『ヴィジョンクエスト』の内容に関するネタバレを含みます。

『ヴィジョンクエスト』第1話ネタバレ解説&考察

これまでのヴィジョンと今のヴィジョン

ドラマ『ヴィジョンクエスト』は、少なくとも『ワンダヴィジョン』の後が舞台になっている。冒頭では、ヴィジョンが『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015) でウルトロンによって創られたこと、善き人間、トニー・スタークとブルース・バナーが内面を作ったことに触れられる(ちなみにヴィジョンを起動したのはソーの雷で、意識の源流はトニー・スタークのサポートAIだったジャーヴィスだ)。

そしてヴィジョンはワンダと出会い愛を知ったこと、本物の感情を得たがサノスに殺されたこと、『ワンダヴィジョン』でワンダによって新たに作り直されたことにも言及される。『ワンダヴィジョン』でワンダのカオス・マジックで生まれたヴィジョンはワンダの結界“ヘックス”の中でしか活動できなかったが、政府機関のソード(S.W\.O.R.D.)はオリジナルのヴィジョンの遺体を使って白いヴィジョンを造り出していた。

カオス・マジックにより一時的に復活したヴィジョンは、この白いヴィジョンに過去の記憶を与え、白いヴィジョンは空に飛び去っていった。『ヴィジョンクエスト』で描かれるのは、この白いヴィジョンのその後である。

ヴィジョンは人間の姿をとって、スコットランドのエジンバラ(エディンバラ)にあるバーで働いていた。エジンバラといえば、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018) でワンダとヴィジョンが過ごしていた場所だ。

そこでヴィジョンは“シャーウッド・エリス”という偽名を使い、フィオナという女性と新たな関係を築きつつあったが、ワンダについては「山の重みで潰れました」と言及。ワンダは映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022) で、ワンダゴア山を崩落させて自分ごとダークホールドを葬り去った。

そしてバーには、ハートで囲まれたW+V(=ワンダ+ヴィジョン)の刻印があった。かつてオリジナルのヴィジョンとワンダが訪れたバーだったのだろう。今のヴィジョンはその記憶を辿りながら、これから生きる道を模索しているらしい。

人間の姿で登場したAIたち ヴィジョンが店を出ると、舞台は一転して仮想空間へ。そこにはダミー、U、ジャーヴィス、フライデイ、イーディスといったこれまでのMCUに登場してきたAIたちが人間の姿で暮らしている。

D.U.M.-E(ダミー)とU(ユー)は、アイアンマンことトニー・スタークをヘルプしていたロボットアームだ。『ヴィジョンクエスト』ではダミー役をヘンリー・ルイス、U役をジョナサン・セイヤーが演じている。

J.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)は意識がヴィジョンにアップロードされたトニーのアシスタントAIで、元の声はヴィジョン役のポール・ベタニーが演じていた。今回ジャーヴィスを演じるジェームズ・ダーシーは、トニーの父ハワードの執事でジャーヴィスの名前の元ネタとなったエドウィン・ジャーヴィスを『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019) で演じている。

F.R.I.D.A.Y.(フライデー)はジャーヴィスがヴィジョンになった後にトニーのアシスタントを務めたAI。E.D.I.T.H.(イーディス)はトニー・スタークがピーター・パーカーに遺したアシスタントAIだ。フライデー役はオーラ・ブレイディ、イーディス役はエミリー・ハンプシャーが演じる。この二人については、これまでAIの声を演じてきたキャストが人間の姿で登場している。

『ヴィジョンクエスト』では、ダミーとUはメンテナンスAI、ジャーヴィスはセキュリティAI、フライデイは社交AI、イーディスはレクリエーションAIとして登場。それぞれが、ソードに追われていないか、フィオナとのやりとりについてなど、相談に乗る形でヴィジョンを支えている。

なお、ヴィジョンが他のAIたちと話しながら読んでいる新聞には「テック界の巨人殺害される」「盗まれたアダマンチウムの捜索続く」という見出しが確認できる。MCUにおけるテック界の巨人といえばトニー・スタークだが、また別の巨人が殺されたということであれば、誰かが技術の進歩(ヴィジョンやウルトロンのような新たな異端AIの誕生)を止めようとしているのかもしれない。

一同はヴィジョンの量子プロセッサの中にいるようだが、もうひとり、ここの住人がいた。ジェームズ・スペイダー演じるウルトロンである。「ゲス野郎」として紹介されるウルトロンは、元はヒドラのストラッカーが開発していたAIで、トニーが平和利用を試みたが失敗、人類に反旗を翻してアベンジャーズと戦うことになった。

ヴィジョンはシアターで「ヴィジョン物語」としてヴィジョンの記憶を観ることで、その時の感情を理解しようとする。今のヴィジョンは人間らしさを掴めないでいるのだ。しかし、ウルトロンがソードのハッキングデータから『ワンダヴィジョン』の映像を流し、それを邪魔するのだった。今のヴィジョンはヘックスのヴィジョンの記憶を偽物だと考えているようだ。

ちなみにこのシーンでフライデイが読んでいる本は、裏表紙に「イド」、背表紙に「スーパー(超)」、表紙に「エゴ(自我)」と書かれている。「超」と「自我」を組み合わせれば「超自我」となるのだが、これはフロイトが提唱した人間の心を構成する三要素「快楽原則(id)」「現実原則(ego)」「道徳原則(Super-ego)」を示したものとなっている。AIたちが人間の心を理解しようとしていることが分かる。

ウルトロンは生きていた?

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、ヴィジョンはウルトロンの意識をネットワークから遮断し、最後にはヴィジョンのマインドストーンの力でウルトロンは破壊された。ウルトロン曰く、この時ヴィジョンはウルトロンのデータをこの「牢獄」にコピーしていたという。

アニメ『ホワット・イフ…?』(2021-) シーズン1第8話では、もしもウルトロンが予定通りヴィジョンの身体に意識をアップロードできていたら、というifの物語が描かれた。その中で、ヒドラの研究者アーニム・ゾラの脳内データ(AI)にコピーが存在することが明かされた。オリジナルのヴィジョンは何らかの意図があって、ウルトロンのコピーを作り、完全には消し去らなかったのだろう。

ウルトロンとヴィジョンは問答を続ける。今のヴィジョンはウエストビューもワンダヴィジョンも幻だったと考えており、ウルトロンはヴィジョンが鬱積した感情を処理できず、この頭脳空間を作ったと指摘する。

ウルトロンは嫌なことを指摘するが、そこには聡明さも現れている。「負けた時は相手を理解するのが一番だ」と、人間のグロテスクさとともに美しさも理解しようとしているウルトロンには、潔さもある。その聡明さと現実主義的な率直さは、生みの親でもあるトニー・スタークを想起させもする。

一方、かつてのヴィジョンのように人間らしさを手に入れようとするヴィジョンだが、今のヴィジョンにはワンダがいない。ヴィジョンに生きる意味を与えたのはワンダだった。「感情が人間を作る」という点が『ヴィジョンクエスト』のテーマの一つになりそうだ。

あくまで今は観察するだけにするというヴィジョンだが、ウルトロンは「世界を眺めていると世界に気づかれるぞ」と忠告する。するとウルトロンはデータの伝書鳩を使い、ヴィジョンの居場所を外部へ送信。ヴィジョンにかけられた懸賞金を狙うパラディンがエディンバラへ現れるのだった。

パラディン襲来

パラディンの部下たちはパブを襲撃し、店主のフィオナが銃撃によって死亡してしまう。ヴィジョンは襲撃者たちを倒すが、かつてのヴィジョンと比べるとかなり攻撃的な姿を見せている。やはり以前のオリジナルのヴィジョンは、ウルトロンを生かしていたことからも、慈悲の心があったと言える。

ヴィジョン襲撃をパラディンに依頼したのは声を変えた謎の“クライアント”。その正体は謎に包まれており、『ヴィジョンクエスト』の考察要素の一つになっている。クライアントは通信にソードの暗号化技術を使っていることから、ソードの関係者であるか、ソードの技術にアクセスできる人物だろうか。

ウルトロンは、自分がヴィジョンの居場所を漏らしたと認める。ヴィジョンを危険にさらすことで、外の世界へ戻し、生きていることを実感させようとしたのだ。

ヴィジョンはウルトロンから外部と通信する手段を取り上げ、今後どうするべきかをほかの人工知能たちと話し合う。一方、パラディンはソードが保管していたウエストビュー事件の記録を調べ、ロンドンで暮らすトーマス・シェパードという青年の存在にたどり着く。

トーマス・シェパードとは誰か トーマスという名前の愛称は“トミー”であり、この人物がかつて『ワンダヴィジョン』でワンダが作り出した双子のビリーとトミーの片割れであることが分かる。『アガサ・オール・アロング』では、ビリーはワンダがヘックスの結界を解いた後、その魂がウエストビュー近郊で自動車事故で死亡したばかりの青年の身体に入り込んでいたことが明らかになった。

ビリーは母のワンダ譲りの強大な魔法の力を持っており、『アガサ・オール・アロング』ではビリーはトミーの魂もプールで溺れていた青年の身体に移していた。同作のラストでは、ビリーとアガサはトミーを捜す旅に出ている。

トミーは意外にもロンドンに住んでおり、リサという仲間と窃盗や詐欺を繰り返していた。パラディンはあっという間にトーマスを見つけ出して捕らえると、ヴィジョンに息子を捕まえたという内容のメッセージを送る。自分にはワンダのように生きる意味を与えてくれる存在がいないと思っていたホワイトヴィジョンだったが、家族の存在が示唆されて、『ヴィジョンクエスト』第1話は幕を閉じている。

『ヴィジョンクエスト』第2話ネタバレ解説&考察

1年前のトミー

『ヴィジョンクエスト』第2話は、舞台が1年前に遡り、存在しないはずのヘックスでの記憶に混乱するトミーが、セントメイビンズ精神療養所へ移送された経緯が描かれる。トミーもヴィジョンも、過去の記憶は映像として持っているが、自分が何者なのか分からないという意味では似た状況にあると言える。

トミーは移送車の中で強迫的窃盗症だと言うリサと出会う。一方のトミーは里親のもとで育ったというが、うまくいかずに孤独に暮らしていた。「里親」は英語では「フォスター」となっており、トミーは身寄りのない子どもを政府の援助を受けながら一時的に預かるフォスター制度に入っていたことが分かる。

看守から電流を流されたトミーは覚醒し、手が小刻みに振動するスーパーパワーを得る。トミーはまだこの力の真価を理解していないようだが、ワンダの兄でトミーの叔父にあたるクイックシルバーことピエトロ・マキシモフのスピード能力が遺伝していることが示唆されている。『ワンダヴィジョン』では子ども時代のトミーが高速移動を使いこなす姿が描かれていた。

トミーは振動能力を活用してリサと共に移送車からの逃亡に成功。そこから1年はリサと共にロンドンのストリートで金を稼いできたようだ。

「嘆くのは愛を貫いている証拠」

一方、ロイズ(Roy’s)電機という店に本体を置いているヴィジョン。この店の看板には「1968年開業」と書かれているが、作家のロイ・トーマスが1968年にヴィジョンというキャラクターを生み出したことへのトリビュートだと思われる。

AIたちは賞金稼ぎのパラディンについての情報を共有する。パラディンは無数にいて代々継がれてきた存在だという。ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021) から登場しているマドリプールでも活動していたようだ。

パラディンは、トミーをセントメイビンズ精神療養所へ連行。ヴィジョンはパラディンから送られたトーマスの事情聴取映像を見るが、ウエストビューの外に息子が存在できるはずがないと疑っていた。しかし、トーマスは「嘆くのは愛を貫いている証拠」という言葉を口にしていた。

この言葉は、ドラマ『ワンダヴィジョン』第8話で描かれた、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016) の時期に、ピエトロを失い落ち込むワンダにヴィジョンが伝えた言葉だ。全文は「愛するものがいなかったから失う悲しみもなかった。嘆くのは愛を貫いている証拠なのでは?」である。つまり、この言葉がヴィジョンからワンダに伝えられたのは、トミーが生まれる前のことなのだ。

それでも、トーマスがヴィジョンを父親として記憶している可能性を知り、ヴィジョンは要求に応じてパラディンに接触することに。だが感情がないというヴィジョンはトミーが人質になっていても動じる様子を見せない。

気高いヴィジョンを「昔の私」とした上で、「私はヴィジョンではない(I am not Vision)」と言い切り、パラディンを叩きつけるのだった。「I am Ironman」「I am Daredevil」の真逆を行く、アイデンティティの否定だ。

「テセウスの船」の意味 ヴィジョンはウルトロンに、かつてのヴィジョンの重みを感じるだけで、その心情を持つことはできないと訴える。そこでウルトロンが持ち出すのが「テセウスの船」の話だ。テセウスの船とは、一隻の船の部品を少しずつ交換し、最終的にすべての部品が入れ替わった場合、それを元と同じ船と呼べるのかという思考実験だ。さらに、取り外した古い部品からもう一隻の船を組み立てた場合、どちらが本物なのかという問題も生じる。

『ワンダヴィジョン』最終話で二人のヴィジョンはこの「テセウスの船」について議論を交わしている。だが、ウルトロンはこの議論からは大事な観点が抜け落ちていると指摘する。ギリシャ神話の英雄テセウスは、子ども達を助けるためにミノタウロスの退治に乗り出し、助けられた子ども達は大人になってもテセウスの船の再建造を続けたという。

つまり、そもそも人々からの敬意がなければ、すべての部品が入れ替わるほどに再建され続けることはないということだ。ヴィジョンもまた、ワンダから愛されていたが故に創り直され、人類の守護者としてソードに再建された。敵対するパラディンですら、ヴィジョンは子どもを見捨てない聖人だと思ってトミーを誘拐している。

そしてウルトロンから、「子どもを拐われてただの船でいるな、迷わず王になれ」という名言が飛び出す。あんな大ヴィランだったのに、好感度を上げられると困ってしまう。

アダマンチウムの銃弾 この言葉を受けたヴィジョンは、トーマスが監禁されているセント・メイビンズへ。職員がヴィジョンを待ち伏せしていたことを示す要素の一つとして、腕時計が「ミリタリータイム(24時間仕様)」になっていることが指摘されているが、米国では「13時〜23時」という数え方をするのは軍人などの専門職の人々で、民間人は「am/pm」を使うという習慣がある。

ヴィジョンは敵兵達をどんどんレーザービームで殺す冷徹さを見せるが、肝心のトミーの部屋ではEMP(電磁パルス)のせいで能力を使うことができない。それでも、トミーの振動能力でドアを開けて脱出に成功するが、そこに登場したパラディンはアダマンチウムの弾を使ってヴィブラニウムでできたヴィジョンの身体を破壊していく。

『ヴィジョンクエスト』第1話では、ヴィジョンが読んでいた新聞にアダマンチウムが盗まれたというニュースの見出しが書かれていたが、パラディンがそれを手に入れていたのだろうか。MCUのメインユニバースであるアース616におけるアダマンチウムは、映画『キャプテン・アメリカ/ブレイブ・ニュー・ワールド』(2025) で初めて登場している。

同作では、映画『エターナルズ』(2021) で海上に出現したティアマットの身体から採取できる万能な鉱物として登場。映画『デッドプール&ウルヴァリン』(2024) では、別のアースでデッドプールの刀とウルヴァリンの骨格として登場している。

ラストの意味は?

二人は施設の外に出ることはできたものの、ヴィジョンは重傷を負って逃げ切ることはできないと悟る。トミーは「僕の何かだ、置いていかない」と一人で逃げることを拒絶するが、ヴィジョンは「逃げるんだ、いいね?」と父親のように呼びかけてトミーをこの場から離れさせる。

ヴィジョンは死にかけるが、ジャーヴィスが自身のコードを削除、処理パワーを振り分けることでヴィジョンと他のAIを救う。重いデータを削除してメモリを軽くする、そんなイメージだろう。ジャーヴィスは「家族は永遠、戦うに値する」というヴィジョンの“兄”としての言葉を残し、崇高な自己犠牲を払ったのだった。

ヴィジョンが重傷を負った際に外に出ていたウルトロンは、ジャーヴィスについて「いい奴だったな」とヴィジョンに語りかける。と、そこにトミーが車で現れると、追っ手が迫る中ヴィジョンを連れて逃走に成功する。

「聞き分けがない」と言うヴィジョンに、ウルトロンは「父親に似たな」と返しているが、英語では「Like father, like son=この父にして、この子あり」ということわざを口にしている。なんだかおしゃれで憎めない、かつちゃっかり車に一緒に乗っている新生ウルトロンの姿を映し出して、『ヴィジョンクエスト』第2話は幕を閉じている。

『ヴィジョンクエスト』第1話&第2話ネタバレ感想&考察

アイデンティティと他者とのつながり

ドラマ『ヴィジョンクエスト』第1話と第2話では、ヴィジョン誕生の要因であるウルトロン、ヴィジョンの息子から転生したトミーと、自分が何者か分からないヴィジョンの物語が描かれた。親子3代の話のようで、血のつながった親子関係ではなく、そもそも下の二人がアイデンティティに疑問を抱いているという状態だ。

それは例えばドラマ『エコー』(2024) で描かれたような民族としてのアイデンティティと家族の絆の話とも異なるし、「ガーディアンズ・ギャラクシー」シリーズのはぐれもの同士の絆の話とも異なる。自分は何者かと問いながら、他者との関係を見出していくという点では共通するが、ヴィジョンとトミーがどこに依って立つ要素を見出すのかというのは注目ポイントになるだろう。

『ヴィジョンクエスト』第1話の原題「No Strings」は、ディズニー映画『ピノキオ』(1940) の楽曲のタイトルなどにも使われる、「もう糸はいらない」という意味の言葉だ。今のヴィジョンは目的も使命も持たない自由な状態であるがゆえに、依拠するものもない。唯一過去のヴィジョンの記憶だけが拠り所だが、共通の感情が持てないという困難に直面している。

『ヴィジョンクエスト』第2話「テセウス」では、ウルトロンがそんなヴィジョンに「テセウスの船」ではなく「テセウス」になれと説く。使命を持ち、他者と繋がり、そこでようやく「自分は本物か/何者か」と問うことができる。ウルトロン、やっぱり賢い。

同じ問題はトーマスにも当てはまる。体と以前の人生はトーマス・シェパードのものだが、そこにトミー・マキシモフの魂と記憶が加わっている。トーマスとトミーのどちらが本物なのか、一方がもう一方へ置き換わったのか、それとも二人が合わさって新たな人物になったのかは分からない。

『ヴィジョンクエスト』第1話&第2話は、ヴィジョンとトーマスを親子として出会わせると同時に、同じアイデンティティの問題を抱えた二人を並べて物語をスタートさせている。アガサとビリーを出会わせた『アガサ・オール・アロング』と近くもありつつ、異なるアプローチで『ワンダヴィジョン』トリロジーの最終章を描いていくようだ。

クライアントは誰?

『ヴィジョンクエスト』第1話と第2話で残された最大の謎は、パラディンへヴィジョンの捕獲を依頼したクライアントの正体だ。パラディンの目的はヴィジョンを生け捕りにすることのようで、殺すことが目的ではないようだ。誰がクライアントであり得るだろうか。

ウルトロンはヴィジョンを外の世界に出すためにパラディンに情報を提供したことは認めたが、クライアントの正体であることは否定している。だが、第2話まででは良い奴すぎて、裏の目的があるように思えてならない。

アニメ『ホワット・イフ…?』では、ヴィジョンの身体を手に入れたウルトロンは地球上の生命を全て破壊し、インフィニティ・ストーンも6つ揃えて、全ての惑星を破壊、他のユニバースにも侵攻を始めた。もっとも、第1話でウルトロン自身が語っていた通り、アース616のウルトロンはアベンジャーズに敗れたことによって改心したのかもしれないが……。

クライアントの正体として一番怪しい人物はビリーだろう。『アガサ・オール・アロング』の最後に霊体となったアガサと共にトミーを探す旅に出たビリーは、パラディンを雇ってトミーに近づいているのかもしれない。ただし、直接トミーを捕まえようとしていないことと、パラディンのトミーにトラウマを植え付けるようなやり方は、やり過ぎな感がある。

一方で、パラディンは第1話で「この世界は科学だけでは測れない」として「魔法使いも魔女もいる」と例を挙げており、これは依頼主のビリーとアガサを指していたとも考えられる。もしくは、ワンダが生きていて、オリジナルとのつながりがどれくらいあるか分からないホワイトヴィジョンをとりあえず無理矢理にでも捕獲する依頼をパラディンに出したという可能性もあるだろうか。ワンダなら依頼しなくても自分でやってしまえるだろうけれど……。

ヴィジョン、トミー、ウルトロンの行先は、そしてクライアントの正体とは。『ヴィジョンクエスト』の全8話を引き続き追いかけていこう。

ドラマ『ヴィジョンクエスト』はディズニープラスで独占配信中。第3話&第4話は2026年10月21日(水)に配信される。

ディズニープラス

ヴィジョンのコンセプトアートも収録された『マーベル・スタジオ:ジ・アート・オブ・ライアン・メイナーディング』はKADOKAWAより発売中。

【ネタバレ注意】『アガサ・オール・アロング』最終回のネタバレ解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『パニッシャー:ワン・ラスト・キル』の解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『デアデビル:ボーン・アゲイン』シーズン2最終回の解説&考察はこちらから。

【ネタバレ注意】『ワンダーマン』の解説&考察はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
お問い合わせ

関連記事

  1. 人気ゲーム『Fallout』実写ドラマのファーストルック公開 グールやパワーアーマーの画像解禁

  2. 『イカゲーム』シーズン3が2025年配信決定、ファイナルシーズンへ 一方で新シリーズ製作の報道も

  3. シーズン2第3話ネタバレ解説『ロキ』シカゴ万博の意味、ミス・ミニッツとラヴォーナの秘密とは 考察&感想

  4. 【ネタバレ】ドラマ『ロキ』ミス・ミニッツの最終話での秘話を声優のタラ・ストロングが語る