“怪獣づくり”の難しさも…『ゴジラ-1.0』山崎貴監督と『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が特別対談 | VG+ (バゴプラ)

“怪獣づくり”の難しさも…『ゴジラ-1.0』山崎貴監督と『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が特別対談

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『ミッキー17』ポン・ジュノ監督が山崎貴監督と対談

映画『パラサイト 半地下の家族』(2019) で第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドール、第92回アカデミー賞®作品賞を含む4部門を受賞したポン・ジュノ監督。その最新作である映画『ミッキー17』が2025年3月28日(金)より日本で劇場公開を迎えた。

世界興行収入は1億2,200万ドルを突破しており(Box Office Mojo調べ ※4月7日(月)時点)、まだまだ注目の『ミッキー17』。この度、『パラサイト 半地下の家族』 で第92回アカデミー賞®4部門受賞のポン・ジュノ監督と、『ゴジラ -1.0』で第96回アカデミー賞®視覚効果賞受賞の山崎貴監督の特別対談映像が到着した。

最初に口を開いた山崎貴監督は、「ちょっと打ちのめされましたね、僕も次の次の映画をアメリカで撮る事になっているのですが、こんな作品ができてしまうとやたらハードルが高くなってしまって本当に迷惑だなと思いました」と思わず苦笑いする。

ポン監督がナチュラルな日本語で「すみません」と笑顔で応じ、興味津々に「次の次に撮るアメリカの作品がどのようなものか気になります。怪獣ものですか?」と問いかけると、「怪獣…ではないです。が、大きなVFXをたくさん使う映画になります」と明かすと「ほんとー」とリアクション。

ロバート・パティンソン演じる2人のミッキーを描く映像表現と並んで、『ミッキー17』の大きな見所の一つが、大雪原を舞台にクリーパーたちが群れをなす壮大なクライマックスだ。

山崎監督は「僕はVFXのオタクなのでわかるのですがアメリカで本当に一流のとてもお金のかかるチームを使って、しかも大スペクタクルシーンがあるじゃないですか。だからそれをホントどうやってやったのか知りたい」と満面の笑顔で尋ねる。

「確かにこのVFXの中でも核心の要素となるのが今(山崎監督が)抱いていらっしゃるクリーパーです」とぬいぐるみを指さしたポン監督は、物語の鍵を握るクリーパーについて「ベイビークリーパー、ジュニアクリーパー、ママクリーパーの3種類が出てきますが、ゴジラとミニラのように最も大きな予算が投じられたのがクリーパーでした」と説明。

「ゴジラは歴史的な伝統があるスーパースター怪獣ですので、そこから新たなバリエーションを作り出すというのはむしろ難しさもあり悩みもあったのではないかと思います。それとは違い私の場合は何もないところからのビジュアルでしたので、もちろん難しさはあったとは思いますが自由さもあったと思います」と、質感を重視して新たなゴジラを生み出した山崎監督と違ってゼロからの創造は自由度も高かったと強調する。

続けて「今回クリーパーのクリーチャーデザインを担当している方は『オクジャ/okja』や『グエムル-漢江の怪物-』でご一緒した方だったので“あうんの呼吸”で作ることができました。最初の出発点でクリーパーのイメージとして私が出したのはクロワッサンのパンだったのです」と、原作では「ムカデ」と表現されていたクリーパーの誕生秘話を明かした。

そして「もし明日の朝ごはんでクロワッサンを召し上がるのであれば是非注意深く見てみてください。特にママクリーパーによく似ています」とユーモア溢れるコメントで笑顔を誘う場面も。

本編を観ることでどんどん可愛さが増していくクリーパーは、「作っている当時は気づかなかったのですがポスプロの段階で見た時に、あーこれは『風の谷のナウシカ』の王蟲(おーむ)に似ているなぁと思ったのです。もしかしたら自分の中に眠っていた潜在的なものが影響を与えたのではと思いました。子供のころから宮崎駿監督の作品は数十回見てきましたから」と敬愛する宮崎監督の影響について言及。

『ミッキー17』を鑑賞した観客からも王蟲を連想させるという声が多数発信されているが、観客の代表でもある山崎監督は、「すごいなと思ったのが、普通に見たら気持ち悪いものがどんどん可愛くなっていって…、あれを助けたい!…という気持ちで劇場が一体となる瞬間があると思うんです。それはやはりなかなかできないことです」と、得体の知れない存在であったクリーパーが物語の進捗に合わせてどんどん愛らしくなっていくポン・ジュノ監督の演出手腕を絶賛している。

「『ゴジラ-1.0』では実際に触っているような手触りが感じられるような感覚があったと思います。CGで100%表現するのではなく物理的なエフェクトを使われていると聞きました。53年のクラッシックのオリジナルゴジラの時はデジタルの効果はなかったはずですから、その当時に向けた郷愁のようなものを込めたのかなと思いました」——ポン監督が改めて『ゴジラ -1.0-』の表現を讃えると「予算がなくて手作りでやるしかなかった…」と恐縮した様子で山崎監督が苦笑い。

ポン監督からは「クラシックな怪獣を見ていると、着ぐるみの中の演者が東宝のセットで怪獣の頭を脱ぎタバコを一服している姿を一度見てみたいなと、そんなことを想像してしまいます」と思わずほっこりするコメントが飛び出す。

最後に日本の観客に対するメッセージを求められた山崎貴監督は、「社会的な問題も扱っているのですがとにかく面白いんですよ。それがこの映画の何よりの特徴だと思います。ひたすら面白い。ずーっとずーっと、どうなるんだどうなるんだという気持ちを持ちながら最後にすごいところに連れていかれる映画なので、劇場で是非、観ていただきたいです。ちょっと宣伝では伝わってないくらい大スペクタクルがたくさんあるんですよ。だからこの面白さを伝えたいですね。観てくれ、とにかく観てくれということを伝えたいです。ほんと素晴らしい作品です。これが作れて羨ましいし、良かったと思います。是非劇場でご覧ください」と、劇場鑑賞を強く推奨した。

ポン・ジュノ監督は、「観客の皆さんには楽しんで観てほしい、そういう気持ちでずっと作っているんです。正直に言うと、自分自身が楽しめる映画を撮りたい。そんな子供のような気持ちで映画を撮っているんです。最終的にはとにかく観客の皆さんに是非楽しんでいただきたいです。」と、多彩なテーマが凝縮された集大成『ミッキー17』を映画館で楽しんでほしいと結んでいる。

『ミッキー17』イントロダクション
人生失敗だらけのミッキー(ロバート・パティンソン)は、何度でも生まれ変われる夢の仕事を手に入れた、はずが……⁉ それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった 。

ストーリー
ブラック企業のどん底で、ありとあらゆる方法で搾取され、死んでは生き返らせ続けるミッキー。何度も死に続け、遂に17号となったミッキーの前に、ある日手違いで自分のコピーである18号が現れ、事態は一変、2人のミッキーは権力者たちへの逆襲を開始する。ターゲットは自分の得しか考えていない強欲なボス、マーシャルと現場に“死にゲー”任務を強いる、イルファ(トニ・コレット)だ。使い捨てワーカーvs強欲なブラック企業のトップ、逆襲エンターテイメントが開幕!

ポン・ジュノ監督最新作『ミッキー17』は大ヒット上映中。4D/Dolby Cinema🄬/ScreenX/IMAX🄬 同時公開。

映画『ミッキー17』公式

エドワード・アシュトンの原作小説『ミッキー7』は大谷真弓の翻訳で発売中。

¥1,089 (2025/04/21 19:09:20時点 Amazon調べ-詳細)

ジャパンプレミアでポン・ジュノ監督が語った本作のテーマはこちらの記事で。

ポン・ジュノ監督が明かした『ミッキー17』へのスタジオジブリからの影響についてはこちらから。

クライマックスシーンを描いたポン・ジュノ監督直筆の絵コンテはこちらから。

 

ポン・ジュノ監督作品『スノーピアサー』のネタバレ解説はこちらから。

ロバート・パティンソンが『ザ・バットマン』まで大役を避けてきた理由はこちらから。

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