ラストネタバレ解説『ツイスターズ』巨大竜巻モンスターVSストームチェイサー 考察&感想 | VG+ (バゴプラ)

ラストネタバレ解説『ツイスターズ』巨大竜巻モンスターVSストームチェイサー 考察&感想

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巨大竜巻モンスターがアメリカを襲うパニック映画

前作にあたる映画『ツイスター』(1996)で描かれた竜巻を追う人々“ストームチェイサー”たちの物語から時は流れ、異常気象により竜巻の発生が頻発するようになった現代。そんな現代を舞台に竜巻を追い、竜巻を消滅させることで人々を救おうとする新時代のヒーローの物語『ツイスターズ』が2024年8月1日(木)に全国の劇場で公開された。気候変動により、異常気象が群発される時代のストームチェイサーは何を追うのだろうか。

本記事では、『ツイスターズ』のラストについて解説と考察、感想を述べていこう。竜巻大国アメリカにおけるストームチェイサーとは何なのだろうか。なお、以下の内容は映画『ツイスターズ』のラストのネタバレを含むため、必ず劇場で本編鑑賞後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ツイスターズ』の内容に関するネタバレを含みます。

『ツイスターズ』ネタバレ解説

竜巻を手懐ける研究

気象学者のケイト・クーパーはアディ、ブラピーン、ハビ、そして恋人のジェブと共に竜巻を手懐ける研究を進めていた。竜巻を手懐ける研究とは、おむつなどに使われる吸収剤を竜巻の風に乗せて舞い上がらせることで、竜巻内部の湿度を下げて竜巻の被害を最小限に抑えようとするものだった。

竜巻の大きさを測る手段として、ハビはドロシーという装置を使っている。これは前作『ツイスター』で主人公のジョー・ハーディングとビル・ハーディングが発明した竜巻警報を出すための画期的な観測装置と同じ名前である。『ツイスター』はストームチェイサーたちによる竜巻予報システム構築の物語だったが、今作『ツイスターズ』はそこから一歩進んでストームチェイサーたちによる竜巻消滅システムの構築の物語になっている。

吸収剤を混ぜ合わせて混合剤をつくり、竜巻に迫るケイトたちはどこか楽観的だ。それどころか、竜巻に吸収剤を吸い込ませる実験によって研究費が増額されるかもしれないと嬉々としている。しかし、その夢は無残にも竜巻によって打ち壊される。

竜巻の大きさを示す改良藤田スケール(EFスケール)でガラスが割れて木の幹が折れる程度であるEF1だと思われた竜巻は、最大級のEF5であった。想像以上の破壊力を持ったEF5の竜巻によってケイトとハビ以外のメンバーは竜巻に飲み込まれてしまった。それをきっかけにケイトとハビは疎遠になり、ケイトの心と足に大きな傷を残した竜巻は、ケイトの夢も断ったのだった。

ストーム・パーとストームチェイサー

竜巻を手懐ける研究による悲劇から5年が経ち、ケイトはアメリカ国立気象局で働いていた。そこに同じく生き残りであるハビが現われ、PARことフェアーズドアレイダー装置を用いて竜巻を消す計画を提案する。

当初は乗り気ではなかったケイトだったが、故郷であるオクラホマが危機に陥っていると知り、渋々計画に参加する。そして、オクラホマに帰省したケイトは、アーカンソーのストームチェイサーであるタイラー・オーウェンズと出会うのだった。タイラーは自分の顔が描かれたTシャツやブロマイドを売り、YouTubeで活動するなど配信者としてチームで生計を立てている人物だ。それだけではなく、タイラーはイギリスのジャーナリストのベンの取材を受けるなど、広報活動にも抜かりはない。

ストームチェイサーはアメリカで実際にある職業で、竜巻を特別な車両で追い、その映像やデータを収集する仕事だ。ハビの率いるストーム・パーのような学術的な目的のストームチェイサーもいるが、「衝撃映像」を撮影してテレビ局などに売り込むストームチェイサーも存在する。タイラーは観光客にサインしたブロマイドを売るなど後者にあたるストームチェイサーであることがよくわかる。

ケイトは配信者として竜巻を追うタイラーを拝金主義者だと嫌うが、タイラーはハビが率いるストーム・パーに資金提供をしているリッグスを調べてみるべきだとケイトに忠告するのだった。竜巻で破壊され尽くした町で名刺を配るリッグスに不信感を抱いたケイトは、リッグスが被災地の土地を破格の値段で買い叩いていることを知る。タイラーはそんなリッグスのような不動産業者を嫌い、自身の配信の利益を寄付していたのだ。

ケイトは被災者をビジネスに利用するリッグスと手を組んでいたハビを責めるが、ハビはかつてケイトの楽観的な観測でジュディとアディ、ブラピーンという3人の親友を失ったと返す。咄嗟にそのような言葉を吐いてしまったことをハビは悔いるが、ケイトもそのことはわかっていた。ケイトは久しぶりに実家に帰り、幸せだったジュディとの思い出に浸る。

ハビは研究費やストーム・パーの運営のため、被災者ビジネスをする人間と組むこともしかたないと考えていることが見て取れるが、ケイトはそうではない。ケイトはどちらかと言えば、理想主義者であり、清廉潔白であろうとする性格が見て取れる。そのため、被災者支援のために自分の顔が描かれたTシャツを販売するタイラーに対しても否定的だ。ジュディとアディ、ブラピーン、そしてハビと研究を進めていた際も、研究費を公的な機関から支援してもらおうとしており、企業などの支援を受けるということは考えているようには思えない。

恐怖を乗りこなす

ケイトを励ますべく、タイラーがケイトの実家に訪ねてくる。タイラーは竜巻をロデオになぞらえて恐怖を乗りこなすと語っており、かつてケイトが進めていた竜巻を手懐ける研究に興味を示していた。後悔で動けなくなっているケイトに、タイラーは竜巻の等級は通り過ぎた後の被害規模で決まることから、竜巻を追うストームチェイサーが後手に回ることは仕方がないことであり、過去に囚われていてはストームチェイサーは務まらないと語る。

ストームチェイサーは竜巻の発生の予測を立てて計画を立てるが、実際に動くのは竜巻が発生しはじめてからだ。どんなに予測を立てても竜巻が起きないこともあれば、危険という理由で近づけないこともある。それどころか実際に命を落とす危険性もある。タイラーは命を落としたメンバーも、心のどこかでそれを覚悟していたのではないかと語りたかったと考えられる。

ベテランのストームチェイサーであるタイラーの発破によって、ケイトは自分の研究を見直す。理論上は竜巻を消すことが出来るはずのケイトの理論だが、実際に行なうと上手くいかない。そこにハビが詫びを入れるためにやってくる。ハビは実業家として大人になった自分はケイトに協力できないと言うが、PARが観測した竜巻の3Dデータを渡す。そしてハビは自分も現場に居ながらジュディとアディ、ブラピーンを救えなかったことに罪悪感を覚えていると語った。

ケイトは仲間が竜巻に飲み込まれるのを目の前で見ていたことで、トラウマとなって竜巻に上手く近づけなくなっていた。だが、ケイトよりも離れたところでEF5の竜巻だと伝えても、助けられなかったという点ではハビも同じトラウマを抱えていたと考えられる。ハビは被災者ビジネスをしているリッグスと組んででも、竜巻を追い続けることで、そのトラウマを拭おうとしていたのではないだろうか。ハビはストームチェイサーとして竜巻を追っていたようで、実際はトラウマから逃げていたと考察できる。

ハビの渡した情報をもとに、ケイトとタイラーは竜巻を手懐ける計画を立て直す。2人はPARが観測した竜巻の3Dデータによって竜巻の湿度が計算よりも高いことを知る。ケイトは過去にヨウ化銀をロケットにして雲に打ち込むことで人工雨を降らせたことを思い出し、まずヨウ化銀で竜巻の湿度を下げて脆くした後に吸収剤を利用する計画を考える。

ヨウ化銀で人工的に雨を降らせるというのは現実にもあり得るものだ。小型のロケットで行なえることから、様々な理由で人工雨は試みられており、2019年には韓国で汚染物質を洗い流す目的でヨウ化銀での人工雨が試みられている。2019年の韓国の人工雨は失敗に終わったが、ケイトたちストームチェイサーが人工雨を降らせるというのはあながち不可能なことではないと考察できる。

ケイトが竜巻消滅の計画を立てたとき、巨大な竜巻の前兆が観測される。ケイトはストームチェイサーのタイラーたちの手を借りて竜巻を消滅させようとする。ストーム・パーも竜巻観測に動き出すが、最悪なことに竜巻は製油所に衝突してしまう。火柱を上げる竜巻にヨウ化銀の小型ロケットを撃ち込んでも、人工雨を降らせることが出来ないのは素人目にも明らかだ。そうしている内に竜巻は熱気を吸い込んで、黒煙と共に巨大化して近くの町へと吸い寄せられるように進んでいく。

『ツイスターズ』ラスト&ミッドクレジット解説

竜巻消滅計画

ケイトとタイラーのチームは竜巻を手懐ける計画よりも、市民の避難を優先する。車に乗り込んでその場を凌ごうとする人々や、老朽化していると思われる建物よりも丈夫な建物への避難を勧めるなど、長年ストームチェイサーとして培われた知識を活かすタイラーのチーム。その姿を見たハビはかつての自分の姿を思い出して、ストーム・パーの共同設立者であるスコットに泥をかけて、リッグスと手を切り、市民を優先すると宣言するのだった。

ここで市民よりも利益を優先するスコットを演じているのがデイビッド・コレンスウェットなのが興味深い。デイビッド・コレンスウェットは2025年に公開されるDCU(DCユニバース)映画『スーパーマン』でスーパーマン/クラーク・ケントを演じることが発表されているからだ。世界トップクラスのヒーローを演じる俳優が利己的な人物を演じており、小物のように扱われているのだ。デイビッド・コレンスウェットはスコットをストームチェイサーのダークな面と評しており、観客に嫌われるだろうキャラクターであるとパンフレットで語っている。

ストームチェイサーたちによる市民の避難誘導が続くが、既にシェルターは満員になっており、残りの市民を映画館に避難させる。しかし、古い映画館は竜巻に耐えられるほど頑丈ではなく、竜巻によって崩壊していく。ケイトはタイラーとハビを置いて、自分ひとりで状況を打破するべく、タイラーの改造車で竜巻を手懐ける計画を実行する。

タイラーはそれを止めようとするが、ハビが今助けに行っても巻き込まれるだけだと力づくで制止する。ケイトが竜巻に向かう姿は、まるでジュディとアディ、ブラピーンのかたき討ちをしようとしているように思える。ケイトにとって、今回の竜巻を手懐ける計画は5年前から続くEF5の竜巻との因縁を断ち切るためのものだと考えられる。

ケイトは改造車の装備が通用しない巨大竜巻に飲み込まれながら、ヨウ化銀を雲へと打ち込む。それによって竜巻が巻き込んでいるいくつもの雲が雨粒に変わり、バケツを引っくり返したような雨が降る。その土砂降りの中でケイトは吸収剤を空へとぶちまけた。吸収剤が渦を描きながら竜巻を構成する残りの湿気を吸っていく。竜巻は崩れゆく映画館の一歩前で跡形もなく消え去るのだった。

気象学会のヒーロー

EF5の竜巻を消したことを、ニューヨークの審査会は製油所の火と煙によるものとするだろうと、ハビはケイトに語る。それでも、ケイトが竜巻を消したのは事実であり、ハビは研究予算を取ってこいとケイトの背中を押す。ハビはケイトだけではなく、ケイトに想いを伝えられずにいたタイラーの背中も押す。

タイラーはケイトに想いを伝えるかと思いきや、そこに竜巻警報が入り、飛行機が遅れる。ケイトは竜巻を止めるべく、空港を後にするのだった。ケイトの活躍はタイラーがベンに頼んだ通り、記事となって報道されるようになる。

ケイトは気象学会のヒーローとして扱われるようになった。ケイトとタイラー、ハビは新たなるパートナーシップを結び、竜巻を手懐けるためのストームチェイサーたちが結成される。そして、かつての研究仲間であるジュディとアディ、ブラピーンも気象学会のヒーローとして認められるようになった。最後にケイトはタイラーに自分の顔の描かれたTシャツはいつ発売されるのかと笑いながら聞くのだった。

『ツイスターズ』ネタバレ感想&考察

異常気象によるリアリティ

「ジュラシック・パーク」シリーズの原作小説を書いたマイケル・クライトンの作品である前作『ツイスター』は、巨大な竜巻による災害を描いた作品だった。それはあくまでもフィクションだったはずだが、気候変動による異常気象により、竜巻の連続発生は珍しいことではなくなった。

竜巻観測装置が『オズの魔法使い』(1900)で登場したドロシー、カカシ、ブリキ、ライオンと名付けられているなど、アメリカで暮らす人々は竜巻を身近なものとして過ごしてきた。近年はそれが異常気象により、より一層身近なものになっている。日本も例外ではない。台風や大雨の被害だけではなく、2010年以降には日本でも竜巻被害が報告されている。

異常気象により、パニック映画がパニック映画ではなくなっている。それが『ツイスターズ』という映画を、より一層恐ろしいものにしているのだと強く感じた異常気象が相次ぎ、気候変動への対策が叫ばれる昨今にこそ、『ツイスターズ』は求められている映画なのではないだろうか。

竜巻を追うロードムービー

『ツイスターズ』の舞台は、竜巻街道と呼ばれる竜巻の発生件数が多い地域となっている。竜巻街道はロッキー山脈とアパラチア山脈との間に存在しており、メキシコ湾からの暖かく湿った空気とロッキー山脈やカナダからの冷たく乾いた空気がぶつかることで、雷雨を伴うスーパーセルという竜巻を引き起こす。

ケイトとタイラーは竜巻を追ってオクラホマ州の竜巻街道を移動することになる。ある意味では、距離こそ短いが『ツイスターズ』はロードムービーの要素を持っていると言える。

冒頭のドン・オマールの「Salió El Sol」からはじまり、ケイトとハビが竜巻を追うときには「Chasing the Wind」など数々の名曲が流されている。その楽曲の中にはアーカンソーのタイラーを象徴するクリス・ステイプルトンの「Arkansas」などもある。良いロードムービーには、良い音楽が付きものだ。

平方マイルあたり竜巻発生率2位というオクラホマ州を舞台にした『ツイスターズ』。その物語は現実の異常気象により、前作『ツイスター』よりもリアリティの増したものとなっており、竜巻災害が身近な存在であるアメリカ合衆国の市民が抱える恐怖は日本で暮らす人々にとっても身近なものとなりつつあることを教えてくれる。

『ツイスターズ』は2024年8月1日(木)より全国の劇場にて公開。

『ツイスターズ』公式サイト

【ネタバレ注意】ハビを演じるアンソニー・ラモスが主演を務めた『トランスフォーマー /ビースト覚醒』のラストの解説&考察はこちらから。

同じく、アンソニー・ラモスの今後の出演映画である『ボブとはたらくブーブーズ』についての情報はこちらから。

スコットを演じたデイビッド・コレンスウェットの今後の出演映画である『スーパーマン』についての情報はこちらから。

【ネタバレ注意】映画『デッドプール&ウルヴァリン』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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