『シビル・ウォー アメリカ最後の日』大ヒット公開中
A24がスタジオ史上最大の予算を投じて製作された映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が2024年10月4日(金) より日本の劇場で公開された。全米で2週連続首位を獲得した『シビル・ウォー』だが、日本でも初週末の興行成績で第1位を獲得。実写洋画の国内興収首位獲得は、2024年に入ってからは『マッドマックス:フュリオサ』以来の2作品目となる。
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の舞台は、独裁者の大統領の出現により内戦に突入した近未来のアメリカ合衆国。主人公のジャーナリスト、リーたちは14ヶ月に渡り取材を拒否している大統領への単独取材を行うべく、ワシントンD.C.を目指して戦場と化した米国を旅する。
『シビル・ウォー』の中でもで特に注目されているのが、ジェシー・プレモンス演じる兵士が登場するシーンだ。公式からも映像が公開されているこのシーンは緊張感あふれる名シーンに仕上がっており、鑑賞した人の中でも多くの人がこのシーンに言及している。
映画史に残るワンシーンにもなった、あの兵士のシーン。今回は、キャストと監督の発言からその裏側を見てみよう。
以下の内容は、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の内容に関するネタバレを含みます。
『シビル・ウォー』赤いグラサン兵士のシーンの裏側
演じたのはジェシー・プレモンス
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』では、主人公リー達は終盤で謎の集団墓地に辿り着き、そこで若いジャーナリストのジェシーとアジア系のボハイが捕虜にされてしまう。そこで赤いサングラスをかけた兵士役として印象的な演技を見せるのがジェシー・プレモンスだ。
ジェシー・プレモンスは、『シビル・ウォー』で大統領役を演じたニック・オファーマンも出演したAmazonドラマ『ファーゴ』(2014-) のシーズン2でメインキャストとして出演。Netflixドラマ『ブラックミラー』(2011-) シーズン4収録の「宇宙船カリスター号」で主演を務め、エミー賞主演男優賞にノミネートされた。
また、映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』にはジョージ・バーバンク役で出演し、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。妻は『シビル・ウォー』でリーを演じたキルスティン・ダンストで、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』ではキルスティン・ダンストもアカデミー助演女優賞にノミネートされている。
急遽決まったキャスティング
『シビル・ウォー』でも夫婦での共演が実現することになったが、米ロサンゼルス・タイムズではその経緯が明らかにされている。すでにSNS上でも広く伝わっているエピソードだが、元々あの赤サングラスの兵士役は、ジェシー・プレモンスが演じる予定ではなかった。映画の撮影が始まる約1週間前になり急遽、元の俳優が降板せざるを得なくなったという。アレックス・ガーランド監督はその時のことをこう振り返っている。
電話がかかってきた時は、路上に立っていました。それで、「クソッ、困ったことになった」って。(キャストがいる)リハーサルの場所に行って「悪い知らせだ。撮れなくなった」と伝えたんです。するとキルスティンが「え? ジェシーに頼んだら?」と言ってくれました。それは素晴らしいと思いましたね。
ジェシー・プレモンスの妻であり、『シビル・ウォー』でリー役を演じ主演を務めたキルスティン・ダンストは、「ジェシーは近くにいたんです。私は、ジェシーにこの役を頼もうよ、って感じで」と振り返っている。アレックス・ガーランド監督は、ジェシー・プレモンスを起用できたことは「この映画にとって幸運でした」としている。
赤いサングラスの兵士によって捕虜になるジェシーを演じたケイリー・スピーニーは、このシーンについて「とても恐ろしかった」と語っている。撮影時にはジェシー・プレモンスとケイリー・スピーニーは役になりきったまま半日ほど一緒にいたといい、シーン全体が即興の演技で作られたと明かしている。
撮影方法にも工夫が
また、このシーンはキャストを現場に残し、クルーは遠く離れた位置から撮影を行ったという。撮影監督のロブ・ハーディは、死体を埋める穴の中に隠れていたといい、徹底した空気作りから演出に取り組んでいたことが明かされている。
YouTubeチャンネルのJake’s Takesでは、アレックス・ガーランド監督もこの件について触れている。インタビュアーからあの異常な緊張感の演出は脚本の時点から始まっていたのか、現場での判断なのか、編集での取り組みの結果なのかと聞かれ、同監督はこう答えている。
それぞれの積み重ねであり、脚本にもその意図は込められていましたが、明確になったのは撮影の時点です。スタッフを含めて様々な準備段階がありますが、撮影の段階が重要でした。あのやり方で撮影するためにいくつかの決定を下しました。
通常ならカメラや機材、ブームと共にクルーが演者を取り囲むようにして撮影が行われます。しかし、あの撮影の日に私たちが計画的に実践したのは、全クルーを演者から可能な限り遠くの位置に配置することでした。(カメラは)長いレンズを使って離れたところから撮影し、その場の雰囲気を壊さないようにしたんです。カメラ・オペレーターが乗った機材が顔の真横にあったら気が散りますからね。
アレックス・ガーランド監督は続けて、ジェシー・プレモンスをはじめとする俳優陣の演技も素晴らしかったとしながらも、チーム全体の努力の結果であることを強調している。また、編集段階でもあの日撮れたものを損なうことをしなかったとして、編集チームのことも賞賛している。
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、ストーリーの順番通りにシーンの撮影が行われたといい、キャストも様々な経験が積み重なった状態で赤いサングラスの兵士のシーンの撮影に取り組んだという。あのシーンは2日間かけて撮影され、キャストにとってもタフな現場であったことも明かされている。
様々な工夫と現場の努力、そして急遽出演が実現したジェシー・プレモンスによって生み出された『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の名シーン。背景を知った上でもう一度劇場で観てみると、また違った味わい方ができるかもしれない。
映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は2024年10月4日(金) よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。
Source
Los Angels Times / Jake’s Takes
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