『呪術廻戦』第30巻で完結
芥見下々の漫画『呪術廻戦』が同時発売された第29巻と第30巻で幕を下ろした。世界的な人気を誇る漫画となった『呪術廻戦』だが、最終回を迎えたことで明らかになった事実もあった。
今回は、その中でも五条悟の同級生でありシリーズでも屈指の人気キャラである夏油傑について考察してみよう。なお、以下の内容はアニメ『呪術廻戦』第2期以降の内容と漫画『呪術廻戦』の最終回までの内容および結末についてのネタバレを含むので、必ず漫画の最終回を読んだ上で読み進めていただきたい。
以下の内容は、漫画『呪術廻戦』最終回までの内容に関するネタバレを含みます。
『呪術廻戦』夏油傑はどうなった?
夏油傑の最期
『呪術廻戦』の人気キャラの一人である夏油傑は、前日譚である『東京都立呪術高等専門学校』(2017) に登場した呪詛師だった。五条悟が日本で4人しかいない特級呪術師であるのに対し、「最悪の呪詛師」と呼ばれる夏油傑は作中で唯一の現存する特級呪詛師だった。
『劇場版 呪術廻戦0』(2021) として映画化もされた『東京都立呪術高等専門学校』では、夏油傑は新宿と京都で大量の呪霊を放つ「百鬼夜行」を実行。その隙に乙骨憂太を殺して特級過呪怨霊・折本里香を呪霊として取り込もうとしたが、乙骨に敗れて失敗に終わった。
その後、夏油傑は五条悟に殺されることになる。その際に五条悟が夏油傑に放った言葉は伏せられているが、夏油が「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と言ったことから、五条の言葉は「呪いの言葉」ではなかったことは確定している。
呪術師は呪力で殺されなかったときには呪霊として復活する危険性がある。だが、五条悟からの最後の言葉が温かい言葉だったが故に、強い呪いを抱いていた夏油傑も死後に呪霊にならずに済んだとも考えられる。このように夏油の最期については確定していないことが多いのだ。
羂索とは誰か
しかし、五条傑が同級生だった家入硝子を気遣って別の人間に夏油傑の遺体を処理させたことで、その遺体は何者かに盗まれてしまう。そして、『呪術廻戦』の本編で夏油傑は特級呪霊達と手を組み、敵のボスとして登場。渋谷事変編ではかつての呪詛師の仲間達も助太刀した。
過去編にあたる懐玉・玉折編では、五条悟と夏油傑の高専生時代が描かれた。人間に絶望して呪詛師になった夏油傑の過去が明かされ、星漿体・天内理子の死と後輩達の死、呪霊を飲み込み続けたこと、五条悟と過ごす時間が減ったことなど、様々な要因によって「非術師を皆殺しにする」という極端な発想に到達した経緯が描かれた。
「夏油傑との思い出」は現代最強の呪術師となった五条悟の唯一の弱点であり、夏油傑の身体を乗っ取った黒幕は渋谷事変で五条悟の隙を作り出し、五条悟の封印に成功したのだった。そして、夏油傑の身体は羂索(けんじゃく)という呪術師に乗っ取られていたことが明らかになる。
羂索は1000年前から他人の身体を転々としてきた人物で、その目的は、呪術界の要である天元と日本の非術師を同化し、人類を強制的に進化させ、1億人分の呪力を持つ呪霊を生み出すことだった。そのために羂索は1000年以上前から両面宿儺らと契約を結び、呪物化して現代に復活させる計画を進めていたのである。
羂索が乗っ取った人物には、「史上最悪の術師」と呼ばれた加茂憲倫や、虎杖悠仁の母・虎杖香織もおり、最後に乗っ取ったのが呪霊操術が使える夏油傑だったのである。羂索は一度乗っ取った肉体に刻まれた術式を使うことができ、虎杖香織の術式「反重力機構(アンチグラビティシステム)」を使って特級術師の九十九由基を倒すなど、高い戦闘力を見せている。
夏油傑の魂は生きている?
羂索は天元のことを「友」と呼び、一方で篭りきりだった天元とは違い1000年間を外の世界で「生きてきた」ことにプライドを持っている。そんな天元が、夏油傑に驚きを見せる場面がある。それは、第91話で五条悟が封印される直前に「いつまでいい様にされてんだ、傑」と呼びかけたシーンだ。
五条悟の声を受けて、夏油傑の身体は羂索の意思と無関係に自らの首を絞め始めたのである。羂索には笑顔を見せる余裕はあるものの「凄いな 初めてだよ こんなの」と語っている。五条悟の呼びかけに応じた夏油傑の行動は、1000年生きてきた羂索にとっても特別な出来事だったのである。
一方で、羂索はこの現象を前にして肉体=魂であることを悟り、自身の脳に前の肉体に記憶された術式が残っていくことに納得している。つまりこの時点で、夏油傑の魂はまだ生きていたと言える。
羂索と髙羽は生きている?
羂索と髙羽史彦の名コンビ
『呪術廻戦』のクライマックスにあたる人外魔境新宿決戦では、羂索は髙羽史彦と対決。髙羽史彦は売れないお笑い芸人だったが、呪術師として覚醒し、「超人(コメディアン)」の術式を使うことができる。「超人」は自分が“ウケる”と確信したイメージを実現させるという術式であり、「五条悟にも対抗できうる術式」と説明されている。
高専によって羂索への刺客に選ばれた髙羽史彦は、「イメージの具現化と強制」という強大な力を秘めていた。羂索をもってしても1000年間の呪術ノウハウが通用せず、互角の戦いを繰り広げることになる。
そもそも羂索が天元と一億人の人類を同化させてみたいと考えた理由は、「面白い」と思ったからだった。単なる興味本位とも言えるが、羂索は「面白いと思ったことが本当に面白いか確かめたいだろう?」と、異常なまでの「おもしろ」に対する執着を語っている。
髙羽は羂索がお笑いに詳しいことを知ると、もっと面白いことがあれば計画をやめるということかと確認し、羂索を笑わせるための勝負を挑む。しかし、髙羽の術式の発動条件は「本人が面白いと確信すること」であり、髙羽が過去の経験を思い出し自信を失うと、羂索の攻撃が当たり優勢になっていく。
だが、髙羽は相方を無碍にした過去と羂索を突き放した言葉を重ね合わせると、羂索に土下座して謝り、羂索に言った「お前にウケなくてもいい」という言葉は嘘だったと認める。すると、高羽と羂索の魂は共鳴を始め、二人のお笑いイメージが次々と具現化されていく。
羂索は、髙羽とのイメージの中で「何百年ぶり」という心踊る体験に身を委ねていく。二人は最後に夢の舞台で漫才を披露すると、髙羽のお笑い欲は満たされ、「もういいよ」というツッコミと共に息を引き取る。そして、その隙をついた乙骨憂太が羂索を奇襲して首を落としたのだった。
髙羽は羂索とのコンビ芸を邪魔されたくないと考えており、そのイメージが具現化したことで、羂索は乙骨が近づいていることに気づくことができなかった。一方の高専側も髙羽の術式では相手を殺すことはできないと気づいており、トドメをさす役として乙骨を送り込んでいたのだった。
『呪術廻戦』最終回の意味は?
こうして羂索と夏油傑の物語は幕を閉じたかに思われた。しかし、ファンを驚かせたのは、新宿決戦後の日常が描かれた最終巻30巻収録の第270話でのことだ。死滅回游に参加したプレイヤー達のそれぞれのその後が描かれる中、髙羽史彦が登場するのだ。
髙羽史彦は羂索との戦いの最後、「もういいよ」と突っ込んだ後に死装束に身を包んでおり死んだ様にも見えた。だが、もし髙羽が「生きていた方が面白い」と確信していれば、髙羽の死は無かったことになるだろう。また、「超人」は五条悟をも凌ぎうる術式であり、死を克服できてもおかしくない。
さらに、髙羽はお笑いのネタの打ち合わせをしており、その相手は夏油傑と同じ髪型をしている。二人は「笑」と書かれたお揃いのTシャツを着ているが、顔は見えないようになっている。そして、その正体は明かされることなく、髙羽が生きてまたコンビでお笑いをやっていることだけが明かされることになった。
この髙羽の相方については、髙羽がシナジーを感じた羂索に似た人物を見つけたと考えることもできる。しかし、髙羽の「面白いと確信したことを実現する」という術式が発動したのだとすれば、最高のコンビネーションを見せた羂索が術式で復活したとしても不思議ではない。
加えて羂索は髙羽に「超面白かったよ」と告げており、計画が失敗に終わった今、羂索はそれよりも面白いと思えたお笑いに挑戦しているのかもしれない。そうであれば、夏油傑の肉体も生きていることになり、羂索の理論で言えば夏油の魂もまた生き続けていることになる。
ちなみに、『呪術廻戦』最終回271話の全員集合絵の中に生前の夏油傑(額に縫い目がない)の姿が確認できるが、ここには髙羽の姿がない。このことから、髙羽は既に死んでいるのではないかという考察も登場した。
第270話でネタ合わせをする髙羽はイメージの中の出来事だという予想だ。だが、『呪術廻戦』第30巻に収録された芥見下々の「あとがき」には、「集合絵に俺がいねぇ!!」と驚く髙羽の絵が描かれており、作者がネタにしていることから、単なる書き忘れだとも考えられる。
皆さんは、夏油傑と羂索、そして髙羽の最後をどう読んだだろうか。
漫画『呪術廻戦』は29巻と最終巻30巻が2024年12月25日(水) より発売中。
TVアニメ『呪術廻戦』 懐玉・玉折/渋谷事変 公式ガイドブックは発売中。
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