ネタバレ考察『呪術廻戦』宿儺と裏梅の関係は? 最終巻30巻の書き下ろしエピローグ「裏梅」を解説 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ考察『呪術廻戦』宿儺と裏梅の関係は? 最終巻30巻の書き下ろしエピローグ「裏梅」を解説

(C)芥見下々/集英社

『呪術廻戦』エピローグに注目

2024年12月25日(水)、芥見下々の漫画『呪術廻戦』(2018-2024) の第29巻と第30巻が刊行され、ついに完結を迎えた。アニメシリーズも国境を越えて高い人気となっており、魅力的な登場人物達にも注目が集まっている。

そして、最終巻となる第30巻に収録された書き下ろしのエピローグでは、何人かのキャラクターに焦点が当てられた。中でも、宿儺と裏梅については読者が気になっていた点を解きほぐす内容となっており、話題を呼んでいる。今回は、『呪術廻戦』第30巻で明かされた宿儺と裏梅の関係について解説&考察していこう。以下の内容は第30巻収録のエピローグの内容を含むため、必ず単行本を読んでから読むようにしていただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、漫画『呪術廻戦』第30巻の内容と書き下ろしエピローグに関するネタバレを含みます。

『呪術廻戦』宿儺と裏梅の関係は?

宿儺と裏梅はどうなった?

『呪術廻戦』最終巻の第30巻収録の第268話では、虎杖悠は宿儺を伏黒恵の身体から引き剥がし、宿儺にもう一度一緒に生きることを呼びかける。だが、宿儺は“呪いの王”としてこの申し出を断り消え去ったのだった。

一方、秤金次と戦っていた裏梅は宿儺の死を悟り、自らの首を折って粉々に散り去った。裏梅は氷を操る「氷凝呪法」という術式の使用者で、最後は自分自身に能力を使ったのだ。宿儺を慕っていた裏梅は、宿儺の目的が達成できないことを悟った今、生きていく目的を失ったのだろう。

登場した当初の裏梅は羂索と共に行動していたが、宿儺の復活を目的としており、宿儺が伏黒恵の身体を手に入れた後は宿儺と共に行動していた。公式ファンブックでは、裏梅は1000年前から宿儺と行動を共にしており、人肉をうまく調理できる料理人として宿儺の隣にいることを許されていたということが明かされている。

また、裏梅は元々は男性であったが、死滅回游で受肉するにあたって、羂索との契約で氷見汐梨(ひみしおり)という女性の身体に受肉したということが、第28巻の幕間で語られている。女性の身体が選ばれた理由は不明だが、裏梅は生前とほぼ変わらない姿で受肉できていることから、器の耐性と相性によって氷見汐梨が選ばれたのかもしれない。

宿儺の「次の生き方」

『呪術廻戦』最終回の第271話では、宿儺と裏梅が再登場。魂に干渉できる術式を持っていた真人は、“魂の通り道”で宿儺のことを待っていた。ここで真人は「身の丈で生きてるだけ」という宿儺の言い分は嘘で、異形の忌み子として虐げられてきたことに対する復讐に捧げられた人生だったのではないかと宿儺に問いかける。

宿儺はそれを受け入れた上で、それも自分の身の丈だったとした上で、違う生き方を選ぶきっかけが二度あったと思い直す。このシーンでは、二人の人物の後ろ姿が描かれており、一人は巫女、もう一人は裏梅と思われる人物になっている。

巫女の正体は明らかになっていないが、宿儺の母親ではないかという説もある。巫女は結婚や妊娠することは禁忌とされており、もし宿儺の母が巫女であれば、宿儺は禁忌を破って生まれた子どもということになる。禁忌をおかして忌み子を生んだとすれば宿儺の母の命は長くはなかったと考えられ、宿儺に残された“他者”は裏梅だけということになる。

宿儺は涙する裏梅の肩に手を置くと、「次があれば生き方を変えてみてもいいのかもしれない」と語って去っていく。宿儺はもう一度一緒に生きてみようという虎杖悠仁の言葉には応えられなかったが、それは裏梅の存在があったからかもしれない。

伏黒恵は宿儺から離れるときに、「もう一度 誰かのために生きてみようと思う」と宿儺に告げていた。宿儺が「次があれば」と思えるようになった背景には、虎杖悠仁と悠仁に救われた恵、そして裏梅の存在があったことは確かだろう。

「エピローグ 裏梅」をネタバレ考察

宿儺と裏梅の出会い

裏梅は宿儺の死を悟って自らも後を追った。宿儺はその裏梅と共に魂の通り道を歩いたが、「次があれば」裏梅と共に生き方を変えて生きることを示唆した。その背景は、第30巻に収録された「エピローグ 裏梅」で明かされる。

「エピローグ 裏梅」では、生前の両面宿儺と裏梅の出会いが描かれる。裏梅は自分ではコントロールできない強力な呪力を持っていたようで、気づけば周りの人々が凍ってしまうという人生を生きていた。父も母も凍死してしまったという。

ちょうど氷室が壊れてしまっていた宿儺は、裏梅を連れていくと、鹿肉を腐らないように番をするよう裏梅に指示する。生まれ持って呪いを背負って生まれてきて、孤立している裏梅に、宿儺は自分自身の姿を重ね合わせたのかもしれない。

宿儺と裏梅が一緒にいる理由

裏梅が焼いた肉は美味く、暇だったという裏梅は独学で調理を学んでいた。宿儺は裏梅に人間を捌けるか尋ね、そうして“宿儺の料理人・裏梅”が誕生したという背景が明かされる。裏梅は少なが近くにいても冷たくならないことを不思議がっているが、宿儺もまた裏梅が冷たくならない(=死なない)ことの特異さを指摘するのだった。

そして去っていく二人の後ろ姿は、最終回の魂の通り道での二人の後ろ姿にそっくりだ。裏梅は異形の宿儺を恐れず、宿儺は裏梅の呪力をもってしても凍ることがなかった。それだけでなく、宿儺にとって裏梅は調理と保存ができる有益な存在で、孤独に生きてきた裏梅からすれば自分の存在意義を認めてもらえたことになる。

二人は、互いに精神的にも物理的にも一緒にいられる相手が見つかったということだけでなく、“料理人”という一緒にいられる“言い訳”も付いてきていた。もちろん、ただの雇用主と料理人という関係であれば、二人は時代を越えて一緒にいることはなかっただろう。その背景も、能力も含めて、宿儺と裏梅は互いの存在を求めていたのだ。

「呪術廻戦」と裏梅

虎杖悠仁は、宿儺に「決着をつけよう」「廻る呪いに」と告げて最後の黒閃を当てた。「呪術」による「廻」る「戦」いを描いた『呪術廻戦』は、異形の自分を虐げた人類を呪う宿儺による「廻る呪い」を描いた作品でもあった。

だから虎杖悠仁は最後に宿儺に憎しみをぶつけて呪うのではなく、一緒に生きようと呼びかけた。その呼びかけは、宿儺に全く響かなかったわけではないのだろう。あるいは、裏梅が宿儺と共に死を選び、魂の通り道で再会できたことも、宿儺に悠仁の言葉を再考させるきっかけになったのかもしれない。

宿儺が、違う生き方を選ぶこともできたはずの二度のきっかけを思い出し、その内の一人は今も自分の隣にいるということに気付いた時、「廻る呪い」は真の意味で終わりを迎えたのではないだろうか。そう考えると、実は『呪術廻戦』と宿儺の物語にとって、裏梅は最大のキーキャラクターだったと言える。

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『呪術廻戦』最終巻の書き下ろしエピローグで明らかになった乙骨憂太と五条家のその後についての解説&考察はこちらから。

『呪術廻戦』最終回のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。

虎杖悠仁と両面宿儺の関係についての解説はこちらから。

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齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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