漫画『呪術廻戦』完結
2018年に連載を開始した芥見下々の漫画『呪術廻戦』は2024年9月に「少年ジャンプ」本誌で最終回を迎えた。コミックスも12月25日(水) に第29巻と第30巻が同時発売されて完結を迎えている。
『呪術廻戦』が最終回を迎えたことで、物語上で確定した要素も出てきている。今回はその中でも、ナナミンこと七海建人をめぐる要素をピックアップしてみよう。以下の内容は、『呪術廻戦』の最終回までの内容に関するネタバレを含むので、必ず本編を読んでから記事を読むようにしていただきたい。
以下の内容は、漫画『呪術廻戦』最終回までの内容に関するネタバレを含みます。
『呪術廻戦』「七海のこと」とは何だったのか
ナナミンはどうなったのか
『呪術廻戦』でも屈指の人気キャラだった七海建人は、五条悟の後輩の1級呪術師で、当初は虎杖悠仁の引率として登場した。懐玉・玉折編では同級生の灰原を失い、「もうあの人一人でよくないですか?」と発言したことで、夏油傑に「術師というマラソンゲーム」へ疑問を抱くきっかけを作った場面も描かれた。
渋谷事変編では、呪詛師の重面春太を「仲間の数と配置は?」と問い詰める猟奇的な姿が話題となった。陀艮との戦いでは領域内で直毘人、真希、伏黒恵と共闘するが、その直後には漏瑚によって半身を焼かれてしまった。
そして、遭遇した真人によって虎杖悠仁の目の前で殺されることになるが、その際に灰原と対話しつつ、「虎杖君、後は頼みます」と“呪い”となる言葉を遺した。ナナミンは虎杖のみならず、多くの読者の記憶に深く刻まれるキャラクターとなったが、その後、「イノタク」こと猪野琢真の口から気になる発言が飛び出している。
イノタクの「七海のこと」
第25巻収録の第222話「予兆」では、再び七海の名前があがることになる。五条悟、家入硝子、伊地知潔高が3人になり、五条悟が七海について「なんやかんや生き残るタイプ」だと思っていたと語るシーンだ。そこにイノタクが現れ、硝子から「七海のことで猪野から話があるそうだ」と案内されるのだが、この「七海のこと」に関する話は第257話で明かされることになる。
イノタクが4種の霊獣を降霊する来訪瑞獣という術式を持っていることから、このシーンが登場した当初は、ナナミンの降霊が行われるという説もあった。渋谷事変で伏黒甚爾が降霊術によって復活したこともあり、ファンは少なからず期待を寄せたはずだ。
だが、それとは違う答えが第28巻収録の第246話で示されていた。人外魔境新宿決戦では、呪術師が総動員で宿儺に挑む中、イノタクが登場。ここでイノタクは、ナナミンの十劃呪法の術式を呪具化した武器を使い、宿儺の虚を突いている。ちなみにイノタクが援護した虎杖、虎杖が救おうとした恵は、渋谷事変でイノタクがナナミンから「二人を頼みます」と言われて託された二人でもある。
この時イノタクが使った大きな包丁のような武器は、生前ナナミンが使用していたものだ。ナナミンの術式・十劃呪法は対象とした相手を7:3で捉えた点を強制的に弱点とするもので、武器自体が呪具だったわけではない。ナナミンの死後、なんらかの形でその術式が使っていた武器に宿り、呪具化したということだ。
武器そのものに十劃呪法の力が付与されることになり、ナナミン以外の人でもこの呪具を使えば十劃呪法を使えるようになったのだ。イノタクの後は、日下部がこの呪具を使って宿儺に奇襲をかける場面も見られた。
つまり、第222話でイノタクから五条悟らに話した「七海のこと」とは、この七海の形見でもある呪具の扱いについての話だったのだ。イノタクは呪具となったナナミンの形見を自分が使うことについて、五条悟らの許可を得たいと考えていた。そうして、イノタクはナナミンの呪具を使って新宿決戦に挑むことになったのだ。
第257話では、遅れてナナミンが遺した呪具について語られるシーンが挿入された。五条悟は「七海の遺した呪具を使わせてほしい?」と聞き返し、「好きにしなよ」とあっさり認めている。
満場一致で猪野が持っていた方がいいということになり、五条悟がトドメに「七海はオマエを一番信用してたよ」と言い放つ。イノタクにはかなり刺さった言葉だろう。
呪具化した理由は?
では、七海建人の術式はどのようにして呪具化したのだろうか。『呪術廻戦』では、呪術師が死んだ後に呪霊になる可能性について触れられている。虎杖悠仁の抹殺を指示された加茂憲紀が、虎杖の死後に呪いに転じることを防ぐために呪力で殺すと発言するのだ。
つまり、呪力を伴って殺されなければ、呪術師も呪霊になる可能性があるということだが、ナナミンは真人の呪力を伴って殺されたので呪いに転ずることはなかったと思われる。一方で、ナナミンは「言ってはいけない」「それは彼にとって“呪い”になる」と葛藤しながらも、最後は「後は頼みます」と虎杖に“呪い”を遺した。
意図してかどうかは分からないが、ナナミンの今世に対する想いには強いものがあり、けれど呪いにはなれないため、術式だけが持っていた武器に宿ったということだったのかもしれない。そして、一度は呪術師という仕事に絶望したナナミンに“希望”を持たせたのは、虎杖や猪野といった後輩たちだったのだろう。
イノタクのその後は?
ナナミンを語る上で、猪野琢真の存在は切り離すことができない。イノタクはナナミンのことを慕い、1級呪術師になるのはナナミンからの推薦と決めていることから、ナナミンからも準1級くらいならすぐになれると認められながらも、2級に留まっていた。
イノタクは、ナナミンの形見の呪具ありという条件ではあるが、特級呪物が受肉した脹相や、「1級最強」と目される日下部と共に新宿決戦で宿儺と交戦して生き延びた。イノタクはおそらく最終話の後、ナナミンから引き継いだ呪具と共に1級術師として活躍していくことになるのではないだろうか。
ナナミンがイノタクに準1級くらいならすぐなれると話したのは、11巻収録の第95話冒頭の二人が焼肉を食べる回想シーンでのことだ。このシーンでは、イノタクはナナミンからの推薦にこだわる理由を「筋」だと話した。特に呪術師のような血生臭い仕事には筋が必要だと考えていたイノタクは、だから五条や硝子ら、高専生時代からナナミンのことを知る人間のもとに出向いて、自分がナナミンの形見を使うことの筋を通したのだろう。
虎杖悠仁と共に七海建人の意思を継いだ猪野琢真。その後の姿が描かれることも含めて、今後に期待しよう。
漫画『呪術廻戦』は29巻と最終巻30巻が2024年12月25日(水) 発売。
TVアニメ『呪術廻戦』 懐玉・玉折/渋谷事変 公式ガイドブックは発売中。
漫画『呪術廻戦』最終回のネタバレ解説&考察はこちらの記事で。
最終巻の書き下ろしエピローグで明かされた乙骨憂太と五条家のその後についての考察はこちらから。
虎杖悠仁と両面宿儺の関係についての解説はこちらから。
エピローグで明かされた宿儺と裏梅の関係についての解説&考察はこちらから。