『イカゲーム』シーズン3配信開始
Netflixの人気シリーズ『イカゲーム』(2021-) のシーズン3が2025年6月27日(金) より配信を開始し、シリーズに一旦の終止符が打たれた。シリーズのクリエイターを務めたファン・ドンヒョク監督はシーズン3でソン・ギフンとフロントマンの物語を完結させると事前に明言しており、今後はデヴィッド・フィンチャー監督が制作を進める英語版の公開が待たれる。
『イカゲーム』シーズン3の終わり方を巡っては、国内外で大きな反響を呼んでいるところでもある。さまざまな解釈が成り立つラストだったと言えるが、製作陣はどんな思いを込めていたのだろうか。今回は『イカゲーム』シーズン3のラストについて、ファン・ドンヒョク監督が語った意図をチェックしてみよう。
なお、以下の内容は『イカゲーム』シーズン3の結末に関する重大なネタバレを含むため、必ず本編をNetflixで視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、ドラマ『イカゲーム』シーズン3の結末に関するネタバレを含みます。
Contents
『イカゲーム』シーズン3ラストはどうなった?
ギフンの三つの選択肢
ドラマ『イカゲーム』シーズン3のラストは、最終ゲーム「天空イカゲーム」で生き延びた主人公ソン・ギフンが222番ジュニの赤ん坊を残して自ら脱落。高所の足場から身を投げて赤ん坊がゲームの勝者となった。
ゲームの決着が着く直前には、赤ん坊の父親であるミョンギが赤ん坊を犠牲にして勝者になろうとし、ギフンとの揉み合いの中で死んでしまった。米Netflix公式メディアのTudumでは、ミョンギを演じたイム・シワンが「ミョンギの究極のゴールを定義づけるなら、取れるだけ金を取るということです」と語り、「欲張りすぎたんです」と敗因を語っている。
Tudum公式は「最終ゲームの複雑なルールが赤ん坊を勝者にした」として、ラウンド開始のボタンが押される前にミョンギが死んだことで、ミョンギの死は「ラウンドの脱落者」としてカウントされないと説明している。つまり、最終ラウンドではギフンと赤ん坊のどちらかが死ぬ必要があり、生き残った方が勝者になるか、両方死ななければ二人とも脱落者とみなされて殺されるということだ。
また、Tudum公式はギフンの手の中にあった、①自分が勝者になる、②二人とも死ぬ、③自分が死に赤ん坊を生かす、という三つの選択肢の③を選んだことも明確にしている。そして、ギフンは、自分は馬ではなく人間だと宣言して自ら身を投げたのだった。
監督が語ったテーマ
ファン・ドンヒョク監督は、Tudum公式にギフンの選択について語っている。赤ん坊はギフンにとって「人間性と良心」を再発見するための象徴であったとして、あの結末についてこう話している。
(制作中に)世界がどんなに絶望的で暗く見えても、自分の中に微かでも希望を見出すことができれば、まだチャンスはあるのかもしれない、と信じるようになりました。
他者に何かを求めるのではなく、私たち自身の価値観や私たちが自分自身を信じているか、ということを振り返り、自分たちの中にある良いものを土台にできるようになりたいと思ったんです。それがシーズン3を観た視聴者の皆さんに受け取ってもらいたいことです。
米The Hollywood Reporterでもファン・ドンヒョク監督は、赤ん坊を通して「希望」というテーマに光を当てたと明かしている。
私たちがこの世界で生きていけるのは、前の世代がより良い世界を残すために努力し、苦労してきたからだと私は信じています。そして、私たちが世界を良い方向に向けようとしなければならないのは、未来の世代により良い世界を残したいからです。つまり、この物語では、赤ん坊は人間の良心を象徴しているだけでなく、私たちが現状を改善する理由である未来の世代の象徴なのです。
確かに『イカゲーム』シーズン3のテーマには世代論も含まれていた。クムジャとヨンシク、ギョンソクとナヨン、ノウルと娘など、親と子どもをめぐる展開が多く用意されており、その中心にいたのがギフンと222番の赤ん坊だった。
赤ん坊の父親であるミョンギは自分だけが生き延びて賞金を掴もうとしたが、ギフンは人間であることをやめず、赤ん坊に未来を残した。人間としての良心と、次の世代により良い世界を残すという上の世代の責任が同時に描かれたラストだったと言える。
一方で、ファン・ドンヒョク監督は当初、ギフンを死なせるつもりはなかったという。だが、ギフンが払う究極の自己犠牲にこそ意味があったようだ。Tudumではこのようにも話している。
私が伝えたかったメッセージは、目先の私利私欲だけを追求し、自制も犠牲も負担も拒むなら——そして協力することを拒むなら——私たちに未来はないということです。
赤ん坊を救うためにギフンが払った自己犠牲は、現代を生きる私たちにとって必要なメッセージです。ゲームに放り込まれ、耐え忍び、そしてゲームを終わらせるためにもう一度ゲームに飛び込んだこのキャラクターこそが、このメッセージを伝えるべきキャラクターなのです。
エピローグの意味は?
賞金を持って行ったのは?
『イカゲーム』シーズン3のエピローグでは、ギフンの前回優勝時の賞金がモーテルからなくなっており、チェ会長が不思議がる展開も描かれた。もしかしてギフンが生きているのかもしれないと期待させる展開でもあったが、Netflix公式メディアであるTudumはギフンが「死を選んだ」と明確に記している。では、あのお金を持って行ったのは誰だったのか、そして、その後のフロントマンの行動についてもTudumで明かされている。
曰く、やはりあの賞金を持ち去ったのはフロントマンで、お金を銀行口座に入れた後、ロサンゼルスに飛んでギフンの娘のガヨンにカードを渡したのだという。ガヨンは父から捨てられたと思っていたようだが、同時に父の死について知ることになった。
「ギフンは墓場で飛び起きる」
Tudumによると、ソン・ギフンを演じたイ・ジョンジェは、このフロントマンの行動を快く思っていないようだ。
フロントマンがガヨンに会いに行くシーンを見た時、ギフンは墓場で飛び起きて棺桶から飛び出すだろうと思いました。ギフンはそれくらい怒りますよ!
ギフンは「遺産」という形であっても、もうガヨンに関わらないことがガヨンの人生のためになると考えていたのだろう。フロントマンが渡した箱には、ご丁寧にもギフン名義のカードと共に456番のジャージも添えられていた。いずれガヨンはこの金の出所について調べ、イカゲームに辿り着くかもしれない。それはすなわちガヨンの身に危険が及ぶということでもある。
フロントマンとアノ人の関係は?
Tudumの別の記事では、その後フロントマンがロサンゼルスで遭遇するケイト・ブランシェット演じるメンコの人物について、「もしかして、二人には共通するゲームがあるのだろうか?」と、二人の関係についてはぼかしている。一方、フロントマンことファン・イノを演じたイ・ビョンホンは、「その名に相応しいエンディング」とした上で、「個人的には、多くの人々の崇高な努力にもかかわらず、世界はまだ以前のように続いている、そう解釈しています」と話している。
最終盤のロサンゼルスのシーンについて分かったことは、①フロントマンはギフンが望んでいない“余計なお世話”をした、②メンコの人物との関係は不明だがフロントマンはゲームが続いていることを確認した、というところだろうか。
ギフンの娘のガヨンとケイト・ブランシェット演じるメンコの人物は、デヴィッド・フィンチャー監督が手がける英語版『イカゲーム』にも登場するかもしれない。ファン・ドンヒョク監督が、シーズン3で人間の良心と次の世代への責任を描いた『イカゲーム』は、アメリカでどんな展開を見せるのか。今後も注視しよう。
ドラマ『イカゲーム』はシーズン3までNetflixで独占配信中。
Source
Tudum1, 2 / The Hollywood Reporter
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