人も島も、うなぎのように漂い続ける――台湾映画上映会2026『うなぎ』トークイベントのレポートが到着 | VG+ (バゴプラ)

人も島も、うなぎのように漂い続ける――台湾映画上映会2026『うなぎ』トークイベントのレポートが到着

台湾映画上映会2026『うなぎ』トークイベントが開催

台湾駐日本代表処台湾文化センターが主催する連続上映企画「台湾文化センター 台湾映画上映会 2026」の第3回上映『うなぎ』が6月7日(日)にユーロライブにて開催された。現代アートシーンで活躍するチュウ・ジュンタン(朱駿騰)監督の長編デビュー作『うなぎ』(原題:河鰻)は、ベルリン国際映画祭「パースペクティヴ」コンペティション部門に台湾映画として初選出され、国際的な注目を集めている。上映後には、チュウ・ジュンタン監督によるトークイベントが行われた。

【台湾映画上映会 2026『うなぎ』上映会&トークイベント詳細】
日時:2026年6月7日(日)※上映後にトークイベント
開場:17時10分
開演:17時45分(上映時間103分)
場所:ユーロライブ(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
登壇者:チュウ・ジュンタン(本作監督)
聞き手:リム・カーワイ(『台湾映画上映会 2026』キュレーター、映画監督)
通訳:中山大樹

台湾駐日本代表処台湾文化センターとユーロスペースによる連携企画として、映画『うなぎ』上映会が6月7日(日)にユーロライブにて開催された。上映後に、チュウ・ジュンタン(朱駿騰)監督が登壇しトークイベントが行われた。

『うなぎ』は、現代アートシーンで活躍するチュウ・ジュンタン監督の長編デビュー作。ベルリン国際映画祭「パースペクティヴ」コンペティション部門に、台湾映画として初めて選出され注目を集めた。シンガーソングライターのクー・ミンシュンの出演も話題となっている。

物語は、台北の街中に浮かぶ孤島へ戻ってきた阿亮が、川に漂う謎めいた女性と出会うことから始まる。つかみどころのない彼女との生活は、彼の心の奥に潜む孤独に火を灯していく。時間も記憶も霧のように消えていく孤島で、二人は少しずつ互いに隠してきた傷や物語を明かしていく──。

チュウ監督が「もともとは映画を専攻していましたが、その後はアート関係の仕事をしていました。『うなぎ』は20数年ぶりに映画界に戻り、自分にとって初めての長編作品です。みなさんからもたくさん質問もしてほしいです!」と、ほがらかに挨拶した。

キュレーターのリム・カーワイからタイトルの意味を問われると、「うなぎは回遊する魚です。旅を続け、川で産卵し、最後は海へ向かう。その生態には命が巡っていくようなロマンチックを感じます。主人公の男女は川で出会い、自分自身を探している。彼らもうなぎのような存在だと思っています。」と語った。

男女が出会うのは、台北にある社子島という孤島だ。「社子島は二つの川が交わる場所にあります。約50年前から政府によって開発が制限されていて、台北の中心部にありながらあまり知られていない島です。今も半世紀前とほとんど変わらない風景が残っていて、まるでタイムカプセルに閉じ込められたような雰囲気があります」とチュウ監督が説明すると、「とても不思議な雰囲気のある、SFぽさを感じる風景ですよね。」とリムが応じた。

「主人公だけではなく、社子島も、映画に出てくるすべての人物、動物、物質すべてが、みな同じような状態にあります。必要とされなくなって、忘れられてしまっている。将来はどうしていいかわからないような、そういう状態というのが、この作品を貫いています。」と、映画の主軸となるテーマについてチュウ監督が語った。

長編デビュー作となる本作には、チュウ監督自身の人生観が色濃く反映されている。

「自分は根っこのない人間だと、ずっと思っています。幼い頃、すべてのものは永遠には続かないし、存在し続けることはできないと気付いたときから、ものを失うことに恐怖を覚えました。人生を積み重ねる内に、所有するものは増えていくと、逆にそれらを失うことが恐ろしくなっていきます。それは映画の主人公自身にも反映されています。」

と胸の内を語ると、「ここまでご自身のことを誠実に語ってくれて、感謝します」とリムが応えると、チュウ監督は照れたような笑顔を見せた。

リムから、撮影をベトナムの方が担当していることについて問われると、「フィックスでも手持ちで撮るときも、生命力を感じられるような撮影ができるひとを探していた。撮影直前に観たベトナム映画の撮影が、非常に印象的だったんですが、たまたまふたりの知り合いから紹介されたのが、まさにそのベトナム映画のカメラマンだったんです。」と説明。「音楽もそのカメラマンから紹介してもらい、直感的にいいと思いました。」と、偶然の出会いが作品づくりにつながったことを明かした。

会場からは、「エンディング曲が加山雄三の『君といつまでも』でびっくりした!劇中にも昔の歌謡曲が多く使用されていた」ことについて質問が寄せられた。

「劇中で使用した楽曲はすべて自分で選びました。日本の有名な曲ということは知っていましたが、使用したのは台湾版です。脚本を書いているときに、ふとこの曲のメロディーが浮かび、この歌詞はまさに登場人物たちのモノローグとして、映画の結末にふさわしいと思ったんです。」とはにかんだ。

これに対し、マレーシア出身のリムが「僕も小さい頃から、ヤオ・スーロン(姚蘇蓉)が歌う『君といつまでも』を聴いていました。台湾だけではなく東南アジアでも大変人気のあった歌手です。」と補足した。

さらにリムは、台湾映画には珍しい非現実的でありながら社会の本質に迫る作品から、70年代の日本映画の雰囲気が感じられるとし、「寺山修司やロマンポルノからの影響はあったのか」と質問した。

チュウ監督は「日本映画からの影響はあるかもしれません。というのも、映画を勉強していたとき、大島渚監督と岩井俊二監督がとても好きで、特にこのふたりからは影響を受けていました。」と答え、自身の創作の原点を語った。

最後に台湾映画の魅力について問われると、チュウ監督は次のように述べた。「私はずっと台湾で生まれ育ちました。台湾はちょっと特別な場所だと思います。それは文化的にも政治的にも、地理的な意味も含めてです。こうした小さな島で生きていて、さまざまなプレッシャーもあります。そういった自分たちを取り巻く特別な感覚というのが、台湾映画にも反映されていると思います。それこそが、台湾映画の魅力なのかなとも思います。」はにかむと、会場からはあたたかい拍手が送られ、トークイベントは幕を閉じた。

【上映作品概要】
『うなぎ』
2024年/103分/台湾
原題:河鰻/英題:EEL
監督:チュウ・ジュンタン(朱駿騰)
出演:デヴィン・パン(潘綱大)/クー・ミンシュン(柯泯薰)/パン・チンユー(潘親御)/チェン・ジーシア(陳季霞)
©️Static Film & Visual Art Production Co., Ltd.

◆2025 台北映画賞 最優秀美術設計賞
◆2025 ティラナ国際映画祭 最優秀デビュー長編映画賞
◆2025 コルカタ国際映画祭 Asia Select コンペティション部門
◆2025 ルッカ映画祭 長編公式コンペティション部門
◆2025 ゴールウェイ国際映画祭 インターナショナル・フィルム・コンペティション
◆2025 ベルリン国際映画祭「パースペクティヴ」コンペティション部門
◆2025 香港国際映画祭 コンペティション部門
◆2025 台北映画賞 最優秀主演男優賞/最優秀撮影賞/最優秀音楽賞/最優秀衣装デザイン賞/最優秀音響デザイン賞 ノミネート
◆2025 ケンブリッジ映画祭 Otherwise 部門

台北の街中に浮かぶ孤島。ゴミ焼却場で働く阿亮は、かつて何よりも逃げ出したかったこの島に戻ってくる。ある日、川に漂う謎めいた女性に出会う。つかみどころのない彼女との生活は、彼の心の奥に潜む孤独に火を灯していく。時間も記憶も霧のように消えていく孤島で、二人は少しずつ互いに隠してきた傷や物語を明かしていく─

現代アートシーンで活躍しているチュウ・ジュンタン監督は、長編デビュー作となる本作で、台湾初のベルリン国際映画祭「パースペクティヴ」コンペティション部門に選出された。
シンガーソングライターのクー・ミンシュンの出演も話題。
舞台となった社子島は、台北の基隆河と淡水河が交差する場所に位置する砂州。

【登壇者紹介】チュウ・ジュンタン(朱駿騰)/本作監督
2010年にロンドン大学ゴールドスミス校にてファインアートのMFA(美術学修士)を取得した。もともとは映画監督および撮影を専攻しており、学部時代の短編映画『眠れる美女の家』(2006)は、川端康成の小説に着想を得て制作された。同作は国際的な評価を受け、第28回クレルモン=フェラン国際短編映画祭、第19回シンガポール国際映画祭などに選出された。

映画学の学士号取得後、活動の軸を現代アートへと移した。個人の存在、社会階層、政治的対立といったテーマを通して、現代社会が抱えるジレンマを探求している。表現領域は映画、映像インスタレーション、現代美術にまで及ぶ。

これまでの作品は、第7回ソウル国際映画祭、2014年台北ビエンナーレ、クンストハウス・エッセン、上海当代芸術館、グラスゴー現代美術センター、ヘルツリーヤ現代美術館など、世界各地の主要な映画祭や美術機関で上映・展示されている。

≪上映会概要≫
名称:台湾文化センター 台湾映画上映会 2026
期間:2026年5月~10月(全10回)
会場:台湾駐日本代表処 台湾文化センター/北海道大学 学術交流会館小講堂/大阪大学 大阪大学会館講堂/ユーロライブ/京都大学 HORIBA シンポジウムホール/中央大学<多摩キャンパス>3号館3551教室/慶應義塾大学 三田・北館ホール/日本映画大学 大教室/シネ・ヌーヴォ

台湾駐日本代表処 台湾文化センター公式サイト

≪参加無料、事前申し込み制≫
各回の申し込みは、Peatixにて先着順にて受付。
≪Peatix≫ https://taiwanculture.peatix.com/
※Peatixにて、各回7日前の昼12:00より先着順にて受付。
※シネ・ヌーヴォのチケットについては、劇場HPにて取り扱いいたします。Peatix ではお申込みができません。
※本上映会について会場となっている大学、ユーロライブ、シネ・ヌーヴォへのお問合せはお控えください。
※ゲスト・イベント内容は予告なく変更となる場合がございます。ご了承ください。

7月11日開催『小さな町の恋』上映会とトークイベントの詳細はこちらから。

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