「最近出た本を読もう」呼びかけに謎の批判。米SF作家たちが擁護

「最近出た本を一冊は読もう」

「作家になりたい人は、ここ5年以内に出た本を一冊は読みましょう」——そんな当たり前のように思える呼びかけに、なぜか批判が集まった。そして、著名なSF作家たちがその呼びかけを擁護している。

事の発端は、ヤングアダルト作家のサラ・ニコラスのツイート。彼人は、普段から出版について他の作家たちと議論する動画の配信や、図書館でのイベントの主催なども行なっている。

もし本を出したいと思っているのなら、お願いだから、5年以内に出版された本を一冊だけでも読んでください。一冊から始めましょう。お願いです。

このツイートは多くの賛同を得ながらも、近年の文学界における多様性を重視する流れを快く思わない保守的な人々の怒りを買うことになった。「主流派に認められたいならね」「良い本を書きたいなら1970年以降の本を読むことに1年も費やす必要はない」「人々が最近の本を読みたがってないことは明らか」……と、“最近出た本を一冊読むこと”を拒否するための無理くりな反論が展開される。そんな中、サラ・ニコラスをサポートしたのはSF作家たちだ。

ジョン・スコルジー、N・K・ジェミシンが擁護

ベストセラー小説「老人と宇宙」シリーズの作者で、Netflix『ラブ、デス&ロボット』(2019)収録「ロボット・トリオ」の原作者としても知られるジョン・スコルジーは、以下のようにツイートしている。

どうもこの非常に実用的で有用な小さな助言に対して、多くの人が怒りを覚えたらしい。誰かが働きたいと思っている業界の現状を理解するためのアドバイスが、それほど腹立たしいものですか?それとも、別の理由があります?

 

最近出版された本を読んでください。

このジョン・スコルジーのツイートを引用する形でコメントを残したのは、『第五の季節』から始まる「The Broken Earth」トリロジーで前人未到のヒューゴー賞長編小説部門3連覇を達成したN・K・ジェミシン。

自分が属する業界の現状を理解しようとしない理由について考えています。「合わせる」「ついていく」といったプレッシャーを感じないためでしょうか?最近の作品を読むということは、それらの作品と同じように書かなくてはいけない、ということではありません。その場所を渡らないと決めたとしても、その土地のことを知ることと同じです。

更に「作家になるためには、絶対に読書が必要です」と続け、「他の作者が読者をどのように喜ばせるか (あるいはそうしないか) を知ることが必要なのです。たとえ自分はそれを使わないことを選んだとしても、新たなテクニックを知っておく必要はあります」とコメントした。

N・K・ジェミシンは「年に数冊程度」としながらも、それでも新しい本を読む時間を作っているという。「私にとっては、そのジャンルが進化する姿を見るのはワクワクすることですよ! なぜそれを恐れるのでしょうか?」と、“最近出た本”に対して拒否反応を示す人々の態度を疑問視した。

一部の人々への冷静な批判

5年以内に出版された本を一冊読んでみることが、それほどハードルの高い作業なのだろうか。繰り返しになるが、今回批判の声をあげているのは、ジェンダーや人種に対する多様な価値観を尊重する近年の米文学界の潮流をよく思わない保守派の人々だ。

「書き手になりたければ最近の本を一冊は読みましょう」という呼びかけに、近年の文学界の潮流を重ね合わせ、感情的な反応を見せる一部の人々。それに対し、スコルジーとジェミシンは「自分の業界を知るための助言」「読んだとしても同じように書く必要はない」と冷静に反論したのだ。

アメリカのSFファンタジー界は、特にダイバーシティに対する意識が強い。バックラッシュを乗り越え、劉慈欣の『三体』にアジア初のヒューゴー賞がもたらされた経緯は、以下の記事に詳しい。

なお、今回の騒動を受けて、サラ・ニコラスはTwitterのユーザー名を「Sarah *read a book* Nicolas」に変更している。

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Source
Sarah Nicolas Twitter / John Scalzi Twitter / N. K. Jemisin Twitter

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