ネタバレ解説『ツイスターズ』でカットされたロマンスシーンとは? 考え直される恋愛描写の重要性 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説『ツイスターズ』でカットされたロマンスシーンとは? 考え直される恋愛描写の重要性

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ストームチェイサーの物語『ツイスターズ』

映画『ツイスター』(1996)の続編であり、ストームチェイサーたちの活躍を描いた映画『ツイスターズ』(2024)。ストームチェイサーたちが「地球が生んだ最強モンスター」と呼ばれる巨大竜巻を消すべく奮闘する『ツイスターズ』だが、カットされたロマンスシーンが話題となっている。そのシーンについて、主演のデイジー・エドガー=ジョーンズとグレン・パウエルがインタビューで語っている。

本記事では、話題を呼んでいるロマンスシーンについて、デイジー・エドガー=ジョーンズとグレン・パウエルのインタビューをもとに解説しよう。なお、以下の内容には『ツイスターズ』のラストの重大なネタバレが含まれるため、必ず劇場で本編を鑑賞後に読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『ツイスターズ』の内容に関するネタバレを含みます。

『ツイスターズ』でカットされたキスシーンを解説&考察

『ツイスターズ』は愛を見つけるためのものではない

映画『ツイスターズ』で話題になったのがデイジー・エドガー=ジョーンズが演じる気象学者のケイトと、グレン・パウエルが演じるストームチェイサーのタイラーの映画ラストに空港で行なわれるキスシーンだ。2人のキスシーンはリーク画像として拡散され、ファンの間ではデイジー・エドガー=ジョーンズとグレン・パウエルのキスシーンが見られると話題になった。

しかし、いざ映画『ツイスターズ』の本編が始まると、デイジー・エドガー=ジョーンズとグレン・パウエルの最後までキスシーンは無かった。その背景について、デイジー・エドガー=ジョーンズとグレン・パウエルが米Colliderインタビューで詳しく語った。

二人によれば、ラストで使用される予定のキスシーンは撮影されたが製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの判断でカットされたとのことだ。スティーブン・スピルバーグの判断について、デイジー・エドガー=ジョーンズは「映画を陳腐なものにしないための判断」とインタビューで語っている。また、グレン・パウエルはキスシーンをカットしたことについて以下のような見解を述べた。

私も、この『ツイスターズ』はケイトとタイラーが愛を見つけるためのものではないと思います。(『ツイスターズ』の目的は)ケイトが好きなこと、つまり竜巻を追いかけることに戻ることだと思います。だから、『ツイスターズ』の最後にはそれが描かれています。

二人はこのことを分かち合い、ケイトの情熱はよみがえり、家族への想いもよみがえります。『ツイスターズ』の最後にキスをするのは、正しいゴールではないような気がします。そして、スピルバーグが(キスシーンをカットするという)良い意見をくれました。

観客のロマンスシーン疲れ

スティーブン・スピルバーグによるキスシーンのカットという判断は、時代を反映した演出だと考察することができる。実は近年の映画ではロマンスシーンは減少傾向にあることが英The Economistの調査で明らかになっている。

また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の「Teens & Screens」という報告書では、24歳以下の1,500名を対象にした調査で、半数以上が「ロマンスシーンは使い古されている」「TV番組や映画にセックスは必要ない」と答えている。

それどころか対象者のコメントの中には「アメリカの映画は男女を登場させるとすぐに恋愛させるのが嫌だ。今のアメリカ映画はプラトニックな関係が欠けている」というものもある。このように今の若者の中には映画に安直な恋愛描写を求めてはいない層もいると考えられる結果となった。

その傾向を踏まえると、『ツイスターズ』はケイトがストームチェイサーとしての情熱を取り戻すことに注力した理由が見えてくる。あくまでも『ツイスターズ』の主題は竜巻にトラウマを抱えたケイトが、タイラーたちと出会うことで竜巻の研究に復帰することなのだ。現在のハリウッドでは制作者も観客も安易な恋愛描写を求めていないのではないだろうか。

ロマンスシーン疲れを訴える俳優も

ロマンスシーンに疲れているのは観客たちだけではない。演技をしている俳優たちも、ロマンスシーンを多用する演出に疲れているのだ。演出では俳優が安全にロマンスシーンを撮影できるように助力する「インティマシー・コーディネーター」が、ロマンスシーンが多すぎるのではないかとスタジオに意見することもあるという。

DCEU(DCエクステンデッドユニバース)でスーパーマン/クラーク・ケントを演じたヘンリー・カヴィルは、Josh HorowitzYouTubeチャンネルにて近年の映画には無意味なロマンスシーンが多すぎるのではないかと苦言を呈している。ヘンリー・カヴィルはロマンスシーンについて物語に有益な場合もあるが、ただ服を脱いでいるのではないかと感じることもあるようだ。

観客や俳優の間で広がるロマンスシーン疲れが広がっており、スタジオ側も不必要な恋愛描写を削る方向性にあるようだ。スティーブン・スピルバーグはケイトがストームチェイサーとしての情熱を取り戻す映画にするため、『ツイスターズ』で恋愛描写を削ったのだと考えられる。

近年のハリウッドは『パシフィック・リム』(2013)など、ロマンスシーンを減らした作品が多いように感じられる。データをもとに考えると今後もロマンスシーンの減少傾向は続く可能性は高い。

上記のように男女のロマンスシーンは減少傾向にあるが、その一方でこれまでぼかされてきたクィアのロマンスシーンなど、描かれるべきロマンスシーンもある。つまり、ハリウッドはロマンスシーンという演出の転換点に立たされているのだと考えられる。今後のハリウッドの大作映画の演出にも注目だ。

『ツイスターズ』は全国の劇場で公開中。

『ツイスターズ』公式サイト

Source
Collider/The Economist/Teens & Screens/YouTube Josh Horowitz Channel

『ツイスターズ』ラストの解説はこちらから。

【ネタバレ注意!】『フォールガイ』ラストの解説はこちらから。

【ネタバレ注意!】『デッドプール&ウルヴァリン』ラストの解説はこちらから。

鯨ヶ岬 勇士

1998生まれのZ世代。好きだった映画鑑賞やドラマ鑑賞が高じ、その国の政治問題や差別問題に興味を持つようになり、それらのニュースを追うようになる。趣味は細々と小説を書くこと。
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