『スーパーマン』公開前に続編の構想あり
ジェームズ・ガン監督のもと、『アクアマン/失われた王国』(2023)を最後にDCEU(DCエクステンデッドユニバース)からDCU(DCユニバース)に生まれ変わったDCスタジオ。その記念すべき映画第1作目『スーパーマン』が2025年7月11日(金)に全国で劇場公開される。
アメコミファンや洋画ファンがデヴィッド・コレンスウェット演じる新しいスーパーマンがどのような活躍をするのか期待している中、映画の公開を前に脚本も務めるジェームズ・ガン監督が『スーパーマン』に続編構想があることを米Entertainment Weeklyのインタビューで語った。
『スーパーマン』ではクラーク・ケントがスーパーマンとしてヒーロー活動を始めて3年後の世界が舞台となる。DCEUではメタヒューマン(超人)は『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)で存在が明らかになったが、DCUでは300年前から存在しており、人類と共存していたという。
スーパーマンは複雑な世界でただ実直に悪と立ち向かうのか。そこに注目が集まる中での『スーパーマン』続編構想の話であったため、更なるメタヒューマンのヒーローやヴィランの登場などに期待が高まった。しかし、ジェームズ・ガン監督が取り組んでいるのは完全な『スーパーマン』の続編ではないとのことである。
「私が取り組んでいるのは……ある意味、はい、はい、はい、はい。でも、これは完全な続編かと聞かれると、必ずしもそうとは言えませんね」
ジェームズ・ガン監督は『スーパーマン』の直接的な続編ではなく、新聞記者クラーク・ケントが走り回り、スーパーマンが空を飛んでいる彼の暮らす世界を舞台にしたいのかもしれない。そうなると、スーパーマンにだけスポットライトが当たるのではなく、スーパーマンと同じようにヒーロー活動をしているメタヒューマンを描くことも考えられる。
複雑なメタヒューマンたちの勢力図
前述の通り、DCUの世界では300年前からメタヒューマンたちが当たり前に存在しており、そこで暮らす市民たちにとって身近な存在となっている。300年前から存在しているという設定ではワンダーウーマンなどギリシャ神話の神々などでは新しすぎる。この300年前という数字も『スーパーマン』で描かれる世界を築く要素の一つだ。
『スーパーマン』で大量に登場し、そのヒーローやヴィランとしての活躍が明らかになるメタヒューマンだが、彼らメタヒューマンたちは善と悪、ヒーローとヴィランという単純に白黒で分けることができない複雑な存在ともされている。その中で素直なまでに平和を愛するスーパーマンは活動することになる。
そのため、『スーパーマン』に大量に登場するメタヒューマンのヒーローについて、ある程度理解しておくことが『スーパーマン』の続編を考えるにあたって重要になるかと思われる。例えばメタヒューマンの代表的なヒーローとしてはマックス・ウェルロード率いるロード・テクノロジーの「ジャスティス・ギャング」が活躍している。
「ジャスティス・ギャング」は天才的な頭脳とオリンピック選手並みの肉体を持つミスター・テリフィック/マイケル・ホルトをリーダーに、宇宙の警察グリーンランタンの問題児ガイ・ガードナー、鷹の翼とメイスを武器にするホークガール/ケンドラ・ソーンダースたちで構成される。平和を守る「ジャスティス・ギャング」だがスーパーマンのように純粋な善人ではなく、少し嫌な奴なのが特徴だ。
スーパーマンが世界を守ろうと必死に戦う中、スーパーマンを敵対視する天才にして富豪のレックス・ルーサーに与するメタヒューマンやヒーローも存在している。国防組織「A.R.G.U.S.」に協力するヒーローチーム「オーソリティ」のメンバーでナノテクノロジーを武器にするエンジニア/アンジェラ・スピカがその最たる例だろう。
他にもレックス・ルーサーの部下には胸に「U」の文字を持つ謎多き超人ウルトラマンや、息子ベイビー・ジョーイを人質に取られたことで、スーパーマンの幽閉に協力させられてしまう何でも生み出せる能力を持つメタモルフォ/レックス・メイソンたちもいる。
『スーパーマン』では当たり前に存在し、共存していたはずの人類とメタヒューマンの関係性は少しずつ悪化し始めており、そこに様々な組織に属するメタヒューマンのヒーローたちの関係性も加わって世界は渾沌の道を歩み始めている。そんな世界でただ純粋に正義と平和を求めるのがスーパーマン/クラーク・ケントであり、その活躍が『スーパーマン』の中心となる。
当たり前にヒーローがいる世界
また、ジェームズ・ガン監督はバットマン/ブルース・ウェインやワンダーウーマン/ダイアナ・プリンスの映画が「ゆっくり進み、動いています」と認め、特にワンダーウーマンの映画に関しては脚本が執筆中だと続けた。
スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンの3人はDCコミックスの中でも「トリニティ(またはビッグ3)」と呼ばれる重要なヒーローたちだ。DCコミックスの顔といっても過言ではない。
トリニティは世界で最も有名なヒーローチームの一つ「ジャスティス・リーグ」の創設メンバーでもある。『スーパーマン』の時点では、まだ「ジャスティス・リーグ」は存在しないとのことだが、ジェームズ・ガン監督は後々、「ジャスティス・リーグ」を結成させたい旨を語っている。
「ジャスティス・リーグ」の創設メンバーはスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン、2代目フラッシュ、2代目グリーンランタン、アクアマン、マーシャン・マンハンター(もしくはサイボーグ)の7人だ。この7人が当たり前にいる世界。それをDCUでジェームズ・ガン監督は築いていくのに時間をかけたいのだと考えられる。
そのためには『スーパーマン』の直接的な続編というよりも、スーパーマン/クラーク・ケントが暮らす世界の続編を描く必要があるのだと考えられる。事実、DCUでは映画だけでなくドラマ『ランタンズ(原題:Lanterns)』が計画されている。
ドラマそのものは2代目グリーンランタン/ハル・ジョーダンと3代目グリーンランタン/ジョン・スチュアートのバディものになるとのことだが、「ジャスティス・ギャング」から4代目グリーンランタン/ガイ・ガードナーも出演するとのことだ。
2代目グリーンランタンは3代目グリーンランタンのメンターになるとも言われている。2代目グリーンランタン/ハル・ジョーダンは恐怖を克服した男と呼ばれ、無鉄砲なキャラクターとして描かれることが多いが、そんな彼がメンターになるほど落ち着いていることからもDCUではヒーローたちが当たり前にいる世界が長く続いていることが読み取れる。
続編ではバットマンvsスーパーマンの展開も?
超人であるメタヒューマンが当たり前に存在して、空を飛んでいる世界。そのような世界では、対メタヒューマン組織や部隊の活躍も描かれることが考察できる。対メタヒューマンで有名なのはバットマン/ブルース・ウェインだろう。
ヒーローであり、大富豪でもあるバットマンは同じ「ジャスティス・リーグ」のメンバーの対応策を練るほどメタヒューマンを警戒しているヒーローだ。原作コミックでは「ジャスティス・リーグ」全員分の弱点を秘密基地バットケイブに隠し持つほど、用心深く、他人を信用しないことがある。
DCEUでは『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でその用心深い性格が描かれ、バットマンはスーパーマン対策として彼の弱点であるクリプトナイトを武器としていた。DCUでもその用心深い性格からバットマンとスーパーマンが衝突する戦いが起きるのかもしれない。
特に素直で平和を愛するスーパーマンに対し、悪人にとっての恐怖の象徴であろうとするバットマンの性格は、対立を生む可能性があるだろう。希望の象徴スーパーマンと恐怖の象徴バットマン。この対立もDCUではDCEUと同様に観ることができる可能性は高い。
また、『スーパーマン』に登場する国土安全保障省の組織「A.R.G.U.S.(超人を束ねる先端研究グループ)」の存在も、人類がメタヒューマンを警戒していることが考察できる要素の一つだと言える。DCUでは「A.R.G.U.S.」のメンバーとしてアマンダ・ウォラー長官が登場することが明らかになっている。
他にも『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)で息子を殺害されたリッグ・フラッグ・Sr.が登場するなど、「A.R.G.U.S.」はDCEUとDCUを繋ぎ、これまで登場したヒーローたちを登場させるきっかけになるのかもしれない。
『スーパーマン』は続編『スーパーガール』へと繋がっていく?
DCUの映画の計画としては、『スーパーマン』の次に公開される作品は『スーパーガール』となっている。スーパーマンの従姉妹、カーラ・ダンバースを主人公にした2026年公開の同作は、コミック『スーパーガール: ウーマン・オブ・トゥモロー』(2022)を原作とした作品となっている。
スーパーガールは宇宙の時間の捻じれで年齢こそスーパーマンより年下だが、実際はスーパーマンよりも先に生まれており、クリプト星が滅亡するときに赤ん坊のスーパーマンを託された人物だ。しかし、地球に到着したときには従兄弟はスーパーマンという偉大なヒーローに成長し、自分が守る必要はなかった。
難民として地球で暮らし、『スーパーガール』ではスーパーマンの従姉妹ということで、スーパーガールという1人のヒーローではなくスーパーマンのおまけかのように扱われる彼女が、自分とは何なのかを探求していくことになる。
スーパーガールの自己探求の旅路では、宇宙にいる様々なメタヒューマンやヒーローが登場することが考察できる。そのため、『スーパーガール』もジェームズ・ガン監督の考えている超人が当たり前にいる世界を描く上で重要な物語になってくるのではないだろうか。
『スーパーマン』の直接的な続編ではなく、スーパーマンたちヒーローが暮らす世界の続編を描いていくことになると考えられるジェームズ・ガン監督のDCU。『スーパーガール』の他にもバットマンのヴィラン、クレイフェイスの映画も計画されている。
注目すべきはDCUは映画だけではなく、アニメでは『クリーチャー・コマンドーズ』(2024-)、ドラマでは『ピースメイカー』シーズン2(2025)などでも展開していく予定という点だ。今後のDCUから目が離せない。
映画『スーパーマン』は2025年7月11日(金)日米同時公開。
80年以上のDC実写作品の歴史がこの一冊に。『DC シネマティック・ユニバース DC映画大全』は世界文化社より発売中。
Source
Entertainment Weekly
映画『スーパーマン』予告編の紹介はこちらの記事で。
ジェームズ・ガンは新『スーパーマン』にはバットマンは登場しないと語っている。詳しくはこちらの記事で。
今後のDCUの10年計画についてはこちらの記事で。
『アクアマン/失われた王国』ラストのネタバレ解説&考察はこちらから。