『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』と『デッドレコニング』はどう繋がる?
2023年に公開された映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は、その名の通り、2025年に公開された映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の前編にあたる。『デッドレコニング』で始まった物語は、『ファイナル・レコニング』で決着がつけられることになる。
一方で、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では回収された要素と回収されていない要素もある。今回は、『デッドレコニング』の伏線が『ファイナル・レコニング』でどのように回収されたのか、あるいはされなかったのかという点を解説していこう。なお、以下の内容は『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の内容に関する重大はネタバレを含みます。
Contents
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』と『デッドレコニング』の繋がりをネタバレ解説
米国大統領の正体
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の舞台は『デッドレコニング』の2ヶ月後。早々に回収される伏線の一つが、『デッドレコニング』で登場しなかったアメリカ合衆国大統領の存在だ。
『ファイナル・レコニング』の冒頭のイーサンは、アメリカ合衆国大統領から指令のビデオテープを受け取る。『デッドレコニング』ではCIA長官のキトリッジから、IMFが現在では大統領直轄の組織になっていることが明かされていた。
さらに、『ファイナル・レコニング』ではこの大統領が前CIA長官のエリカ・スローンであることが明かされる。アンジェラ・バセット演じるエリカ・スローンはCIA長官として登場したシリーズ第6作目『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018) 以来の登場。エリカ・スローンが大統領になったことでCIA長官の座が空き、キトリッジが新たに長官になっていたのである。
ちなみに『デッドレコニング』では序盤の情報委員会の会議が開かれている部屋に、エリカ・スローンズのものと思われる写真が飾られている。ぼやけた背景の中に、黒人女性が星条旗と共に写っており、エリカ・スローンズ大統領の写真だと考察できる。
エリカ・スローンズが大統領になったということであれば、今のイーサン・ハントに大きな権限が与えられていることにも納得がいく。これまでCIAとIMFはそれぞれに長官を持っていたが、『フォールアウト』ではCIA長官のエリカが送り込んだエージェントのウォーカーが敵のスパイで、IMF長官のアラン・ハンリーが殺されてしまった。
IMFがトップを失ったことの責任も感じていたのだろう、『フォールアウト』のラストでは、エリカ・スローンズはイルサをMI6から解放させるなど、イーサンの希望を叶えている。CIAが読み違えた戦況をIMF=イーサンが正しく理解していたという事実は、エリカ・スローンズが大統領になった時に「IMFは自らの意思で指令を受けるかどうか判断してよい」というルールを設けるのに十分な理由だったと言える。
そして『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、エリカ・スローンズは他の閣僚を出し抜いて大統領自ら世界の命運をイーサンに託すことになる。
ルーサーのその後
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の終盤では、ルーサーが自分のラップトップのドライブからエンティティのコーディングの痕跡を見つけるためにオフラインの場所に籠ると言って消えてしまった。『ファイナル・レコニング』ではルーサーのその後が明らかになる。
なんとルーサーはAI・エンティティの毒薬の生成に成功していたのである。これが対エンティティの最後の武器になる。一方、ルーサーは病を患っており、治療を受けながら仕事に取り組んでいた。ルーサーの体調は『デッドレコニング』の時点で良くなく、故に最後の作戦には参加せずにエンティティの毒薬作りに注力したのだろう。
ちなみに、『ファイナル・レコニング』では、ルーサーによる「人生は選択の積み重ねだ」というナレーションが入るが、このセリフは『デッドレコニング』の序盤でキトリッジによる指令の音声でも使われている。
エンティティの狙い
イーサンが『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で直面する危機は、AI・エンティティが核保有国のセキュリティシステムを次々と乗っ取っているという状況だ。前作『デッドレコニング』のエンティティは、自分を危険に晒しうる二つの鍵を手に入れるためにガブリエルを動かしていた一方で、それは“守り”の目的であり、“攻め”の目的は見えないままだった。
一方で『デッドレコニング』の情報委員会では、被害はないがエンティティはロシア・インド・イスラエルのシステムに侵入したと報告されており、自らの存在を人類に知らせようとしていると指摘されていた。ロシア・インド・イスラエルは核保有国であり、この時点でエンティティは核のセキュリティを乗っ取ることを匂わせていたのである。
そして、エンティティの最終的な狙いは、乗っ取った各国のシステムから核を一斉に発射して世界を破壊し、文明を作り直すことだった。その計画を実行するとエンティティも破壊されてしまうため、エンティティは自らを南アフリカにある密閉されたデジタルバンカーに連れて行くよう要求する。
イーサン達はこの要求を利用して、ルーサーの毒薬でエンティティをネット世界から追い出し、デジタルバンカーでグレースのスリの技術を使ってエンティティを物理ドライブに閉じ込めるという作戦に挑むことになる。
エンティティの正体
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、AI・エンティティの正体が明らかになる。『デッドレコニング』では情報局長官のデンリンガーが、かつて米政府が盗んだAIを兵器化したのが始まりだと話していた。
『ファイナル・レコニング』では、その「盗んだAI」というのが『ミッション:インポッシブル3』(2006) でイーサンが任務で盗み出したラビットフットであったことが明かされる。『M:I3』では、ラビットフットは中国のラボで管理されており、イーサンは妻を人質に取られて武器商人のデイヴィアンにラビットフットと呼ばれる兵器を奪取するよう指示された。
同作でイーサンはラビットフットを手に入れたが、武器商人のデイヴィアンと、ラビットフットを中東に渡らせて米軍を侵攻しようとしていた上司のマスグレイブは死亡。イーサンが手に入れたラビットフットは米政府の手に渡っていたのだ。
ラビットフットを元に作られたサイバー兵器のAIを、米政府はロシアのステルス潜水艦セヴァストポリに侵入させたが、AIは暴走して潜水艦を沈めてしまった。その後、AIはサウジアラビアの学習型AIを盗んで自我を持ったとされている。これがエンティティ誕生の経緯である。
つまりイーサンがラビットフットを中国から盗み出したことがエンティティ誕生のきっかけでもある。イーサンの不可能なミッションをやり遂げる力をエンティティは理解しており、『ファイナル・レコニング』ではガブリエルに代わってイーサンがエンティティから要求を受けることになった。
ガブリエルとパリスのその後
一方のガブリエルは『デッドレコニング』で鍵を手に入れる作戦に失敗したことでエンティティから切り捨てられていた。『ファイナル・レコニング』では、ガブリエルは自らがエンティティを支配するために鍵と毒薬を手に入れようとする。
また、ガブリエルに切り捨てられたパリスは移送中にイーサンとグレースに救出される。『ファイナル・レコニング』では、イーサン、グレース、ベンジー、パリス、そしてCIAのドガが続投組としてチームを組むことになる。
『デッドレコニング』では、イーサンはベネチアでの戦いでパリスを殺さなかった。ラストのオリエント急行では、パリスはガブリエルから腹部を刺されてぐったりした状態でイーサンにセヴァストポリの存在について教えていた。続編の『ファイナル・レコニング』では、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のマンティス役でお馴染みのポム・クレメンティエフ演じるパリスが味方になる嬉しい展開が待っていた。
列車でのジャスパー
細かいところで言うと、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のオリエント急行でCIAエージェントのジャスパーがイーサンを撃つのをやめるシーンがあった。『ファイナル・レコニング』では、ジャスパーの父は第1作目『ミッション:インポッシブル』(1996) に登場したジム・フェルプスであったことが明らかになる。
ジム・フェルプスといえば、IMFのベテラン諜報員だったが、イーサンに仲間殺しの濡れ衣をかけてCIAのノックリスト(非公式諜報員の名簿)を武器商人に売り渡そうとする裏切り者だった。第1作目の終盤では列車での戦いでフェルプスが死んでハッピーエンドを迎える。
ジャスパーは父が死んだことについてイーサンを恨んでいないと言っていたが、『デッドレコニング』でジャスパーがイーサンに銃を向けた時には、父の最後を思い浮かべたのではないだろうか。『ミッション:インポッシブル』でもラストの戦いは列車で行われており、父もそこで死んでいたからだ。
だが、『デッドレコニング』でジャスパーがイーサンに銃を向けた時に、父の仇討ちが頭をよぎったというわけではないだろう。むしろここでイーサンを撃つことは父の復讐を果たしてしまうことになるかもしれないと考え、撃つのを躊躇ったのかもしれない。加えて、身を挺して乗客と人類を助けようとするイーサンを見て、イーサンの過去の行いは間違いではなかったと確信を持ったのだろう。
セヴァストポリの座標
『ミッション:インポッシブル:ファイナル・レコニング』で重要な一幕となるのが、セヴァストポリの座標を見つけ出す任務だ。こちらはグレース、ベンジー、パリス、ドガが担当し、セヴァストポリの沈没を検知したソナーを持っていたウィリアム・ダンローと出会う。
ウィリアム・ダンローは第1作目でイーサンによってCIAのノックリストを盗まれた技術官で、アラスカのセント・マシュー島に飛ばされていた。ダンローはセヴァストポリの座標を記憶しており、これによってイーサンはセヴァストポリへ辿り着くことができた。
『デッドレコニング』では、情報局長官のデンリンガーがセヴァストポリの座標を自分しか知らないと言っていたが、これは誤りであったことが分かる。ガブリエルはこの時エンティティの使いであったためデンリンガーを殺してエンティティの危機を救ったが、『ファイナル・レコニング』ではルーサーから奪った毒薬を起動するためにセヴァストポリ内のモジュールが必要になったため、おとなしくイーサンにモジュールを手に入れさせようとしている。
『ファイナル・レコニング』で回収されなかった伏線
イーサンの過去は?
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』で登場したが、『ファイナル・レコニング』で回収されなかった伏線もある。それは、イーサンの過去にまつわるものだ。ガブリエルはイーサンがIMFに入る前から互いを知っている人物として紹介され、イーサンがIMFに入るきっかけとなったことも示唆されている。
イーサンの回想では、ガブリエルがマリーという女性を殺すシーンが描かれている。『デッドレコニング』の序盤では、マリーの死が「私たちを結びつけるきっかけ」になったとキトリッジが話している。つまり、ガブリエルがマリーを殺したことが、イーサンがIMFに入るきっかけになったということである。
キトリッジは、その時のイーサンの状況について「IMFに入るか、終身刑か」という立場であったことも明かしている。『デッドレコニング』では、泥棒だったグレースにIMFに入ることで人生をやり直させようとしたイーサン。かつての自分の姿をグレースに重ね合わせていたのだろう。
イーサンの類稀な才能を理由に、IMFに入ることで政府は恩赦を与えたということだが、IMFに入る以前のイーサンが何をしていたのかということは明かされないままだった。『ファイナル・レコニング』ではその点が明かされるかに思われていたが、ガブリエルは途中退場してしまい、イーサンの過去は分からずじまいだ。
だが、伏線が回収されなかったということは、イーサンの過去編はまだまだ描く余地があるということでもある。『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は、一旦はシリーズの集大成となったが、まだまだイーサンとIMFの活躍が描かれることに期待したい。
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は全国で大ヒット公開中。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』はBlu-ray+DVDセットが発売中。
シリーズ6作品を収録した『ミッション:インポッシブル 6 ムービー・コレクション』4K ULTRA HD + Blu-rayセットは発売中。
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のネタバレ解説&感想はこちらから。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』と過去作との繋がりについてのネタバレ解説はこちらから。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』におけるルーサーについての解説はこちらから。
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