映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』公開
トム・クルーズ主演、「ミッション:インポッシブル」シリーズの最新作となる『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が2025年5月23日(金) より全国の映画館で公開された。本作は『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023) の後編にあたり、主人公イーサン・ハントと“エンティティ/それ”と呼ばれるAIとの対決が描かれる。
「最後の試練」を意味する「ファイナル・レコニング」という副題がつけられた本作は、シリーズ通算8作目、クリストファー・マッカリー監督が手がけるシリーズ4作目の作品となり、過去作との繋がりも多く登場する。今回は、映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』に登場した過去作と繋がる要素について、ネタバレありで解説していこう。
なお、以下の内容は『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で本編を鑑賞してから読んでいただきたい。
以下の内容は、映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の内容および結末に関するネタバレを含みます。
Contents
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』過去作との繋がりをネタバレ解説
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、本編が始まる前にトム・クルーズから日本のファンに向けたメッセージ映像が上映される。その中で、トム・クルーズはこれまでの作品が『ファイナル・レコニング』に繋がると明かしている。
そのトム・クルーズの言葉通り、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』はすべの過去作と繋がりを持つ集大成的な作品となっていた。今回は、過去作からの登場キャラや本作で明らかになった過去作の真実についてネタバレありで解説していこう。
過去作から繋がるサプライズ
ラビットフット
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、前作『デッドレコニング PART ONE』から登場した高度なAI “エンティティ/それ” の起源が明らかになる。その正体は、映画『ミッション:インポッシブル3』(2006) でイーサン・ハントが盗み出した“ラビットフット”だったのだ。
『ミッション:インポッシブル3』では、イーサンは婚約者のジュリアを人質に取られ、48時間以内にラビットフットと呼ばれるブツを手に入れることを要求される。ラビットフットは上海の研究施設に保管されており、イーサンは見事にラビットフットを手に入れているが、その見た目は生物兵器であることを示唆するマークの入ったカプセルだった。
ラビットフットは最終的にイーサンが確保しており、その後IMFに持ち帰ったと見られる。つまり、ラビットフットは米政府の手に戻ったということである。『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』では、このラビットフットは米政府が開発したサイバー兵器であったことが明らかになる。
イーサンがラビットフットを持ち帰ったことでラビットフットは再び米政府の手に渡り、エンティティへと進化することになったのだ。ちなみに『ミッション:インポッシブル3』ではベンジーがオックスフォード大学の教授の話として、「テクノロジーが世界を滅ぼす」「神への冒涜 (anti-god)」とテクノロジーを批判している。このベンジーの危惧は的中したのである。
『ミッション:インポッシブル3』ではラビットフットの詳細は明かされることはなかったが、シリーズの中で未回収であった要素をストーリーの根幹に持ってくる見事な展開だ。イーサンは自らの行いが世界を滅ぼすことにつながるかもしれないという葛藤の中でエンティティとの戦いに挑むことになる。
アメリカ合衆国の新大統領
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の嬉しくも納得のサプライズが、エリカ・スローンの再登場だ。「ブラックパンサー」シリーズのラモンダ女王役で知られるアンジェラ・バセットが演じるエリカ・スローンは、シリーズ第6作目『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018) 以来の登場となった。
『フォールアウト』では、前作でCIA長官だったアラン・ハンリーがIMF長官となり、新たなCIA長官としてエリカ・スローンが登場した。IMFとは対立しつつも、ラストではイーサンの要望を飲んでイルサをMI6から解放することに力を貸している。
『ファイナル・レコニング』では、そのエリカ・スローンが米国大統領として登場。冒頭のビデオテープによる指令の声はスローンのものだったのだ。CIA長官から大統領へと見事な転身を見せたエリカ・スローンは、イーサンを知る人間として、世界の命運をイーサンに託すことになる。
ちなみに現実においてCIA長官を経て大統領となった人物は一人だけ存在する。“パパブッシュ”として知られるジョージ・H・W・ブッシュである。軍人でCIAの協力者だったブッシュは、下院議員、国連大使を経てCIA長官に。レーガン政権の副大統領を経て第41代大統領に就任している。
イーサン vs AI
テロリストとも国家の諜報機関とも対決してきたイーサン・ハントだが、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』の敵はAIだ。前作に続き、イーサンはエンティティの裏をかくためにクリエイティブな発想で戦いに挑む。
そんな中、イーサンは自信を確保したCIAのジャスパー・ブリッグスに手を差し伸べ、握手を求める。二人が対立することがエンティティの狙いであり、その計算を狂わせなければならい、というのがイーサンの考えだ。
シリーズ第5作目『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(2015) では、当時のCIA長官のハンリーが英国首相にハントについてこう語っている。
ハントは訓練を受けたプロです。どんな敵にも対抗し、どんな情報も手に入れ、どんな人物にも化けられる。この会話の内容も予想して即座に対応するでしょう。
ハンリーはイーサンがほとんどAIのような性質を持つエージェントであることを見抜いていたのである。相手は自分たちの会話の内容すらも予想している——エンティティに対する想定はイーサン自身が持つ性質を反映したものだったのかもしれない。
ジャスパー・ブリッグスの父
イーサンが共闘を求めたCIAのジャスパー・ブリッグスについても、過去作とつながるサプライズが用意されていた。ジャスパー・ブリッグスの父は、第1作目『ミッション:インポッシブル』(1996) に登場したジム・フェルプスだったのである。
ジム・フェルプスは第1作目でIMFのベテラン諜報員として登場。フェルプスが率いたチームの「CIAの非公式諜報員の名簿=ノックリストを守る」という任務が失敗に終わり、当時若手だったイーサンだけが生き残った。イーサンはIMF長官のキトリッジに助けを求めるが、逆にイーサンがIMFの裏切り者という嫌疑をかけられることになった。
だが、真の裏切り者は死んだフリをしてノックリストを武器商人に売り渡そうとしていたジム・フェルプスだった。最終的には列車での決闘でフェルプスは死に、イーサンはIMFへの復帰が認められることに。『ミッション:インポッシブル』の冒頭ではフェルプスが任務の指令を受けるが、ラストシーンではイーサンが任務の指令を受ける立場に変わっている。
イーサンとフェルプスは因縁の仲であり、イーサンはフェルプスを殺した仇である。息子のジャスパー・ブリッグスはCIAに所属しているようだが、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』ではイーサンを憎んではいないと語っている。
ちなみに『フォールアウト』と『デッド・レコニング』に登場したホワイト・ウィドウことアラナ・ミツソポリスは、フェルプスがノックリストを売ろうとしていた武器商人マックスの娘である。アラナは『ファイナル・レコニング』には登場しなかったが、今後のジャスパーとの絡みにも期待したい。
ユージーン・キトリッジ
第1作目でイーサンが頼ったユージーン・キトリッジは、前作『デッド・レコニング』から復帰。エンティティを殺すのではなく利用することを主張し、またもイーサンとの認識の違いを披露している。
第1作目ではキトリッジは逃亡するイーサンを炙り出すため、イーサンの母と叔父に濡れ衣をかけて逮捕した。かつてIMF長官だったキトリッジは現在、エリカ・スローンの後釜としてCIA長官を務めている。イーサンとは因縁の仲のキトリッジだが、『ファイナル・レコニング』にも登場している。
ウィリアム・ダンロー
もう一つ、第1作目『ミッション:インポッシブル』からのサプライズはウィリアム・ダンローの登場だ。ウィリアム・ダンローは第1作目でイーサンがCIAのノック・リストを盗み出すために忍び込んだCIA本部で、ノック・リストが保存されているコンピュータを管理していた技術官だ。
天井から吊るされたイーサンがあまりに有名な“床スレスレ”のスタントでノック・リストを盗み出した後、CIAはその事実を隠蔽することを決定。技術官(=ウィリアム・ダンロー)は「即刻アラスカに飛ばす」とされていた。そして、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』ではウィリアム・ダンローはそのアラスカで登場することになる。
ウィリアム・ダンローはアラスカの基地に飛ばされた後も分析官として働いていたようだ。ロシアの潜水艦セヴァストポリの座標を手に入れるためにここを訪れたベンジーは、CIAの人間がいるということに不安を抱いていた。だが、その心配をよそにダンローは協力を申し出て、ロシア軍を出し抜く形でグレースと海底のイーサンに座標を伝えたのだった。
グレースを先導したのはダンローの妻で犬ぞりを操るイヌイットのタペッサだ。その後、イーサンはダンローと合流。29年前の出来事を詫びるが、ダンローはお陰でタペッサと出会えて安住の地を見つけることができたと語る。シリーズ第1作目でイーサンが生んだ“被害”が清算された瞬間だった。
お馴染みのメンバーたち
ルーサー
トム・クルーズ演じるイーサン・ハントと共に「ミッション:インポッシブル」シリーズを牽引してきた面々も『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』に登場している。まずはなんといっても、イーサンと並んでシリーズ皆勤賞のヴィング・レイムス演じるルーサー・スティッケルだ。
第1作目でイーサンが孤立した時に助けてくれたルーサーは、その後もシリーズ第4作目『ゴースト・プロトコル』を除いてイーサンのチームのメンバーとしてイーサンを助けた。実はルーサーは元々、第1作目で死ぬ設定となっていたが、演じたヴィング・レイムスが黒人男性のキャラクターが死ぬことが多かった当時の風潮に疑問を投げかけ、脚本が変更されたという。
【#エージェント】
ヴィング・レイムスが演じたルーサーは、『ミッション:インポッシブル』の脚本では序盤で死亡していた😮トム・クルーズに「どうして黒人男性はいつも死ななくちゃならないんだ❓」と疑問を呈したことから、22年に渡る絆が始まった…‼#MIプレイバック#フォールアウト #mijp pic.twitter.com/IO1RY8jASD
— 『ミッション:インポッシブル』公式 (@MImovie_jp) July 21, 2018
『ファイナル・レコニング』の開始時点でルーサーは重い病気を患っているようだが、エンティティを倒すための“毒薬”の開発に成功している。ガブリエルに罠に嵌められた後も冷静に対応し、「このために生まれてきた」と、プルトニウム爆弾による被害を最小限に抑えるために自らを犠牲にする。
最後には事前に録音されていたルーサーからイーサンへの言葉が流れ、「世界は君を必要としている」というメッセージが届けられている。作中では「人生は選択の積み重ね」という言葉も残しており、「ミッション:インポッシブル」シリーズにおける「善性」「選択」というテーマを総括する役目を果たしている。
ベンジー
サイモン・ペッグ演じるベンジー・ダンは『ミッション:インポッシブル3』からの全作に登場している古参メンバーの一人だ。今回のベンジーはイーサンからチームリーダーとしての役目を託され、イーサンと離れて活動するチームを牽引する。
元々オフィスで働く分析官として登場したベンジーは第4作目『ゴースト・プロトコル』からは「試験をパスした」と言って現場で働くIMFエージェントに。その後は世界を敵に回してもイーサンと共に戦う心強い相棒となった。『ローグ・ネイション』でもCIAに追われるイーサンが最初に頼ったのはベンジーだった。
すっかりベテラン諜報員となったベンジーは、『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』ではグレース、パリス、テオといった若手メンバーをサポート。アラスカ以降はダンローとタペッサも加わった多様なチームのメンバーに助けを借りながらミッションをこなしていく。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で心配されていた“ベンジー死亡説”は回避。演じるサイモン・ペッグは本作公開時点で55歳を迎えているが、まだまだトム・クルーズ/イーサンとのコンビが見られそうだ。
以上が、映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で見られた、過去シリーズと繋がる主な要素だ。『ミッション:インポッシブル3』のラビットフットや『ミッション:インポッシブル』でアラスカに飛ばされたダンローといった要素が回収されることになり、シリーズとしては一区切りを迎えることになった。
「ミッション:インポッシブル」シリーズは今後も続いていくことになりそうだが、今はシリーズ全8作の思い出に浸りながら、『ファイナル・レコニング』を何度でも楽しもう。
映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は2025年23日(金) より全国で公開。
シリーズ6作品を収録した『ミッション:インポッシブル 6 ムービー・コレクション』4K ULTRA HD + Blu-rayセットは発売中。
『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』で回収された/されなかった『デッドレコニング』の伏線についての解説&考察はこちらの記事で。
ルーサーのこれまでと最期についての解説はこちらの記事で。
シリーズ第5作目『ローグ・ネイション』のネタバレ解説&感想はこちらから。
シリーズ第4作目『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』の解説&感想はこちらの記事で。
