ネタバレ解説&感想『塔の上のラプンツェル』ラストの意味は? 実写化も進行中、その後を考察 | VG+ (バゴプラ)

ネタバレ解説&感想『塔の上のラプンツェル』ラストの意味は? 実写化も進行中、その後を考察

© Disney

2010年公開の映画『塔の上のラプンツェル』

2010年に公開された映画『塔の上のラプンツェル』は、ディズニーの長編映画第50作目にあたる作品。主人公のラプンツェルは2009年公開の『プリンセスと魔法のキス』のティアナに続く10人目のディズニープリンセスだ。

今回は、実写化リメイクの話も進行している『塔の上のラプンツェル』について、ネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末までのネタバレを含むので、必ず本編を視聴してから読んでいただきたい。

ネタバレ注意
以下の内容は、映画『塔の上のラプンツェル』の内容に関するネタバレを含みます。

『塔の上のラプンツェル』ネタバレ解説

クラシックなディズニープリンセスの物語

映画『塔の上のラプンツェル』では、自分が王族だと知らず、閉じ込められて育った主人公ラプンツェルの物語が描かれる。かつて、治癒能力と若返りの力を持つ金色の花をマザー・ゴーテルが発見、若さを保って長生きしていた。しかし、あるとき妊娠している王妃が病にかかり、金色の花は王妃の治療に使われてしまう。そして生まれてきた子どもは長く金色の髪を持ち、ラプンツェルと名付けられることになる。

なお、本作では明かされていないが、中編『ラプンツェル あたらしい冒険』(2017) やアニメ『ラプンツェル ザ・シリーズ』(2017-2020) では、王国の名前はコロナ王国となっている。

マザー・ゴーテルは金の花の力を得たラプンツェルを誘拐し、森の奥にある高い塔に閉じ込めて育てることに。ラプンツェルは外の世界は恐ろしいと洗脳され、外に出ることを許されていないのだが、それはゴーテルがラプンツェルの髪が持つ力で若さを保つための口実だった。

ゴーテルは若い人を過保護に扱い閉じ込めているが、実際には自分のための行為である。いわゆる“意地悪な継母”というキャラクター造形になっており、一方のラプンツェルも“外の世界を夢見る娘”というクラシックなディズニープリンセスに設定されている。

最初にラプンツェルが歌うのが「自由への扉」だが、最初に歌われるバージョンでは、ラプンツェルは家の中で読書をして絵を描いて料理をして……と自由そうに見えるが、「いつまで続くの」と、同じことを繰り返す毎日への不満も感じ取れる。

なお、日本語版のラプンツェルの吹き替えは中川翔子が担当しているが、歌唱パートは小此木麻里が担当している。

自由を唄う歌

映画『塔の上のラプンツェル』の世界観は、16世紀のドイツがモデルになっている。原作はグリム童話の『ラプンツェル』(1790) で、同作の原話である『ペトロシネッラ』が発表されたのが1634年なので、そのあたりの時代に設定されていると考えていいだろう。

そんな時代を舞台に泥棒として暗躍しているのがフリン・ライダーだ。「ミッション:インポッシブル」風の音楽と共に城に忍び込んだフリンは城から王女のティアラを盗み出し、ラプンツェルの塔へと辿り着く。

ラプンツェルからティアラを取られたフリンは、毎年自分の誕生日になると空に飛ばされる“灯り”を見に連れて行ってくれたらティアラを返すという条件を飲むことに。ラプンツェルとフリン、そしてラプンツェルと暮らしていたカメレオンのパスカルは、共に城の方へ向かって旅に出ることになる。

ここで歌われるのが「自由への扉(リプライズ2)」で、「ここに残ることもできる」と、自由を前にして不安を抱くラプンツェルの心情も描かれている。それでも、初めて自由に向けて最初の一歩を踏み出したラプンツェルの希望を映し出す一曲になっている。

3人の旅の最初の出会いが”かわいいアヒルの子”という酒場の荒くれ者たちだ。それぞれの荒くれ者たちが夢を語る「誰にでも夢はある」は『塔の上のラプンツェル』のハイライトの一つだ。基本的にクラシックな設定を置いている本作においては、ステレオタイプから自由になろうとする荒くれ者たちの多様性には特に目を惹かれる。

フリン・ライダーに注目

ゴーテルがラプンツェルを追ってくる中、ラプンツェルは金色に輝く長い髪を駆使してフリンを助けながら旅路を急ぐ。その中で、フリンは自分の本当の名前がユージーン・フィッツハーバートだと明かし、親がいないこと、年下の子たちに読んでやった本が『フリナガン・ライダーの冒険』というなんでもできる大金持ちの話で、そこから名前をとったことを明かす。

プリンセスのお相手が貧困層出身というのは『アラジン』(1992) にも通じる設定だ。フリンのストーリーが深掘りされるのは、前作『プリンセスと魔法のキス』が男児の支持を得られず、『塔の上のラプンツェル』では男児人気を意識して男性キャラを際立たせたという背景がある。

前作は「プリンセス」がタイトルに入っていたが、本作の英題は『ラプンツェル』から『Tangled(絡まった)』に変更されている。日本語版のタイトルは『塔の上のラプンツェル』になったが、形容詞の原題を登場人物の名前が入った邦題に変えるスタイルは『アナと雪の女王(Frozen)』でも踏襲され、興行的には成功を収めている。

そしてフリンたち警備隊長の馬であるマキシマスと合流。フリンとマキシマスは仲は悪いものの、『アナと雪の女王』(2013) のクリストフとスヴェンのコンビを想起させる。余談だが、クリストフのデザインは、没になったラプンツェルのお相手のキャラデザインを流用して作られている。

「フリンよりユージーンが好き」というラプンツェルの言葉で二人は距離を縮めると、ついに城下町に辿り着いて王国の祭りを楽しむ。そして二人は、ボートの上でラプンツェルの誕生日に夜空に飛んでいく“灯り”を目撃している。このシーンで歌われる「輝く未来」はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされている。

ラプンツェルはフリンを信頼してティアラを渡し、フリンもまた自分が裏切ったスタビントン兄弟にティアラを返すことに。ところが、スタビントン兄弟はフリンを捕まえて衛兵に差し出すと、ゴーテルはフリンがティアラを持って逃げたとラプンツェルに伝え、塔に連れ帰ることに成功したのだった。

『塔の上のラプンツェル』ラスト ネタバレ解説

ゴーテルはどうなった?

肩を落とすラプンツェルだったが、祭りから持ち帰った太陽の紋章の旗を見て、自室のいたるところに太陽の紋章があることに気がつき、ついに幼少の頃の記憶を取り戻す。ラプンツェルは王族の出身だったことを思い出したのだ。

一方のフリンは処刑の時が近づいていたが、フリンを助けたのはマキシマスが呼んだ酒場の荒くれ者たちだった。その直前に廊下でユニコーンの置物が見えるのは、ウラジミールという名の荒くれ者がユニコーンを集めるのが趣味だからだ。このシーンは映画『ブレードランナー』(1982) のユニコーンの折り紙のオマージュでもあると思われる。

マキシマスがマックススピードで城からラプンツェルの住む塔へ向かうシーンもハイライトの一つだ。フリンはあっという間にラプンツェルのもとへと辿り着くが、フリンはゴーテルにナイフで刺されてしまったのだった。

レイティングの関係かあまり血は出ていないが重症のようで、ラプンツェルはゴーテルの言うことを聞くのと引き換えにフリンを治療しようとするが、フリンはラプンツェルの髪を切り、ラプンツェルは魔法の効果を失い茶色になってしまう。ゴーテルの魔法も解けると、ゴーテルは窓から落ちて消滅してしまった。

のちのアニメシリーズ版を見てもゴーテルは死んだようだが、『ラプンツェル ザ・シリーズ』ではゴーテルの娘が登場する。だが、その父は登場せず、ゴーテルはラプンツェルに「男は裏切る」と語っており、ゴーテルがこのような人間になってしまった背景には、母子を捨てた男の存在がったとも考えられる。

ラストの意味は?

ラプンツェルは魔法の力を失ったかに思われたが、ラプンツェルの涙がフリンの頬に落ちると、フリンは復活。魔法の力は髪ではなくラプンツェル自身に宿っていたのである。

コロナ王国の王と女王はラプンツェルと再会を果たすと、フリンも家族の輪に迎え入れられる。荒くれ者のフックハンドはピアニストに、ビッグノーズは真実の愛を見つけ、ウルフはパントマイマーになり、それぞれの夢を叶えている。

ラプンツェルは王女となり、フリンは名をユージーンに戻して二人は結婚、二人は「いつまでも幸せに」暮らしたとされている。ラストも非常にクラシックな終わり方だ。エンディングで流れる曲はグレイス・ポッター「サムシング・ザット・アイ・ウォント」。

『塔の上のラプンツェル』ネタバレ感想&考察

ラプンツェルのその後は?

映画『塔の上のラプンツェル』は、ディズニーアニメ長編の50作目という節目の作品であることも手伝ってか、古典的なストーリーをある程度踏襲した物語になっていた。一方で、本作はディズニープリンセス作品としては初めて3Dアニメで作られた作品であり、その新たな伝統は『モアナと伝説の海』(2016) といった作品に続いていく。

『アナと雪の女王』のエルサは女王なのでディズニープリンセスに含まれておらず、以降のディズニープリンセス作品では、いわゆる“プリンセスのお相手”が登場しないという変化もあった。『塔の上のラプンツェル』は現状最後のクラシックなディズニープリンセス作品と言えるかもしれない。

気になるのは、ラプンツェルたちのその後だが、2012年に『ラプンツェルのウェディング』、2017年に『ラプンツェル あたらしい冒険』が公開、同年に『ラプンツェル ザ・シリーズ』が始まり、5分の短編4話を収録した『ラプンツェル コロナ王国のひとコマ』も公開されている。

10分の短編である『ラプンツェルのウェディング』では、ラプンツェルとユージーンの結婚式が描かれる。この時、ラプンツェルの髪の色は『塔の上のラプンツェル』のラストから変わらず茶色になっている。しかし、『ラプンツェルのウェディング』は時系列上はシリーズの一番最後の作品である。

2Dアニメで制作された約1時間の『ラプンツェル あたらしい冒険』は『塔の上のラプンツェル』の6ヶ月後が舞台で、ラプンツェルは金の髪を取り戻すことになる。そしてアニメシリーズ『ラプンツェル ザ・シリーズ』では全3シーズンの物語が描かれ、『ラプンツェルのウェディング』へとつながっていく。

『塔の上のラプンツェル』のラストでユージーンがプロポーズを何度も断られたことを示唆してたが、その模様は続編の各作品で描かれることになる。ちなみに『アナと雪の女王』では、エルサの戴冠式でラプンツェルとユージーンの姿が確認できる。この時のラプンツェルは茶色くて短い髪で登場している。

ただし、『アナと雪の女王』は1840年代のノルウェーを舞台にしているので、16-17世紀(1500-1700年) が舞台だと考えられる『塔の上のラプンツェル』とは時代が異なっている。

『塔の上のラプンツェル』は2024年12月に実写化が発表され、その後中断されたという報道もあったが、2025年10月に計画が再び動き出したことを米Deadlineが報じた。ゴーテル役にはスカーレット・ヨハンソンが交渉中と報じられている。

ディズニーの実写化作品では、2026年7月に『モアナと伝説の海』の実写版が公開される予定となっている。2025年に公開された実写版『リロ&スティッチ』は世界興収10億ドル超の大ヒットを記録しており、『塔の上のラプンツェル』がどのような形で実写化されるのかにに注目が集まっている。

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ディズニー最新作『ズートピア2』の情報はこちらから。

『リロ&スティッチ』の解説&感想はこちらから。

『アナと雪の女王』の解説&感想はこちらから。

齋藤 隼飛

社会保障/労働経済学を学んだ後、アメリカはカリフォルニア州で4年間、教育業に従事。アメリカではマネジメントを学ぶ。名前の由来は仮面ライダー2号。 訳書に『デッドプール 30th Anniversary Book』『ホークアイ オフィシャルガイド』『スパイダーマン:スパイダーバース オフィシャルガイド』『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース オフィシャルガイド』(KADOKAWA)。正井編『大阪SFアンソロジー:OSAKA2045』の編集担当、編書に『野球SF傑作選 ベストナイン2024』(Kaguya Books)。
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