『インサイド・ヘッド2』シンパイに注目
2024年8月1日(木) より日本の劇場で公開された映画『インサイド・ヘッド2』は、6月に北米などで公開され、アニメーション映画史上歴代1位のオープニング興収を記録する大ヒットとなっている。前作『インサイド・ヘッド』(2015) 以来、9年ぶりの新作となる『インサイド・ヘッド2』では新たな感情が紹介されたが、世界からは受け入れられているようだ。
『インサイド・ヘッド2』で最も注目を集める新しい感情が“シンパイ”である。英語では『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(2016-) のロビン役で知られるマヤ・ホークが、日本語吹き替えでは俳優の多部未華子が声優を務めた、コミカルでせわしないキャラクターだ。オレンジ色の髪の毛と大きな目と口が特徴で、その名の通り、常にライリーの身に起きうることを心配している。
シンパイとビビリの違いは?
気になるのは、シンパイと、前作から登場している“ビビリ”の違いである。英語でシンパイは「Anxiety」、ビビリは「Fear」であり、ビビリは「恐れ」や「恐怖」と言い換えることもできる。シンパイはどちらかというと「不安」や「懸念」という意味だ。ビビリは危険をおかさないようにブレーキをかける感情、シンパイは状況が悪くならないように行動を起こさせる感情と言い換えてもいいかもしれない。
ヨロコビやイカリ、カナシミ、ムカムカと同じように、ビビリは猫や犬のような動物も持っている単純な感情だ(前作『インサイド・アウト』のエンドクレジットでは、犬と猫の頭の中にもビビリなどの感情がいるという描写が見られる)。一方で、ライリーが思春期に入って登場したシンパイという感情は、コミュニティの中で孤立しないか、無事に進学できるか等、ライリーの社会的な立場に連動して揺れ動く感情になっている。
シンパイのゴールとは
米ピクサー公式サイトでは、シンパイというキャラクターについて以下のように紹介されている。
入念に整理されたリストと計画を武器に、ライリーが決して失敗しないよう手助けするシンパイは、最悪のシナリオを共有することを恥だとは考えていない。
加えて、シンパイは「ライリーを完璧な状態にすることが自分のゴールだと考えている」とも記されている。日本の公式プロフィールでも、「最悪の将来を想像し、あたふたと必要以上に準備してしまう」とある。ある意味で完璧主義者であり、あらゆる懸念に対して準備を行うのがシンパイなのだ。
もちろん、前作『インサイド・ヘッド』でヨロコビだけでは成り立たないこと、カナシミもまた必要な感情であることが示されたように、シンパイだけではライリーの生活は成り立たないだろう。他の感情たちのシンパイとの付き合い方が『インサイド・ヘッド2』の見どころになる。
監督の中にもあるシンパイ
『インサイド・ヘッド2』で長編監督デビューを果たしたケルシー・マン監督は、米アカデミー公式サイトのインタビューで、本作に登場させる新しい感情を考える際に最初にあった感情としてシンパイの存在を挙げている。
先ほども触れましたが、私はリストを作るタイプの人間なんです。おそらく心配があるからです。私の中の心配がリストを作らせるので、そこからキャラクター作りを始めました。まずリストを作りました。それが考える助けになるんです。
ケルシー・マン監督自身が『インサイド・ヘッド2』の制作を始めるにあたってベースにあった感情がシンパイであり、それが本作でシンパイにスポットライトが当てられる要因となったのだろう。
シンパイは誰もが持つ感情の一つだが、付き合い方が難しい感情でもある。シンパイがなければ計画が立てられないし、シンパイに支配されてしまえば誰かを犠牲にしてでも自分を守るという行動に走ってしまう可能性もある。
高校進学を控える歳になったライリーは、将来の不透明さと周囲の人々との関係という新たな困難に直面し、ヨロコビら旧作から続投する感情も新たな感情と対峙することになる。ライリーの頭の中はどうなってしまうのか、その結末は劇場で。
映画『インサイド・ヘッド2』は2024年8月1日(木) より全国の劇場で公開。
映画『インサイド・ヘッド』はBlu-rayが発売中。
『インサイド・ヘッド2』オリジナルサウンドトラックは発売中。
Source
Pixar.com / Oscars.org / ピクサー(日本)
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