2017年公開『アナと雪の女王/家族の思い出』
2017年に発表されたアニメ『アナと雪の女王/家族の思い出』は、ピクサー・ディズニー映画『リメンバー・ミー』と同時上映された作品。同時上映の短編作品としては、22分という異例の長さでも話題になった。
『アナと雪の女王/家族の思い出』では、『アナと雪の女王』(2013) と『アナと雪の女王2』(2019) の間の時系列の物語が描かれる。邦題は「家族の思い出」となっているが、原題は「Olaf’s Frozen Adventure」となっており、オラフの冒険が中心になっている。
今回は、『アナと雪の女王/家族の思い出』についてネタバレありで解説し、感想を記していこう。以下の内容は結末に関するネタバレを含むため、本編を視聴してから読んでいただきたい。
以下の内容は、アニメ『アナと雪の女王/家族の思い出』の内容に関するネタバレを含みます。
『アナと雪の女王/家族の思い出』ネタバレ解説&感想
アナとエルサの初めてのクリスマス
『アナと雪の女王/家族の思い出』は短編『アナと雪の女王 エルサのサプライズ』(2015) に続く短編作品。「エルサのサプライズ」では、『アナと雪の女王』でエルサが部屋から出てきて初めてアナの誕生日を迎えた。「家族の思い出」の冒頭でオラフが「サプライズ」にこだわっているのは、「エルサのサプライズ」でエルサを手伝ったからだろう。
「エルサのサプライズ」は、エルサが風邪を引きながらアナへのバースデー・サプライズを成功させるという物語。この時エルサのくしゃみから生まれたのが『アナと雪の女王2』のエンドロール後に登場した小さな雪だるま、スノーギースだ。
“エルサが扉を開いてから初めてのアナの誕生日”にフォーカスした「エルサのサプライズ」に続いて、「家族の思い出」では“初めてのクリスマス”が舞台になる。「アナと雪の女王」の舞台のモデルとなっているノルウェーでは、クリスマスは「ユール(冬至祭)」と呼ばれる。
クリスマスは家族と過ごすという文化はアメリカと同じだが、北欧の冬は寒さが厳しく作物が取れない時期になるため、ユールには肉を塩漬けにして乾燥させたものなどを食べる。その地域に根付いた伝統があるのだが、『アナと雪の女王/家族の思い出』では、アナとエルサは“伝統の不在”に悩むことになる。
“伝統”を探す旅
アナとエルサはアレンデールの国中の人々を集めてクリスマスパーティーを開こうと考えていたが、市民の各家庭にはクリスマスの伝統的な過ごし方があった。一方、エルサは魔法の力が暴発してからはずっと部屋に閉じ込められて育ち、アナとエルサは若くして両親を亡くしたため、クリスマスの伝統を持っていなかったのだ。
そんなエルサとアナのために一肌脱いだのはオラフだった。「Olaf’s Frozen Adventure(オラフのフローズンの冒険)」という原題通り、オラフはトナカイのスヴェンと共に“伝統”を探す旅に出る。
マフラーにツリー、そしてフルーツケーキと、各家庭の伝統を集めたオラフだったが、最後にオーケンからもらったサウナボックスが仇になる。オーケンは『アナと雪の女王』にも登場したサウナ付きの山小屋で商いをしている人物だ。
短編『オラフの生まれた日』(2020) では、エルサに作られた直後のオラフの冒険が描かれ、この時オラフはオーケンの店を訪ねていたことが明らかになっている。オラフが夏に憧れるようになったのは、オーケンの店にあった夏の景色の写真を見たからで、オラフとオーケンは旧知の仲なのだ。
サウナといえばフィンランドが本場というイメージだが、「アナ雪」の舞台のモデルになっているノルウェーでも人気の文化だ。なお、このシーンでは、サウナで水になるまで溶け、外で氷になってから元の雪だるまに戻るオラフの貴重な姿が見られる。
集めた“伝統”をソリに満載して城へ向かうオラフとスヴェンだったが、サウナの石がソリに引火してソリは奈落の底に落下。さらにオラフは狼の巣に入ってしまい、唯一守れたフルーツケーキも鷹にさらわれてしまう。
狼に追われるのは、時系列的には『オラフの生まれた日』に続いて2度目である。頑張ったものの一旦全てがオジャンになってどん底に、という展開はお決まりのパターンだが、それでもオラフの健気なキャラも手伝って余計に可哀想になってしまう。
オラフをめぐる意外な事実
だが、トナカイのスヴェンはクリストフ、アナ、エルサにオラフのことを伝えて、アレンデールの人々はクリスマスの夜に街をあげてオラフの捜索にあたる。オラフがどれだけこの国の人々に愛されているかということが示されているシーンだ。
すっかり雪に埋もれて落ち込んでいるオラフを見つけたアナとエルサは、屋根裏部屋で見つけたオラフの絵や人形をオラフに見せる。アナは幼い頃から部屋に閉じこもっていたエルサに毎年クリスマスカードを送っており、そのカードにはオラフが描かれていた。
元々オラフは『アナと雪の女王』第1作目の冒頭で幼い頃のエルサがアナと遊ぶ中で作った雪だるまがモデルで、幼い頃の二人の思い出そのものだった。エルサが作った雪だるまに「オラフ」という名前を付け、「ぎゅーって抱きしめて」とセリフを当てたことが、後のオラフのアイデンティティになった。
エルサは雪の城を作るときに本物の生きたオラフを作り今のオラフがあるのだが、オラフはどこかアナとエルサのために行動し続けているところがあった。だが、『アナと雪の女王/家族の思い出』では、その関係性が反転し、アナとエルサは二人の絆があるのは「オラフのおかげ」だと伝えるのだった。
名曲「雪だるまつくろう」でも描かれたように、アナはエルサに「雪だるま(=オラフ)を作ろう」と呼びかけ続けていた。『アナと雪の女王/家族の思い出』では、アナはオラフを描いたクリスマスカードや人形をエルサに贈っていたこと、それによってエルサは孤独の中でもアナとの子ども時代を思い出せたこと、二人が共に絆で結ばれているということを忘れずに済んだと明かす。
オラフは外の世界に伝統を探しに行ったが、アナとエルサにとっての伝統はオラフ自身であり、“家族”だということがラストで明かされる。邦題では「家族の思い出」という副題で答えが出てしまっているが、原題は「Olaf’s Frozen Adventure」なので、オラフは冒険の結果答えを知ったということになっている。
最後に歌われる曲は「あなたといるだけで/When We’re Together」。オラフは改めてオラフを捜しに来ていた街の人々から贈り物をもらい、アナとエルサ達は人々と共に氷上のパーティーを楽しんでいる。
最後に鷹に盗まれていたフルーツケーキも返ってきて、『アナと雪の女王/家族の思い出』は幕を閉じる。
『アナと雪の女王/家族の思い出』はオラフを主人公に置いた作品で、いつも懸命に皆のために動いてくれるオラフが周囲の人々から愛されていたということを実感するストーリーが描かれた。この物語を前提に置いていると、『アナと雪の女王2』でオラフに降りかかる出来事は一層心に残るものになる。
幸い、現在製作中の『アナと雪の女王3』にもオラフは登場する見込みとなっている。次はオラフはどんな冒険を見せてくれるのか、今後の作品にも期待しよう。
『アナと雪の女王/家族の思い出』はディズニープラスで配信中。
ブルーレイ+DVDセットとディズニーゴールド絵本版も発売中。
『アナと雪の女王2』MovieNEXはDisney100 エディションが発売中。
『アナと雪の女王』はMovieNEXが発売中。
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