アメコミ脚本のアーカイブに注目
「スパイダーマン」や「スーパーマン」といったアメリカのコミック作品の特徴は、原案や絵、カラーリングなど、各々の工程が職人の手によって役割分担されていることだ。その中でも、コミック作品のストーリーを考える “ライター”の職業は、映画制作における脚本家の役割にあたる。コミック製作の出発点だ。今では様々なコミック作品が映画化されているが、コミックライターが書き出す “スクリプト” (コミックの脚本) がなければ、あの大ヒット映画も存在していなかったのだ。
100本以上のスクリプトを公開
そんなアメコミの原案がアーカイブ化されていることをご存知だろうか。アメコミ編集者であり作家でもあるアンディ・シュミットが運営するComics Experienceでは、コミックライターのティム・シモンズが集めたコミックのスクリプト100本以上が無料で公開されている。Comics Experienceでは、オンラインのワークショップやプロのライターと編集者から校正が受けられるプログラムも提供しており、次代のコミックライターを育てるべく有益なリソースを提供しているのだ。
『バットマン』『サンドマン』のスクリプトも
アメコミのスクリプトがアーカイブ化された「Comic Book Script Archive」では、著名なコミックライターの作品も提供されている。『ウォッチメン』(1986-1987) で知られる巨匠アラン・ムーアも複数の作品を提供しており、映画『ダークナイト』(2008) のジョーカー像にも影響を与えたコミック『バットマン: ザ・キリング・ジョーク』(1989) の冒頭12ページのスクリプトが公開されている。
小説『アメリカン・ゴッズ』(2001) などでヒューゴー賞、ネビュラ賞を複数回受賞しているニール・ゲイマンのスクリプトも見られる。アップされているのは数々の賞を総なめにした『サンドマン』(1989-1996) 第22話のスクリプトで、34ページに渡る。人物のセリフと共に、「ここで彼の顔にズームしよう」など、描写に関する指示が細かく書き記されている他、「○ページ目○コマ目」とコマ割りも厳密だ。
ライターの参加を呼びかけ
“コミック界のアカデミー賞” と呼ばれるアイズナー賞を受賞したこともあるイラストレーターのSTEENZは、自身のTwitterでこのアーカイブを「優れたリソース」と評価している。一方で、コミックのスクリプトには「標準的な方程式は存在しない」とし、自分の作風に合ったものや、作品の絵を手がけるアーティストに寄り添ったものを目指すようアドバイスを送っている。
This is a great resource for comic script writing. But since there’s no standard formula for comic scripts, sometimes it’s best to see what works for you and your artists. Open up that conversation!
I do wish there were more than 3 women on this list. https://t.co/YkXrdvKsyN
— Steenz! @ FlameCon A005 (@oheysteenz) August 11, 2019
同時にSTEENZは、このアーカイブには女性ライターの作品が極端に少ないことも指摘している。STEENZは複数の女性コミックライターにスクリプトを寄贈しないかと呼びかけ、これに賛同したコミックライターのAmy Chuも同様に女性ライター達へ同様の呼びかけを行なっている。
Yes! Would also like to see scripts from @MairghreadScott @TheJulieBenson @shawnabenson @annienocenti @Jody_Houser @TiniHoward @EvilMarguerite @EricaSchultz42 @definitelyvita @janetharvey… cc @ComicExperience https://t.co/nZFmPXiUW7
— ✨A M Y C H U✨ #donutkiller (@AmyChu) August 11, 2019
コミックライターを目指す人々にリソースを提供し、業界をあげて次代のコミックライターを育てようという姿勢が伝わってくる。今勢いに乗るアメコミ業界だが、まだしばらくは安泰なようだ。